患者さん向け 小児精巣腫瘍(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小児精巣腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小児精巣腫瘍とは

小児の精巣腫瘍は、片側の精巣の組織から発生する場合と両側の精巣の組織から発生する場合があります。この種の腫瘍は、良性(がんではない)の場合もあれば、悪性(がん)の場合もあります。良性腫瘍は体のほかの部位に転移しません。しかし、大きく成長して周囲の組織を圧迫し、不快感やその他の症状を引き起こすことがあります。悪性腫瘍は体のほかの部位に転移することがあります。良性腫瘍は幼児と乳児に多くみられ、悪性腫瘍は思春期を過ぎた男子に多くみられます。

精巣は男性の生殖器系に属する卵のような形をした2つの腺です。陰茎の真下にあるゆったりとした皮膚の袋である陰嚢の中にあります。精巣は精索(中に精巣の輸精管、血管、神経が通っている組織)に支えられて陰嚢内に保持されています。精巣では、テストステロンなどの男性ホルモンと精子が作られています。

男性生殖器系の解剖図:この図は輸精管(精巣から精子を送り出すための長い管)、前立腺、陰茎、および精巣を示している。

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男性生殖器系の解剖図。男性の生殖器系は、子孫(子ども)をつくるプロセスに関係する臓器と腺で構成されています。具体的には、輸精管(精巣から精子を送り出すための長い管)、前立腺、陰茎、精巣などがあります。
精巣腫瘍の種類

精巣腫瘍には2つの種類があります。

小児精巣腫瘍の原因とリスク因子

小児精巣腫瘍は、精巣の細胞の挙動、特に成長して新しい細胞に分裂する過程での挙動が変化することによって発生します。そうした細胞の変化が生じる正確な原因は多くの場合、不明です。がんの発生の詳細については、がんとは何か(英語)をご覧ください。

リスク因子とは、疾患が発生する可能性を増大させるあらゆる要因のことです。リスク因子をもっている全ての小児が精巣腫瘍を発症するわけではありません。また、リスク因子が認められない小児が発症することもあります。

以下のいずれかの症候群や病態がある場合には、精巣腫瘍のリスクが高まっている可能性があります:

お子さんにリスクがあるかもしれないと思われる場合は、担当の医師に相談してください。

精巣腫瘍の小児に対する遺伝カウンセリング

精巣腫瘍の小児にそのリスクを高める遺伝性の病気があるかどうかは、家族歴だけでは明確にならない場合があります。遺伝子検査の前に遺伝カウンセリングを受けることは、お子さんがこの種類の腫瘍を引き起こす遺伝子変異をもっているリスクと遺伝子検査が必要かどうかを評価するのに役立つ可能性があります。遺伝子検査は、ある小児がまれながんや通常は成人にみられるがん(精巣腫瘍など)を発症した理由を説明するのに役立つ可能性があります。遺伝カウンセラーを始めとする特別な訓練を受けた医療専門職がお子さんの診断とご家族の病歴について議論することで、以下のことを明らかにする手がかりを得ることができます:

遺伝カウンセラーはまた、結果についてご家族と話し合う方法を含めて、あなたがお子さんの遺伝子検査の結果に対処する手助けをすることもできます。他のご家族も遺伝子検査を受けるべきかどうかについて助言することもできます。

遺伝子検査の詳細については、遺伝性のがんリスクに対する遺伝子検査(英語)をご覧ください。

小児精巣腫瘍の症状

小児の精巣腫瘍では、腫瘍が大きくなるまで症状が現れないことがあります。以下の症状がみられる場合は、お子さんの担当医に相談するべきです:

これらの症状は、小児精巣腫瘍以外の病態によって引き起こされることもあります。状況を把握する唯一の方法は、担当医の話を聞くことです。

小児精巣腫瘍の診断に用いられる検査

小児に精巣腫瘍を示唆する症状がみられる場合、それらの原因ががんなのか、それとも別の問題なのかを医師が確認する必要があります。医師は症状がいつから始まり、どのくらいの頻度で起きているかを質問します。医師はまた、保護者に小児の病歴家族歴をたずね、身体診察を行います。それらの結果に応じて、ほかの検査を勧めることもあります。それらの検査の結果は、精巣腫瘍と診断された場合に保護者と担当医で治療計画を立てるのに役立ちます。

このほかに精巣腫瘍の診断に用いられることがある検査や手技として、以下のものがあります:

超音波検査

超音波検査は、周波数の高い音波(超音波)を体内の組織や臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法です。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。

CTスキャン

CTスキャンは、X線装置に接続したコンピュータを用いて胸部、腹部、骨盤などの体内領域の精細な連続画像を作成する検査法です。様々な角度から画像が撮影され、それらを用いて組織と臓器の3次元画像が作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、静脈内に造影剤を注射したり、患者さんに飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影とも呼ばれます。詳細については、CTスキャンとがん(英語)をご覧ください。

CT(コンピュータ断層撮影)スキャン:この図は、患者さんが横たわった台がCT装置内を水平に移動している間に体内領域の精細なX線写真が連続して撮影されている様子を示している。

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CT(コンピュータ断層撮影)スキャン。患者さんが台の上に横たわり、その台がCT装置の中を水平に移動する間に、体内の精細なX線画像が連続で撮影されます。

MRI(磁気共鳴画像)検査

MRI検査は、磁気、電波、コンピュータを用いて胸部、腹部、骨盤などの体内領域の精細な連続画像を作成する検査法です。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。

MRI(磁気共鳴画像)スキャン:この図は、患者さんが横たわった台がMRI装置内を水平に移動している間に体内領域の精細な画像が連続して撮影されている様子を示している。

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MRI(磁気共鳴画像)スキャン。患者さんが台の上に横たわり、その台がMRI装置の中を水平に移動する間に、体内の精細な画像が連続で撮影されます。台の上で患者さんがとる姿勢は、撮影する体の部位によって異なります。

胸部X線検査

X線は放射線の一種で、これを人の体を通して写真を撮影します。胸部X線検査は、胸部の臓器と骨の写真を撮影する検査法です。

生検

生検とは、腫瘍から組織のサンプルを採取する手技のことで、採取されたサンプルは病理医が顕微鏡で観察して、がんの徴候がないか調べます。

血清腫瘍マーカー検査

血清腫瘍マーカー検査は、採取した血液を用いて、体内の臓器、組織、腫瘍細胞から血液中に放出された特定の物質の量を測定する検査法です。特定の物質の血中濃度が上昇している場合には、その物質と関連性のある特定の種類のがんの存在が疑われます。このような物質は腫瘍マーカーと呼ばれます。腫瘍マーカーであるα-フェトプロテインの血中濃度が高いことは、精巣の腫瘍が胚細胞腫瘍であることを意味します。

DICER1遺伝子検査

DICER1遺伝子検査は、血液または唾液のサンプルを用いてDICER1遺伝子の変異がないか調べる検査法です。

セカンドオピニオンを受ける

小児精巣腫瘍の診断を確定して治療計画を立てるにあたって、保護者はセカンドオピニオンを求めることができます。セカンドオピニオンを求めるときは、最初の担当医に医学的検査の結果と報告書を提供してもらい、それらを別の医師に見せる必要があります。2人目の医師は、遺伝子検査の結果、病理報告書、スライド、検査画像を確認します。そして、最初の医師の見解に同意するか、治療計画の変更を提案したり、患者さんのがんについて新たな情報を提供したりします。

医師を選んでセカンドオピニオンを受けるプロセスの詳細については、がん治療の医療機関を探す(英語)をご覧ください。セカンドオピニオンを提供できる医師や病院の情報については、NCIのCancer Information Serviceまで、チャット、電子メール、電話(英語とスペイン語に対応)でお問い合わせください。受診時に聞いておくとよい質問については、がんについて主治医に尋ねるべき質問(英語)をご覧ください。

精巣腫瘍の小児の治療を担う医療従事者

小児精巣腫瘍の治療は、小児がんの治療を専門とする小児腫瘍医が監督します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通しつつ、同時に他の医療分野を専門とする他の医療従事者と協力しながら治療に取り組んでいきます。その他の専門職としては以下のものがあります:

小児精巣腫瘍の治療

小児と青年の精巣腫瘍に対する治療法には様々なものがあります。保護者と担当のがん治療チームが協力して、治療法を決定します。小児の全体的な健康状態や、がんが新たに診断されたものかそれとも再発したものかなど、数多くの要因が検討されます。

小児の治療計画では、がんについての情報、治療の目標、治療選択肢、起こりうる副作用などが検討対象に含まれます。これは、治療に先立って担当のがん治療チームと今後の見通しを話し合う上で役に立ちます。実際の進め方については、NCIのがんの小児:ご両親のための手引き(英語)をご覧ください。

小児の非胚細胞精巣腫瘍に対する治療は通常、腫瘍を切除する手術です。一部の症例では、がんがある精巣全体の摘出が必要になることもあります。

治療後にがんが再発した場合は、予想される経過と次に取ることができる対応について主治医から説明があります。治療の選択肢としては、がんを縮小させるものや、増殖をコントロールするものが考えられます。治療選択肢がない場合は、がんの症状をコントロールするためのケアを受けることができ、それによりできるだけ快適に過ごすことができます。

臨床試験

臨床試験に参加することが選択肢の1つになる場合もあります。小児がんを対象とする臨床試験にはいくつかの種類があります。例えば、治療の臨床試験では、新しい治療法や既存の治療法の新しい利用方法を検証します。支持療法や緩和ケアの臨床試験では、生活の質を改善する方法が検討され、特にがんの影響やその治療による副作用がみられる人が対象になります。

臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。この検索では、がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて試験を絞り込むことができます。

詳細については、患者さんと介護者のための臨床試験情報(英語)をご覧ください。

小児精巣腫瘍の予後

子どもが精巣腫瘍と診断されると、多くの保護者は、そのがんの深刻度や生存の可能性を知りたくなるでしょう。がんがどのような経過をたどるかの見通しを予後といいます。小児の精巣腫瘍では、手術で腫瘍を切除した後の予後は通常、非常に良好です。

治療の副作用と晩期障害

がん治療は副作用を引き起こす可能性があります。起こりうる副作用は、受けている治療の種類、用量、体の反応によって異なります。注意すべき副作用とその対処法について、担当の治療チームとよく話をしてください。

がんの治療中に発生する副作用の詳細については、副作用(英語)のページをご覧ください。

がん治療による問題のうち、治療後6カ月以降に始まって月単位または年単位で続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。治療の晩期合併症(晩期障害)として、生殖能力の問題などの身体的な問題が生じることがあります。

晩期合併症(晩期障害)には治療やコントロールが可能なものもあります。治療により生じうる晩期合併症(晩期障害)について担当医とよく話をすることが重要です。詳細については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。

フォローアップケア

治療を進めるにつれて、フォローアップ検査または定期検査が行われます。がんの診断のために行った検査の一部を、治療効果を確認する目的で再び行うこともあります。治療の継続、変更、中止などの決定がそれらの検査結果に基づいて判断されることもあります。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。それらの検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんが再発したかどうかを知ることができます。

子どものがんへの対処

小児ががんを発症すると、そのご家族全員に対してサポートが必要になります。この困難な時期には、保護者が自分自身のことに気を配ることも重要になります。担当の治療チームやご家族や地域の人々に助けを求めましょう。詳細については、小児がん患者さんのご家族のためにという記事と、がんの小児:ご両親のための手引き(英語)という冊子をご覧ください。

関連資料

小児がんに関するさらなる情報とがん全般に関するその他の資料については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児精巣腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。詳しい情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board. PDQ Childhood Testicular Cancer. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/types/testicular/patient/child-testicular-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

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