ご利用について
このPDQがん情報要約では、成人食道がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 食道がんについての一般的な情報
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食道がんは、食道の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。
食道は筋肉でできた中空の管で、食べ物や飲み物を喉から胃まで送り込むという役割を担っています。食道の壁は、粘膜層、筋肉層、結合組織層などの何層かの組織から構成されています。食道がんは食道の内腔を覆う組織から発生して、増殖するにつれて他の層を越えて外側へと拡がっていきます。
食道と胃は上部消化器系の一部です。 食道がんの発生リスクに影響を及ぼす要因に喫煙、過度の飲酒、バレット食道があります。
疾患が発生する危険性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。リスク因子には以下のものがあります:
食道がんの徴候や症状は、体重減少と嚥下時の痛みまたは嚥下困難です。
これらに加え、別の徴候や症状が食道がんにより引き起こされることがありますが、その他の病態によって生じることもあります。以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:
食道がんの診断には、食道を調べる検査法が用いられます。
以下のような検査法や手技が用いられます:
特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。
予後と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:
食道がんでは、非常に早い段階で発見されれば回復の見込みが高くなります。しかし、食道がんは、診断された時点ですでに進行している場合も多くあります。末期の食道がんの場合は、治療を行うことは可能ですが、治癒はほとんど望めません。治療法の改善を目的に実施されている臨床試験への参加も検討すべきです。現在進行中の臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。
- 食道がんの病期
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食道がんの診断がついた後には、食道内でのがん細胞の拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。
がん細胞の食道内部での拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。病期分類の過程では以下のような検査法や手技が用いられます:
がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。
がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。
転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、食道がんが肺に転移した場合、肺にできたがん細胞は、実際は食道がんの細胞です。この疾患は転移性食道がんであり、肺がんではありません。
腫瘍の悪性度も、がんを記述し治療法を計画するために用いられます。
腫瘍の悪性度は、がん細胞を顕微鏡で観察したときの異常の度合いと、腫瘍の増殖や拡がりの速さを表します。食道がんは以下のように悪性度1~3で表されます:
食道扁平上皮がんでは以下のような病期が用いられます:
II期の食道扁平上皮がん
II期は、がんが拡がっている部位に応じて、さらにIIA期とIIB期に分けられます。
- IIA期:がんは次の部位に拡がっています:
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食道壁の厚い筋層まで拡がっている。がん細胞は悪性度2または3であるか、または悪性度不明である。または
IIA期の食道扁平上皮がん(1)。がんは食道壁の厚い筋層まで拡がっています。がん細胞は悪性度2あるいは3、または悪性度不明。悪性度2または3のがん細胞は、悪性度1のがん細胞に比べ、顕微鏡で見たときの外観が異常で、より急速に増殖し拡がります。 - 食道壁の結合組織層まで拡がっている。腫瘍は食道下部に存在する。または
IIA期の食道扁平上皮がん(2)。がんは食道壁の結合組織層に拡がっています。腫瘍は食道下部に位置しています。 - 食道壁の結合組織層に拡がっている。がん細胞の悪性度は1。腫瘍は食道上部または中間部に存在しています。
IIA期の食道扁平上皮がん(3)。がんは食道壁の結合組織層に拡がっています。がん細胞の悪性度は1。悪性度1のがん細胞は、悪性度2または3のがん細胞に比べて、顕微鏡下でより正常な外観が認められ、増殖や拡がりは緩やかです。腫瘍は食道上部または中間部に存在しています。
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食道壁の厚い筋層まで拡がっている。がん細胞は悪性度2または3であるか、または悪性度不明である。または
- IIB期:がんは次の部位に拡がっています:
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食道壁の結合組織層まで拡がっている。がん細胞の悪性度は2または3。腫瘍は食道上部または中間部に存在している。または
IIB期の食道扁平上皮がん(1)。がんは食道壁の結合組織層に拡がっています。がん細胞の悪性度は2または3。悪性度2または3のがん細胞は、悪性度1のがん細胞に比べ、顕微鏡で見たときの外観が異常で、より急速に増殖し拡がります。腫瘍は食道上部または中間部に存在しています。 - 食道壁の結合組織層に拡がっている。がん細胞の悪性度が不明であるか、腫瘍が形成されている食道内の場所が明らかでない。または
IIB期の食道扁平上皮がん(2)。がんは食道壁の結合組織層に拡がっています。がん細胞の悪性度が不明、または腫瘍が形成されている食道内の場所が明らかではありません。 - 食道壁の粘膜層に拡がっているか、薄い筋層または粘膜下層まで拡がっている。腫瘍付近の1~2個のリンパ節にがんが認められる。
IIB期の食道扁平上皮がん(3)。がんは食道壁の粘膜層に拡がっているか、薄い筋層または粘膜下層まで拡がっています。腫瘍付近の1~2個のリンパ節にがんが認められます。
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食道壁の結合組織層まで拡がっている。がん細胞の悪性度は2または3。腫瘍は食道上部または中間部に存在している。または
IV期の食道扁平上皮がん
IV期は、がんが拡がっている箇所に応じて、さらにIVA期とIVB期に分けられます。
- IVA期:がんは次の部位に拡がっています:
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横隔膜、奇静脈、胸膜、心臓を包む袋、腹膜に拡がっている。腫瘍付近の3~6個のリンパ節にがんが認められる。または
IVA期の食道扁平上皮がん(1)。がんは(a)横隔膜、(b)奇静脈、(c)胸膜、(d)心臓を包む膜(袋)、腹膜(図には示されていない)に拡がっています。腫瘍付近の3~6個のリンパ節にがんが認められます。 -
大動脈、気道、脊椎などの周辺の構造に転移している。腫瘍付近の0~6個のリンパ節にがんが認められることもある。または
IVA期の食道扁平上皮がん(2)。がんは気道、大動脈、脊椎など、周辺の構造に転移しています。腫瘍付近の0~6個のリンパ節にがんが認められることもあります。 - 腫瘍付近の7個以上のリンパ節に転移している。
IVA期の食道扁平上皮がん(3)。がんは腫瘍付近の7個以上のリンパ節に転移しています。
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横隔膜、奇静脈、胸膜、心臓を包む袋、腹膜に拡がっている。腫瘍付近の3~6個のリンパ節にがんが認められる。または
- IVB期:がんは肝臓や肺など、他の部位に転移している。
IVB期の食道扁平上皮がん。がんは肝臓や肺など、他の部位に転移しています。
食道腺がんでは以下のような病期が用いられます:
I期の食道腺がん
I期は、がんが存在する部位に応じて、さらにIA期、IB期、IC期に分けられます。
- IA期:がんは食道壁の粘膜層に拡がっているか、薄い筋層まで拡がっている。がん細胞は悪性度1か、または悪性度不明である。
IA期の食道腺がん。がんは食道壁の粘膜層に拡がっているか、薄い筋層まで拡がっています。がん細胞は悪性度1か、または悪性度不明。悪性度1のがん細胞は、悪性度2または3のがん細胞に比べて、顕微鏡下でより正常な外観が認められ、増殖や拡がりは緩やかです。 - IB期:がんは次の部位に拡がっています:
IB期の食道腺がん。がんは食道壁の粘膜層に拡がっているか、薄い筋層まで拡がっています。がん細胞の悪性度は2。悪性度2のがん細胞は、悪性度1のがん細胞に比べ、顕微鏡下でより異常な外観が認められ、増殖と拡がりも速く進みます;または、がんは食道壁の粘膜下層まで拡がっています。がん細胞は悪性度1あるいは2、または悪性度不明。 - IC期:がんは次の部位に拡がっています:
IC期の食道腺がん。がんは食道壁の粘膜層に拡がっているか、薄い筋層または粘膜下層まで拡がっています。がん細胞の悪性度は3。悪性度3のがん細胞は、悪性度1または2のがん細胞に比べ、顕微鏡下でより異常な外観が認められ、増殖と拡がりも速く進みます;または、がんは食道壁の厚い筋層まで拡がっています。がん細胞の悪性度は1または2。
II期の食道腺がん
II期は、がんが拡がっている部位に応じて、さらにIIA期とIIB期に分けられます。
III期の食道腺がん
III期は、がんが拡がっている部位に応じて、さらにIIIA期とIIIB期に分けられます。
- IIIA期:がんは次の部位に拡がっています:
IIIA期の食道腺がん。がんは食道壁の粘膜層に拡がっているか、薄い筋層または粘膜下層まで拡がっています。がんは腫瘍付近の3~6個のリンパ節に認められます;または、がんは食道壁の厚い筋層まで拡がっています。腫瘍付近の1~2個のリンパ節にがんが認められます。 - IIIB期:がんは次の部位に拡がっています:
- 食道壁の厚い筋層まで拡がっている。腫瘍付近の3~6個のリンパ節にがんが認められる。または
- 食道壁の結合組織層まで拡がっている。腫瘍付近の1~6個のリンパ節にがんが認められる。または
IIIB期の食道腺がん(1)。がんは食道壁の厚い筋層まで拡がっています。がんは腫瘍付近の3~6個のリンパ節に認められます;または、がんは食道壁の結合組織層まで拡がっています。腫瘍付近の1~6個のリンパ節にがんが認められます。 -
横隔膜、奇静脈、胸膜、心臓を包む袋、腹膜に拡がっている。腫瘍付近の0~2個のリンパ節にがんが認められることもあります。
IIIB期の食道腺がん(2)。がんは(a)横隔膜、(b)奇静脈、(c)胸膜、(d)心臓を包む膜(袋)、腹膜(図には示されていない)に拡がっています。腫瘍付近の0~2個のリンパ節にがんが認められることもあります。
IV期の食道腺がん
IV期は、がんが拡がっている箇所に応じて、さらにIVA期とIVB期に分けられます。
- IVA期:がんは次の部位に拡がっています:
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横隔膜、奇静脈、胸膜、心臓を包む袋、腹膜に拡がっている。腫瘍付近の3~6個のリンパ節にがんが認められる。または
IVA期の食道腺がん(1)。がんは(a)横隔膜、(b)奇静脈、(c)胸膜、(d)心臓を包む膜(袋)、腹膜(図には示されていない)に拡がっています。腫瘍付近の3~6個のリンパ節にがんが認められます。 -
大動脈、気道、脊椎などの周辺の構造に転移している。腫瘍付近の0~6個のリンパ節にがんが認められることもある。または
IVA期の食道腺がん(2)。がんは気道、大動脈、脊椎など、周辺の構造に転移しています。腫瘍付近の0~6個のリンパ節にがんが認められることもあります。 - 腫瘍付近の7個以上のリンパ節に転移している。
IVA期の食道腺がん(3)。がんは腫瘍付近の7個以上のリンパ節に転移しています。
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横隔膜、奇静脈、胸膜、心臓を包む袋、腹膜に拡がっている。腫瘍付近の3~6個のリンパ節にがんが認められる。または
- IVB期:がんは肝臓や肺など、他の部位に転移している。
IVB期の食道腺がん。がんは肝臓や肺など、他の部位に転移しています。
食道がんは治療後に再発する(再び現れる)ことがあります。
再発は食道に起こることもあれば、他の部位に起こることもあります。
- IIA期:がんは次の部位に拡がっています:
- 治療選択肢の概要
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食道がんの患者さんには様々な治療法が存在します。
食道がんの患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
食道がんに対する治療の実施中には、特別な栄養摂取法が必要となります。
食道がんの患者さんの多くは、嚥下障害のために食事をとることが困難な状態にあります。腫瘍や治療の副作用によって食道が狭くなることがあるためです。患者さんによっては、静脈から栄養を直接摂取する場合もあります。自分で食事ができるようになるまで、栄養チューブ(鼻や口から胃に挿入される柔軟性のあるプラスチック製のチューブ)が必要になる場合もあります。
標準治療として以下の7種類が用いられています:
手術
手術は食道がんに対して最もよく用いられている治療法です。食道切除術と呼ばれる手術によって食道の一部が切除されることがあります。
残された食道の正常部分が胃に接合されるため、患者さんは手術後も食べ物や飲み物を飲み込むことができます。プラスチック製のチューブや小腸の一部を利用して接合する場合もあります。また、食道周辺のリンパ節を摘出して、顕微鏡での観察によってがん細胞の有無を調べることもあります。食道が腫瘍によって部分的に塞がれている場合は、食道の開通を維持するために、拡張式の金属製ステント(管)が食道の中に留置されます。食道切除術。食道の一部を切除し、胃を引き上げて残った食道につなげます。 食道ステント。食道を広げておくための装置(ステント)を食道内に留置して、食べ物や飲み物が胃に送られるようにします。 食道にできた小型の早期がんと高度異形成は、内視鏡的切除術で除去する場合があります。皮膚に小さな切開を施す(切れ目を入れる)か、口などの体の開口部から、内視鏡(観察用のライトとレンズを備えた細いチューブ状の器具)を挿入します。内視鏡に取り付けた器具で組織を切除します。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には2種類のものがあります:
放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。外照射療法と内照射療法は食道がんの治療に用いられます。
放射線療法の実施中に食道を広げておくためにプラスチック製のチューブが挿入される場合もあります。これは食道挿管拡張術と呼ばれます。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、もしくは腹腔などの体腔内に薬剤を直接注入する化学療法では、薬はその領域にあるがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。
詳しい情報については、食道がんに対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
化学放射線療法
化学放射線療法は、化学療法と放射線療法を組み合わせて、両者の効果を増大させる治療法です。
電気凝固療法
電気凝固療法は、電流を用いてがん細胞を破壊する治療法です。
免疫療法
免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんと戦う治療法です。体内で生産された物質や製造ラボで合成された物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。このようながんの治療法は生物学的療法の一種です。
免疫チェックポイント阻害薬 療法は、 手術で切除できない進行した食道がんおよび再発食道がんの患者さんに対する治療法として研究されている免疫療法の一種です。 T細胞などの免疫細胞や一部のがん細胞では、その表面にチェックポイント蛋白と呼ばれる免疫反応を抑止する蛋白が存在しています。これらの蛋白を大量に持つがん細胞は、T細胞による攻撃を受けず殺傷されません。免疫チェックポイント阻害薬はこれらの蛋白を阻害し、T細胞ががん細胞を殺傷する働きを促します。
免疫チェックポイント阻害薬療法には2種類のものがあります:
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CTLA-4阻害薬療法:CTLA-4はT細胞の表面に存在する蛋白で、体の免疫反応を抑制する働きがあります。CTLA-4ががん細胞上の別の蛋白、B7に結合すると、T細胞はがん細胞を殺傷しなくなります。CTLA-4阻害薬はCTLA-4に結合することで、T細胞ががん細胞を殺傷できるようにします。イピリムマブはCTLA-4阻害薬の一種です。
免疫チェックポイント阻害薬。抗原提示細胞(APC)上のB7-1/B7-2やT細胞上のCTLA-4などのチェックポイント蛋白は、体内の免疫反応の抑制に関与します。T細胞受容体(TCR)がAPC上の抗原および主要組織適合抗原複合体(MHC)蛋白と結合し、CD28がAPCのB7-1/B7-2と結合すると、T細胞が活性化されます。しかし、B7-1/B7-2とCTLA-4が結合すると、T細胞は不活性状態のまま保たれ、体内で腫瘍細胞を殺傷することができなくなります(左図)。免疫チェックポイント阻害薬(抗CTLA-4抗体)でB7-1/B7-2とCTLA-4の結合を阻害すると、T細胞が活性化し、腫瘍細胞を殺傷できるようになります(右図)。 -
PD-1およびPD-L1阻害薬療法:PD-1はT細胞の表面に存在する蛋白で、体の免疫反応を抑制する働きがあります。PD-L1は数種類のがん細胞上に存在する蛋白です。PD-1がPD-L1に結合すると、T細胞はがん細胞を殺傷しなくなります。PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬は、PD-1蛋白とPD-L1蛋白の結合を阻止します。そうすることでT細胞によるがん細胞の殺傷を可能にします。ニボルマブはPD-1阻害薬の一種です。
免疫チェックポイント阻害薬。腫瘍細胞上のPD-L1とT細胞上のPD-1などのチェックポイント蛋白は、免疫反応の抑制に関与します。PD-L1とPD-1が結合すると、T細胞による体内の腫瘍細胞の殺傷は抑制されます(左図)。免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1または抗PD-1)でPD-L1とPD-1の結合を阻害すると、T細胞が腫瘍細胞を殺傷できるようになります(右図)。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。
本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。
標的療法
標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物やその他の物質を用いる治療法です。標的療法では一般に、化学療法や放射線療法に比べて、正常な細胞に及ぼす害が少なくなります。モノクローナル抗体療法とは、食道がん治療の分野で使用されている標的療法の一種です。
モノクローナル抗体は製造ラボで作られ、がんなどの様々な疾患に対する治療に用いられる免疫系蛋白です。がん治療薬として、これらの抗体は、がん細胞や他の細胞上に存在してがん細胞の増殖に関与する特定の標的に結合する性質をもちます。これにより、抗体はがん細胞の死滅、増殖の阻止、転移の抑止などの効果を発揮できるようになります。モノクローナル抗体は点滴によって投与されます。単独で使用されることもありますが、薬や毒素、放射性物質などをがん細胞に直接送り届けるという用途でも用いられます。トラスツズマブは、食道がんに関して研究されているモノクローナル抗体です。食道がん細胞に増殖の指令を送る成長因子蛋白であるHER2の作用を阻害するために、投与されることがあります。
患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。
患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。
今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。
患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。
患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。
ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。
臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
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CTLA-4阻害薬療法:CTLA-4はT細胞の表面に存在する蛋白で、体の免疫反応を抑制する働きがあります。CTLA-4ががん細胞上の別の蛋白、B7に結合すると、T細胞はがん細胞を殺傷しなくなります。CTLA-4阻害薬はCTLA-4に結合することで、T細胞ががん細胞を殺傷できるようにします。イピリムマブはCTLA-4阻害薬の一種です。
- 0期(高度異形成)の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
0期食道上皮内がんの治療法には以下のようなものがあります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- I期食道がんの治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
I期食道扁平上皮がんまたはI期食道腺がんの治療法には以下のようなものがあります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- II期食道がんの治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
II期食道扁平上皮がんまたはII期食道腺がんの治療法には以下のようなものがあります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- III期食道がんの治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
III期食道扁平上皮がんまたはIII期食道腺がんの治療法には以下のようなものがあります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- IV期食道がんの治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
IV期食道扁平上皮がんまたはIV期食道腺がんの治療法には以下のようなものがあります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 再発食道がんの治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 食道がんについてさらに学ぶために
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米国国立がん研究所が提供している食道がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、成人食道がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Esophageal Cancer Treatment (Adult).Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/esophageal/patient/esophageal-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389463]
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免責事項
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お問い合わせ
Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。