医療専門家向け 小児における自家造血幹細胞移植(PDQ®)

    • 原文更新日:2024-06-13
    • 翻訳更新日:2025-03-28

ご利用について

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、小児がんの治療における自家造血幹細胞移植の利用について、専門家の査読を経た、証拠に基づく情報を包括的に提供している。本要約は、患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。医療上の意思決定のための正式なガイドラインや推奨事項を提供するものではない。

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardにより定期的にレビューされ、随時更新される。本要約は独自の文献レビューの結果を反映するものであり、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

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自家造血幹細胞の採取および保存

自家造血幹細胞移植(HSCT)では、増殖因子製剤で動員した末梢血幹細胞(PBSC)を、白血球アフェレーシスにより患者から採取する必要がある。自家移植に骨髄を用いることもあるが、PBSCの方が血球数回復が早くなり、結果として移植関連毒性が減少する。

自家HSCTを考慮している患者には、腫瘍の反応性を判定するとともに、骨髄への腫瘍混入のリスクを最小限に抑えるために、一般に化学療法が施行される。化学療法を複数ラウンド行った後、化学療法の影響から血球数が回復した時点か化学療法の休止期間中のいずれかのタイミングで、患者に白血球フェレーシスを施行する。顆粒球コロニー刺激因子などの増殖因子製剤を使用して、循環血中の幹細胞および前駆細胞(CD34陽性細胞)の数を増加させる。採取センターでは、患者のCD34陽性細胞数と採取量を連日モニタリングすることにより、採取を開始する最善の時期と採取を完了する時期を判断する。採取前のCD34陽性細胞数が低い患者では、代替の動員アプローチ(例、プレリキサホルの追加)を用いた細胞採取がしばしば成功する。[ 1 ]採取したPBSCは後の使用に備えて冷凍保存される。大量化学療法を用いる強力な前処置レジメン(腫瘍の種類により異なる)を完了した後、移植の手順を行ってPBSCを患者に戻す。

参考文献
  1. Patel B, Pearson H, Zacharoulis S: Mobilisation of haematopoietic stem cells in paediatric patients, prior to autologous transplantation following administration of plerixafor and G-CSF. Pediatr Blood Cancer 62 (8): 1477-80, 2015.[PUBMED Abstract]
自家移植手技の一般的な適応および考慮事項

固形腫瘍およびリンパ腫に対する自家造血幹細胞移植(HSCT)の適応

小児科診療において最も一般的な自家HSCTの適応は、一部の固形腫瘍およびリンパ腫の治療である。

自家移植はまた、重症の自己免疫疾患を有する患者の免疫系をリセットすることや、遺伝性疾患(例、免疫不全症、代謝性疾患、異常ヘモグロビン症)を是正または軽減するために遺伝子改変した自家造血幹細胞前駆細胞の生着を可能にすることを目的としても用いられている。これらの適応については本要約では扱わない。

HSCTの適応は、対象とする悪性腫瘍のリスク分類が変化したり、一次治療の有効性が改善したりするのにつれて、時間とともに変化していく。対象疾患に対する完全な治療という観点で具体的な適応を検討するのが最善である。

このことを念頭に置きつつ、小児における自家HSCTの最も一般的な適応をカバーする具体的な要約を示したセクションへのリンクを以下に提示する。

  1. 神経芽腫
  2. 脳腫瘍若年患者において頭蓋照射療法を縮小または回避するための適応;再発時に反応を示す腫瘍に対する適応
  3. 胚細胞腫瘍(GCT)(頭蓋内および頭蓋外)
  4. 網膜芽細胞腫
  5. ホジキンリンパ腫
  6. 非ホジキンリンパ腫

自家移植で悪性腫瘍の治癒を達成するには、以下に該当している必要がある:

自家移植レジメンに使用される薬剤の腫瘍特異的な活性および強度が生存期間の延長に重要であることが示されている。

採取した幹細胞製品の残存腫瘍細胞による汚染は、自家移植のアプローチにおける懸念の一つである。採取した血液から腫瘍細胞を除去つまりパージングするための手法が複数開発されているが、それらが腫瘍のパージングに有益とする結果を示した研究は今のところない。[ 1 ]

参考文献
  1. Kreissman SG, Seeger RC, Matthay KK, et al.: Purged versus non-purged peripheral blood stem-cell transplantation for high-risk neuroblastoma (COG A3973): a randomised phase 3 trial. Lancet Oncol 14 (10): 999-1008, 2013.[PUBMED Abstract]
本要約の最終更新(2024/06/13)

PDQがん情報要約は、定期的にレビューされ、新たな情報が得られ次第更新される。このセクションでは、上記の日付で本要約に加えられた最新の変更内容を記載する。

本要約は包括的にレビューされた。

本要約の作成および更新作業はPDQ Adult Treatment Editorial Boardが行っており、同委員会は編集面においてNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューの結果を反映するものであり、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の要約方針および役割に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® Cancer Information for Health Professionalsのページを参照のこと。

本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、小児がんの治療における自家造血幹細胞移植の利用について、専門家の査読を経た、証拠に基づく情報を包括的に提供している。本要約は、患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。医療上の意思決定のための正式なガイドラインや推奨事項を提供するものではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardにより定期的にレビューされ、随時更新される。本要約は独自の文献レビューの結果を反映するものであり、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、直近で発表された記事をレビューし、個々の記事について以下を行うべきかどうかを判断する:

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

本要約の内容についてコメントまたは質問がある場合は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govに連絡されたい。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

証拠レベル

本要約で引用されている参考文献の一部には証拠レベルの指定が明記されている。それらの指定は、読者が特定の介入またはアプローチの利用を支持している証拠の強さを評価する上で参考になることを意図したものである。PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardは、証拠レベルの指定を策定するにあたり公式順位分類を使用している。

本要約の使用許可

PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約として特定することはできない。ただし、著者は“NCI’s PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋】.”のような一文を記載することができる。

本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board. PDQ Pediatric Autologous Hematopoietic Stem Cell Transplant. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/types/childhood-cancers/hp-stem-cell-transplant/autologous. Accessed <MM/DD/YYYY>. [PMID: 35133767]

本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

免責条項

入手可能な証拠の強さに基づき、治療選択肢は「標準」または「臨床評価段階にある」のいずれかで記載される。これらの分類は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。