患者さん向け がん医療における栄養(PDQ®)

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このPDQがん情報要約では、がんの治療前、治療中、治療後に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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がん医療における栄養の概要

がんの患者さんにとって、良好な栄養は重要です。

栄養とは、食物を摂取し、それを使用して体の成長や、健康の維持、さらには組織の入れ替えを行う過程のことです。良好な栄養は、健康を維持するために重要です。健康的な食事とは、体が必要とする重要な栄養素ビタミンミネラル蛋白質、炭水化物、脂肪、水)を含む飲食物のことです。

がん治療中も治療後も、健康な食事習慣を保つことは重要です。

植物由来の食物を中心とした食事と定期的な運動は、がんの患者さんが治療中と治療後の両方で、健全な体重と体力を維持し、副作用を減らすのに役立ちます。

登録栄養士は医療チームの重要な一員です。

登録栄養士(または栄養士)は、がん治療とがんからの回復に関与する医療専門家チームの一員です。栄養士は患者さん、ご家族、他の医療チームのメンバーと協力して、がん治療中と治療後の患者さんの食事を管理します。

研究によると、がんの患者さんのケアに登録栄養士が加わることで患者さんの延命につながる可能性があることが示されています。

がん自体やがん治療が原因で、栄養面に悪影響を及ぼす副作用が生じる場合があります。

腫瘍が頭部、頸部、食道膵臓肝臓などに生じると、栄養面での問題が起こりやすくなります。

多くの患者さんは、がん治療の影響のために十分な量の食べ物を摂取することができません。以下の種類のがん治療は、栄養に影響を及ぼします:

がん自体やがん治療が原因で、栄養失調になる場合があります。

がんおよびがん治療は、味覚や嗅覚、食欲、十分な量の食物を摂取する能力、さらには摂取物から栄養素を吸収する能力に影響を及ぼします。これが栄養失調という、主要な栄養素が欠如した病態を引き起こすことがあります。アルコールの乱用と肥満は栄養失調のリスクを高める可能性があります。

栄養失調により、患者さんは衰弱、疲弊し、感染への抵抗力が低下して、がん治療を継続できなくなることがあります。結果的に、栄養失調により患者さんの生活の質(QOL)が低下し、命を脅かすことにもなります。がんの増殖や転移に伴い、栄養失調も悪化することがあります。

適正量の蛋白質とカロリーの摂取は、治癒の促進、感染への抵抗、十分なエネルギーの供給にとって重要です。

がんの患者さんでは、食欲不振と悪液質が栄養失調の一般的な原因です。

食欲不振は食欲が失われ、食べたいという気持ちがわかない状態です。これはがんの患者さんによくみられる症状です。食欲不振は、がんの早期の段階で発生する場合もあれば、腫瘍が増殖または転移してから発生する場合もあります。患者さんによっては、がんと診断された時点ですでに食欲不振がみられる場合もあります。進行がんの患者さんは、ほとんどが食欲不振になります。食欲不振は、がんの患者さんにみられる栄養失調の原因のなかで最も多くを占めています。

悪液質とは、脱力、体重の減少、脂肪や筋肉の減少を特徴とする病態です。食事と消化に悪影響を及ぼす腫瘍をもつ患者さんに多くみられます。ものをよく食べているがん患者さんでも、腫瘍が増殖して脂肪や筋肉が蓄積されない状態にあると、悪液質を起こす場合があります。

一部の腫瘍は、体が特定の栄養素を利用する方法に変化を及ぼします。腫瘍が胃や腸、頭頸部に発生した場合、蛋白、炭水化物、脂肪の体内での利用が変化することがあります。患者さんが十分な量を食べているように見えても、食べ物に含まれる栄養素の一部しか吸収できていない場合もあります。

がんの患者さんでは、食欲不振と悪液質が同時に起こることもあります。

がんの治療が栄養に与える影響

化学療法とホルモン療法

化学療法とホルモン療法は栄養に様々な影響を及ぼします。

化学療法は全身の細胞に影響を及ぼします。化学療法では薬物を使用して、がん細胞を殺傷したり細胞分裂を妨げたりすることで、がんの増殖を抑止します。しかし、もともと活発に増殖および分裂する性質を持つ正常な細胞も殺傷してしまいます。そういった細胞は口腔や消化管に存在しています。

ホルモン療法では、ホルモンの追加や阻害、または除去を行います。特定のがんの増殖を遅らせたり抑止したりする目的で行われます。ホルモン療法の種類によっては、体重が増加することがあります。

化学療法とホルモン療法は様々な栄養の問題を引き起こします。

化学療法の副作用として、摂食と消化に問題が起こる場合があります。複数の化学療法薬が投与されると、それぞれの薬剤が異なる副作用を引き起こしたり、副作用が同じでも、より重度になったりすることがあります。

よくみられる副作用には以下のものがあります:

ホルモン療法を受けている患者さんは、体重増加を予防するために食事内容の見直しが必要になる場合があります。

放射線療法

放射線療法は治療対象部位の細胞を殺傷します。

放射線療法は、治療対象部位のがん細胞と正常な細胞の両方を殺傷します。副作用の程度は以下の要因に左右されます:

放射線療法は栄養に影響を及ぼす可能性があります。

消化器系に対する放射線療法では、栄養面の問題を引き起こす副作用が発生します。ほとんどの副作用は放射線療法の開始から2~3週間後に発生し、放射線療法の終了後、数週間で消失します。しかし、副作用によっては、治療の終了後、数ヵ月または数年にわたって継続するものもあります。

よくみられる副作用の例は以下の通りです:

放射線療法が原因で疲労が生じ、その結果として食欲の減退が起きる場合もあります。

手術

手術を行うと、体はより多くの栄養素とエネルギーを必要とするようになります。

手術の治癒や感染に対する防衛、手術からの回復などのために、通常よりも多くのエネルギーと栄養素が必要です。手術前に患者さんに栄養失調がみられる場合には、術後に傷の治りが遅れたり、感染症にかかったりするなどの問題が生じる可能性があります。こうした患者さんには、栄養療法を手術前に開始することもあります。

頭頸部、食道、胃、腸に対する手術は、栄養に影響を及ぼす可能性があります。

ほとんどのがん患者さんが手術を受けます。特定の臓器の全てまたは一部を摘出する手術により、食べ物の摂取や消化に影響が及ぶことがあります。

次の栄養上の問題は手術によって引き起こされます:

免疫療法

免疫療法は栄養に影響を及ぼす可能性があります。

免疫療法の副作用は、患者さんによっても、また投与される免疫療法薬の種類によっても異なります。

よくみられる栄養面での問題には以下のものがあります:

幹細胞移植

幹細胞移植を受ける患者さんには特別な栄養管理が必要です。

化学療法や放射線療法、あるいは幹細胞移植の前または最中に使用される薬剤によって、患者さんに副作用が生じ、普段どおりの食事や消化ができなくなることがあります。

よくみられる副作用には以下のものがあります:

幹細胞移植を受ける患者さんは感染リスクが高くなります。患者さんが移植前に化学療法や放射線療法を受けると、感染に抵抗する白血球の数が減少します。こうした患者さんは安全な食事管理について学び、感染源になるおそれのある食品を避けることが重要です。

幹細胞移植後の患者さんは、急性または慢性の移植片対宿主病(GVHD)のリスクが高くなります。GVHDは消化管肝臓に悪影響を及ぼし、患者さんが食品を摂取してその栄養を吸収する機能に変化をもたらすことがあります。

がん医療における栄養評価

医療チームは食事と体重の推移に関する質問をすることがあります。

スクリーニングを行い、栄養不良のリスクを高める健康上の問題を探します。得られた情報は、患者さんが栄養不良になりそうかどうか、栄養療法が必要かどうかを判断する際の参考になります。

医療チームは以下の点に関する質問を行うことがあります:

全身の健康と疾患の徴候を調べる身体診察が実施されます。患者さんは体重や体脂肪、筋肉量を測定され、体内に過剰に水分が溜まっていないか調べる検査を受けます。

患者さんの栄養状況を改善するために、カウンセリングと食事の変更が行われます。

登録栄養士は患者さんやご家族と共同で、患者さんの栄養面を改善する方法を検討し助言します。また、患者さんに必要な栄養素と食事に基づいて、ケアを行います。食事の変更は、がんやがん治療によって生じる症状を減らすために行われます。摂取する食品の種類や量、食べる頻度、どのように食べるか(特定の温度で、あるいはストローを使用して食べるなど)を変更します。

登録栄養士は医療チームの他のメンバーと協力して、がん治療を受けている患者さんや回復期にある患者さんの栄養面での健全性を調べます。医療チームには、栄養士のほかにも以下の専門家が属しています:

進行がんの患者さんに対する栄養療法の目標は、全体的な治療計画に応じて異なります。

進行がんの患者さんに対する栄養療法の目標は、できるだけ高い生活の質を実現し、苦痛を引き起こす症状を管理することです。

進行がんの患者さんは、抗がん剤療法緩和ケアを受けることもあれば、緩和ケアだけを受けたり、ホスピスケアを利用したりすることもあります。栄養の目標は患者さんによって異なります。治療によっては、患者さんの役に立っていない場合に中止されることがあります。

ケアの焦点ががん治療からホスピスや終末期ケアに移るにつれて、栄養の目標も積極性が薄れて穏やかになり、患者さんをできるだけ快適な状態に保つためのケアに変化します。終末期の栄養に関する詳しい情報については、下記の終末期に必要な栄養のセクションをご覧ください。

症状の治療

がんやがん治療による副作用の影響で普通に食事ができない場合は、患者さんが必要な栄養を摂取できるように変更を行うことがあります。通常は、カロリー蛋白ビタミンミネラルを多く含む食べ物を摂取することが重要です。しかしながら食事計画は、必要な栄養素と食べ物の好みを考慮して立てるべきです。

以下では、がんやがん治療が原因で生じる一般的な症状をいくつか取り上げ、それらに対する治療法や管理法を示します。

食欲不振

食欲不振食欲が低下し、ものを食べたいと思わない状態)のがん患者さんには、以下のような対策が有効となる場合があります:

食事にこれらの変更を加えても食欲不振が軽減されない場合は、毎日十分な栄養をとるために、経管栄養が必要になる場合があります。

食欲を増進させる薬物が用いられることもあります。詳細については、食欲不振と体重減少の治療薬のセクションをご覧ください。

吐き気

がんの患者さんの吐き気に対処するには以下の対策が役立ちます:

嘔吐

がんの患者さんの嘔吐に対処するには以下の対策が役立ちます:

ドライマウス

がんの患者さんのドライマウスには以下の対策が役立ちます:

口内炎

口内炎がみられる患者さんには、以下のような対策が実施されます:

味覚の変化

がんの患者さんの味覚の変化には以下の対策が役立ちます:

喉の痛みと嚥下障害

がんの患者さんの喉の痛みや嚥下障害には以下の対策が役立ちます:

乳糖不耐性

乳糖不耐性の症状がみられる患者さんには、以下のような対策を実施します:

体重の増加

がんの患者さんが体重の増加を予防するには以下の対策が役立ちます:

栄養サポートの種類

栄養サポートは、食べ物を食べられない患者さんや正常に消化できない患者さんを支援するケアです。

できるだけ口から食物を食べることが理想です。しかし、がんやがん治療により発生した障害のため、口からは十分に食物を摂取できない患者さんもいます。

栄養サポートは複数の方法で行うことができます。

栄養士によるカウンセリング食事の変更のほかに、栄養療法では、栄養補助ドリンクや経腸栄養非経腸栄養などを用いたサポートが行われます。栄養補助ドリンクは、がんの患者さんが必要な栄養素を摂取するのに役立ちます。エネルギー、蛋白質、脂肪、炭水化物食物繊維ビタミンミネラルを補給することができます。しかし、これだけで患者さんの栄養を全てまかなうことはできません。

必要な量のカロリーと栄養を摂取できない患者さんは、次の方法で栄養の供給を受けることがあります。

がん治療中に栄養サポートを行えば、がんの患者さんの生活の質を改善することができますが、栄養サポートの実施を決定する前にその害について検討を行うべきです。患者さんと医療チームは、各種の栄養サポートの有害性と有益性について話しあうべきです。終末期の栄養サポートの使用に関する詳しい情報については、下記の終末期に必要な栄養のセクションをご覧ください。

経腸栄養法

経腸栄養法は経管栄養法とも呼ばれます。

経腸栄養法では、胃や小腸に留置したチューブから液体状の栄養素(栄養剤)を注入します。以下のような栄養チューブが用いられます:

栄養剤の種類は、患者さんに固有の必要性に基づいて決定されます。糖尿病などの疾患を抱えている患者さんや、宗教的または文化的な食習慣といった別種の必要性がある患者さん用の栄養剤も存在します。

非経腸栄養法

非経腸栄養法では、血流内に直接栄養が注入されます。

非経腸栄養法は、患者さんが口から食べ物を摂取できず、なおかつ経腸栄養法も行えない場合に用いられます。非経腸栄養法では、胃や腸での食べ物の消化は行われません。この方法では、静脈内に挿入されたカテーテルから栄養液が直接血液中に注入されます。この栄養液には、蛋白質、脂肪、ビタミン、ミネラルなどが含まれています。

カテーテルは胸部か腕の静脈に留置します。

中心静脈アクセスカテーテルは皮膚の下から上胸部の大きな静脈の中に留置します。外科医が適切な場所にカテーテルを配置します。この種類のカテーテルは非経腸栄養法を長期間実施する場合に用いられます。

中心静脈カテーテル:図では、中心静脈カテーテルが右鎖骨下方の静脈から上大静脈と呼ばれる心臓右上の大きな静脈まで通っている。拡大図は、胸部右側の中心静脈カテーテルを透明なプラスチックのドレッシングで覆っている様子を示している。

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中心静脈カテーテル。中心静脈カテーテルは静脈に挿入する細く柔軟な管で、通常は右鎖骨下方から上大静脈という心臓右上の大きな静脈まで通します(到達させます)。このカテーテルは、静脈内への輸液や輸血、化学療法薬などの薬物投与に用いられます。また、血液サンプルの採取にも使用されます。何度も針を刺さずにすむよう、数週間から数ヵ月にわたって留置することがあります。

末梢静脈カテーテルは腕の静脈の中に留置します。訓練を受けた医療スタッフが適切な場所に末梢静脈カテーテルを配置します。通常、この種類のカテーテルは、中心静脈アクセスカテーテルを使用できない患者さんに、非経腸栄養法を短期間実施する場合に用いられます。

末梢静脈カテーテル:図では、末梢静脈カテーテルを前腕の静脈に挿入し、カテーテルのチューブを固定して端部にキャップをかぶせている。

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末梢静脈カテーテル。末梢静脈カテーテルは細くて柔軟性のある管で、静脈に挿入します。通常は前腕や手の甲から挿入します。このカテーテルは、静脈内への輸液や輸血、化学療法薬などの薬物投与に用いられます。

カテーテルが体内に入る部位に感染や出血がないか頻繁なチェックが行われます。

食欲不振と体重減少の治療薬

食欲不振と体重減少の治療で、栄養療法とともに薬物が使用されることがあります。

摂食に影響を及ぼし、体重減少の原因となるがん症状副作用を早期に治療することが重要です。栄養療法薬物投与も、がんやがん治療が体重減少に及ぼす影響を軽減することができます。

食欲不振と体重減少の治療には様々な薬物が使用されます。

プレドニゾンメゲストロールなど、食欲を増進させて体重増加を引き起こす薬物が、食欲不振と体重減少の治療に使用されることがあります。複数の研究で、これらの薬物の効果が長く持続しない場合や効果がない場合があることが示されています。複数の薬物を併用する治療は、1種類の薬物による治療より効果が高い場合があります。しかし薬物の併用による治療を受けた患者さんには、より多くの副作用がみられることがあります。

終末期に必要な栄養

終末期には栄養の必要性が変化します。

終末期の患者さんには、症状の緩和と十分な栄養摂取が栄養療法の目標となります。

終末期には以下のような症状がよく起こります:

嚥下障害がある患者さんは、薄い飲み物よりも濃い飲み物のほうが飲み込みやすいことがあります。

患者さんはしばしば空腹感を全く感じなくなり、ごく少量しか食べ物を欲しなくなる場合もあります。水を少し飲む、氷を口に含む、口腔ケアを行うなどの方法で、最期の数日間の渇きを癒やすことができます。医療チームとよくコミュニケーションをとることは、患者さんの栄養の必要性に関する変化を把握するうえで重要です。

患者さんとご家族の方が、終末期に栄養と水分をどのくらい摂取するかを判断します。

がんの患者さんとその介護者には、十分な説明を受けた上で判断を下す権利があります。患者さんの宗教的または文化的な必要性が、こうした判断に影響を及ぼすこともあります。医療チームは、判断を下すにあたって、患者さんの宗教や文化に関する指導者と連携する場合があります。医療チームと登録栄養士は、終末期に患者さんの栄養サポートを行う有益性とリスクを説明することができます。患者さんの余命が1ヵ月未満であれば、ほとんどの場合、有益性よりも有害性の方が大きくなります。

余命1カ月以上の患者さんの場合、栄養サポートの有益性として以下のものが考えられます:

終末期に経腸栄養法を使用するリスクには以下のものがあります:

がんにおける栄養の動向

がんの患者さんは予後を改善するために、特別な食事を試すことがあります。

がんの患者さんは治療の効果を高めたり、副作用予防したり、がんそのものを治療したりするために、特別な食事を試すことがあります。しかし、こうした特別な食事のほとんどに有効性の根拠はありません。

菜食主義の食事

ベジタリアンの食習慣、すなわち菜食主義の食事が、がん治療の副作用の軽減や患者さんの予後の改善につながるかどうかは不明です。患者さんがすでに菜食主義の食事を実践している場合に、別の食事法に切り替える必要があることを示す証拠はありません。

マクロビオティックダイエット

マクロビオティックダイエットは高炭水化物、低脂肪、植物中心の食事です。この食事ががんの患者さんに有用であることを実証した研究はありません。

ケトン食

ケトン食では炭水化物を制限し、脂肪を多く摂取します。この食事の目的は、腫瘍細胞が成長と増殖に利用するブドウ糖(グルコース)の量を減らすことです。この食事は、必要な脂肪、炭水化物、蛋白質の量が厳密に決まっているため、実践が容易ではありません。しかし、この食事は安全です。

現在、複数の臨床試験で、ケトン食が膠芽腫の活性に影響を及ぼすかどうかを調べるために、膠芽腫の患者さんの登録が行われています。ケトン食を始めたいと考えている膠芽腫の患者さんは、担当医に相談し、登録栄養士の協力の下で行うようにしてください。しかし、ケトン食が腫瘍やその症状にどのような影響を及ぼすかは、現在のところ不明です。

同様に、卵巣がん子宮内膜がんの女性を対象に、ケトン食と高繊維・低脂肪食を比較した研究では、ケトン食は安全で容認できるものであるということがわかりました。ケトン食が、卵巣腫瘍や子宮内膜腫瘍、あるいはその症状に影響を及ぼすかどうかを判断する十分な証拠はありません。

がんの患者さんは栄養補助食品を使用していることがあります。

栄養補助食品はケトン食に追加される製品です。通常は服用し、通常は1種類以上の食用成分が含まれています。がんの患者さんは、症状の改善やがんの治療を目的として、栄養補助食品を摂取することがあります。

ビタミンC

ビタミンCは体の機能や健康を保つために少量だけ必要な栄養素です。感染を防ぎ、傷を治し、組織の健康を保つ働きがあります。ビタミンCは果物や野菜に含まれています。栄養補助食品として摂取されることもあります。がんの治療として利用されるビタミンCの静脈内投与に関する詳しい情報については、ビタミンCの静脈内投与をご覧ください。

プロバイオティクス

プロバイオティクス(腸内有益菌)は、消化腸機能を整える目的で栄養補助食品として用いられる生きた微生物です。消化管の健康維持に役立つこともあります。

いくつかの研究で、放射線療法または化学療法中にプロバイオティクスを摂取すると、これらの治療により引き起こされる下痢の予防に有効となりうることが示されています。この効果は、腹部への放射線療法を受けている患者さんに顕著です。腹部への放射線療法または下痢を引き起こすことが知られている化学療法を受けているがんの患者さんには、プロバイオティクスが有効となる可能性があります。同様に、プロバイオティクス摂取が有益となる可能性について、免疫療法を受けているがん患者さんを対象に研究が進められています。

メラトニン

メラトニン松果体(脳の中央付近に位置する小さな器官)で作られるホルモンです。メラトニンは体の睡眠サイクルの制御に関与します。製造ラボで作られ、栄養補助食品として摂取されることもあります。

複数の小規模研究で、化学療法や放射線療法とメラトニンの栄養補助食品の併用が固形腫瘍の治療に有効となりうることが示されています。治療の副作用を軽減する場合があります。メラトニンの副作用は確認されていません。

経口グルタミン

経口グルタミンアミノ酸の一種で、化学療法や放射線療法によって引き起こされる下痢や粘膜炎消化器系の内側を覆う組織の炎症で、よく見られるものに口内炎がある)の治療薬として研究されています。経口グルタミンには、粘膜炎を予防し、症状を軽減する効果があります。

腹部への放射線療法を受けているがんの患者さんに、経口グルタミンが有効となる場合があります。また、経口グルタミンは下痢の症状を和らげます。そのおかげで、患者さんが計画された治療を継続できる場合があります。

栄養とがん医療についてさらに学ぶために

米国国立がん研究所

米国国立がん研究所(NCI)が提供している栄養がん治療に関する情報については、副作用(英語)をご覧ください。

機関

栄養についての一般的な情報とその他の資源については、以下をご覧ください:

書籍

最新の臨床試験

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、がんの治療前、治療中、治療後に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

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本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board.PDQ Nutrition in Cancer Care.Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/side-effects/appetite-loss/nutrition-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389440]

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