ご利用について
このPDQがん情報要約では、肛門がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 肛門がんについての一般的な情報
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肛門がんは、肛門の組織の中にがんができる疾患です。
肛門は大腸の末端部にあります。ここから便が体外に排出されます。肛門の一部分は皮膚から構成され、それ以外の部分は腸から構成されています。肛門は肛門管によって直腸とつながっており、肛門管の長さは約2.5cm~3.75cmあります。この部分は括約筋と呼ばれる2つの輪状の筋肉によって制御されていて、括約筋が収縮すると便が体内に保持され、括約筋が緩むと便が体外に排出されます。
下部消化管の解剖図:この図は結腸、直腸、肛門を示しています。消化器系を構成する他の臓器も示されています。 肛門がんは、肛門管の内側を覆っている組織(粘膜)に発生する場合と、肛門の外側の肛門周囲にある皮膚(毛包と汗腺が存在する扁平上皮細胞)に発生する場合があります。
肛門周囲の皮膚の腫瘍で、肛門括約筋に拡がっていない場合、通常は肛門がんと同様に治療されますが、一部の症例では局所療法(限られた皮膚領域に対する治療)が行われることもあります。
ほとんどの肛門がんはヒトパピローマウイルス(HPV)感染に関連しています。
肛門がんのリスク因子には以下のものがあります:
肛門がんの徴候には、肛門または直腸からの出血や肛門周囲のしこりなどがあります。
これらのような徴候や症状は、肛門がんが原因のこともありますが、別の病態が原因である可能性もあります。以下の問題がみられる場合は担当の医師にご相談ください:
肛門がんの診断がついた後には、がん細胞の肛門内での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。
がんの肛門内での拡がりや他の部位への転移の有無を調べるためのプロセスは、病期診断と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。病期診断の過程では、以下のような検査法が用いられます:
セカンドオピニオンを求める人もいます。
肛門がんの診断を確定して治療計画を立てるにあたって、患者さんはセカンドオピニオンを求めることができます。セカンドオピニオンを求めるときは、最初の担当医に医学的検査の結果と報告書を提供してもらい、それらを別の医師に見せる必要があります。2人目の医師は、病理報告書、スライド、検査画像を確認します。そして、最初の医師の見解に同意するか、治療アプローチの変更や別のアプローチを提案したり、患者さんのがんについて新たな情報を提供したりします。
医師を選んでセカンドオピニオンを受けるプロセスの詳細については、がん治療の医療機関を探す(英語)をご覧ください。セカンドオピニオンを提供できる医師や病院の情報については、NCIのCancer Information Serviceまで、チャット、電子メール、電話(英語とスペイン語に対応)でお問い合わせください。受診時に聞いておくとよい質問については、がんについて主治医に尋ねるべき質問(英語)をご覧ください。
特定の要因が予後(回復の見込み)や治療選択肢に影響を及ぼします。
予後は以下の要因に左右されます:
治療選択肢は以下の要因に左右されます:
- 肛門がんの病期
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肛門がんには以下の病期が用いられます:
0期(上皮内がん)
0期では、肛門の粘膜(最も内側の層)に異常な細胞が認められます。こうした異常細胞は、がん化して周辺の正常組織に拡がっていく可能性があります。0期は「高度扁平上皮内病変(HSIL)」とも呼ばれます。
腫瘍の大きさはセンチメートル(cm)やインチで表されることがよくあります。次のような身近な食べ物と比較して、腫瘍の大きさをcm単位で表すことができます:豆(1cm)、ピーナッツ(2cm)、ブドウ(3cm)、クルミ(4cm)、ライム(5cmまたは2インチ)、卵(6cm)、桃(7cm)、グレープフルーツ(10cmまたは4インチ)。 I期の肛門がん
I期では、がんが形成され、その腫瘍の大きさは2cm以下です。
II期の肛門がん
II期肛門がんは、IIA期とIIB期に分けられます。
III期の肛門がん
III期肛門がんは、IIIA期、IIIB期、IIIC期に分けられます。
IV期の肛門がん
IV期では、腫瘍の大きさは問いません。がんはリンパ節や付近の臓器に転移している場合があり、肝臓や肺といった体の他の部位に転移しています。
IV期の肛門がんは、転移性肛門がんとも呼ばれます。転移性のがんは、がん細胞がリンパ系または血液を介して移動し、体の他の部位で腫瘍を形成したものです。転移巣の腫瘍は原発巣と同じ種類の腫瘍です。例えば、肛門がんが肝臓に転移した場合、肝臓にあるがん細胞は実際は肛門がんの細胞です。この疾患は転移性肛門がんと呼ばれ、肝がんではありません。詳細については、がんの転移:がんが拡がった場合(英語)をご覧ください。
肛門がんは治療後に再発することがあります。
再発肛門がんとは、治療後に再発した場合のことです。肛門がんの再発は、肛門で起こることもあれば、肝臓や肺といった他の部位で起こることもあります。がんが再発した部位を明らかにするために検査を行います。再発肛門がんに対する治療法は再発部位によって異なります。
詳しい情報については、再発がん:がんが再び発生する場合(英語)をご覧ください。対処や医療チームとの話し合いに役立つ情報ががんが再発したとき(英語)という冊子に記載されています。
- 治療選択肢の概要
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肛門がんに対する治療法には様々なものがあります。
肛門がんの患者さんは様々な治療を受けることができます。患者さんとがん治療チームが協力して治療計画を決定しますが、その計画には複数の治療法が含まれる場合もあります。がんの病期や全体的な健康状態、患者さんの希望など、数多くの要因が検討されます。治療計画では、がんについての情報、治療の目標、治療選択肢、起こりうる副作用、予想される治療期間などが検討対象に含まれます。
治療に先立ってがん治療チームとその後の見通しについて話し合うことが役立ちます。患者さんは、治療を開始するまでに何をしておく必要があるか、治療中はどのように感じるか、どのような支援が必要になるかを知りたいと思うでしょう。詳細については、治療について主治医に尋ねるべき質問(英語)をご覧ください。
以下のような治療法が用いられます:
手術
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。肛門がんの治療に用いられる放射線療法には2つの種類があります:
詳細については、放射線療法によるがん治療(英語)と放射線療法の副作用(英語)をご覧ください。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入り、全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。
肛門がんの治療に用いられる化学療法薬には以下のものがあります:
これらの薬剤を組み合わせて使用することもあります。ここに挙げていない化学療法薬も使用されることがあります。
化学療法は放射線療法など他の治療法と併用されることもあります。
化学療法の効果、投与方法、よく発生する副作用などの詳細については、化学療法によるがん治療(英語)と化学療法:がんの患者さんへの支援(英語)をご覧ください。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。
治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象に、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。患者さんによっては、臨床試験に参加することが選択肢の1つとなる場合もあります。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
臨床試験の詳細については、患者さんと介護者のための臨床試験情報(英語)をご覧ください。
本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。
放射線増感剤
放射線増感剤とは、放射線療法に対する腫瘍細胞の反応性を高める薬のことです。放射線療法に放射線増感剤を併用すれば、より多くの腫瘍細胞を死滅させることが可能です。
免疫療法
免疫療法は、体の免疫系ががんに対抗するのを助ける治療法です。特定の免疫療法薬の効果を予測するのに役立つバイオマーカー検査を医師から提案されることがあります。詳細については、がんのバイオマーカー検査(英語)をご覧ください。
肛門がんの治療に用いられる免疫療法薬には以下のものがあります:
詳細については、免疫療法によるがん治療(英語)をご覧ください。
- 0期(上皮内がん)の治療
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この治療法の詳細については、治療選択肢の概要をご覧ください。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- I期、II期、III期肛門がんの治療
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I期、II期、III期肛門がんの治療法には以下のようなものがあります:
肛門括約筋を温存する治療を受けた場合には、治療後の2年間は3カ月ごとに、経過観察検査として直腸診、内視鏡検査、生検などが必要に応じて行われ、再発の有無が調べられます。
これらの治療法の詳細については、治療選択肢の概要をご覧ください。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- IV期肛門がんの治療
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IV期の肛門がんの治療法には以下のようなものがあります:
これらの治療法の詳細については、治療選択肢の概要をご覧ください。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- HIVと肛門がんの治療
一般に、肛門がんでHIV感染がある場合の治療法は、他の場合の治療法と同様であり、転帰も類似しています。しかし、HIVに感染することで弱まった免疫系の機能が、がん治療によってさらに低下する可能性があります。AIDS関連の合併症の病歴がある場合の治療では、ときに抗がん剤の用量や放射線療法の線量をHIV感染がない場合よりも減らす必要があります。
- 再発肛門がんの治療
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再発肛門がんの治療法には以下のようなものがあります:
これらの治療法の詳細については、治療選択肢の概要をご覧ください。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 肛門がんについてさらに学ぶために
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米国国立がん研究所が提供している肛門がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資料については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、肛門がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Anal Cancer Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/anal/patient/anal-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389368]
本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。
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PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。
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Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。