患者さん向け 小児黒色腫の治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小児黒色腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

CONTENTS 全て開く全て閉じる

小児黒色腫についての一般的な情報

黒色腫は、メラニン形成細胞(皮膚の色を作り出している細胞)から悪性(がん)細胞が発生する疾患です。

皮膚は体のなかで最も大きな臓器です。その機能の1つは、熱や日光、外傷、感染などから体を保護することです。皮膚はまた体温の調節にも関わっていて、さらに水分や脂肪、ビタミンDなどの保持という役割も果たしています。皮膚はいくつかの層から構成されていますが、大きく分けると、表皮(外側の層)と真皮(内側の層)の2つの層があります。皮膚がんはこのうちの表皮から発生し、表皮は以下の3種類の細胞から構成されています:

メラニン形成細胞を含む皮膚の解剖図:図は正常な皮膚の解剖図であり、表皮、真皮、毛包、汗腺、毛幹、静脈、動脈、脂肪組織、神経、リンパ管、油腺、皮下組織が含まれる。抜き出し図には、扁平上皮細胞および基底細胞で構成される表皮と、その下方にある血管を含んだ真皮の拡大図が示されている。細胞の内部にメラニンが示されている。メラニン形成細胞は表皮底部の基底細胞層にある。

画像を拡大する

表皮、真皮、皮下組織を示す皮膚の解剖図。メラニン形成細胞は表皮底部の基底細胞層にあります。

皮膚から発生するがんには様々な種類があります。

皮膚がんの主な種類には、黒色腫非黒色腫基底細胞がんおよび皮膚の扁平上皮がん)の2つがあります。

黒色腫はまれな種類の皮膚がんです。黒色腫はまれではあるものの、小児では最も多くみられる皮膚がんです。15~19歳の青年に最もよく発生します。黒色腫は、他の種類の皮膚がんよりも周辺の組織に拡がりやすく、体の他の部位に転移しやすいがんです。皮膚から発生した黒色腫は皮膚黒色腫と呼ばれます。黒色腫は粘膜(唇などの表面を覆っている湿った薄い組織の層)や眼(眼内黒色腫)も発生することもあります。本PDQ要約では、皮膚黒色腫について説明します。(眼内黒色腫に関する詳しい情報については、PDQの小児眼内(ブドウ膜)黒色腫の治療に関する要約をご覧ください)。

黒色腫とは違う種類の皮膚がんに、基底細胞がんと扁平上皮がんの2つがあります。これらのがんが他の部位に転移することはまれです。(皮膚の基底細胞がんと扁平上皮がんに関する詳しい情報については、PDQの小児の皮膚基底細胞がんおよび皮膚扁平上皮がんの治療に関する要約をご覧ください)。

黒色腫のリスクに影響を及ぼす要因に、異常なほくろ、日光への曝露、病歴があります。

疾患が発生する危険性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。お子さんのリスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。

小児黒色腫のリスク因子には以下のものがあります:

黒色腫の徴候には、ほくろやあざの外観の変化などがあります。

これらの徴候症状などは、黒色腫が原因で起こることもあれば、別の病態が原因で起こることもあります。

お子さんに以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:

黒色腫の診断には皮膚を調べる検査法が用いられます。

皮膚上のほくろや色素斑に変化や異常が認められると、黒色腫の発見と診断が試みられますが、その際には以下のような検査法や手技が役立ちます:

黒色腫の病期

黒色腫の診断がついた後には、がん細胞の拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。

がんの皮膚内での拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。小児黒色腫には、標準的な病期分類システムはありません。治療計画を立てるには、黒色腫がリンパ節や他の部位に転移しているかどうかを把握することが重要です。

がんの拡がりを明らかにするために、以下の検査が行われることがあります:

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、黒色腫がに転移した場合、肺にできたがん細胞は、実際は黒色腫の細胞です。こうした疾患は転移性黒色腫であって、肺がんではありません。

小児黒色腫は治療後に再発する(再び現れる)ことがあります。

このがんは皮膚やリンパ節、またはその他の部位に再発することがあります。

治療選択肢の概要

小児黒色腫の患者さんには様々な治療法が存在します。

その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

小児黒色腫の治療では、小児がんの治療に精通した医師のチームが治療計画を作成するべきです。

この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が統括します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とする他の小児医療専門家と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門家が挙げられます:

標準治療として以下の3種類が用いられています:

手術

小児黒色腫の治療では、腫瘍を切除する手術が行われます。広範囲局所切除術は、黒色腫と周囲の正常組織の一部を切除します。皮膚移植(体の別の部分から皮膚を切り取って、手術で切除した皮膚と置き換える手術)を実施して、手術によってできた創傷を目立たなくする場合もあります。がんが転移した周辺リンパ節を切除することもあります。

免疫療法

免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんと戦う治療法です。体内で生産された物質や製造ラボで合成された物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。このようながんの治療法は生物療法や生物学的療法とも呼ばれます。

標的療法

標的療法とは、がん細胞を攻撃する性質をもった薬物などの物質を用いる治療法です。標的療法は一般に、化学療法放射線療法に比べ、正常な細胞に及ぼす有害性が小さい療法です。以下の標的療法は、黒色腫の治療に使用されている療法、または治療法として研究されている療法です:

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

小児黒色腫の治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療中に発生する副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、お子さんの状態の変化やがんの再発の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

小児黒色腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

新たに診断され、リンパ節や他の部位に転移していない黒色腫の治療法には以下のようなものがあります:

新たに診断され、周辺リンパ節に転移している黒色腫の治療法には以下のようなものがあります:

新たに診断され、他の部位に転移している黒色腫の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発小児黒色腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

小児の再発黒色腫の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

小児黒色腫についてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している黒色腫に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小児がんに関する情報と一般的ながんに関するその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児黒色腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Melanoma Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/skin/patient/child-melanoma-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。