患者さん向け 性腺外胚細胞腫瘍の治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、性腺外胚細胞腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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性腺外胚細胞腫瘍についての一般的な情報

性腺外胚細胞腫瘍は、性腺から他の部位へと紛れ込んだ未成熟の精子または卵子から発生する腫瘍です。

"「性腺外」とは、性腺(生殖器官)の外部を意味する用語です。精巣卵巣精子や卵子となるはずの細胞が体の他の部位に移動すると、その細胞は性腺外胚細胞腫瘍へと変化することがあります。こうした腫瘍は体のどこにでも発生する可能性がありますが、通常は、脳の松果体などの器官や、縦隔(両の間の領域)内、後腹膜(腹部の後壁)などから発生します。

性腺外胚細胞腫瘍:図は、性腺外胚細胞腫瘍が生じることのある身体部位として、脳の松果体、縦隔(両肺の間の領域)、後腹膜腔(腹部臓器の後部の領域)を示している。心臓と腹膜も示されている。

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性腺外胚細胞腫瘍は性腺(精巣または卵巣)以外の体の部位で発生します。こうした部位には、脳の松果体、縦隔(両肺の間の領域)、後腹膜(腹部の後壁)などがあります。

性腺外胚細胞腫瘍は、良性(がんではない)の場合もあれば、悪性がん)の場合もあります。良性の性腺外胚細胞腫瘍は良性奇形腫とも呼ばれます。良性奇形腫は、悪性の性腺外胚細胞腫瘍よりも多くみられ、しばしば非常に大きく成長します。

悪性の性腺外胚細胞腫瘍は非セミノーマセミノーマの2種類に分けられます。非セミノーマではセミノーマと比べて増殖や拡大のペースがより速くなる傾向があります。非セミノーマは大きく成長して徴候症状を伴うのが通常です。無治療の場合は、悪性の性腺外胚細胞腫瘍は肺、リンパ節、骨、肝臓、その他の部位に拡がることがあります。

卵巣および精巣の胚細胞腫瘍に関する情報については以下のPDQの要約をご覧ください:

性腺外胚細胞腫瘍のリスクに影響を及ぼす可能性のある因子に年齢と性別があります。

疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。悪性の性腺外胚細胞腫瘍のリスク因子には以下のものがあります:

性腺外胚細胞腫瘍の徴候や症状には、呼吸障害と胸痛などがあります。

悪性の性腺外胚細胞腫瘍では、付近の領域に腫瘍の増殖が及ぶにつれて徴候や症状が現れます。ただし、他の病態が原因で同様の徴候や症状が生じる場合もあります。以下の問題がみられる場合は担当の医師にご相談ください:

性腺外胚細胞腫瘍の発見と診断には、画像検査と血液検査が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:

性腺外胚細胞腫瘍の病期

性腺外胚細胞腫瘍の診断がついた後には、がん細胞が体の他の部位に拡がっていないかを明らかにするために、さらに検査が行われます。

がんの拡がりの程度は通常は病期で表現されます。しかし性腺外胚細胞腫瘍の場合は、病期ではなく予後による分類法が用いられます。この分類法では、治療に対するがんの反応性の予測に基づいて腫瘍が分類されます。治療計画を立てるためには予後分類を把握しておくことが重要です。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類の腫瘍です。例えば、性腺外胚細胞腫瘍がに転移した場合、肺にできた腫瘍細胞は、実際はがん化した胚細胞です。この疾患は転移性性腺外胚細胞腫瘍であり、肺がんではありません。

性腺外胚細胞腫瘍では以下の予後分類が用いられます:

予後良好

非セミノーマ性腺外胚細胞腫瘍では以下の条件が満たされると予後良好群に分類されます:

セミノーマ性腺外胚細胞腫瘍では以下の条件が満たされると予後良好群に分類されます:

予後中等度

非セミノーマ性腺外胚細胞腫瘍では以下の条件が満たされると予後中等度群に分類されます:

セミノーマ性腺外胚細胞腫瘍では以下の条件が満たされると予後中等度群に分類されます:

予後不良

非セミノーマ性腺外胚細胞腫瘍では以下の条件が満たされると予後不良群に分類されます:

セミノーマ性腺外胚細胞腫瘍には予後不良群の分類はありません。

治療選択肢の概要

性腺外胚細胞腫瘍の患者さんには様々な治療法が存在します。

性腺外胚細胞腫瘍の患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

標準治療として以下の3種類が用いられています:

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には2種類のものがあります:

放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。セミノーマの治療には外照射療法が用いられます。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、あるいは腹部などの体内に薬剤を直接注入する化学療法では、その領域にあるがん細胞に薬が集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。

手術

良性腫瘍の患者さんや、化学療法や放射線療法の実施後も体内に腫瘍の残存が認められる患者さんでは、手術が必要となる場合があります。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

幹細胞移植を伴う大量化学療法

がん細胞を殺傷するために高用量化学療法が実施されます。造血細胞を含む正常な細胞もがん治療により破壊されます。 幹細胞移植は、造細胞を置き換える治療法です。まず患者さん自身またはドナーから採取した血液や骨髄から幹細胞(成熟前の血液細胞)を取り出して、それを凍結保存しておきます。そして化学療法の終了後に、保存していた幹細胞を解凍して、これを点滴によって患者さんの体内に戻します こうして再注入された幹細胞が血液細胞に成長することにより、血液の機能が回復していきます。

性腺外胚細胞腫瘍の治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療によって引き起こされる副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんの再発の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

性腺外胚細胞腫瘍の場合は、最初の治療の終了後に治療効果の確認のためにAFPと他の腫瘍マーカーの血中濃度の測定が行われます。

性腺外胚細胞腫瘍の治療選択肢

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

良性奇形腫

良性奇形腫の治療法は手術です。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

セミノーマ

セミノーマ性腺外胚細胞腫瘍の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

非セミノーマ

非セミノーマ性腺外胚細胞腫瘍の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発性または難治性の性腺外胚細胞腫瘍

再発した性腺外胚細胞腫瘍(治療完了後に再び現れたもの)と難治性の性腺外胚細胞腫瘍(治療を行っても良くならないもの)の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

性腺外胚細胞腫瘍についてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している性腺外胚細胞腫瘍に関する詳しい情報については、性腺外胚細胞腫瘍についてのホームページ(英語)をご覧ください。

米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、性腺外胚細胞腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Extragonadal Germ Cell Tumors Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/extragonadal-germ-cell/patient/extragonadal-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389213]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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