ご利用について
このPDQがん情報要約では、小児中枢神経系胚細胞腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 小児中枢神経系(CNS)胚細胞腫瘍についての一般的な情報
-
小児中枢神経系(CNS)胚細胞腫瘍は胚細胞から発生します。
胚細胞とは、胎児の生殖細胞のことです。この種の細胞は後に精巣内の精子や卵巣内の卵子になります。ときに、胎児の発達が進む過程で胚細胞が体内で移動して、後に胚細胞腫瘍に変化することがあります。大半の胚細胞腫瘍は精巣または卵巣に発生します。脳や脊髄にできた胚細胞腫瘍は、中枢神経系(CNS)胚細胞腫瘍と呼ばれます。
CNS胚細胞腫瘍は10~19歳の人に発生することが多く、女性よりも男性によくみられます。CNS胚細胞腫瘍が最もよく発生する部位は、松果体付近と、下垂体とそのすぐ上の組織を含んだ脳領域です。胚細胞腫瘍は脳の他の領域に発生することもあります。
これは脳内部の解剖図で、松果体、下垂体、視神経、脳室(青色の部分が髄液)など、脳の各部分を示しています。 小児CNS胚細胞腫瘍の大半は原因不明です。
本要約は、中枢神経系(脳と脊髄)に発生する胚細胞腫瘍について書かれたものです。胚細胞腫瘍は体の他の部位に発生することもあります。頭蓋外(脳の外)の胚細胞腫瘍に関する詳細な情報については、小児頭蓋外胚細胞腫瘍の治療をご覧ください。
CNS胚細胞腫瘍の治療は小児と成人で異なります。成人の治療に関する詳しい情報については、以下のPDQ要約をご覧ください:
小児CNS胚細胞腫瘍には複数の種類があります。
後に精子や卵子になる胚細胞から、種々のCNS胚細胞腫瘍が発生します。診断されるCNS胚細胞腫瘍の種類は、顕微鏡で観察したときの細胞の外見と、腫瘍マーカーの値を調べる臨床検査の結果によって異なります。
本要約は、数種類のCNS胚細胞腫瘍に対する治療について書かれたものです。
非ジャーミノーマ
非ジャーミノーマは、α-フェトプロテイン(AFP)やβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)などのホルモンを分泌することがあります。非ジャーミノーマには以下の種類があります:
小児CNS胚細胞腫瘍の徴候と症状には、異常な喉の渇き、頻尿、視覚の変化などがあります。
徴候や症状は、小児CNS胚細胞腫瘍が原因のこともありますが、別の病態が原因である可能性もあります。以下の症状が1つでもみられる場合は、お子さんの担当医に相談してください。
CNS胚細胞腫瘍の診断を確定するために、生検が行われることもあります。
CNS胚細胞腫瘍が疑われる場合、生検が行われることがあります。脳腫瘍では、頭蓋骨の一部を切除するか頭蓋骨に小さな穴をあけて、針または手術器具を用いて組織のサンプルを採取することにより、生検を行うことができます。針を使用する場合は、コンピュータによる誘導に沿って組織のサンプルを採取することもあります。採取された組織は病理医が顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。ここでがん細胞が発見された場合は、そのまま手術を継続して、安全を確保できる範囲で可能な限り腫瘍を切除します。通常は、切り取っていた頭蓋骨の一部を手術後に元の位置に戻します。
開頭術。頭蓋骨に開口部を設け、頭蓋骨の一部を切除することで、脳の一部を露出させます。 切除された組織のサンプルに対して以下の検査が行われることがあります:
画像検査と腫瘍マーカー検査の結果から診断を下すことができ、生検を行う必要がない場合もあります。
特定の要因が予後(回復の見込み)に影響を及ぼします。
予後を左右する要因としては以下のものがあります:
- 胚細胞腫瘍の種類
- 検出された腫瘍マーカーの種類と検査値
- 脳または脊髄の中での腫瘍の位置
- がんが脳や脊髄の中で拡がっているか、体の他の部位に拡がっているか
- 新たに診断された腫瘍か、治療後に再発した腫瘍か
- 小児CNS胚細胞腫瘍の病期
- 治療選択肢の概要
-
中枢神経系(CNS)胚細胞腫瘍に対する治療法には様々なものがあります。
小児の中枢神経系(CNS)胚細胞腫瘍の患者さんは、様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象として、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。新しい治療法が標準治療よりも優れていることが複数の臨床試験で示された場合、その新しい治療法が標準治療になる可能性があります。
小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討するべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
中枢神経系胚細胞腫瘍の患者さんには、小児のがん治療に精通した医療従事者で構成されるチームが治療計画を策定するべきです。
治療は小児腫瘍医や放射線腫瘍医が監督します。小児腫瘍医は小児がんの治療を専門とする医師です。放射線腫瘍医は、放射線療法によるがん治療を専門とします。これらの医師は、CNS胚細胞腫瘍の小児の治療に精通しつつ、同時に特定の医療分野を専門とする他の小児医療従事者と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門医や専門家です:
以下の4種類の治療法が用いられます:
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図るがん治療です。
外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。放射線療法を特殊な方法で行うことで、周辺の正常組織に対する放射線による傷害を避けられる可能性があります。この種の放射線療法としては以下のものがあります:
脳に対する放射線療法は、幼児期の成長や発達に影響を及ぼすことがあります。特定の方法で放射線療法を行うことで、正常な脳組織の損傷を減らすことができます。3歳未満の小児には、代わりに化学療法が行われることがあります。これにより、放射線療法が必要になる時期を遅らせたり、放射線療法の必要性を減らしたりすることができます。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止するがん治療です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入り、全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。
臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。
小児CNS胚細胞腫瘍の治療は副作用を引き起こすことがあります。
がんの治療中に発生する副作用の詳細については、副作用(英語)のページをご覧ください。
がん治療による副作用のうち、治療後に始まって月単位または年単位で続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:
晩期合併症(晩期障害)には治療やコントロールが可能なものもあります。治療によってお子さんに生じうる晩期合併症(晩期障害)については、担当の医師にご相談ください。詳しい情報については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。
患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。
患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。
がんに対する今日の標準治療の多くは、過去に行われた臨床試験の結果を根拠としています。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、まだ人に用いられたことがない新しい治療法を受けることになる場合もあります。
患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがん治療を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が新しい効果的な治療法の発見につながらなくても、しばしば重要な問題に対する答えが得られ、研究を前進させる助けになります。
患者さんはがん治療の開始前だけでなく、開始後でも臨床試験に参加することができます。
ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。
臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
フォローアップ検査が必要になることもあります。
治療を進めるにつれて、フォローアップ検査または定期検査が行われます。がんの診断のために実施された検査の中には、治療の効果を確認するために繰り返し行われるものもあります。治療の継続、変更、中止などの決定がそれらの検査結果に基づいて判断されることもあります。
治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。それらの検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんが再発したかどうかを知ることができます。
がんの診断時点でがんが下垂体に及んでいる場合は、通常は血中ホルモン濃度の測定が必要です。血中ホルモン濃度が低い場合は、ホルモン補充療法を行います。
がんの診断時に腫瘍マーカー(α-フェトプロテインやβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の検査値が高い場合は、通常は血中腫瘍マーカーの測定が必要です。最初の治療後に腫瘍マーカーの検査値が上昇した場合は、腫瘍が再発した可能性があります。
- 小児CNSジャーミノーマの治療
-
以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
新たに診断された中枢神経系(CNS)ジャーミノーマに対する治療法には以下のようなものがあります:
- 非ジャーミノーマの小児CNS胚細胞腫瘍の治療
-
以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
新たに診断された非ジャーミノーマの中枢神経系(CNS)胚細胞腫瘍に、どのような治療が最適かは不明です。
絨毛がん、胎児性がん、卵黄嚢腫瘍、混合型胚細胞腫瘍に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 小児CNS奇形腫の治療
-
以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
新たに診断された中枢神経系(CNS)の成熟奇形腫と未熟奇形腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 再発小児CNS胚細胞腫瘍の治療
-
再発小児中枢神経系(CNS)胚細胞腫瘍に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 現在実施中の臨床試験
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 小児CNS胚細胞腫瘍についてさらに学ぶために
-
小児中枢神経系胚細胞腫瘍に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
小児がんに関するさらなる情報とがん全般に関するその他の資料については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
-
PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、小児中枢神経系胚細胞腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Central Nervous System Germ Cell Tumors Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/brain/patient/child-cns-germ-cell-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389502]
本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。
免責事項
PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。
お問い合わせ
Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。