ご利用について
このPDQがん情報要約では、小児心臓腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 小児心臓腫瘍とは
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心臓腫瘍は、心臓に発生するまれな腫瘍です。良性(がんではない)の場合もあれば、悪性(がん)の場合もあります。小児に発生する心臓腫瘍の大半は良性の(がんではない)ものです。良性腫瘍は体のほかの部位に転移しませんが、心臓のリズムや血流に問題を引き起こすのを阻止するために、治療が必要になることがあります。小児では悪性の心臓腫瘍は非常にまれです。ほかの部位に転移することがあり、良性腫瘍より集中的な治療を必要とします。
胎児、新生児、または小児に発生する良性の心臓腫瘍としては、以下の種類があります:
胎児または新生児に発生することがある最も一般的な良性心臓腫瘍としては、横紋筋腫、粘液腫、奇形腫、線維腫などがあります。横紋筋腫は大半が自然に消失します。
心臓腫瘍は、筋肉組織、結合組織、血管の内側を覆っている組織、心拍を制御している組織、心臓の神経を覆っている組織など、心臓の組織に発生するまれな腫瘍です。心膜(心臓を包んでいる袋状の組織)に発生することもあります。大半の心臓腫瘍は良性(がんではない)ですが、一部は悪性(がん)のことがあります。 胎児、新生児、または小児に発生する悪性の心臓腫瘍としては、以下の種類があります:
- 小児心臓腫瘍の原因とリスク因子
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小児の心臓腫瘍は、心臓の細胞の挙動、特に成長して新しい細胞に分裂する過程での挙動が変化することによって発生します。多くの場合、細胞の変化を引き起こした正確な原因は不明です。がんの発生の詳細について、がんとは何か(英語)をご覧ください。
リスク因子とは、疾患が発生する可能性を増大させるあらゆる要因のことです。結節性硬化症と呼ばれる遺伝性疾患がある胎児または新生児では、良性心臓腫瘍の発生リスクが高くなることがあります。カーニー症候群と呼ばれる別の病気も、小児に粘液腫という種類の良性心臓腫瘍が発生するリスクを高める可能性があります。これらのリスク因子がある小児全員が良性心臓腫瘍を発症するわけではなく、また、リスク因子が認められない小児に心臓良性腫瘍が発生することもあります。お子さんにリスクがあるかもしれないと思われる場合は、担当の医師に相談してください。
小児における悪性心臓腫瘍のリスク因子として知られているものはありません。
- 小児心臓腫瘍の症状
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心臓腫瘍の小児の大半では、何らかの問題を警告する徴候や症状がみられます。以下の症状が1つでもみられる場合は、お子さんの担当医に相談するべきです:
これらの症状は、心臓腫瘍以外の病態によって引き起こされることもあります。状況を把握する唯一の方法は、担当医の話を聞くことです。
- 小児心臓腫瘍の診断に用いられる検査
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心臓腫瘍を示唆する症状がみられる場合は、医師がその原因を特定する必要があります。医師は症状がいつから始まり、どのくらいの頻度で起きているかを質問します。医師はまた、保護者に小児の病歴と家族歴をたずね、身体診察を行います。それらの結果に応じて、ほかの検査を勧めることもあります。それらの検査の結果は、心臓腫瘍と診断された場合に保護者と担当医で治療計画を立てるのに役立ちます。
このほかに心臓腫瘍の診断に用いられることがある検査や手技として、以下のものがあります:
心エコー検査
心エコー検査は、周波数の高い音波(超音波)を心臓とその周辺の組織や臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法です。血液が心臓から送り出されるときの心臓や心臓弁の動きが動画として撮影されます。
CTスキャン
CTスキャンは、X線装置に接続したコンピュータを用いて体内の領域の精細な連続画像を作成する検査法です。様々な角度から画像が撮影され、それらを用いて組織と臓器の3次元画像が作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影とも呼ばれます。詳細については、CTスキャンとがん(英語)をご覧ください。
CT(コンピュータ断層撮影)スキャン。患者さんが台の上に横たわり、その台がCT装置の中を水平に移動する間に、体内の精細なX線画像が連続で撮影されます。 MRI(磁気共鳴画像)検査
MRI検査は、磁気、電波、コンピュータを用いて頭部と頸部など体の一部分の精細な連続画像を作成する検査法です。この検査法は核磁気共鳴画像法とも呼ばれます。
MRI(磁気共鳴画像)スキャン。患者さんが台の上に横たわり、その台がMRI装置の中を水平に移動する間に、体内の精細な画像が連続で撮影されます。台の上で患者さんがとる姿勢は、撮影する体の部位によって異なります。 胸部X線検査
X線は放射線の一種で、これを人の体を通して写真を撮影します。胸部X線検査は、胸部の臓器と骨の写真を撮影する検査法です。
心電図検査
心電図検査は、心臓の電気的な活動を記録して、心拍数と心拍リズムを調べる検査法です。まず患者さんの胸部、腕、脚に小さな電極をいくつか貼り付け、それらを心電計と呼ばれる装置に導線で接続します。その後、心臓の活動を折れ線グラフとして記録していきます。電気的な活動が正常より速い場合や遅い場合は、心臓の疾患や障害の徴候である可能性があります。
- セカンドオピニオンを受ける
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小児の診断を確定して治療計画を立てるにあたって、保護者はセカンドオピニオンを求めることができます。セカンドオピニオンを求めるときは、最初の担当医に医学的検査の結果と報告書を提供してもらい、それらを別の医師に見せる必要があります。2人目の医師は、病理報告書、スライド、検査画像を確認します。そして、最初の医師の見解に同意するか、治療計画の変更を提案したり、患者さんの腫瘍について新たな情報を提供したりします。
医師を選んでセカンドオピニオンを受けるプロセスの詳細については、医療機関を探す(英語)をご覧ください。セカンドオピニオンを提供できる医師や病院の情報については、NCIのCancer Information Serviceまで、チャット、電子メール、電話(英語とスペイン語に対応)でお問い合わせください。受診時に聞いておくとよい質問については、がんについて主治医に尋ねるべき質問(英語)をご覧ください。
- 心臓腫瘍の小児の治療を担う医療従事者
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小児心臓腫瘍の治療は、小児がんの治療を専門とする小児腫瘍医が監督します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通しつつ、同時に他の医療分野を専門とする他の医療従事者と協力しながら治療に取り組んでいきます。その他の専門職としては以下のものがあります:
- 小児心臓腫瘍の治療法
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小児と青年の心臓腫瘍に対する治療法には様々なものがあります。保護者と担当のがん治療チームが協力して、治療法を決定します。小児の全体的な健康状態や、腫瘍が新たに診断されたものかそれとも再発したものかなど、数多くの要因が検討されます。
小児の治療計画では、腫瘍についての情報、治療の目標、治療選択肢、起こりうる副作用などが検討対象に含まれます。これは、治療に先立って担当の治療チームと今後の見通しを話し合う上で役に立ちます。実際の進め方については、NCIのがんの小児:ご両親のための手引き(英語)をご覧ください。
注意深い経過観察
注意深い経過観察とは、徴候や症状の出現や変化がみられるまで、治療を一切行わずに患者さんの状態を注意深くモニタリングしていくことです。この治療は(良性腫瘍である)横紋筋腫に対して選択されることがあります。
手術
可能であれば、手術で腫瘍を切除します。行われることがある手術としては以下のものがあります:
- 腫瘍とその周囲の正常組織の一部を切除する手術。
- 心臓移植。ドナーからの心臓の提供を待つ間は、必要に応じて他の治療を行います。
悪性腫瘍を小さくして手術で切除する組織の量を減らすために、手術の前に化学療法を行うこともあります。このような治療を術前補助療法といいます。
化学療法
化学療法は、薬剤を使用してがん細胞の増殖を阻止する治療法です。化学療法では、がん細胞を死滅させるか、がん細胞の分裂を停止させます。肉腫に対しては、手術の前に腫瘍を小さくするために、化学療法を単独または他の治療法と併用して行うことがあります。
詳細については、化学療法によるがん治療(英語)をご覧ください。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。悪性の心臓腫瘍の治療には、ときに外照射療法が用いられます。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。手術でがんを切除できない場合に放射線療法を用いることもあります。
詳細については、がんに対する外照射療法(英語)と放射線療法の副作用(英語)をご覧ください。
分子標的療法
分子標的療法は、薬剤またはその他の物質を使用して、腫瘍細胞の増殖に関わる特定の酵素、蛋白、その他の分子の作用を阻害する治療法です。
良性心臓腫瘍の治療に用いられる分子標的療法としては以下のものがあります:
- エベロリムス
- シロリムス
詳細については、分子標的療法によるがん治療(英語)をご覧ください。
臨床試験
治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象として、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討するべきです。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
詳細については、患者さんと介護者のための臨床試験情報(英語)をご覧ください。
小児心臓腫瘍の治療
新たに診断された小児心臓腫瘍の治療法としては、以下のようなものがあります:
治療後に悪性腫瘍が再発した場合は、予想される経過と次に取ることができる対応について主治医から説明があります。治療の選択肢としては、腫瘍を縮小させるものや、増殖をコントロールするものが考えられます。治療法がない場合は、がんの症状をコントロールするためのケアを受けることができ、それによりできるだけ快適に過ごすことができます。
- 治療の副作用と晩期障害
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心臓腫瘍の治療は副作用を引き起こすことがあります。起こりうる副作用は、受けている治療の種類、用量、体の反応によって異なります。注意すべき副作用とその対処法について、担当の治療チームとよく話をしてください。
がんの治療中に発生する副作用の詳細については、副作用(英語)のページをご覧ください。
がん治療による問題のうち、治療後6カ月以降に始まって月単位または年単位で続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:
- 身体的な問題
- 気分、感情、思考、学習、記憶の変化
- 二次がん(新たに発生するがん)やその他の病態
晩期合併症(晩期障害)には治療やコントロールが可能なものもあります。治療により生じうる晩期合併症(晩期障害)について担当医とよく話をすることが重要です。詳細については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。
- フォローアップケア
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治療を進めるにつれて、フォローアップのための検査と健診が行われます。腫瘍の診断のために行った検査の一部を、治療効果を確認する目的で再び行うこともあります。治療の継続、変更、中止などの決定がそれらの検査結果に基づいて判断されることもあります。
治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。それらの検査の結果から、患者さんの状態の変化や腫瘍が再発したかどうかを知ることができます。
- 子どものがんへの対処
小児が心臓腫瘍を発症すると、そのご家族全員に対してサポートが必要になります。この困難な時期には、保護者が自分自身のことに気を配ることも重要になります。担当の治療チームやご家族や地域の人々に助けを求めましょう。詳細については、小児がん患者さんのご家族のためにという記事と、がんの小児:ご両親のための手引き(英語)という冊子をご覧ください。
- 関連資料
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小児がんに関するさらなる情報とがん全般に関するその他の資料については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、小児心臓腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。詳しい情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
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本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board. PDQ Childhood Heart Tumors. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/types/cardiac/patient-child-cardiac-treatment-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.
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