ご利用について
医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、肛門がんの治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Adult Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
CONTENTS
- 肛門がんに関する一般情報
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発生率および死亡率
米国において、2020年に推定される肛門がん、肛門管がんおよび肛門直腸部のがんの新規症例数および死亡数:[ 1 ]
予後および生存率
肛門がんの2つの主な予後因子は、腫瘍の大きさ(2cm未満の原発腫瘍は予後が良好)とリンパ節転移の状態(詳細については、本要約の米国がん合同委員会(AJCC)病期分類とTNMの定義のセクションを参照)である。[ 2 ]肛門のリンパ流は鼠径部の静脈に向かう。肛門がんの患者に対する初期評価では、鼠径部の入念な臨床検査と触知可能なリンパ節の生検を行う。
肛門がんは通常根治可能である。診察時にほとんどの患者はT1またはT2疾患(5cm以上)であり、リンパ節転移陽性の患者は全体の20%未満である。早期患者の5年生存率は85%を超える。[ 3 ][ 4 ]リンパ節転移陽性の患者であっても、隣接する臓器への浸潤や遠隔転移がない場合、5年生存率は50%を超える。[ 5 ]
危険因子
全体的にみて、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の発生率上昇により、肛門がんのリスクは高くなっている。[ 6 ][ 7 ]肛門がんの95%はHPV関連であり、とりわけ16型と18型のリスクが高い。HPVの関与はP16+染色と病理学的に相関する可能性がある。[ 8 ]HIVに感染している患者はHPVとの同時感染を起こすリスクが高く、そのために肛門がんのリスクも高くなる。
データからは、アナルセックスの受け入れ側になっていたり生涯の性生活のパートナー数が多かったりするなどの特定の性的習慣が肛門がんリスクの増大の予兆になることが示唆される。これらの行為は、HPV感染のリスクが高い個人の増加につながっている可能性がある。[ 6 ]
関連する要約
肛門がんに関する情報を含む他のPDQ要約には以下のものがある:
参考文献- American Cancer Society: Cancer Facts and Figures 2020. Atlanta, Ga: American Cancer Society, 2020. Available online. Last accessed January 17, 2020.[PUBMED Abstract]
- Ajani JA, Winter KA, Gunderson LL, et al.: Prognostic factors derived from a prospective database dictate clinical biology of anal cancer: the intergroup trial (RTOG 98-11). Cancer 116 (17): 4007-13, 2010.[PUBMED Abstract]
- Klas JV, Rothenberger DA, Wong WD, et al.: Malignant tumors of the anal canal: the spectrum of disease, treatment, and outcomes. Cancer 85 (8): 1686-93, 1999.[PUBMED Abstract]
- Touboul E, Schlienger M, Buffat L, et al.: Epidermoid carcinoma of the anal canal. Results of curative-intent radiation therapy in a series of 270 patients. Cancer 73 (6): 1569-79, 1994.[PUBMED Abstract]
- Anus. In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual. 8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp. 275–84.[PUBMED Abstract]
- Johnson LG, Madeleine MM, Newcomer LM, et al.: Anal cancer incidence and survival: the surveillance, epidemiology, and end results experience, 1973-2000. Cancer 101 (2): 281-8, 2004.[PUBMED Abstract]
- Holly EA, Ralston ML, Darragh TM, et al.: Prevalence and risk factors for anal squamous intraepithelial lesions in women. J Natl Cancer Inst 93 (11): 843-9, 2001.[PUBMED Abstract]
- Ryan DP, Compton CC, Mayer RJ: Carcinoma of the anal canal. N Engl J Med 342 (11): 792-800, 2000.[PUBMED Abstract]
- 肛門がんの細胞分類
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扁平上皮がん(類表皮がん)は、全原発肛門がんの大部分を占める。従来、移行上皮帯から生じた腫瘍のサブセットは総排泄腔腫瘍または類基底細胞腫瘍と分類されていたが、現在では、これらの腫瘍は非角化型扁平上皮がんに分類され、同様にヒトパピローマウイルスに関連があると認識されている。[ 1 ][ 2 ]
扁平上皮粘膜皮膚移行部から遠位の有毛皮膚に生じた病変は、肛門辺縁がん(perianal cancer)と定義される。これらのがんには一般に肛門管がんと同じ治療法が用いられるが、肛門縁とは明らかに区別される領域に生じた個別の皮膚病変に対しては局所療法単独が検討されることもある。
肛門腺由来の腺がんと痔瘻からの腺がんはまれであり、一般に直腸腺がんと同様の臨床的特徴を有する。(詳しい情報については、直腸がんの治療に関するPDQ要約の臨床的特徴のセクションを参照のこと。)
肛門メラノーマの治療については、本要約で取り上げていない。
参考文献- Palefsky JM, Holly EA, Gonzales J, et al.: Detection of human papillomavirus DNA in anal intraepithelial neoplasia and anal cancer. Cancer Res 51 (3): 1014-9, 1991.[PUBMED Abstract]
- Pirog EC, Quint KD, Yantiss RK: P16/CDKN2A and Ki-67 enhance the detection of anal intraepithelial neoplasia and condyloma and correlate with human papillomavirus detection by polymerase chain reaction. Am J Surg Pathol 34 (10): 1449-55, 2010.[PUBMED Abstract]
- 肛門がんの病期情報
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肛門管は、直腸から肛門周囲皮膚に及び、内括約筋を被う形の粘膜により覆われている。肛門境界端(肛門縁から肛門周囲有毛皮膚)に発生する腫瘍は、皮膚腫瘍に分類される。
米国がん合同委員会(AJCC)病期分類とTNMの定義
AJCCおよび国際対がん連合(International Union Against Cancer)が用いている肛門管がんの病期分類システムを以下に示す。[ 1 ]AJCCは、肛門がんを定義するためTNM(腫瘍、所属リンパ節、転移)分類による病期分類を指定している。
表1.TNM分類における0期の定義a 病期 TNM 記述 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 aAJCCから許諾を得て転載:Anus.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 275-84. 0 Tis、N0、M0 is = 高悪性度扁平上皮内病変(以前は次のように呼ばれていた:上皮内がん、ボーエン病、肛門上皮内腫瘍II~III、高悪性度肛門上皮内腫瘍)。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表2.TNM分類におけるI期の定義a 病期 TNM 記述 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 aAJCCから許諾を得て転載:Anus.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 275-84. I T1、N0、M0 T1 = 2cm以下の腫瘍。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表3.TNM分類におけるIIA期およびIIB期の定義a 病期 TNM 記述 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 aAJCCから許諾を得て転載:Anus.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 275-84. IIA T2、N0、M0 T2 = 2cmを超え、5cm以下の腫瘍。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 IIB T3、N0、M0 T3 = 5cmを超える腫瘍。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表4.TNM分類におけるIIIA期、IIIB期、IIIC期の定義a 病期 TNM 記述 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 aAJCCから許諾を得て転載:Anus.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 275-84. IIIA T1、N1、M0 T1 = 2cm以下の腫瘍。 N1 = 鼠径リンパ節、直腸間膜リンパ節、内腸骨リンパ節、または外腸骨リンパ節転移。 M0 = 遠隔転移を認めない。 T2、N1、M0 T2 = 2cmを超え、5cm以下の腫瘍。 N1 = 鼠径リンパ節、直腸間膜リンパ節、内腸骨リンパ節、または外腸骨リンパ節転移。 M0 = 遠隔転移を認めない。 IIIB T4、N0、M0 T4 = 大きさを問わず、膣、尿道、膀胱などの隣接臓器への浸潤を認める腫瘍。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 IIIC T3、N1、M0 T3 = 5cmを超える腫瘍。 N1 = 鼠径リンパ節、直腸間膜リンパ節、内腸骨リンパ節、または外腸骨リンパ節転移。 M0 = 遠隔転移を認めない。 T4、N1、M0 T4 = 大きさを問わず、膣、尿道、膀胱などの隣接臓器への浸潤を認める腫瘍。 N1 = 鼠径リンパ節、直腸間膜リンパ節、内腸骨リンパ節、または外腸骨リンパ節転移。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表5.TNM分類におけるIV期の定義a 病期 TNM 記述 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 aAJCCから許諾を得て転載:Anus.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 275-84. IV すべてのT、すべてのN、M1 TX = 原発腫瘍の評価が不可能。 T0 = 原発腫瘍を認めない。 Tis = 高悪性度扁平上皮内病変(以前は次のように呼ばれていた:上皮内がん、ボーエン病、肛門上皮内腫瘍II~III、高悪性度肛門上皮内腫瘍)。 T1 = 2cm以下の腫瘍。 T2 = 2cmを超え、5cm以下の腫瘍。 T3 = 5cmを超える腫瘍。 T4 = 大きさを問わず、膣、尿道、膀胱などの隣接臓器への浸潤を認める腫瘍。 NX = 所属リンパ節の評価が不可能。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 N1 = 鼠径リンパ節、直腸間膜リンパ節、内腸骨リンパ節、または外腸骨リンパ節転移。 -N1a = 鼠径リンパ節、直腸間膜リンパ節、または内腸骨リンパ節転移。 -N1b = 外腸骨リンパ節転移。 -N1c = N1aリンパ節のいずれかと外腸骨リンパ節転移。 M1 = 遠隔転移を認める。 参考文献- Anus. In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual. 8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp. 275–84.[PUBMED Abstract]
- 治療法選択肢の概要
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肛門がんの標準治療法の選択肢は表6に記されている。
表6.肛門がんの標準治療法の選択肢 病期( 標準治療法の選択肢 0期 手術 I期、II期、III期 局所切除 外照射療法と化学療法の併用 代替となる戦略 根治的切除 IV期 症状緩和目的の手術 症状緩和目的の放射線療法 症状緩和目的の化学療法(場合により放射線療法の併用) チェックポイント阻害薬 進行がんの患者に対する最適なアプローチは現在、臨床評価段階にある。現在実施中の臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトから入手することができる。
- 0期の肛門がんの治療
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0期肛門がんの標準治療法の選択肢
0期の肛門がんは上皮内がんである。診断できることはまれであり、肛門組織の第1層、腺基底膜内に限局して、それよりも深部への拡がりを認めないきわめて初期のがんである。
標準治療法の選択肢:
外科的切除は肛門括約筋を含まない肛門周囲領域の病変に対する治療で施行される。肛門管内での病変の位置により、異なる外科的アプローチが用いられる。
最新の臨床試験
NCIが支援しているがん臨床試験で現在患者登録中の試験を検索するには、臨床試験アドバンスト・サーチを使用のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。)。このサーチでは、試験の場所、治療の種類、薬物名やその他の基準による絞り込みが可能である。臨床試験に関する一般情報も入手することができる。
- I期、II期、III期肛門がんの治療法
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I期、II期、III期肛門がんの標準治療法の選択肢
現在では、肛門周囲皮膚または肛門境界端の小さい腫瘍に対する広範囲局所切除および肛門管がんに対する根治的化学放射線療法(フルオロウラシルおよびマイトマイシンC[MMC])などの、括約筋温存療法が実施されている。根治的切除は、完全奏効が得られなかったか、再発した患者にのみ実施する。
治療後2年間は直腸診を3ヵ月ごとに実施し、括約筋温存療法終了後に適応とされた場合には、内視鏡検査と生検を実施する継続的なサーベイランスにより再発を監視することが重要である。
標準治療法の選択肢:
- 括約筋への浸潤を認めない肛門周囲皮膚または肛門境界端の小さい腫瘍には、局所切除で十分であろう。[ 1 ]
- それ以外のすべてのI期、II期、III期肛門がんに対する標準治療は、化学放射線療法(化学療法を伴う外照射療法[EBRT])である。
- 臨床状況に応じて、放射線療法単独または手術単独などの代替戦略を検討してもよい。
- 非観血的療法後、肛門管にがんの残存が認められたか再発した場合にのみ、根治的切除を実施する。
化学放射線療法
過去のデータで人工肛門造設術単独の場合の再発率が高いことから、化学放射線療法は遠隔転移のない肛門がんの患者に対する望ましいアプローチである。
証拠(化学放射線療法):
- 英国のCo-ordinating Committee on Cancer ResearchからのAnal Cancer Trial(ACT-1)により、5-FUおよびMMCを用いる化学放射線療法は、局所制御失敗および肛門がんによる死亡に関して放射線療法単独よりも優れていることが実証された。[
2
][
8
][証拠レベル:1iiB]
この試験では、患者585人をプロスペクティブに、20または25分割で45Gyを照射する放射線療法を受ける群と、同じ放射線療法に加えて照射の初週と最終週に5-FUを持続注入し(5日間で750mg/m2または4日間で1,000mg/m2)、さらに初日にMMCを単回投与(12mg/m2)する群にランダムに割り付けた。
- European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)の試験では、T3からT4またはN1からN3の疾患を有する患者100人をプロスペクティブに、45Gyの放射線照射と15Gyまたは30Gyのブースト照射を受ける群と、同じ放射線療法に加えて5-FU(1日目と29日目に5日間の750mg/m2を開始)およびMMC(1日目に15mg/m2)の投与を受ける群にランダムに割り付けた。[ 3 ][証拠レベル:1iiDiii]
後続の試験では、カペシタビンがMMCおよび放射線療法と併用される5-FUの適切な代替になることが明らかにされた。[ 4 ][ 5 ]
ACT IおよびEORTCのランダム化試験で、化学放射線療法が非転移性肛門がんに対する好ましいアプローチとして確立された一方で、MMCの重大な血液毒性、腎毒性、肺毒性により代替レジメンの研究が促されている。
証拠(化学放射線療法[代替レジメン]):
- Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)/Eastern Cooperative Oncology Group試験では、患者310人を対象としてMMCを伴うまたは伴わない化学放射線療法(5-FU注入 + 45Gyの放射線照射)が検討された。
2件の大規模なグループ間共同試験で、シスプラチンがMMCの代用になるかどうかが検討され、異なる結果が得られた。
- 米国の第III相グループ間共同試験(RTOG-9811[NCT00003596])では、シスプラチン群の患者が2サイクルの導入5-FUおよびシスプラチンを受け、その後に5-FUとシスプラチンを用いた同時化学放射線療法を受けた。[ 6 ]
- プロスペクティブ・ランダム化ACT II試験では、導入化学放射線療法としてMMC vs シスプラチンを投与し、維持療法として11週目と14週目に5-FUとシスプラチンを投与するか維持療法なしとする2×2要因の試験に、患者940人をランダムに割り付けた。[ 7 ]
化学放射線療法後の臨床的完全奏効を評価する最適な時期は、反応の遅れがみられることから、一般に26週以降である。[ 11 ]残存病変や後の局所再発に対しては、追加治療が必要になる。
化学放射線療法後に肉眼的残存腫瘍または顕微鏡的残存腫瘍が認められる患者の標準救済療法として、腹会陰式直腸切断術が実施されている。その他にも、患者は追加の救済化学放射線療法、化学療法単独、または免疫療法による治療を受けることがある。[ 11 ][ 12 ]
さまざまな状況における最適な照射線量が未だ確定されていない。T3からT4の病変またはリンパ節転移を認める患者に対して線量を漸増すべきかどうか、または1cm未満の早期腫瘍の患者に対して可能であれば線量を段階的に減量すべきかどうかを判断するには、現在のところ証拠が不足している。また早期腫瘍を有する一部の患者に対して化学療法の治療骨格を安全に省略することができるかどうかや、そうした戦略が放射線の最適線量に影響を与えるかどうかについても明確になっていない。さらに強度変調放射線療法、陽子線治療、密封小線源治療などの比較的新しい戦略の役割も、最終的に確定されていない。[ 13 ][ 14 ][ 15 ]National Cancer Databaseに基づく研究によると、大規模な放射線腫瘍学施設は良好な肛門がん患者のOSを報告していた。[ 16 ]
最新の臨床試験
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参考文献- Enker WE, Heilwell M, Janov AJ, et al.: Improved survival in epidermoid carcinoma of the anus in association with preoperative multidisciplinary therapy. Arch Surg 121 (12): 1386-90, 1986.[PUBMED Abstract]
- Northover J, Glynne-Jones R, Sebag-Montefiore D, et al.: Chemoradiation for the treatment of epidermoid anal cancer: 13-year follow-up of the first randomised UKCCCR Anal Cancer Trial (ACT I). Br J Cancer 102 (7): 1123-8, 2010.[PUBMED Abstract]
- Bartelink H, Roelofsen F, Eschwege F, et al.: Concomitant radiotherapy and chemotherapy is superior to radiotherapy alone in the treatment of locally advanced anal cancer: results of a phase III randomized trial of the European Organization for Research and Treatment of Cancer Radiotherapy and Gastrointestinal Cooperative Groups. J Clin Oncol 15 (5): 2040-9, 1997.[PUBMED Abstract]
- Goodman KA, Julie D, Cercek A, et al.: Capecitabine With Mitomycin Reduces Acute Hematologic Toxicity and Treatment Delays in Patients Undergoing Definitive Chemoradiation Using Intensity Modulated Radiation Therapy for Anal Cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys 98 (5): 1087-1095, 2017.[PUBMED Abstract]
- Meulendijks D, Dewit L, Tomasoa NB, et al.: Chemoradiotherapy with capecitabine for locally advanced anal carcinoma: an alternative treatment option. Br J Cancer 111 (9): 1726-33, 2014.[PUBMED Abstract]
- Ajani JA, Winter KA, Gunderson LL, et al.: Fluorouracil, mitomycin, and radiotherapy vs fluorouracil, cisplatin, and radiotherapy for carcinoma of the anal canal: a randomized controlled trial. JAMA 299 (16): 1914-21, 2008.[PUBMED Abstract]
- James RD, Glynne-Jones R, Meadows HM, et al.: Mitomycin or cisplatin chemoradiation with or without maintenance chemotherapy for treatment of squamous-cell carcinoma of the anus (ACT II): a randomised, phase 3, open-label, 2 × 2 factorial trial. Lancet Oncol 14 (6): 516-24, 2013.[PUBMED Abstract]
- Epidermoid anal cancer: results from the UKCCCR randomised trial of radiotherapy alone versus radiotherapy, 5-fluorouracil, and mitomycin. UKCCCR Anal Cancer Trial Working Party. UK Co-ordinating Committee on Cancer Research. Lancet 348 (9034): 1049-54, 1996.[PUBMED Abstract]
- Flam M, John M, Pajak TF, et al.: Role of mitomycin in combination with fluorouracil and radiotherapy, and of salvage chemoradiation in the definitive nonsurgical treatment of epidermoid carcinoma of the anal canal: results of a phase III randomized intergroup study. J Clin Oncol 14 (9): 2527-39, 1996.[PUBMED Abstract]
- Gunderson LL, Winter KA, Ajani JA, et al.: Long-term update of US GI intergroup RTOG 98-11 phase III trial for anal carcinoma: survival, relapse, and colostomy failure with concurrent chemoradiation involving fluorouracil/mitomycin versus fluorouracil/cisplatin. J Clin Oncol 30 (35): 4344-51, 2012.[PUBMED Abstract]
- Pedersen TB, Gocht-Jensen P, Klein MF: 30-day and long-term outcome following salvage surgery for squamous cell carcinoma of the anus. Eur J Surg Oncol 44 (10): 1518-1521, 2018.[PUBMED Abstract]
- Guerra GR, Kong JC, Bernardi MP, et al.: Salvage Surgery for Locoregional Failure in Anal Squamous Cell Carcinoma. Dis Colon Rectum 61 (2): 179-186, 2018.[PUBMED Abstract]
- Cordoba A, Escande A, Leroy T, et al.: Low-dose-rate interstitial brachytherapy boost for the treatment of anal canal cancers. Brachytherapy 16 (1): 230-235, 2017 Jan - Feb.[PUBMED Abstract]
- Call JA, Prendergast BM, Jensen LG, et al.: Intensity-modulated Radiation Therapy for Anal Cancer: Results From a Multi-Institutional Retrospective Cohort Study. Am J Clin Oncol 39 (1): 8-12, 2016.[PUBMED Abstract]
- Gryc T, Ott O, Putz F, et al.: Interstitial brachytherapy as a boost to patients with anal carcinoma and poor response to chemoradiation: Single-institution long-term results. Brachytherapy 15 (6): 865-872, 2016 Nov - Dec.[PUBMED Abstract]
- Amini A, Jones BL, Ghosh D, et al.: Impact of facility volume on outcomes in patients with squamous cell carcinoma of the anal canal: Analysis of the National Cancer Data Base. Cancer 123 (2): 228-236, 2017.[PUBMED Abstract]
- IV期の肛門がんの治療
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IV期の肛門がんの標準治療法の選択肢
標準治療法の選択肢:
- 症状緩和目的の手術。
- 症状緩和目的の放射線療法。
- 症状緩和目的の化学療法(場合により放射線療法の併用)。
- チェックポイント阻害薬。
進行期の療法
- 要約形式でのみ発表されている多施設ランダム化第II相研究のInternational Advanced Anal Cancer InterAACT試験(NCT02560298)では、進行期肛門がんの患者に対するカルボプラチン(曲線下面積5)および週1回のパクリタキセルと、標準のフルオロウラシル静注(5-FU)およびシスプラチンのボーラス投与との比較が行われた。[
2
]
これらの有望な結果を受けて、世界的に研究者らが進行期疾患の試験で新しい治療骨格としてカルボプラチンとパクリタキセルを使用し、さらに放射線療法と併用する化学療法薬の候補として挙げるようになっている。修正ドセタキセル、シスプラチン、5-FUなど、他の化学療法レジメンは現在、臨床評価段階にある。[ 3 ]
- チェックポイント阻害薬も転移性病変を認める患者に対する活性をもつことが示されている。ニボルマブ単独(2週ごとに3mg/kg)を検討するNCI96773(NCT02314169)第II相試験に、患者37人が登録された。[ 4 ]
- 少なくとも1%のプログラム細胞死リガンド-1を認める進行期腫瘍の患者を対象とした第Ib相KEYNOTE-028(NCT02054806)試験に、肛門扁平上皮がんの患者24人が登録された。[ 5 ]
転移性病変の患者に対する治療の標準は明確ではないが、最近の研究で全身治療に関する新しい展開が見出されつつある。原発巣による症状の緩和がきわめて重要である。この病期の患者には、臨床試験を強く考慮すべきである。
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参考文献- James RD, Glynne-Jones R, Meadows HM, et al.: Mitomycin or cisplatin chemoradiation with or without maintenance chemotherapy for treatment of squamous-cell carcinoma of the anus (ACT II): a randomised, phase 3, open-label, 2 × 2 factorial trial. Lancet Oncol 14 (6): 516-24, 2013.[PUBMED Abstract]
- Rao S, Sclafani F, Eng C, et al.: InterAACT: A multicentre open label randomised phase II advanced anal cancer trial of cisplatin (CDDP) plus 5-fluorouracil (5-FU) vs carboplatin (C) plus weekly paclitaxel (P) in patients (pts) with inoperable locally recurrent (ILR) or metastatic treatment naïve disease - An International Rare Cancers Initiative (IRCI) trial. [Abstract] Ann Oncol 29 (Suppl 8): A-LBA21, 2018. Also available online. Last accessed June 18, 2019..[PUBMED Abstract]
- Kim S, François E, André T, et al.: Docetaxel, cisplatin, and fluorouracil chemotherapy for metastatic or unresectable locally recurrent anal squamous cell carcinoma (Epitopes-HPV02): a multicentre, single-arm, phase 2 study. Lancet Oncol 19 (8): 1094-1106, 2018.[PUBMED Abstract]
- Morris VK, Salem ME, Nimeiri H, et al.: Nivolumab for previously treated unresectable metastatic anal cancer (NCI9673): a multicentre, single-arm, phase 2 study. Lancet Oncol 18 (4): 446-453, 2017.[PUBMED Abstract]
- Ott PA, Piha-Paul SA, Munster P, et al.: Safety and antitumor activity of the anti-PD-1 antibody pembrolizumab in patients with recurrent carcinoma of the anal canal. Ann Oncol 28 (5): 1036-1041, 2017.[PUBMED Abstract]
- HIVと肛門がん
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HIVに感染した肛門がん患者では、標準とされるフルオロウラシルおよびマイトマイシンC(MMC)による化学放射線療法に対する耐容性は十分に明らかにされていない。[ 1 ][ 2 ]一般に、HIV感染患者には他の患者と同様の治療が施され、転帰も類似しているが、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)が施行される状況下では特にその傾向が顕著である。治療前のCD4数が200cells/μL未満の患者では、急性または遅延性の毒性作用を強く認めることがある。[ 3 ][ 4 ]したがって、AIDS関連の合併症の既往がある患者では、標準レジメンを耐容できない場合があり、用量調節やMMCの省略が必要となることがある。
最新の臨床試験
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参考文献- Holland JM, Swift PS: Tolerance of patients with human immunodeficiency virus and anal carcinoma to treatment with combined chemotherapy and radiation therapy. Radiology 193 (1): 251-4, 1994.[PUBMED Abstract]
- Peddada AV, Smith DE, Rao AR, et al.: Chemotherapy and low-dose radiotherapy in the treatment of HIV-infected patients with carcinoma of the anal canal. Int J Radiat Oncol Biol Phys 37 (5): 1101-5, 1997.[PUBMED Abstract]
- Hoffman R, Welton ML, Klencke B, et al.: The significance of pretreatment CD4 count on the outcome and treatment tolerance of HIV-positive patients with anal cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys 44 (1): 127-31, 1999.[PUBMED Abstract]
- Place RJ, Gregorcyk SG, Huber PJ, et al.: Outcome analysis of HIV-positive patients with anal squamous cell carcinoma. Dis Colon Rectum 44 (4): 506-12, 2001.[PUBMED Abstract]
- 再発肛門がんの治療
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一次治療として実施した放射線療法および化学療法の治療後または手術後に局所再発および遺残病変が認められる場合には、実施しなかったもう一方の治療(放射線照射後の外科的切除、またはその逆)を実施することで制御しうる。[ 1 ]初回非観血的療法後に残存腫瘍が認められた場合には、フルオロウラシルおよびシスプラチン + 追加照射による救済化学放射線療法を実施することにより、永久人工肛門造設術を回避できることがある。[ 2 ]局所制御の改善を図るべく、放射線療法と化学療法および放射線増感剤を用いる臨床試験が実施されている。
IV期病変の予備研究では、別の化学療法レジメン(InterACCT [NCT02560298]試験でのカルボプラチンとパクリタキセルなど)または免疫チェックポイント阻害薬(NCI9673 [NCT02314169]およびKEYNOTE-028 [NCT02054806])が、この状況において有益性をもつ可能性が示唆されている。
最新の臨床試験
NCIが支援しているがん臨床試験で現在患者登録中の試験を検索するには、臨床試験アドバンスト・サーチを使用のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。)。このサーチでは、試験の場所、治療の種類、薬物名やその他の基準による絞り込みが可能である。臨床試験に関する一般情報も入手することができる。
参考文献- Longo WE, Vernava AM, Wade TP, et al.: Recurrent squamous cell carcinoma of the anal canal. Predictors of initial treatment failure and results of salvage therapy. Ann Surg 220 (1): 40-9, 1994.[PUBMED Abstract]
- Flam M, John M, Pajak TF, et al.: Role of mitomycin in combination with fluorouracil and radiotherapy, and of salvage chemoradiation in the definitive nonsurgical treatment of epidermoid carcinoma of the anal canal: results of a phase III randomized intergroup study. J Clin Oncol 14 (9): 2527-39, 1996.[PUBMED Abstract]
- 本要約の変更点(01/22/2020)
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PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。
肛門がんに関する一般情報
新規症例数および死亡数の推定値に関する統計が2020年度用に更新された(引用、参考文献1としてAmerican Cancer Society)。
本要約はPDQ Adult Treatment Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。
- 本PDQ要約について
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本要約の目的
医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、肛門がんの治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
査読者および更新情報
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Adult Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:
要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。
本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。
証拠レベル
本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Adult Treatment Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。
本要約の使用許可
PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。
本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Anal Cancer Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/anal/hp/anal-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389221]
本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。
免責条項
入手可能な証拠の強さに基づき、治療選択肢は「標準」または「臨床評価段階にある」のいずれかで記載される場合がある。これらの分類は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。
お問い合わせ
Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。