患者さん向け 小児副腎皮質がんの治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小児副腎皮質がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小児副腎皮質がんについての一般的な情報

副腎皮質がんは、副腎の外側の層の中に悪性(がん)細胞ができるまれな疾患です。

副腎は2つあります。副腎は小さく、三角形の形状をしています。それぞれの副腎は左右の腎臓の上に乗るように存在しています。副腎はそれぞれ2つの部分から構成されています。そのうち副腎の外層は副腎皮質と呼ばれます。一方、副腎の中心部は副腎髄質と呼ばれます。副腎皮質がん(adrenocortical carcinoma)は副腎皮質のがん(cancer of the adrenal cortex)とも呼ばれます。

副腎の解剖図:この図は腹部内の左右の副腎、左右の腎臓、主要な血管を示している。副腎の断面図には、副腎皮質と副腎髄質も示されている。

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副腎の解剖図。副腎は2つあり、左右の腎臓の上方に1つずつ位置しています。それぞれ外側は副腎皮質、内側は副腎髄質といいます。

副腎皮質からは以下のような働きを担う重要なホルモンが分泌されています:

副腎髄質からは、ストレスに対する身体の反応に関与するホルモンが分泌されます。副腎髄質に発生するがん褐色細胞腫と呼ばれますが、本要約では扱いません。詳しい情報については、PDQの小児褐色細胞腫および傍神経節腫の治療に関する要約をご覧ください。

ほとんどの小児副腎皮質腫瘍は5歳までに発生しますが、青年期に生じることもあります。

TP53遺伝子に特定の変異(変化)がある人は、副腎皮質がんのリスクが高くなります。

疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子があると必ずがんを発症するというわけではありませんし、リスク因子がなければがんにならないというわけでもありません。お子さんにリスクがあるかもしれないと思われる場合は、担当の医師に相談してください。

副腎皮質がんのリスクは、TP53遺伝子変異(変化)が認められる場合や、以下の症候群がある場合に高くなります:

副腎皮質がんの徴候と症状には、腹部のしこりや痛みなどがあります。

これらのような徴候症状は、副腎皮質がんが原因のこともありますが、別の病態が原因である可能性もあります。

以下の症状が1つでもみられる場合は、お子さんの担当医に相談してください。

また、副腎皮質のがんは機能性腫瘍(通常よりも多くのホルモンを分泌する腫瘍)と非機能性腫瘍(ホルモンを過剰に分泌しない腫瘍)があります。小児の副腎皮質に発生する腫瘍は大半が機能性腫瘍です。機能性腫瘍から分泌される過剰なホルモンは特定の徴候や症状を引き起こすことがありますが、具体的に何がみられるかは、腫瘍から分泌されるホルモンの種類によって異なります。例えば、アンドロゲンというホルモンが過剰になると、男児では陰茎の肥大、女児では生殖器の肥大が引き起こされることがあります。エストロゲンというホルモンが過剰になると、男児でも乳房組織が成長することがあります。コルチゾールというホルモンが過剰になると、副腎皮質ホルモン過剰症を引き起こすことがあります。

副腎皮質がんの徴候や症状に関する詳しい情報については、副腎皮質がんの治療(成人)に関するPDQ要約をご覧ください。

副腎皮質がんの診断と病期分類には副腎を調べる検査法が用いられます。

がんの診断を下し、病期を判定するために、複数の検査が行われます。がんの診断後には、がん細胞の周辺への拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。このプロセスは病期診断と呼ばれます。最善の治療計画を立てるには、がんが拡がっているかどうかを把握しておくことが重要です。

以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)に影響を及ぼします。

腫瘍が小さく、手術で完全に切除することができた患者さんの予後は良好です。それ以外の患者さんで予後を左右する要因としては以下のものがあります:

副腎皮質がんの病期

副腎皮質がんの診断がついた後には、がん細胞の周辺への拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。

がん副腎周辺の組織に拡がっているかどうかや、他の部位に転移しているかどうかを調べるためのプロセスは、病期診断と呼ばれます。病期診断で集められた情報は、治療計画の策定に利用されます。がんの診断に用いられた検査や手技の結果は、多くの場合、病期診断にも用いられます。

小児副腎皮質がんはときに、治療後に副腎皮質やその他の部位で再発することがあります。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系、または血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞が最初に発生した場所(原発巣)から分離して、リンパ系や血液を介して移動します。

転移巣の腫瘍は原発巣と同じ種類の腫瘍です。例えば、副腎皮質がんが肝臓に転移した場合、肝臓にあるがん細胞は実際は副腎皮質がんの細胞です。この疾患は転移性副腎皮質がんであり、肝がんではありません。

治療選択肢の概要

小児の副腎皮質がんに対する治療法には様々なものがあります。

その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象に、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。新しい治療法が標準治療よりも優れていることが複数の臨床試験で示された場合、その新しい治療法が標準治療になる可能性があります。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討するべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

小児副腎皮質がんの治療では、小児がんの治療に精通した医師のチームが治療計画を策定するべきです。

治療は小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が監督します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通しつつ、同時に特定の医療分野を専門とする他の小児医療従事者と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門医や専門家です:

標準治療として以下の2種類が用いられています:

手術

腫瘍を切除する手術副腎皮質がんに対する主な治療法です。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入り、全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

免疫療法

免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんと戦う治療法です。体内で生産された物質や人工的に作られた物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。このようながん治療は生物学的療法の一種です。

免疫チェックポイント阻害薬:左側の図は、PD-L1(腫瘍細胞上)とPD-1(T細胞上)という蛋白間の結合を示しており、この結合によって、体内の腫瘍細胞を殺傷するT細胞が働きが抑制されている。腫瘍細胞の抗原とT細胞の受容体も示されている。右側の図は、免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1抗体と抗PD-1抗体)がPD-L1とPD-1の結合を阻害し、T細胞が腫瘍細胞を殺傷できる状態にしている様子を示している。

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免疫チェックポイント阻害薬。腫瘍細胞上のPD-L1やT細胞上のPD-1などのチェックポイント蛋白は、免疫反応の抑制に関係しています。PD-L1がPD-1に結合すると、体内でのT細胞による腫瘍細胞の殺傷効果が抑制されます(左側の図)。免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1または抗PD-1)でPD-L1とPD-1の結合を阻害すると、T細胞が腫瘍細胞を殺傷できるようになります(右側の図)。

小児副腎皮質がんの治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療中に発生する副作用の詳細については、副作用(英語)のページをご覧ください。

がん治療による副作用のうち、治療後に始まって月単位または年単位で続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:

晩期合併症(晩期障害)には治療やコントロールが可能なものもあります。治療によってお子さんに生じうる晩期合併症(晩期障害)について担当の医師とよく相談することが重要です。詳しい情報については、PDQの小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)に関する要約をご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

がんに対する今日の標準治療の多くは、過去に行われた臨床試験の結果を根拠としています。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、まだ人に用いられたことがない新しい治療法を受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがん治療を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が新しい効果的な治療法の発見につながらなくても、しばしば重要な問題に対する答えが得られ、研究を前進させる助けになります。

患者さんはがん治療の開始前だけでなく、開始後でも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要になることもあります。

治療を進めるにつれて、フォローアップ検査または定期検査が行われます。がんの診断病期診断のために実施された検査の中には、治療の効果を確認するために繰り返し行われるものもあります。治療の継続、変更、中止などの決定がそれらの検査結果に基づいて判断されることもあります。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。それらの検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんが再発したかどうかを知ることができます。

小児副腎皮質がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

新たに診断された小児副腎皮質がんに対する治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発小児副腎皮質がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

小児の再発副腎皮質がんに対する治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

小児副腎皮質がんについてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している副腎皮質がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小児がんに関するさらなる情報とがん全般に関するその他の資料については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児副腎皮質がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Adrenocortical Carcinoma Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/adrenocortical/patient/child-adrenocortical-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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