患者さん向け 小腸がんの治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小腸がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小腸がんについての一般的な情報

小腸がんは、小腸の組織の中に悪性(がん)細胞ができるまれな疾患です。

小腸は体内の消化器系の一部で、消化器系には食道大腸も含まれます。消化器系は、食物中の栄養素ビタミンミネラル炭水化物、脂質、蛋白質、水分)の消化吸収と、老廃物の体外への排出という役割を担っています。小腸は長い管状の臓器で胃と大腸をつないでいます。腹部の中に納まるように何重にも折り重なっています。

小腸の図は、十二指腸、空腸、回腸を示している。胃、虫垂、大腸、直腸も示している。

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小腸は長い管状の臓器で胃と大腸をつないでいます。小腸には、十二指腸、空腸、回腸があります。

小腸のがんには5つの種類があります。

小腸で発見されるがんの種類には腺がん肉腫神経内分泌腫瘍消化管間質腫瘍リンパ腫があります。本要約は、腺がんと平滑筋肉腫(肉腫の一種)について書かれています。

腺がんは小腸の内側にある細胞で発生し、小腸がんの中では最も一般的な種類のがんです。この種の腫瘍は、ほとんどが胃の近くの小腸で発生します。成長すると腸を塞ぐことがあります。

平滑筋肉腫は小腸の平滑筋細胞から発生します。この種の腫瘍は、ほとんどが大腸の近くの小腸で発生します。

小腸がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小腸がんの発生リスクに影響を及ぼす要因に食習慣と病歴があります。

疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。このようなリスク因子がある人がみな小腸がんになるわけではありませんし、既知のリスク因子がないのに小腸がんになる人もいます。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。小腸がんのリスク因子には以下のものがあります:

小腸がんの徴候や症状には、原因不明の体重減少、腹痛などがあります。

こうした徴候症状は小腸がんが原因で起こることもあれば、他の病態が原因で起こることもあります。以下の問題がみられる場合は担当の医師にご相談ください:

小腸がんの診断と病期分類のために、小腸の検査を行います。

小腸と周辺領域の画像をとることで、小腸がんの診断およびがんがどれくらいの範囲に拡がっているかを知ることができます。がん細胞が小腸の内部や周辺に拡がっているかどうかを判断するために用いるプロセスを病期分類と呼びます。

治療の計画を立てるためには、小腸がんの種類と、手術でこの腫瘍を取り除くことができるかどうかを知ることが大切です。小腸がんの発見、診断、病期分類のための検査と処置は通常一緒に行われます。担当医は個人歴家族歴をたずね、身体診察を行うことに加えて、以下の検査や手技を行うことがあります:

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:

小腸がんの病期

小腸がんの病期分類のための検査と方法は通常、診断の際に一緒に行います。

病期分類は、がんがどれ位の範囲に拡がっているかを調べるために用いられますが、治療の決定は病期に基づいて行われるわけではありません。小腸がんの発見、診断、病期を決定するために用いられる検査および方法の詳細については一般的な情報のセクションをご覧ください。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類の腫瘍です。例えば、小腸がんが肝臓に転移した場合、肝臓にできたがん細胞は、実際は小腸がんの細胞です。この疾患は転移性小腸がんであり、肝がんではありません。

小腸がんは手術によって腫瘍を完全に除去できるかどうかに基づいて分類されます。

治療は、手術腫瘍が除去できるかということと、がんを原発腫瘍として治療するのか、あるいは転移がんとして治療するのかによって異なります。

小腸がんは、治療後に再発する(再び現れる)ことがあります。

このがんは小腸で再発することもあれば、体の他の部位で再発することもあります。

治療選択肢の概要

小腸がんの患者さんには様々な治療法が存在します。

小腸がんの患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

以下のような治療法が用いられます:

手術

手術は小腸がんの治療で最も一般的な方法です。以下の手術のいずれかが実施されます:

手術の際に確認できる全てのがんを切除した後に、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に放射線療法が実施される場合があります。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。

小腸がんの治療には外照射療法が用いられます。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したり、その細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

免疫療法

免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんと戦う治療法です。体内で生産された物質や製造ラボで合成された物質を使用することによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。

放射線増感剤を併用する放射線療法

放射線増感剤とは、放射線療法に対する腫瘍細胞の反応性を高める薬のことです。放射線療法に放射線増感剤を併用すれば、より多くの腫瘍細胞を死滅させることが可能です。

小腸がんの治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療によって引き起こされる副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんの再発(再び現れること)の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

小腸腺がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

可能であれば、小腸腺がんの治療は腫瘍をその周辺の正常組織とともに除去する手術になります。

手術で除去できない小腸腺がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

小腸平滑筋肉腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

可能であれば、小腸平滑筋肉腫の治療は腫瘍をその周辺の正常組織の一部とともに取り除く手術になります。

手術で除去できない小腸平滑筋肉腫の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発小腸がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

他の部位に転移している再発小腸がんに対する治療は、通常、新しい抗がん剤または免疫療法臨床試験への参加です。

局所再発小腸がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

小腸がんについてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している小腸がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小腸がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Small Intestine Cancer Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/small-intestine/patient/small-intestine-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389461]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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