患者さん向け 原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの治療(成人)(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、成人原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの予防に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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原発不明転移性扁平上皮性頸部がんについての一般的な情報

原発不明転移性扁平上皮性頸部がんは、最初の発生部位が分からない扁平上皮がんが頸部のリンパ節に転移することで生じる疾患です。

扁平上皮細胞は薄く扁平な形をした細胞で、皮膚の表面を構成する組織や、口腔などの体の内面を覆う組織、子宮血管などの中空器官の内側を覆う組織、それに呼吸器消化管の内面を覆う組織などに存在しています。扁平上皮細胞が存在する臓器としては、食道腎臓、子宮などがあります。がんは、体のあらゆる部位の扁平上皮細胞から発生する可能性があり、また、血液の流れやリンパ系を介して体の他の部位へと転移することがあります。

そしてこの扁平上皮細胞から発生したがん(扁平上皮がん)が頸部のリンパ節鎖骨周囲のリンパ節に転移すると、そのがんは転移性扁平上皮性頸部がんと呼ばれます。転移がんに対して効果のある治療法は原発腫瘍(最初に発生した腫瘍)に対する治療法と同じであることから、転移がんが発見された場合には、医師はこの原発腫瘍の探索を試みます。例えば、肺がんが頸部に転移した場合、頸部に存在するがん細胞は肺がん細胞であり、肺に発生したがんと同様の治療が行われます。しかし、ときとして、がんの最初の発生部位をどうしても発見できない場合もあります。検査を行っても原発腫瘍が発見できない場合、その腫瘍は潜在性原発腫瘍と呼ばれます。原発腫瘍を発見できない症例は実際に数多く存在します。

原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの徴候や症状には、頸部や咽頭のしこりや痛みがあります。

頸部や咽頭に治らないしこりや痛みがある場合には、担当の医師にご確認ください。原発不明転移性扁平上皮性頸部がんでは、こうした徴候症状が引き起こされることがあります。ただし、他の病態が原因で同様の徴候や症状が生じてくる場合もあります。

原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの発見と診断には、頸部組織、気道、それに上部消化管を調べる検査法が用いられます。

ここでは原発腫瘍を探索するために、呼吸器(気管の一部)、上部消化管(口唇、口腔、舌、鼻、咽頭、声帯、食道の一部など)、泌尿生殖器系に属する器官と組織を調べる検査が行われます。

以下のような検査法が用いられます:

検査中にも治療中にも原発腫瘍が発見されなかった場合には、潜在性原発腫瘍(原発不明)という診断が下されます。

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:

治療の選択を左右する因子には以下のようなものもあります:

原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの病期

原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの診断がついた後には、がん細胞が体の他の部位に拡がっていないかを明らかにするために、さらに検査が行われます。

がんが体内の他の部位に転移していないかを調べるプロセスは、病期分類と呼ばれます。原発不明転移性扁平上皮性頸部がんには、標準的な病期分類システムはありません。

原発腫瘍の発見と診断に用いられた検査と手技の結果は、がんが体の他の部位に転移しているかどうかを調べるときにも利用されます。

この腫瘍は、未治療の腫瘍と再発した腫瘍に分けて表現されます。未治療の原発不明転移性扁平上皮性頸部がんとは、新たに診断されたばかりで、まだ治療が施されていない(ただし、がんによる徴候症状を緩和するための治療は除く)ものをいいます。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

原発不明転移性扁平上皮性頸部がんは治療後に再発する(再び現れる)ことがあります。

再発は、頸部に起こることもあれば、それ以外の部位に起こることもあります。

治療選択肢の概要

原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの患者さん全てに治療法が存在します。

原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

標準治療として以下の2種類が用いられています:

手術

手術では頸部郭清術が行われることがあります。頸部郭清術は、切除する組織の量に応じていくつかの種類に分けられます。

手術の際に確認できる全てのがんを切除した後に、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に放射線療法が実施される場合があります。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる治療は、補助療法と呼ばれます。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。強度変調放射線療法(IMRT)は、三次元(3D)外照射療法の一種で、コンピュータを使用して腫瘍の大きさと形状を示す映像を作成し、それを利用する方法です。照射幅の小さな放射線ビームが様々な角度から様々な強度で腫瘍に照射されます。この種の放射線療法では、ドライマウス、嚥下障害、および皮膚損傷の発生する可能性が低くなります。

頭頸部の体外照射療法:図は、高エネルギー放射線をがんに照射する装置の下で、台に患者が横たわっているところを示している。拡大図は、施術中に患者の頭頸部が動かないように固定するメッシュマスクを示している。マスクには小さい印が記された複数の白いテープが付いている。この印は、毎回の施術前に放射線装置を同じ位置に合わせるためのものです。

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頭頸部の体外照射療法。高エネルギー放射線をがんに照射する装置を使用します。この装置は患者の周囲を回転し、様々な角度から放射線を照射することで、病巣の形状に精細に沿った照射を行います。メッシュマスクを使用して、施術中に患者の頭頸部が動かないように固定します。マスク上に小さい印が付けられています。この印は、毎回の施術前に放射線装置を同じ位置に合わせるためのものです。

頸部に対する放射線療法は、甲状腺の機能に変化を及ぼすことがあります。治療前に体内の甲状腺ホルモン値を測定したり治療後も定期的に調べたりするために、血液検査を行うことがあります。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。

多分割放射線療法

多分割放射線療法は外照射療法の一種で、通常より少ない照射線量を2分割し、1日に2回照射します。多分割放射線療法は標準の放射線療法と同じ期間(数日または数週間)にわたって施行します。

原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療によって引き起こされる副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんの再発(再び現れること)の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

未治療の原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

未治療の原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発した原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

再発した原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの治療は、臨床試験の中で行われるのが通常です。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

原発不明転移性扁平上皮性頸部がんについてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している原発不明転移性扁平上皮性頸部がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、成人原発不明転移性扁平上皮性頸部がんの予防に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Metastatic Squamous Neck Cancer with Occult Primary Treatment (Adult).Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/head-and-neck/patient/adult/metastatic-squamous-neck-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389176]

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