ご利用について
このPDQがん情報要約では、小児軟部肉腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 小児軟部肉腫とは
-
小児軟部肉腫は、筋肉や脂肪、線維性組織、血管、身体の他の支持組織に発生するがんです。
身体を構成する軟部組織は、その他の組織や臓器をつなぎ、支え、包み囲むという役割を果たしています。以下のような軟部組織があります:
軟部肉腫は体内のあらゆる部位に発生します。小児では、この腫瘍は腕、脚、胸部、腹部によく発生します。
軟部肉腫は、筋肉、腱、靱帯、軟骨、脂肪、血管、リンパ管、神経、関節周囲の組織などの軟部組織に発生します。 軟部肉腫は小児にも成人にも発生します。小児の軟部肉腫は、治療に対する反応が様々で、成人の軟部肉腫と比べて予後が良好な場合もあります。成人の軟部肉腫の詳細については、軟部肉腫の治療をご覧ください。
- 軟部肉腫の種類
-
軟部肉腫には様々な種類があります。それらは、最初の発生源となった軟部組織細胞の種類に応じて分類されています。
本要約は、以下の種類の軟部肉腫について書かれたものです:
血管腫瘍
血管腫瘍には、以下の種類があります:
骨腫瘍
骨外性骨肉腫。この種の骨軟骨悪性腫瘍は、小児や青年では非常にまれです。治療後に再発しやすく、肺に転移することがあります。骨肉腫は骨によく発生します。
軟骨腫瘍
骨外性間葉性軟骨肉腫。この種の軟骨悪性腫瘍は、若年成人にみられることが多く、頭頸部に発生します。通常は高悪性度(急速に増殖して拡がることが多い)で、体の他の部位に転移することがあります。治療後、何年もしてから再発することもあります。
脂肪組織腫瘍
脂肪肉腫。これは脂肪細胞のがんです。通常、脂肪肉腫は皮膚のすぐ下の脂肪層で発生します。小児と青年における脂肪肉腫は、ほとんどが低悪性度です(ゆっくり増殖して拡がる傾向があります)。脂肪肉腫は肺に転移することがあり、まれにリンパ節に転移することもあります。脂肪肉腫にはいくつかの種類があります:
線維性結合組織の腫瘍
線維性結合組織の腫瘍には、以下のようないくつかの亜型があります:
骨格筋腫瘍
骨格筋は、骨に付着しており、体の動きを助けています。
- 横紋筋肉腫。横紋筋肉腫は、14歳以下の小児に最も多くみられる小児軟部肉腫です。詳細については、小児横紋筋肉腫の治療をご覧ください。
- 外胚葉性間葉腫。主に小児に発生する増殖の速い腫瘍です。外胚葉性間葉腫は眼窩、腹部、腕、脚に発生することがあります。
いわゆる線維組織球性腫瘍
- 叢状線維組織球腫瘍。これは、まれな腫瘍で、通常は小児や若年成人に発生します。通常、この腫瘍は、腕、手、または手首の皮膚の表面または直下に痛みを伴わない腫瘍として現れます。まれに、周辺のリンパ節または肺に転移することがあります。
細胞起源が不明な腫瘍
細胞起源が不明な腫瘍(最初に発生した腫瘍の細胞の種類が不明のもの)には、以下のような多くの亜型があります:
- 粘液腫。粘液腫は心臓または皮膚に発生する腫瘍です。この腫瘍はカーニー複合の小児に頻繁にみられます。カーニー複合は、皮膚の斑点と、心臓、内分泌腺、皮膚、および神経の腫瘍を特徴とするまれな病態です。カーニー複合はPRKAR1A遺伝子の変異と関連している可能性があります。
- 滑膜肉腫。滑膜肉腫は、小児や青年によくみられる種類の軟部肉腫です。滑膜肉腫をご覧ください。
- 類上皮肉腫。まれな肉腫で、通常は増殖がゆっくりした硬いしこりとして軟部組織の深部に発生し、リンパ節に転移することもあります。がんが腕、脚、殿部に発生している場合は、センチネルリンパ節生検を行い、リンパ節のがんの有無を調べることがあります。類上皮肉腫はSMARCB1と呼ばれる腫瘍抑制遺伝子に起こる変異に関連しています。この種の遺伝子は細胞増殖の制御に関与する蛋白を作ります。
- 胞巣状軟部肉腫。この腫瘍は、青年や若年成人に発生します。胞巣状軟部肉腫(ASPS)をご覧ください。
- 明細胞肉腫。このがんは、小児や若年成人に発生します。明細胞肉腫をご覧ください。
- 骨外性粘液型軟骨肉腫。この種の軟部肉腫は小児や青年にみられることがあります。時間とともに、リンパ節や肺などの体の他の部位に転移する傾向があります。この腫瘍は、治療後、何年もしてから再発することがあります。
- 骨外性ユーイング肉腫。このがんは骨に発生することが最も多いですが、軟部組織に生じることもあります。詳細については、ユーイング肉腫の治療をご覧ください。
- 線維形成性小円形細胞腫瘍。この腫瘍は通常、腹部に発生します。線維形成性小円形細胞腫瘍(DSRCT)をご覧ください。
- 腎外性(頭蓋外)ラブドイド腫瘍。ラブドイド腫瘍は腎臓または脳に発生することが最も多いですが、軟部組織に生じることもあります。頭蓋外悪性ラブドイド腫瘍(MRT)をご覧ください。
- 血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa)。良性のPEComaは、結節性硬化症と呼ばれる遺伝性疾患の小児にみられることがあります。この腫瘍は胃、腸、肺、泌尿生殖器系の臓器に発生します。PEComaは緩やかに増殖し、転移する見込みが小さい腫瘍です。
-
未分化肉腫または未分類肉腫。これらの腫瘍は通常、骨や、体の動きを助けている筋肉に発生します。
- 未分化多形肉腫(悪性線維性組織球腫)。この種の軟部組織腫瘍は、過去に受けた放射線療法の照射部位に発生したり、網膜芽細胞腫の小児における二次がんとして発生したりすることがあります。通常、このがんは腕や脚に生じ、体の他の部位へ転移することもあります。詳細については、骨肉腫の治療をご覧ください。
- 頭蓋内間葉系腫瘍。この種の悪性腫瘍は、小児、青年、若年成人の脳に発生します。
- 小児軟部肉腫の原因とリスク因子
-
小児軟部肉腫は、軟部組織の細胞の挙動、特に成長して新しい細胞に分裂する過程での挙動に特定の変化が生じることで発生します。そうした変化が生じる正確な原因は多くの場合、不明です。がんの発生の詳細については、がんとは何か(英語)をご覧ください。
リスク因子とは、疾患が発生する可能性を増大させるあらゆる要因のことです。リスク因子をもっている全ての小児が軟部肉腫を発症するわけではありません。また、リスク因子が認められない小児が発症することもあります。
以下のいずれかの遺伝性疾患がある場合には、軟部肉腫のリスクが高まっている可能性があります:
もう1つのリスク因子は、放射線療法の治療歴です。
お子さんのリスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。
- 小児軟部肉腫の症状
-
軟部肉腫は痛みを伴わない皮膚の下のしこりとして現れることがあり、多くは腕、脚、胸部、腹部に発生します。初期の段階ではそれ以外の症状は現れない可能性があります。肉腫が大きくなって周辺の臓器、神経、筋肉、血管などを圧迫するようになると、痛みや筋力低下のような症状が現れる場合があります。発熱、体重減少、寝汗、および低血糖または高血糖はまれな症状です。
ただし、他の病態が原因で同様の症状が生じる場合もあります。これらの問題がお子さんに1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください。
- 小児軟部肉腫の診断に用いられる検査
-
小児に軟部肉腫を示唆する症状がみられる場合、それらの原因ががんなのか、それとも別の問題なのかを医師が確認する必要があります。医師は症状がいつから始まり、どのくらいの頻度で起きているかを質問します。医師はまた、保護者に小児の病歴と家族歴をたずね、身体診察を行います。それらの結果に応じて、軟部肉腫の有無を調べる検査と、軟部肉腫があった場合にその拡がりの範囲(病期)を調べる検査を勧めることもあります。
軟部肉腫の診断では、以下のような検査法が用いられます。それらの検査の結果は、保護者と担当医が治療の計画を立てる際にも役立ちます。
X線検査
X線は放射線の一種で、これを人の体に通して、体内領域の写真を撮影することができます。
MRI(磁気共鳴画像法)
MRI検査は、磁気、電波、コンピュータを用いて胸部、腹部、腕、脚など体内領域の精細な連続画像を作成する検査法です。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。
MRI(磁気共鳴画像)スキャン。患者さんが台の上に横たわり、その台がMRI装置の中を水平に移動する間に、体内の精細な画像が連続で作成されます。台の上で小児がとる姿勢は、撮影する体の部位によって異なります。 CTスキャン
CTスキャンは、X線装置に接続したコンピュータを用いて胸部や腹部など体内領域の精細な連続画像を作成する検査法です。様々な角度から画像が撮影され、それらを用いて組織と臓器の3次元画像が作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影とも呼ばれます。詳細については、CTスキャンとがん(英語)をご覧ください。
CT(コンピュータ断層撮影)スキャン。患者さんが台の上に横たわり、その台がCT装置の中を水平に移動する間に、体内の精細なX線画像が連続で撮影されます。 超音波検査
超音波検査は、周波数の高い音波(超音波)を体内の組織や臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法です。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。
生検
生検は、腫瘍から細胞または組織のサンプルを採取する手技で、採取されたサンプルは病理医が顕微鏡で観察して、がんがないか調べます。実施される生検の種類は、腫瘤の大きさや腫瘤の発生位置(皮膚表面に近いか組織の深部か)によっても異なります。軟部肉腫を調べるために、以下の種類の生検が行われることがあります:
- コア針生検では、太い針を用いて組織を採取します。複数の組織サンプルを採取します。この処置では、組織へ針を進めるために超音波、CTスキャン、またはMRIが用いられる場合があります。
- 切除生検では、しこりの一部や組織のサンプルを採取します。
-
摘出生検では、しこりの組織全体または正常にみえない組織の領域を摘出します。切除された組織は、病理医が顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。摘出生検は、皮膚の表面付近にある比較的小さな腫瘍を完全に摘出するという目的で実施されることもあります。生検後にがん細胞が残存することがあるため、この種の生検が使用されるのはまれです。がん細胞が残存していると、がんが再発したり、体の他の部位に転移したりする可能性があります。
摘出生検に先立って腫瘍のMRIを行います。これにより原発腫瘍の位置の画像を作成し、得られた画像を後続の手術や放射線療法のガイドとして利用する場合もあります。
可能であれば、生検と腫瘍を切除する手術は同じ外科医が担当することが重要です。生検で針を刺したり切開したりすることが、後の手術で腫瘍を完全に切除できるかどうかに影響する可能性があります。
最善の治療計画を立てるためには、軟部肉腫の種類を判別して他の臨床検査も行うのに十分な大きさのサンプルを生検で採取する必要があります。原発腫瘍やリンパ節、または他の腫瘍が存在しうる領域から、組織のサンプルを採取します。採取された組織は病理医が顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べ、腫瘍の種類と悪性度を判定します。腫瘍の悪性度は、顕微鏡で観察したときのがん細胞の外観の異常さと、細胞分裂の速さに基づいて判定されます。通常、高悪性度と中悪性度の腫瘍は、低悪性度の腫瘍より速く増殖して拡がります。
組織のサンプルの臨床検査では、以下のうち1つ以上が実施されることがあります:
- 光学・電子顕微鏡検査は、組織サンプル中の細胞を通常の顕微鏡と高性能の顕微鏡の両方で観察して、特定の変化がみられないかを調べる検査法です。
- 免疫細胞化学検査は、抗体を利用して、患者さんから採取した細胞または組織のサンプルに特定の抗原(マーカー)が含まれていないか調べる検査法です。使用される抗体には通常、酵素や蛍光色素が連結されています。この抗体が組織サンプル内の特定の抗原に結合すると、酵素や色素が活性化し、顕微鏡で抗原を観察できるようになります。この種の検査は、軟部肉腫の種類を判別するために用いられることがあります。
- 逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査は、分析用に特定の遺伝子配列のコピーを大量に作るための技法です。遺伝子や染色体に特定の変化が生じているか、あるいは特定の遺伝子がどのように活性化しているかを調べて、がんなどの病気の診断に役立てることができます。
- 細胞遺伝学的分析は、腫瘍組織のサンプルに含まれる細胞の染色体に損傷や欠失、再構成、過剰がないか調べる検査法です。特定の染色体に認められる変化は、がんの徴候を示している可能性があります。細胞遺伝学的分析はがんの診断、治療計画、治療効果の判定に利用されます。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は細胞遺伝学的分析の一種です。
-
分子生物学的検査は、組織、血液、骨髄のサンプルに特定の遺伝子、蛋白、その他の分子が含まれていないか調べる検査法です。分子生物学的検査では、軟部肉腫の原因になったり発生の可能性を高めたりする遺伝子や染色体の変化がないかも調べます。分子生物学的検査はしばしば軟部肉腫の種類を特定するのに役立ちます。
Molecular Characterization Initiativeは、特定の種類のがんと新たに診断された小児、青年、および若年成人を対象として、無料の分子生物学的検査を提供しています。このプログラムは、NCIの小児がんデータイニシアチブ(Childhood Cancer Data Initiative)を通じて提供されています。詳細については、Molecular Characterization Initiativeについて(英語)をご覧ください。
以下の検査法を用いて、がんが転移しているかどうかを調べることがあります:
センチネルリンパ節生検
センチネルリンパ節生検は、手術中にセンチネルリンパ節を採取する手技です。センチネルリンパ節とは、リンパ節群のなかで原発腫瘍からのリンパ節ドレナージ(リンパ液の流れ)を最初に受けるリンパ節です。したがって、これは原発腫瘍中のがん細胞が最初に転移する可能性の高いリンパ節です。センチネルリンパ節を同定するために、放射性物質か青い色素、またはその両方が腫瘍の近くに注入されます。注入された放射性物質や色素は、リンパ管を通ってリンパ節へと流れ込みます。そうして、放射性物質や色素が最初に到達したリンパ節が切除されます。切除された組織は、病理医が顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。がん細胞が見つかった場合は、別の切開口からより多くのリンパ節を切除します。この手技はリンパ節郭清術と呼ばれます。ときに、複数のリンパ節群でセンチネルリンパ節が見つかることがあります。この手技は、類上皮肉腫に用いられます。
PET-CTスキャン
PET-CTスキャンは、PET(陽電子放射断層撮影)スキャンとCT(コンピュータ断層撮影)スキャンから得られた画像を組み合わせる検査法です。PETスキャンとCTスキャンが同じ装置で同時に行われます。これらのスキャンを併用することで、それぞれ単独で実施するよりも詳細な画像が得られます。
- PETスキャンでは、少量の放射性グルコース(放射線を放出するブドウ糖)を静脈内に注射します。体の周囲を回転するPETスキャナという装置を用いて、体内でグルコースが消費されている領域を示した画像を作成します。がん細胞は、正常な細胞よりも活発でブドウ糖をより多く取り込む性質があるため、画像ではより明るく映し出されます。
- CTスキャンでは、様々な角度から精細なX線画像が連続して撮影され、それらを用いて組織と臓器の3次元画像が作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影とも呼ばれます。詳細については、CTスキャンとがん(英語)をご覧ください。
- セカンドオピニオンを受ける
-
子どものがんの診断を確定して治療計画を立てるにあたって、保護者はセカンドオピニオンを求めることができます。セカンドオピニオンを求めるときは、最初の担当医に医学的検査の結果と報告書を提供してもらい、それらを別の医師と共有する必要があります。2人目の医師は、遺伝子検査の結果、病理報告書、スライド、検査画像を確認します。そして、最初の医師の見解に同意するか、アプローチの変更や別のアプローチを提案したり、患者さんの腫瘍について新たな情報を提供したりします。
医師を選んでセカンドオピニオンを受けるプロセスの詳細については、がん治療の医療機関を探す(英語)をご覧ください。セカンドオピニオンを提供できる医師や病院の情報については、NCIのCancer Information Serviceまで、チャット、電子メール、電話(英語とスペイン語に対応)でお問い合わせください。受診時に聞いておくとよい質問については、がんについて主治医に尋ねるべき質問(英語)をご覧ください。
- 小児軟部肉腫に対する治療法
-
軟部肉腫の小児の治療を担う医療従事者
小児軟部肉腫の治療は、小児がんの治療を専門とする小児腫瘍医が監督します。小児腫瘍医は、小児軟部肉腫の治療に精通し、特定の医療分野を専門とした他の医療提供者と協力しながら治療に取り組んでいきます。そのチームには、軟部肉腫の摘出手術について専門の訓練を積んだ小児外科医が参加することもあります。ほかにも以下の専門家が関与することがあります:
小児と青年の軟部肉腫に対する治療法には様々なものがあります。保護者と担当のがん治療チームが協力して、治療法を決定します。多くの場合、治療法は軟部肉腫の種類により異なります。小児の全体的な健康状態や、がんが新たに診断されたものかそれとも再発したものかなど、他にも数多くの要因が検討されます。
小児の治療計画では、がんについての情報、治療の目標、治療選択肢、起こりうる副作用などが検討対象に含まれます。治療に先立って担当のがん治療チームと今後の見通しについて話し合うことが助けになります。実際の進め方については、NCIの小児がんの子どもたち:親のための手引き(英語)をご覧ください。
以下のような治療法があります:
手術
可能であれば、軟部肉腫を完全に摘出する手術が行われます。腫瘍が非常に大きい場合には、腫瘍を小さくして手術時に切除する組織の量を減らしておくために、まず放射線療法か化学療法が実施されます。これは術前補助療法と呼ばれます。
以下のような手術法が用いられます:
以下を目的として、セカンドルック手術が必要となる場合があります:
- 残存するがん細胞を除去するため
- 腫瘍が切除された個所の周辺の領域にがん細胞が存在していないことを確認し、存在していれば、必要に応じてさらに組織を除去するため
手術の際に確認できる全てのがんを切除した後に、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に化学療法や放射線療法が実施される場合があります。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。
詳細については、手術によるがん治療(英語)をご覧ください。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法にはいくつかの種類があります:
-
外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。特定の方法で放射線療法を実施すると、周辺の健康な組織の損傷を防ぐことができます。この種の放射線療法としては以下のものがあります:
- 定位放射線療法では、毎回の治療で放射線を同じ位置に照射できるよう、専用の装置を用いて患者さんの姿勢を固定します。数日にわたり、1日1回、放射線照射装置で腫瘍に対して直接、通常より高い線量の放射線を照射します。毎回、患者さんに同じ姿勢をとってもらうことで、周辺の正常な組織に対する損傷を抑えます。こういった手法は、定位体外照射療法や定位放射線療法とも呼ばれます。
- 原体照射療法では、コンピュータを用いて腫瘍の三次元(3D)画像を作成して、放射線ビームの形状を腫瘍の形状に合わせて調整します。これにより、周辺の正常組織の損傷を抑えながら、高い線量の放射線を腫瘍に照射することができます。
- 強度変調放射線療法(IMRT)は、三次元照射療法の一種で、コンピュータを用いて腫瘍の大きさと形状を示した画像を作成します。照射幅の小さな放射線ビームが様々な角度から様々な強度で腫瘍に照射されます。この種の外照射療法は、健康な周辺組織の損傷を少量に抑えます。
- 陽子線治療は、大きなエネルギーを用いる外照射療法の一種で、陽子(正の電荷を帯びた微細な粒子)の流れを利用して、腫瘍細胞を殺傷します。この種の治療では、腫瘍の近くにある正常組織の放射線による損傷を少なく抑えることができます。
- 内照射療法は、放射性物質を針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの中に封入し、それをがん組織の内部または周辺に直接留置する方法です。
放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期や、手術後にもがん細胞が残っているかどうか、または予想される治療の副作用に応じて異なります。小児軟部肉腫の治療には外照射療法と内照射療法が用いられます。
詳細については、放射線療法によるがん治療(英語)をご覧ください。
化学療法
化学療法は、薬剤を使用してがん細胞の増殖を阻止する治療法です。化学療法では、がん細胞を死滅させるか、がん細胞の分裂を停止させます。化学療法は単独で行われることもあれば、放射線療法など他の治療法と併用されることもあります。
小児軟部肉腫の治療では、化学療法の薬剤を口から投与するか、静脈に注射します。この方法で投与すると、薬剤を血流に入れて、全身のがん細胞に到達させることができます。
化学療法の実施方法は、治療対象となる軟部肉腫の種類に応じて異なります。一部の軟部肉腫は、化学療法による治療に反応することがあります。
単独または併用で使用される化学療法薬として以下のようなものがあります:
- シスプラチン
- シクロホスファミド
- アクチノマイシンD
- ドキソルビシン
- ヒドロキシカルバミド
- イホスファミド
- メトトレキサート
- ビンブラスチン
- ビンクリスチン
- ビノレルビン
ここに挙げていない化学療法薬も使用されることがあります。
化学療法の効果、投与方法、よく発生する副作用などの詳細については、化学療法によるがん治療(英語)をご覧ください。
経過観察
経過観察とは、徴候や症状の出現や変化がみられるまで、治療を一切行わずに患者さんの状態を注意深くモニタリングしていくことです。以下の場合に、経過観察が実施されることがあります:
- 腫瘍の完全切除が不可能な場合
- 他に治療法がない場合
- 腫瘍がバイタル臓器を損傷する可能性が低い場合
分子標的療法
分子標的療法は、薬剤またはその他の物質を使用して、がん細胞の増殖や進展に関わる特定の酵素、蛋白、その他の分子の作用を阻害する治療法です。軟部肉腫の治療に用いられる分子標的療法としては以下のものがあります:
詳細については、分子標的療法によるがん治療(英語)をご覧ください。
免疫療法
免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんと戦う治療法です。ペムブロリズマブは、未分化多形肉腫(悪性線維性組織球腫)と進行性または再発軟部肉腫の治療に使用されることがあります。
詳細については、免疫療法によるがん治療(英語)をご覧ください。
臨床試験
患者さんによっては、臨床試験への参加が選択肢の1つになる場合もあります。小児がんを対象とする臨床試験にはいくつかの種類があります。例えば、治療の臨床試験では、新しい治療法や既存の治療法の新しい利用方法が検証されます。支持療法や緩和ケアの臨床試験では、生活の質を改善する方法が検討され、特にがんの影響やその治療による副作用がみられる人が対象になります。
NCIの臨床試験検索から、参加を受け付けているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。この検索では、がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて試験を絞り込むことができます。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
探し方や参加方法など、臨床試験の詳細については、患者さんと介護者のための臨床試験情報(英語)をご覧ください。
- 小児軟部肉腫の治療
-
以下の治療法については、小児軟部肉腫に対する治療法をご覧ください。
血管腫瘍
類上皮血管内皮腫
新たに診断された類上皮血管内皮腫の治療法には以下のようなものがあります:
- 可能であれば、腫瘍を切除する手術
- 転移する可能性が高い腫瘍には、免疫療法(インターフェロン)
- 転移する可能性が高い腫瘍には、分子標的療法(パゾパニブまたはシロリムス)
- 化学療法
- 放射線療法
- 緩和ケア
軟骨腫瘍
骨外性間葉性軟骨肉腫
新たに診断された骨外性間葉性軟骨肉腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 腫瘍を完全に摘出する手術。手術の前または後、もしくは前後ともに、放射線療法を行うことがあります。
- 化学療法とその後の手術。手術後に化学療法を施行し、場合により放射線療法も行います。
脂肪組織腫瘍
脂肪肉腫
新たに診断された脂肪肉腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 腫瘍を完全に摘出する手術。がんが完全に切除できない場合は、再手術を行うこともあります。
- 腫瘍を縮小させる化学療法と、その後の手術。
- 手術の前または後の放射線療法。
線維性結合組織の腫瘍
隆起性皮膚線維肉腫
新たに診断された隆起性皮膚線維肉腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 可能であれば、腫瘍を完全に摘出する手術。モース手術などが行われます。
- 手術の前または後の放射線療法。
線維肉腫
乳児線維肉腫
新たに診断された乳児線維肉腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 分子標的療法(ラロトレクチニブ)
- 分子標的療法の前または後に腫瘍を切除する手術
- 手術の前または後の化学療法と、分子標的療法
成人型線維肉腫
新たに診断された成人型線維肉腫の治療法は、可能な場合、腫瘍を完全に摘出する手術です。
粘液線維肉腫
新たに診断された粘液線維肉腫に対する治療法は、腫瘍を完全に摘出する手術です。
低悪性度線維粘液性肉腫
新たに診断された低悪性度線維粘液性肉腫に対する治療法は、腫瘍を完全に摘出する手術です。
周皮細胞(血管周囲)腫瘍
乳児血管周皮腫
新たに診断された乳児血管周皮腫に対する治療法は、通常は化学療法です。
いわゆる線維組織球性腫瘍
叢状線維組織球腫瘍
新たに診断された叢状線維組織球腫瘍に対する治療法は、腫瘍を完全に摘出する手術です。
細胞起源が不明な腫瘍(最初に腫瘍が発生した部位が不明のもの)
骨外性ユーイング肉腫
詳細については、ユーイング肉腫の治療をご覧ください。
血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa)
新たに診断された血管周囲類上皮細胞腫瘍に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 腫瘍を切除する手術
- 経過観察とその後の手術
- 特定の遺伝子変異を有し、手術で切除できない腫瘍には、分子標的療法(シロリムス)
未分化肉腫または未分類肉腫
転移性小児軟部肉腫
診断時に他の部位に転移している小児軟部肉腫の治療法は、化学療法と放射線療法です。肺に転移した腫瘍を手術で切除することもあります。
特定の種類の腫瘍に対する治療の詳細については、小児軟部肉腫の治療をご覧ください。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 進行性または再発小児軟部肉腫の治療
-
以下の治療法については、小児軟部肉腫に対する治療法をご覧ください。
進行性または再発小児軟部肉腫の治療法には以下のようなものがあります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 治療の副作用および晩期合併症(晩期障害)
-
がん治療は副作用を引き起こす可能性があります。起こりうる副作用は、受けている治療の種類、用量、および体の反応によって異なる場合があります。注意すべき副作用とその対処法について、担当の治療チームとよく話をしてください。
がんの治療中に発生する副作用の詳細については、副作用(英語)のページをご覧ください。
がん治療による問題のうち、治療後6カ月以降に始まって月単位または年単位で続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:
- 身体的な問題
- 気分、感情、思考、学習、記憶における変化
- 二次がん(新たに発生するがん)
晩期合併症(晩期障害)には治療やコントロールが可能なものもあります。がん治療によってお子さんに生じうる影響について担当医とよく話をすることが重要です。詳細については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。
- 小児軟部肉腫の予後因子
-
子どもが軟部肉腫と診断されると、多くの保護者は、そのがんの深刻度や生存の可能性を知りたくなるでしょう。疾患がどのような経過をたどるかの見通しを予後といいます。予後は以下の要因に左右されます:
- 腫瘍が最初に発生した部位
- 腫瘍の大きさと悪性度
- 軟部肉腫の種類
- 皮下の腫瘍の深さ
- 他の部位への転移の有無と転移した場所
- 切除術の後に残存している腫瘍の量
- 腫瘍の治療に放射線療法が用いられたかどうか
- 新たに診断されたがんか、再発したがんか
治療に対する反応には個人差があり、大きな差がみられる場合もあります。保護者が子どもの予後について知りたい場合は、担当のがん治療チームと話をするのが最善です。
- フォローアップケア
-
治療を進める中で、定期的に検査や診察が行われます。がんの診断のために行われた検査の一部が、治療効果を確認する目的で再び行われることもあります。治療の継続、変更、中止などの決定がそれらの検査結果に基づいて判断されることもあります。
治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。それらの検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんが再発したかどうかを知ることができます。
フォローアップ検査の詳細については、小児軟部肉腫の診断に用いられる検査をご覧ください。
- 子どものがんへの対処
小児ががんを発症すると、そのご家族全員に対してサポートが必要になります。この困難な時期には、保護者が自分自身のことに気を配ることが重要になります。担当の治療チームやご家族や地域の人々に助けを求めましょう。詳細については、小児がん患者さんのご家族のためにという記事と、小児がんの子どもたち:親のための手引き(英語)という冊子をご覧ください。
- 関連資料
-
小児がんに関するさらなる情報や、がん全般に関するその他の資料については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
-
PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所(NCI)が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、小児軟部肉腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board. PDQ Childhood Soft Tissue Sarcoma. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/types/soft-tissue-sarcoma/patient/child-soft-tissue-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389342]
本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。
免責事項
PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。
お問い合わせ
Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。