ご利用について
医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、膀胱がんの治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Adult Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
CONTENTS
- 膀胱がんに関する一般情報
-
発生率および死亡率
膀胱がんは米国で、肺がん、前立腺がん、乳がん、結腸がん、リンパ腫に次いで6番目に一般的ながんである。膀胱がんは男性では3番目に一般的ながんであり、女性では11番目に一般的ながんである。毎年おおよそ70,000例の新規症例のうち、約53,000例が男性で、約18,000例が女性である。毎年おおよそ15,000例の死亡のうち、10,000例以上が男性で、女性における死亡は5,000例未満である。性別によるこの相違の理由は、十分に解明されていない。
米国において、2020年に推定される膀胱がんの新規症例数および死亡数:[ 1 ]
解剖学
尿路は、腎臓、尿管、膀胱、および尿道で構成されている。尿路は、腎盂から近位尿道にかけて移行細胞の尿路上皮で覆われている。移行上皮がん(尿路上皮がんとも呼ばれる)はこの経路に沿っていずれの部位にも発生しうる。
病理組織学
正常では、膀胱、腎下部(腎盂)、尿管、および近位尿道は、移行上皮(尿路上皮とも呼ばれる)という特殊な粘膜で覆われている。これらの組織に形成されるほとんどのがんが、移行上皮に由来する移行上皮がん(尿路上皮がんとも呼ばれる)である。(詳しい情報については、腎細胞がんの治療および腎盂と尿管の移行上皮がんの治療に関するPDQ要約を参照のこと。)
膀胱の移行上皮がんは以下に示すように、低悪性度のものも高悪性度のものもある:
膀胱がんはまた、膀胱壁深部の厚い筋肉である固有筋層(排尿筋とも呼ばれる)への浸潤に基づいて、筋層浸潤性および筋層非浸潤性疾患に分けられる。
寄生虫のビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)の膀胱への感染など、慢性炎症状態では、膀胱に扁平上皮化生が起こりうる;膀胱の扁平上皮がんの発生率は他の状況と比べて慢性炎症状態では高くなる。移行上皮がんおよび扁平上皮がんのほかに、膀胱には腺がん、小細胞がん、および肉腫が形成される可能性がある。米国では、移行上皮がんが膀胱がんのほとんど(90%超)を占める。しかしながら、かなりの数の移行上皮がんが、扁平上皮または他の分化領域を有する。
発がんおよび危険因子
加齢はほとんどのがんに対する最も重要な危険因子である。膀胱がんに対する他の危険因子は以下の通りである:
発がん物質への曝露と膀胱がんを結びつける強い証拠がある。米国において膀胱がんに対する最も一般的な危険因子は喫煙である。全膀胱がんの最大半数が喫煙を原因とし、喫煙は個人の膀胱がんリスクをベースラインよりも2~4倍高めると推定されている。[ 18 ][ 19 ]N-acetyltransferase-2のあまり機能的でない多型(アセチル化遅行表現体として知られる)を有する喫煙者は他の喫煙者よりも膀胱がんリスクが高いが、これはおそらく発がん物質を解毒する能力が低いためであろう。
特定の職業曝露もまた膀胱がんと関連しており、織物染料やゴムタイヤ産業;塗装工;革職人;靴屋;およびアルミニウム関連、鉄工所、製鋼所の労働者において比較的高い割合の膀胱がんが報告されている。膀胱がん発生と関係する特異的化学物質としては、β-ナフチルアミン、4-アミノビフェニル、ベンチジンが挙げられる。これらの化学物質は現在、西欧諸国では一般的に禁止されているが、依然として使用されている他の多くの化学物質もまた膀胱がんの原因として疑われている。[ 19 ]
化学療法薬のシクロホスファミドへの曝露もまた、膀胱がんリスクの増加に関連している。
慢性尿路感染症および寄生虫のビルハルツ住血吸虫(S. haematobium)の感染もまた膀胱がん(しばしば扁平上皮がん)リスクの増加に関連している。これらの状況で慢性炎症は、がん発生において重要な役割を果たしていると考えられる。
臨床的特徴
膀胱がんは典型的に肉眼的または顕微鏡的血尿を呈する。これより頻度が低いが、患者が頻尿、夜尿症、排尿障害のほか、上皮内がん患者に比較的よくみられる症状を訴えることがある。上部尿路の尿路上皮がんを有する患者では、腫瘍による閉塞が原因の疼痛を呈することがある。
尿路上皮がんはしばしば多病巣性である-腫瘍が1つでも見つかれば、尿路上皮全体を評価する必要がある。膀胱がん患者では、病期分類およびサーベイランスのために上部尿路の画像検査が必須である。これは、尿管鏡検査、膀胱鏡検査中の逆行性腎盂造影、静脈性腎盂造影、またはコンピュータ断層撮影(CT)尿路造影により達成できる。同様に、上部尿路の移行上皮がん患者も膀胱がんを発症するリスクが高い;これらの患者では定期的な膀胱鏡検査と対側上部尿路のサーベイランスが必要である。
診断法
膀胱がんが疑われる場合、最も有用な診断検査は膀胱鏡検査である。CTスキャンなどの放射線学的検査や超音波検査は、膀胱がん発見に役立つほど十分に高い感度を有さない。膀胱鏡検査は泌尿器科クリニックで実施可能である。
膀胱鏡検査でがんが見つかった場合、患者は典型的に麻酔下での双手診、および腫瘍の経尿道的切除および/または生検を実施できるように手術室での再度の膀胱鏡検査のスケジュールが組まれる。高悪性度がん(上皮内がんを含む)または浸潤性がんが見つかった場合、患者は腹部と骨盤部のCTスキャン(またはCT尿路造影)および胸部X線検査または胸部CTスキャンで病期分類が行われる。アルカリホスファターゼ値が肝臓以外の原因で上昇しているか、骨転移を示唆する症状を有する患者は骨スキャンを受ける。
予後因子
膀胱がんにおける主要な予後因子は以下の通りである:
- 膀胱壁への浸潤の深さ。
- 腫瘍の病理学的悪性度。
- 上皮内がんの有無。
筋層非浸潤性がんでは、以下の因子も予後を示す:[ 20 ]
- 腫瘍の数。
- 腫瘍の大きさ(例、3cm超または3cm未満)。
- 粘膜固有層への浸潤(Ta vs T1)。
- 腫瘍が原発腫瘍であるか、再発腫瘍であるか。
表在性腫瘍のほとんどは高分化型である。低分化型で、大きく、多発性の表在性腫瘍が認められる患者または膀胱粘膜の他の部位に上皮内がん(Tis)が認められる患者は、再発および浸潤性がんの発生リスクが最も高い。このような患者は、尿路上皮全体にがんが発生するリスクがあると考えられる。
生存
膀胱がんにより死亡する患者では、ほとんど常にがんが膀胱から他の臓器に転移している。低悪性度膀胱がんが膀胱の筋層にまで増殖し転移することはまれであるため、低悪性度(悪性度I)膀胱がん患者がこのがんにより死亡することはきわめてまれである。にもかかわらず、低悪性度膀胱がん患者は切除を要する多発性の再燃を経験しうる。
膀胱がんによるほぼすべての死亡が、膀胱筋層深くに浸潤し、他の臓器に拡がる可能性がはるかに高い高悪性度疾患の患者におけるものである。
膀胱がんであると新たに診断された患者の約70~80%が表在性膀胱腫瘍(すなわち、Ta期、Tis期、またはT1期)を有する。これらの患者の予後は主に腫瘍の悪性度に依存する。高悪性度腫瘍の患者は、腫瘍が筋層浸潤を来していなくてもがんにより死亡するリスクが有意に高い。[ 21 ]高悪性度腫瘍の患者のうち、表在性の筋層非浸潤性膀胱がんを呈する患者は通常治癒可能であり、筋層浸潤性疾患を有する患者でもときに治癒が得られる。[ 22 ][ 23 ][ 24 ]諸研究から、遠隔転移を来している一部の患者が多剤併用化学療法レジメンによる治療後に長期完全奏効を達成していることが実証されているが、こうした患者のほとんどはリンパ節に限局した転移であり、ほぼ正常に近いパフォーマンスステータスを有している。[ 25 ][ 26 ]
すべての病期の膀胱がん患者に適した臨床試験があるので、可能であればいつでも、標準治療を向上させるべくデザインされた臨床試験を検討すべきである。
臨床試験に関する一般情報は、NCIウェブサイトからも入手することができる。
追跡
膀胱がんは診断時に非浸潤性であっても再発する傾向がある;したがって、標準的な診療では膀胱がんの診断後、尿路のサーベイランスが実施される。しかしながら、サーベイランスによって進行率、生存率、またはQOLに影響があるかどうかを評価する試験は実施されておらず、最適なサーベイランススケジュールを決定した臨床試験もない。尿路上皮がんは、患者の膀胱または尿路上皮全体に広く存在する遺伝子変異のためにがんが出現する、いわゆる領域欠損を反映していると考えられる。そのため、膀胱腫瘍を切除された患者は、しばしば最初の腫瘍部位とは異なる膀胱部位に後に腫瘍が再発することが多い。同様に(ただし、頻度は低いが)、こうした患者では腫瘍が上部尿路(すなわち、腎盂または尿管)に現れることもある。
こうした再発パターンに対する別の説明は、腫瘍が切除された際に分裂したがん細胞が尿路上皮の他の部位に再び根づく可能性があるということである。この2番目の理論の裏付けとして、腫瘍は最初のがんから上流よりも下流で再発する可能性が高いということである。膀胱がんが上部尿路に再発する頻度よりも、上部尿路がんが膀胱に再発する頻度の方が高い。[ 27 ][ 28 ][ 29 ][ 30 ]
関連する要約
膀胱がんに関する情報を含む他のPDQ要約には以下のものがある:
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- 膀胱がんの細胞分類
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膀胱がんの90%以上が尿路上皮由来の移行上皮がんである。約2~7%が扁平上皮がん、2%が腺がんである。[ 1 ]腺がんは、尿膜管由来かまたは非尿膜管由来かのいずれかであるが、後者のタイプは一般に、慢性刺激による移行上皮の化生から発生すると考えられている。小細胞がんも膀胱に発生することがある。[ 2 ][ 3 ]膀胱肉腫は非常にまれである。
細胞異型、核異常、および核分裂像の数に基づく移行上皮がんの病理学的悪性度は予後に重大な意味をもっている。
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- 膀胱がんの病期情報
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膀胱がんの臨床病期分類は、腫瘍の膀胱壁への深達度によって決定される。深達度を決定するためには、以下を評価するための生検および麻酔下の検査を含む膀胱鏡検査が必要である:
- 触知可能な腫瘤の大きさと可動性。
- 膀胱壁の硬結度。
- 膀胱外への進展または隣接臓器への浸潤の存在。
たとえコンピュータ断層撮影(CT)および/または磁気共鳴画像法(MRI)スキャンのほか、これ以外の画像診断法を用いても、臨床病期分類で腫瘍の範囲がしばしば過小評価されることがあり、特に低分化型で深達度がより高いがんの場合にはなおさらである。CT画像法は標準の病期分類法である。CT画像法の代わりにMRIスキャンまたはポジトロン放射断層撮影スキャンを実施する臨床的有益性は実証されていない。[ 1 ][ 2 ]
AJCC病期分類とTNMの定義
米国がん合同委員会(AJCC)は、膀胱がんを定義するためにTNM(腫瘍、リンパ節、転移)分類による病期判定を指定している。[ 3 ]
表1.TNM分類における0期および0is期の定義a 病期 TNM 記述 図解 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 aAJCCから許諾を得て転載:Urinary Bladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp.757–65. 0a Ta、N0、M0 Ta = 非浸潤性乳頭がん。 N0 = リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 0is Tis、N0、M0 Tis:非浸潤性(in situ)尿路上皮がん:平坦型腫瘍(flat tumor)。 N0 = リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表2.TNM分類におけるI期の定義a 病期 TNM 記述 図解 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 aAJCCから許諾を得て転載:Urinary Bladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp.757–65. I T1、N0、M0 T1 = 粘膜固有層(上皮下結合組織)に浸潤する腫瘍。 N0 = リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表3.TNM分類におけるII期の定義a 病期 TNM 記述 図解 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移;p = 病理学的。 aAJCCから許諾を得て転載:Urinary Bladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp.757–65. II T2a、N0、M0 pT2a = 固有筋層の浅層に浸潤する腫瘍(内側1/2)。 N0 = リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 T2b、N0、M0 pT2b = 固有筋層の深層に浸潤する腫瘍(外側1/2)。 N0 = リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表4.TNM分類におけるIII期の定義a 病期 TNM 記述 図解 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移;p = 病理学的。 aAJCCから許諾を得て転載:Urinary Bladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp.757–65. IIIA T3a、T3b、T4a、N0、M0 -pT3a = 顕微鏡的。 -pT3b = 肉眼的(膀胱外の腫瘤)。 -T4a = 前立腺間質、子宮、または膣に直接浸潤する膀胱外の腫瘍。 N0 = リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 T1-T4a、N1、M0 T1 = 粘膜固有層(上皮下結合組織)に浸潤する腫瘍。 T2 = 固有筋層に浸潤する腫瘍。 -pT2a = 固有筋層の浅層に浸潤する腫瘍(内側1/2)。 -pT2b = 固有筋層の深層に浸潤する腫瘍(外側1/2)。 T3 = 膀胱周囲の軟部組織に浸潤する腫瘍。 -pT3a = 顕微鏡的。 -pT3b = 肉眼的(膀胱外の腫瘤)。 T4 = 次のいずれかに直接浸潤する膀胱外の腫瘍:前立腺間質、精嚢、子宮、膣、骨盤壁、腹壁。 -T4a = 前立腺間質、子宮、または膣に直接浸潤する膀胱外の腫瘍。 N1 = 小骨盤内の1つの所属リンパ節(膀胱周囲、閉鎖、内腸骨および外腸骨、または仙骨リンパ節)に転移を認める。 M0 = 遠隔転移を認めない。 IIIB T1-4a、N2、N3、M0 T1 = 粘膜固有層(上皮下結合組織)に浸潤する腫瘍。 T2 = 固有筋層に浸潤する腫瘍。 -pT2a = 固有筋層の浅層に浸潤する腫瘍(内側1/2)。 -pT2b = 固有筋層の深層に浸潤する腫瘍(外側1/2)。 T3 = 膀胱周囲の軟部組織に浸潤する腫瘍。 -pT3a = 顕微鏡的。 pT3b = 肉眼的(膀胱外の腫瘤)。 T4 = 次のいずれかに直接浸潤する膀胱外の腫瘍:前立腺間質、精嚢、子宮、膣、骨盤壁、腹壁。 -T4a = 前立腺間質、子宮、または膣に直接浸潤する膀胱外の腫瘍。 N2 = 小骨盤内の複数の所属リンパ節(膀胱周囲、閉鎖、内腸骨および外腸骨、または仙骨リンパ節)に転移を認める。 N3 = 総腸骨リンパ節に転移を認める。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表5.TNM分類におけるIV期の定義a 病期 TNM 記述 図解 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移;p = 病理学的。 aAJCCから許諾を得て転載:Urinary Bladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp.757–65. IVA T4b、N0、M0 -T4b = 骨盤壁または腹壁に浸潤する膀胱外の腫瘍。 N0 = リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 すべてのT、すべてのN、M1a TX = 原発腫瘍の評価が不可能。 T0 = 原発腫瘍を認めない。 -Ta = 非浸潤性乳頭がん。 Tis:非浸潤性(in situ)尿路上皮がん:平坦型腫瘍(flat tumor)。 T1 = 粘膜固有層(上皮下結合組織)に浸潤する腫瘍。 T2 = 固有筋層に浸潤する腫瘍。 -pT2a = 固有筋層の浅層に浸潤する腫瘍(内側1/2)。 -pT2b = 固有筋層の深層に浸潤する腫瘍(外側1/2)。 T3 = 膀胱周囲の軟部組織に浸潤する腫瘍。 -pT3a = 顕微鏡的。 -pT3b = 肉眼的(膀胱外の腫瘤)。 T4 = 次のいずれかに直接浸潤する膀胱外の腫瘍:前立腺間質、精嚢、子宮、膣、骨盤壁、腹壁。 -T4a = 前立腺間質、子宮、または膣に直接浸潤する膀胱外の腫瘍。 -T4b = 骨盤壁または腹壁に浸潤する膀胱外の腫瘍。 NX = リンパ節の評価が不可能。 N0 = リンパ節に転移を認めない。 N1 = 小骨盤内の1つの所属リンパ節(膀胱周囲、閉鎖、内腸骨および外腸骨、または仙骨リンパ節)に転移を認める。 N2 = 小骨盤内の複数の所属リンパ節(膀胱周囲、閉鎖、内腸骨および外腸骨、または仙骨リンパ節)に転移を認める。 N3 = 総腸骨リンパ節に転移を認める。 M0 = 遠隔転移を認めない。 -M1a = 総腸骨を越えたリンパ節に限局した遠隔転移を認める。 IVB すべてのT、すべてのN、M1b TX = 原発腫瘍の評価が不可能。 T0 = 原発腫瘍を認めない。 -Ta = 非浸潤性乳頭がん。 Tis:非浸潤性(in situ)尿路上皮がん:平坦型腫瘍(flat tumor)。 T1 = 粘膜固有層(上皮下結合組織)に浸潤する腫瘍。 T2 = 固有筋層に浸潤する腫瘍。 -pT2a = 固有筋層の浅層に浸潤する腫瘍(内側1/2)。 -pT2b = 固有筋層の深層に浸潤する腫瘍(外側1/2)。 T3 = 膀胱周囲の軟部組織に浸潤する腫瘍。 -pT3a = 顕微鏡的。 -pT3b = 肉眼的(膀胱外の腫瘤)。 T4 = 次のいずれかに直接浸潤する膀胱外の腫瘍:前立腺間質、精嚢、子宮、膣、骨盤壁、腹壁。 -T4a = 前立腺間質、子宮、または膣に直接浸潤する膀胱外の腫瘍。 -T4b = 骨盤壁または腹壁に浸潤する膀胱外の腫瘍。 NX = リンパ節の評価が不可能。 N0 = リンパ節に転移を認めない。 N1 = 小骨盤内の1つの所属リンパ節(膀胱周囲、閉鎖、内腸骨および外腸骨、または仙骨リンパ節)に転移を認める。 N2 = 小骨盤内の複数の所属リンパ節(膀胱周囲、閉鎖、内腸骨および外腸骨、または仙骨リンパ節)に転移を認める。 N3 = 総腸骨リンパ節に転移を認める。 M1b = リンパ節以外の遠隔転移を認める。 尿路上皮の組織型に対して、世界保健機関/International Society of Urologic Pathologyが推奨している現在の悪性度分類システムに合致するように低悪性度および高悪性度の指定が用いられる。[ 3 ]
扁平上皮がんおよび腺がんに対して、表の悪性度分類が推奨される。[ 3 ]
表6.組織学的悪性度(G)a G Gの定義 aAJCCから許諾を得て転載:Urinary Bladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp.757–65. GX 悪性度の評価が不可能。 G1 高分化型。 G2 中分化型。 G3 低分化型。 参考文献- Cowan NC, Crew JP: Imaging bladder cancer. Curr Opin Urol 20 (5): 409-13, 2010.[PUBMED Abstract]
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- 膀胱がんに対する治療法選択肢の概要
-
筋層非浸潤性膀胱がん
筋層非浸潤性膀胱がん(Ta、Tis、T1)の治療はリスク層別化に基づく。実質的にすべての患者が最初は膀胱腫瘍の経尿道的切除(TUR)とその直後に単回の膀胱腔内注入化学療法(米国では一般的にマイトマイシンCが用いられる)で治療される。[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ][ 7 ]
上記の治療に続くその後の治療はリスクに基づき、典型的には、以下のいずれか1つが実施される:[ 6 ][ 7 ][ 8 ][ 9 ]
- 再燃または再発に対するサーベイランス(典型的に再発または進行リスクが低い腫瘍に用いられる)。
- 最低1年間のカルメット・ゲラン結核予防ワクチン(BCG)の膀胱腔内注入療法 + 再燃に対するサーベイランス(典型的には筋層浸潤性疾患への進行リスクが中等度または高い腫瘍に対して用いられる)。
- 追加の膀胱腔内注入化学療法(典型的には再発リスクが高いが、筋層浸潤性疾患への進行リスクは低い腫瘍に用いられる)。
筋層浸潤性膀胱がん
治癒を目標とする筋層浸潤性膀胱がん患者に対する標準治療は、シスプラチンをベースにした術前多剤併用化学療法とその後の根治的膀胱切除術および尿路変向術または放射線療法と同時併用化学療法のいずれかである。[ 10 ][ 11 ][ 12 ][ 13 ]他の治療アプローチには以下のものがある:
新たに膀胱がんであると診断された患者の多くが、臨床試験参加の候補者とされる。
小腸および大腸から低圧の尿を溜める袋を作る形成術によって体外ドレナージが不要になり、尿道からの排尿が可能となる患者も多い。このような形成術は、膀胱切除術が必要な患者のQOLを改善するためにデザインされている。[ 19 ]
表7.膀胱がんに対する標準治療法の選択肢 病期( 標準治療法の選択肢 BCG = カルメット・ゲラン結核予防ワクチン;EBRT = 外照射療法;TNM = T、腫瘍の大きさおよび隣接組織へのがんの拡がり;N、隣接リンパ節へのがんの拡がり;M、転移すなわち身体の別の部位へのがんの拡がり;TUR = 経尿道切除術。 0期の膀胱がん TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法 TURと電気凝固術との併用 TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、定期的なBCG膀胱腔内注入療法 TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、さらに膀胱腔内注入化学療法 膀胱部分切除術(適応はまれである) 根治的膀胱切除術(広範囲のまたは難治性の表在性高悪性度腫瘍を有するまれな、ごく限られた患者に実施する) I期の膀胱がん TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法 TURと電気凝固術との併用 TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、定期的なBCG膀胱腔内注入療法 TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、さらに膀胱腔内注入化学療法 膀胱部分切除術(適応はまれである) 広範囲のまたは難治性の表在性腫瘍が認められる特定の患者に実施する根治的膀胱切除術 II期およびIII期の膀胱がん 根治的膀胱切除術 術前多剤併用化学療法とその後に実施する根治的膀胱切除術 同時併用化学療法を併用するまたは併用しないEBRT 膀胱部分切除術(特定の患者に施行) TURと電気凝固術との併用(特定の患者に施行) IV期の膀胱がん T4b、N0、M0 化学療法単独 根治的膀胱切除術 根治的膀胱切除術とその後の化学療法 根治的膀胱切除術単独 同時併用化学療法を併用するまたは併用しないEBRT 症状緩和目的の尿路変向術または膀胱切除術 すべてのT、すべてのN、M1 化学療法を単独または局所治療の補助療法として実施 免疫療法 症状緩和目的のEBRT 症状緩和目的の尿路変向術または膀胱切除術 再発膀胱がん 多剤併用化学療法 免疫療法 標的療法 新たな表在性または限局性腫瘍の手術 緩和療法 臨床試験 参考文献- Sylvester RJ, Oosterlinck W, van der Meijden AP: A single immediate postoperative instillation of chemotherapy decreases the risk of recurrence in patients with stage Ta T1 bladder cancer: a meta-analysis of published results of randomized clinical trials. J Urol 171 (6 Pt 1): 2186-90, quiz 2435, 2004.[PUBMED Abstract]
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- 0期の膀胱がんの治療
-
0期の膀胱がんに対する標準治療法の選択肢
0期の膀胱腫瘍患者は、新たな腫瘍形成の傾向が強いものの、さまざまな治療法により治癒可能である。Ta期またはT1期の膀胱腫瘍患者を最低20年または死亡するまで追跡したシリーズにおいて、初回切除後の膀胱がんの再発リスクは80%であった。[ 1 ]再発よりも懸念されるものは、筋層浸潤性、局所進行性、または転移性膀胱がんに進行するリスクである。低悪性度腫瘍患者における進行はまれであるが、高悪性度がん患者での進行は一般的である。
TaG3がん患者125人を15~20年間追跡した1件のシリーズの報告では、39%がより進行した病期のがんに進行した一方、尿路上皮がんで死亡したのは26%であった。これに対して、TaG1腫瘍患者23人で死亡した者はなく、進行したのは5%であった。[ 2 ]再発および進行に対する危険因子は以下の通りである:[ 2 ][ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ]
- 高悪性度病変。
- 上皮内がんの存在。
- 3cm超の腫瘍。
- 多発性腫瘍。
- 膀胱がんの既往歴。
0期の膀胱がんの標準治療法には、以下の選択肢がある:
- 経尿道切除術(TUR)と電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法。
- TURと電気凝固術との併用療法。
- TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、定期的なカルメット・ゲラン結核予防ワクチン(BCG)膀胱腔内注入療法。
- TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、さらに膀胱腔内注入化学療法。
- 膀胱部分切除術(適応はまれである)。
- 根治的膀胱切除術(広範囲のまたは難治性の表在性高悪性度腫瘍を有するまれな、ごく限られた患者に実施する)。
経尿道切除術(TUR)と電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法
TURと電気凝固術との併用療法が、最も一般的かつ保存的な治療方法である。その後の膀胱腫瘍の進行がないか注意深いサーベイランスが重要である。TUR後、ほとんどの膀胱がんが再発するため、TUR後はしばしば直後に膀胱腔内注入化学療法が1回実施される。多くのランダム化比較試験でこの実践が評価されており、7件の試験のメタアナリシスでは、単回の膀胱腔内注入化学療法によって再発のオッズが39%低下したことが報告された(オッズ比[OR]、0.61;P < 0.0001)。[ 7 ][ 8 ]しかしながら、単回の膀胱腔内注入化学療法によって多発性腫瘍患者における再燃率は低下するものの、大多数が依然として再燃する。そのため、これらの患者に対するこのような治療は単独では不十分である。
1件のレトロスペクティブ・シリーズによって、初回TURから2~6週間以内に2回目のTURを施行することの有用性が検討された。[ 9 ][証拠レベル:3iiDiv]Tis期またはTa期病変を有する患者38人に2回目のTURを施行したところ、9人(24%)に粘膜固有層への浸潤(T1)および3人(8%)に筋層への浸潤(T2)が明らかにされた。[ 9 ]
このような情報は、これらの患者に対する最終的な治療法選択肢を変更する場合もある。広範囲の多発性再発病変および/またはこれ以外の点で予後不良な特徴を有する患者では、さらに積極的な治療法が必要となる。
証拠(TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法):
- 7件のランダム化比較試験(Ta期またはT1期膀胱がんの被験者1,476人)の2004年のメタアナリシスで、TUR単独とTURと直後に実施する単回の膀胱腔内注入化学療法とが比較された。[
7
]
- TUR単独に対する再燃率は48%で、TUR + 膀胱腔内注入化学療法では37%であった(OR、0.61;P < 0.0001)。再発リスクは単一腫瘍の患者(OR、0.61)または多発性腫瘍の患者(OR、0.44)で低下したが、多発性腫瘍患者の65%が膀胱腔内注入化学療法を行ったにもかかわらず再燃した。
- 研究に用いられた薬物としては、エピルビシン、マイトマイシンC(MMC)、チオテパ、およびピラルビシンが含まれた。
- その後の多施設ランダム化比較試験で、再発リスクの低下が確認された。404人の患者を対象にした研究で、TURとその直後のエピルビシンに対する再燃率は51%、TURとその直後のプラセボに対する再燃率は63%であったことが報告された(P = 0.04)。しかしながら、この研究では小さな再発しか回避できなかったことから、有益性の大きさに疑問が生じている。[ 10 ]
- 同様に、別の多施設ランダム化比較試験でも再発リスクの低下が確認された。305人の患者を対象にした研究では、被験者がTUR後にエピルビシン注入療法を行った群 vs 追加の治療なしの群にランダムに割り付けられ、エピルビシン群に対する再燃率は62%で、対照群では77%であったことが報告された(P = 0.016)。[
8
]
- エピルビシン群の再発に対するハザード比は0.56(P = 0.002)であった。しかしながら、有益性は主として再燃リスクが比較的低い患者でみられた。再燃リスクが中等度または高い患者における再燃率は、エピルビシン群で81% vs 追加の治療なしの群で85%であった(P = 0.35)。
TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、定期的なBCG膀胱腔内注入療法
BCG膀胱腔内注入療法は、がん進行のリスクを低下させるために選択すべき治療法であり、主に進行リスクが中等度または高いがんに対して用いられる。[ 6 ][ 11 ][ 12 ][ 13 ]BCG膀胱腔内注入療法とMMC膀胱腔内注入療法を比較したランダム化試験の個別の患者のメタアナリシスにより、BCG治療が維持療法期間にも実施され、BCGが少なくとも1年間定期的に投与された場合(典型的には、毎週の治療を6回実施する寛解導入期とその後、3ヵ月ごとに毎週の治療を3回実施する)にのみ、BCG群で再発リスクが32%低下したことが報告された。[ 12 ]膀胱腔内注入化学療法はBCG膀胱腔内注入療法よりも忍容性が良好であった。[ 14 ][ 15 ][ 16 ][ 17 ][ 18 ]Tis(上皮内がん)の場合には、BCG療法によって全生存期間は延長しないが、約70%の完全奏効が得られ、それによりサルベージ膀胱切除術の必要性が低下するとみられる。[ 17 ]諸種の研究によって、BCG膀胱腔内注入療法が腫瘍再発および腫瘍進行を遅延することが示されている。[ 18 ][ 19 ]
チオテパ、MMC、ドキソルビシン、またはBCGによる膀胱腔内注入療法は、多発性腫瘍または再発性腫瘍がみられる患者またはTUR後の高リスク患者に対する予防処置として最も多く用いられている。[ 20 ][ 21 ][ 22 ]
証拠(TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、定期的なBCG膀胱腔内注入療法):
膀胱腔内注入化学療法
- TUR単独とTURとその後の膀胱腔内注入化学療法を比較したランダム化比較試験の3件のメタアナリシスで、補助療法は再発までの期間を統計的に有意に延長したことが報告された。[ 23 ][ 24 ][ 25 ]生存または浸潤性疾患への進行や転移の予防については、優位性は示されなかった。
BCG膀胱腔内注入療法と維持BCG療法
- BCG膀胱腔内注入療法とMMC膀胱腔内注入療法を比較した9件のランダム化試験(Ta期またはT1期膀胱がんの被験者2,820人)の個別の患者のメタアナリシスが発表された。[
12
]
- BCG療法が維持療法中も実施された試験では、MMC療法と比較して再発リスクが32%低下した(P < 0.0001);BCGが維持療法中に投与されなかった場合、BBC療法はMMC療法と比較して再発リスクが28%増加した。
- 進行または死亡における差は認められなかった。[ 12 ]
- BCG膀胱腔内注入療法とMMC膀胱腔内注入療法を比較した9件のランダム化比較試験(被験者2,410人)のメタアナリシスが発表された。[
26
]
- 追跡期間中央値26ヵ月の時点でBCG被験者の7.67%および、MMC被験者の9.44%に進行が観察された(P = 0.08)。
- BCG群に維持療法が実施された試験に分析を限定すると、BCG被験者における進行率は有意に低かった(OR、0.66;95%信頼区間、0.47-0.94;P = 0.02)。
- 膀胱の上皮内がん患者700人においてBCG膀胱腔内注入療法と膀胱腔内注入化学療法を比較した9件のランダム化比較試験について、発表された結果のメタアナリシスが発表された。[
11
]
- 中央値にして3.6年間追跡したところ、BCG群の47%では疾患の証拠が認められず、化学療法群の26%では疾患の証拠が認められなかった。
- 維持BCG療法が治療の一部に含められていた場合にのみ、BCGは再発の予防に関してMMCよりも優れていた。
- 1件の比較試験では、寛解導入BCG膀胱腔内注入療法群または寛解導入BCG膀胱腔内注入療法とその後に維持療法としてBCG膀胱腔内注入療法を実施する群にランダムに割り付けられた384人の患者が評価された。[
27
]
- 無再発生存期間中央値は、維持BCG療法なしの群で36ヵ月、維持BCG療法実施群で77ヵ月であった(P < 0.0001)。疾患悪化のリスク(T2期以上の疾患への進行)、膀胱切除術、全身化学療法、または放射線療法の使用は、維持療法群よりも寛解導入療法群で高かった(P = 0.04)。
- 5年全生存率は寛解導入療法単独群で78%であったのに対し、維持療法群で83%であったが、この差は統計的に有意ではなかった。
BCGは、BCG敗血症によるまれな死亡を含めて重大な毒性作用のリスクに関連している。MMCと比較して、BCGでは局所の毒性作用(BCGの44% vs MMCの30%)および全身性副作用(BCGの19% vs MMCの12%)が多くみられる。副作用および毒性作用に関する懸念から、BCGは進行期疾患に進行するリスクが低い患者に対しては一般的に使用されない。[ 6 ][ 26 ]
膀胱部分切除術(適応はまれである)
膀胱部分切除術が適応となることはまれである。[ 22 ]膀胱がんは膀胱粘膜に多発し部分切除が不可能な部位に発生する傾向が高いため、膀胱部分切除術が適用可能となるのは少数の患者にとどまる。さらに、膀胱切除術(部分切除または根治的切除のいずれも)は、T0期の膀胱がんには一般的に適応とされない(下記の根治的膀胱切除術を参照のこと)。[ 28 ][ 29 ]
根治的膀胱切除術(広範囲のまたは難治性の表在性高悪性度腫瘍を有するまれな、ごく限られた患者に実施する)
根治的膀胱切除術は、Tis期患者の最大20%が膀胱がんにより死亡するという報告に基づいて、広範囲のまたは難治性の表在性腫瘍を有する限られた患者に用いられる。[ 2 ][ 30 ][ 31 ]しかしながら、膀胱切除術(部分切除または根治的切除のいずれも)は、Ta期またはTis期の膀胱がん患者には一般的に適応とされない。進行リスクが高い患者、典型的にはBCG膀胱腔内注入療法後に上皮内がんを有する再発高悪性度腫瘍患者は、根治的膀胱切除術を検討すべきである。[ 32 ][ 33 ][ 34 ][ 35 ]
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- I期の膀胱がんの治療
-
I期の膀胱がんに対する標準治療法の選択肢
I期の膀胱腫瘍患者は膀胱がんによって死亡する可能性は低いが、新たな腫瘍形成の傾向が強い。Ta期またはT1期膀胱腫瘍患者を最低20年または死亡するまで追跡したシリーズにおいて、初回切除後の膀胱腫瘍の再発リスクは80%であった。[ 1 ]再発よりも懸念されるものは、筋層浸潤性、局所進行性、または転移性膀胱がんに進行するリスクである。低悪性度腫瘍における進行はまれであるが、高悪性度がんでの進行は一般的である。
TaG3がん患者125人を15~20年間追跡した1件のシリーズの報告では、39%がより進行した病期のがんに進行した一方、尿路上皮がんで死亡したのは26%であった。これに対して、TaG1腫瘍患者23人で死亡した者はなく、進行したのは5%であった。[ 2 ]再発および進行に対する危険因子には以下のものがある:[ 2 ][ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ]
- 高悪性度病変。
- 上皮内がんの存在。
- 3cm超の腫瘍。
- 多発性腫瘍。
- 膀胱がんの既往歴。
I期の膀胱がんに対する標準治療法の選択肢には以下のものがある:
- 経尿道切除術(TUR)と電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法。
- TURと電気凝固術との併用療法。
- TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、定期的なカルメット・ゲラン結核予防ワクチン(BCG)膀胱腔内注入療法。
- TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、さらに膀胱腔内注入化学療法。
- 膀胱部分切除術(適応はまれである)。
- 根治的膀胱切除術(広範囲のまたは難治性の表在性腫瘍が認められる特定の患者に実施する)。
TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法
TURと電気凝固術との併用療法が、最も一般的かつ保存的な治療方法である。その後の膀胱腫瘍の進行がないか注意深いサーベイランスが重要である。TUR後、ほとんどの膀胱がんが再発するため、TUR直後に1回の膀胱腔内注入化学療法が広く用いられている。多くのランダム化比較試験でこの実践が評価されており、7件の試験のメタアナリシスでは、単回の膀胱腔内注入化学療法によって再発のオッズが39%低下したことが報告された(オッズ比[OR]、0.61;P < 0.0001)。[ 7 ][ 8 ]
TURと電気凝固術との併用
TURを介した膀胱がんの病期分類は、浸潤範囲に基づく。がんが筋層に浸潤しているかどうかを評価するには、切除組織に固有筋層が含まれていなければならない。初回TUR時の切除組織に固有筋層が含まれていない場合、T1および高悪性度非浸潤性膀胱がんに対しては一般的に再度のTURが必須であると考えられるが、多くの専門家が2回目のTURは病期を確定し、より完全な切除を達成するために初回TURの2~6週間以内にルーチンに実施すべきであると推奨している。この推奨の理論的根拠は以下のような多くの知見から導き出されている:
- TUR後の局所再発リスクが高い。
- 再度のTUR実施時にしばしば残存がんが見つかる。
- ときに、より進行した病期のがんが再度のTURで見つかる。
- 筋層非浸潤性膀胱がんに対して根治的膀胱切除術を受けた患者について、膀胱切除術で得られた標本を調べた場合に、しばしばT2期以上の病変が存在することが明らかになる。
- 高悪性度筋層非浸潤性膀胱がんを有するかなりの数の患者がその後、この疾患により死亡する。
証拠(ルーチンの再度のTUR):
- 60を超える異なる施設の2,400人超の患者を対象にしたレビューの報告ではTUR後3ヵ月経過時の再発率は約14~20%であった一方、文献のレビューの報告では、Ta~T1のがんに対して2回目のTURを受けた患者の最大10%で病期がT2に引き上げられた。[ 9 ]初回TUR時の切除組織に固有筋層が含まれていない場合は、病期がT2に引き上げられる可能性がはるかに高い。[ 10 ]
- TisまたはTa病変を有し、2回目のTURを受けた患者38人を対象にした1件のレトロスペクティブ・シリーズでは、9人の患者(24%)に粘膜固有層への浸潤(T1)および3人の患者(8%)に筋層への浸潤(T2)が認められた。[ 11 ]
- 異なる施設からのその後の研究で、Ta~T1のがんを有し、2回目のTURを受けた患者214人のうち、Ta患者の27%およびT1患者の37%に残存がんが見つかったことが報告された。[ 12 ]
- この他の発表された論文をレビューした報告によれば、少なくとも50人の被験者を対象にしたケースシリーズで症例の27~62%に残存腫瘍が存在し、1~10%に筋層浸潤性膀胱がんが発見された。[ 10 ]
再度のTURにより再燃率が低下し、生存期間が延長することは示されていないが、治療方針決定のベースとなる正確な病期情報の追求には明確な理論的根拠がある。このような情報は、患者に対する最終的な治療法選択肢を変更する場合があり、より積極的な治療により利益が得られるであろう患者を同定できる可能性がある。
TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、定期的なBCG膀胱腔内注入療法
BCG膀胱腔内注入療法は、がん進行のリスクを低下させるために選択すべき治療法であり、主に進行リスクが中等度または高いがんに対して用いられる。[ 6 ][ 13 ][ 14 ][ 15 ]BCG膀胱腔内注入療法とマイトマイシンC(MMC)膀胱腔内注入療法を比較したランダム化試験の個別の患者のメタアナリシスにより、BCG治療が維持療法期間にも実施され、BCGが少なくとも1年間定期的に投与された場合(典型的には、毎週の治療を6回実施する寛解導入期とその後、3ヵ月ごとに毎週の治療を3回実施する)にのみ、BCG群で再発リスクが32%低下したことが報告された。[ 14 ]膀胱腔内注入化学療法はBCG膀胱腔内注入療法よりも忍容性が良好であった。[ 16 ][ 17 ][ 18 ][ 19 ][ 20 ]Tis(上皮内がん)の場合には、BCG療法によって全生存期間は延長しないが、約70%の完全奏効が得られ、それによりサルベージ膀胱切除術の必要性が低下するとみられる。[ 19 ]諸種の研究によって、BCG膀胱腔内注入療法が腫瘍再発および腫瘍進行を遅延することが示されている。[ 20 ][ 21 ]
証拠(経尿道切除術後、直ちに実施する膀胱腔内注入化学療法):
- 7件のランダム化比較試験(Ta期またはT1期膀胱がん患者1,476人)の2004年のメタアナリシスで、TUR単独とTURと直後に実施する単回の膀胱腔内注入化学療法とが比較された。[
7
]
- TUR単独に対する再燃率は48%で、TUR + 膀胱腔内注入化学療法では37%であった(OR、0.61;P < 0.0001)。再発リスクは単一腫瘍の患者(OR、0.61)または多発性腫瘍の患者(OR、0.44)で低下したが、多発性腫瘍患者の65%が膀胱腔内注入化学療法を行ったにもかかわらず再燃した。
- 研究に用いられた薬物としては、エピルビシン、MMC、チオテパ、およびピラルビシンが含まれた。[ 7 ]
- その後の多施設ランダム化比較試験で、再発リスクの低下が確認された。404人の患者を対象にした研究で、TURとその直後のエピルビシンに対する再燃率は51%、TURとその直後のプラセボに対する再燃率は63%であったことが報告された(P = 0.04)。しかしながら、この研究では小さな再発しか回避できなかったことから、有益性の大きさに疑問が生じている。[ 22 ]
- 同様に、別の多施設ランダム化比較試験でも再発リスクの低下が確認された。305人の患者を対象にした研究では、被験者がTUR後にエピルビシン注入療法を行った群または追加の治療なしの群にランダムに割り付けられ、エピルビシン群に対する再燃率は62%であったのに対し、対照群では77%であったことが報告された(P = 0.016)。[
8
]
- エピルビシン群の再発に対するハザード比は0.56(P = 0.002)であった。しかしながら、有益性は主として再燃リスクが比較的低い患者でみられた。再燃リスクが中等度または高い患者における再燃率は、エピルビシン群で81% vs 追加の治療なしの群で85%であった(P = 0.35)。
証拠(BCG膀胱腔内注入療法と維持BCG療法):
- BCG膀胱腔内注入療法とMMC膀胱腔内注入療法を比較した9件のランダム化試験(Ta期またはT1期膀胱がんの被験者2,820人)の個別の患者のメタアナリシスが発表された。[
14
]
- BCG療法が維持療法中も実施された試験では、MMC療法と比較して再発リスクが32%低下した(P < 0.0001);BCGが維持療法中に投与されなかった場合、BBC療法はMMC療法と比較して再発リスクが28%増加した。
- 進行または死亡における差は認められなかった。
- BCG膀胱腔内注入療法とMMC膀胱腔内注入療法を比較した9件のランダム化比較試験(被験者2,410人)のメタアナリシスが発表された。[
23
]
- 追跡期間中央値26ヵ月の時点でBCG被験者の7.67%および、MMC被験者の9.44%に進行がみられた(P = 0.08)。
- BCG群に維持療法が実施された試験に分析を限定すると、BCG被験者における進行率は有意に低かった(OR、0.66;95%信頼区間、0.47-0.94;P = 0.02)。
- 膀胱の上皮内がん患者700人においてBCG膀胱腔内注入療法と膀胱腔内注入化学療法を比較した9件のランダム化比較試験について、発表された結果のメタアナリシスが発表された。[
13
]
- 中央値にして3.6年間追跡したところ、BCG群の47%では疾患の証拠が認められず、化学療法群の26%では疾患の証拠が認められなかった。
- このメタアナリシスでは、維持BCG療法が治療の一部に含められていた場合にのみ、BCGは再発の予防に関してMMCよりも優れていた。
- 1件の比較試験では、寛解導入BCG膀胱腔内注入療法群または寛解導入BCG膀胱腔内注入療法とその後に維持療法としてBCG膀胱腔内注入療法を実施する群にランダムに割り付けられた384人の患者が評価された。[
24
]
- 無再発生存期間中央値は、維持BCG療法なしの群で36ヵ月、維持BCG療法実施群で77ヵ月であった(P < 0.0001)。疾患悪化のリスク(T2期以上の疾患への進行)、膀胱切除術、全身化学療法、または放射線療法の使用は、維持療法群よりも寛解導入療法群で高かった(P = 0.04)。
- 5年全生存率は寛解導入療法単独群で78%であったのに対し、維持療法群で83%であったが、この差は統計的に有意ではなかった。
BCGは、BCG敗血症によるまれな死亡を含めて重大な毒性作用のリスクに関連している。MMCと比較して、BCGでは局所の毒性作用(BCGの44% vs MMCの30%)および全身性副作用(BCGの19% vs MMCの12%)が多くみられる。副作用および毒性作用に関する懸念から、BCGはより進行した病期の疾患に進行するリスクが低い患者に対しては一般的に使用されない。[ 6 ][ 23 ]
証拠(2コースのBCG膀胱腔内注入療法):
TURと電気凝固術との併用療法後、直ちに実施する術後膀胱腔内注入化学療法に続いて、さらに膀胱腔内注入化学療法
チオテパ、マイトマイシン、ドキソルビシン、またはBCGによる膀胱腔内注入療法は、多発性腫瘍または再発性腫瘍がみられる患者またはTUR後の高リスク患者に対する予防処置として最も多く用いられている。[ 27 ][ 28 ]
証拠(膀胱腔内注入化学療法):
膀胱部分切除術(適応はまれである)
膀胱部分切除術が適応となることはまれである。[ 32 ]膀胱がんは膀胱粘膜に多発し部分切除が不可能な部位に発生する傾向が高いため、膀胱部分切除術が適用可能となるのは少数の患者にとどまる。さらに、膀胱切除術(部分切除または根治的切除のいずれも)は、T0の膀胱がん患者には一般的に適応とされない。[ 33 ][ 34 ]
広範囲のまたは難治性の表在性腫瘍が認められる特定の患者に実施する根治的膀胱切除術
根治的膀胱切除術は、広範囲のまたは難治性の表在性腫瘍が認められる特定の患者に実施される。[ 35 ][ 36 ][ 37 ][ 38 ][ 39 ][ 40 ][ 41 ][ 42 ][ 43 ]進行リスクが高い患者、典型的にはBCG膀胱腔内注入療法後に上皮内がんを有する再発高悪性度腫瘍患者は、根治的膀胱切除術を検討すべきである。この他の危険因子としては、多発性腫瘍および3cm超の腫瘍が挙げられる。
筋層非浸潤性膀胱がんを有する特定の患者では、進行リスクがかなり高く、がんにより死亡する危険性が強い。
証拠(根治的膀胱切除術):
- 1980年代のBCG膀胱腔内注入療法に関する研究に登録された患者307人の1件の解析により、T1再発を来した85人の患者のうち、60人が少なくともII期疾患に進行したことが報告された。T1再発から5年後、71%の患者が進行し、48%ががんにより死亡していた。[ 44 ]
- 比較として、1992年から2004年の間にBCGで治療された患者589人を対象にした別のコホートでは、T1再発を来した120人の患者のうち、65人が即時膀胱切除術を施行された。T1再発を来したすべての患者のうち、28%がより進行した病期の疾患に進行し、31%ががんにより死亡した。これらのデータから、BCG膀胱腔内注入療法後にがんが再発した患者は膀胱がんで死亡するリスクがかなり高いことが確認されている一方で、即時膀胱切除術により死亡または進行のリスクが低くなるという強い証拠は示されていない。[ 44 ]
最新の臨床試験
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- II期およびIII期の膀胱がんの治療
-
II期およびIII期の膀胱がんに対する標準治療法の選択肢
II期の膀胱がんおよびIII期の膀胱がんに対する標準治療法の選択肢には以下のものがある:
- 根治的膀胱切除術。
- 術前多剤併用化学療法とその後に実施する根治的膀胱切除術。
- 同時化学療法を併用する、または併用しない外照射療法(EBRT)。
- 膀胱部分切除術(特定の患者に施行)。
- 経尿道切除術(TUR)と電気凝固術との併用(特定の患者に施行)。
筋層浸潤性膀胱がんに対する最も一般的な治療は、根治的膀胱切除術と放射線療法である。手術または放射線療法が他の治療より有効であるかどうかを判断するための強い証拠は、ランダム化比較試験からは得られていない。両治療法は化学療法と併用した場合に有効性が高まることを示す強い証拠がある。これらの有効性を支持する証拠レベルが最も高い治療は、シスプラチンをベースにした多剤併用化学療法を先行させる根治的膀胱切除術と同時化学療法を併用する放射線療法である。
根治的膀胱切除術
根治的膀胱切除術はII期およびIII期の膀胱がんに対する標準治療法の選択肢であり、シスプラチンをベースにした多剤併用化学療法を先行させると生存期間を延長する有効性が高まる。[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ]根治的膀胱切除術には骨盤リンパ節郭清が付加され、膀胱、膀胱周囲組織のほか、男性では前立腺、および精嚢、女性では子宮、卵管、卵巣、前膣壁、および尿道の摘出が含まれる。[ 5 ][ 6 ][ 7 ][ 8 ] 根治的膀胱切除術後の治療成績の調査では、リンパ節郭清数が少なかった患者よりもむしろ多かった患者の方が生存率が増加したことが報告されている;このことが追加のリンパ節郭清による治療上の有益性または病期シフトを意味するかどうかは不明である。[ 9 ]この設定では、リンパ節郭清による治療上の有益性について評価しているランダム化比較試験は存在しない。
根治的膀胱切除術は、優れた施設で実施した場合の周術期死亡率が2~3%となる大手術である。[ 6 ][ 7 ][ 8 ]術後合併症にはイレウスがある。ほとんどの男性で根治的膀胱切除術後に勃起不全がみられる;女性においてもこの手術後に性機能障害が一般的にみられる。[ 10 ][ 11 ][ 12 ]
根治的膀胱切除術を受けた女性27人を対象にした1件の研究で、45%にオルガスム達成能力の低下、41%に潤滑性の低下、37%に性的欲求の低下、および22%に膣性交に伴う疼痛が報告された。半数以上の女性で膣性交が不可能となり、ほとんどが手術後の性生活の満足度が低下したことを報告した。[ 12 ]諸研究から、一部の男性では性機能を温存したまま根治的膀胱切除術の施行が可能であることが示唆されている。また、新たな術式による尿路変向術によって体外採尿装具が不要となる可能性がある。[ 13 ][ 14 ][ 15 ][ 16 ]
ある単一施設のレトロスペクティブ分析では、全身状態が良好な高齢患者(70歳以上)は、根治的膀胱切除術後の臨床結果および機能結果がより若年の患者とほぼ同じであることが明らかにされた。[ 17 ]
しかしながら、筋層浸潤性膀胱がん患者は優れた施設でも根治的膀胱切除術後に依然として、約30~40%の再発リスクを有する。[ 6 ][ 7 ][ 8 ]5年全生存(OS)率は一般的に約50~60%と報告されているが、病期によって異なる。[ 4 ]プロスペクティブ・ランダム化試験において根治的膀胱切除術単独と比較した場合、術前放射線療法の根治的膀胱切除術への追加は、生存に優位性を全くもたらさなかった。[ 18 ]
術前多剤併用化学療法とその後に実施する根治的膀胱切除術
膀胱がんは一般的に遠隔転移を伴って再発するため、膀胱切除術前または後に実施される全身化学療法が治療成績を改善する手段として評価されている。膀胱切除術前の化学療法(すなわち、術前補助化学療法)の実施は、化学療法による腫瘍のダウンステージが切除可能性を高め、潜在性転移病変が可能な限り早期に治療され、化学療法の忍容性が高いため、術後治療よりも好ましい。現在、術前化学療法を支持する一連の証拠は、術後化学療法を支持する証拠よりもはるかに強い。
証拠(術前多剤併用化学療法とその後に実施する根治的膀胱切除術):
- 医学研究審議会およびEuropean Organization for Research and Treatment of Cancerにより実施された術前化学療法に関する1件の比較試験では、局所進行(T3またはT4a)あるいは高悪性度筋層浸潤性(T2)膀胱がん患者976人が即時根治治療または術前に3サイクルのシスプラチン、ビンブラスチン、およびメトトレキサートを先行させる根治治療のいずれかを受ける群にランダムに割り付けられた。[
19
][
20
]この研究では、根治治療として根治的膀胱切除術(n = 428)、放射線療法(n = 403)、または術前放射線療法とその後の根治的膀胱切除術(n = 66)が実施された。
- 生存中の患者に対する中央値8.0年の追跡で、OSは術前補助化学療法にランダムに割り付けられた群で有意に高かった(ハザード比[HR]、0.84;95%信頼区間[CI]、0.72-0.99;P = 0.037)。根治治療単独と比較した術前補助化学療法による生存利益として、3年経過時(56% vs 50%)、5年経過時(49% vs 43%)、および10年経過時(36% vs 30%)に生存している可能性が6%の絶対的増加を示した。[ 20 ][証拠レベル:1iiA]
- Southwest Oncology Groupにより実施されたランダム化研究では、T2期~T4a期の膀胱がん患者317人を対象に膀胱切除術前に投与するシスプラチン、メトトレキサート、ビンブラスチン、およびドキソルビシンの3サイクルの術前療法が膀胱切除術単独と比較された。[
21
]
- この研究で、5年生存率は術前補助化学療法を受けた群が57%、膀胱切除術単独による治療を受けた群が43%で、統計的有意差に近い値(層別ログランク検定で、両側P値 = 0.06)であったことが示された。
- 術前補助化学療法に関連した死亡はなく、即時手術を受けた患者と術前化学療法を受けた患者で術後合併症の発生率または重症度における差は認められなかった。膀胱切除術が計画通りに実施された割合は、術前化学療法に割り付けられた患者で82%および膀胱切除術単独に割り付けられた患者で81%であった。この研究により、術前化学療法は患者が膀胱切除術を受ける妨げとならず、周術期合併症のリスクを増加させないという証拠が得られた。
- 術前補助化学療法を受けた患者の38%は手術時に病理学的完全奏効を示し、病理学的完全奏効を達成した患者の85%が5年時に生存していた。
- 2,688人の患者に対する更新データを含む、術前補助化学療法に関する10件のランダム化試験のメタアナリシスでは、シスプラチンをベースにした多剤併用化学療法は死亡リスクの有意な13%の相対的減少と関連し、5年生存率が45%から50%に改善した(P = 0.016)と示された。術前シスプラチン単剤は、このメタアナリシスでは生存利益と関連しなかった。[ 2 ]
- その後のメタアナリシスでほぼ同じ規模のデータ(計2,605人の患者が登録した11件のランダム化比較試験)が評価され、同様の結論に達した。シスプラチンをベースにした多剤併用化学療法を用いた8件の試験に解析を限定した場合、術前補助化学療法による5年OS率の絶対的有益性は膀胱切除術単独と比較して6.5%であった(56.5% vs 50%;P = 0.006)。[ 4 ]
これらの研究に含められた患者のほとんどがドキソルビシンを併用するまたは併用しないシスプラチン、メトトレキサート、およびビンブラスチンを投与されていた。シスプラチン + ゲムシタビンの2剤レジメンが術前化学療法の設定で投与された場合に有益性が得られるかどうか、あるいはカルボプラチンをベースにした化学療法レジメンに対して有益性の証拠が存在するかどうかは不明である。
これらの知見に基づいて、筋層浸潤性膀胱がんで化学療法が適しており、優先事項が生存の最大化である患者には、シスプラチンをベースにした術前多剤併用化学療法とその後の根治的膀胱切除術が標準治療法の選択肢である。
同時併用化学療法を併用するまたは併用しないEBRT
根治的放射線療法は約30~40%の5年生存率が得られる標準の選択肢である。[ 22 ]放射線療法と化学療法を同時に実施した場合、結果はより良好である。しかしながら、放射線療法への化学療法の追加は局所再燃率を低下させることが示されている一方で、生存率の増加、死亡率の低下、またはQOLの改善が得られることは示されていない。
化学療法と放射線療法の併用を用いる膀胱温存のためのプロトコルのほとんどが、比較的複雑なアルゴリズムに従って実施されている。膀胱腫瘍の初期段階のTUR後、患者は腫瘍を最大限切除するために再度のTURを受ける。患者は続いて約40Gyの線量の同時化学放射線療法で治療され、その後に残存がんがないか評価するための生検を伴う再度の膀胱鏡検査を受ける。病理組織学検査で残存がんが発見されれば、化学放射線療法が失敗したと判断し、患者は根治的膀胱切除術を受けるように助言される。40Gy照射時の生検が良性であれば、化学放射線療法は約65Gyの線量で完了される。
根治的放射線療法については、孤立性病変を有し、上皮内がんまたは水腎症が認められない患者で最良の結果が示されている。
放射線療法後、患者の約50%は排尿障害および治療中の頻尿(治療後数週間で回復する)を示し、15%は腸の急性毒性作用を報告する。
膀胱温存化学放射線療法アプローチと根治的膀胱切除術を直接比較したランダム化試験は実施されていない;したがって、これら2つの治療の相対的有効性は不明である。
証拠(同時併用化学療法を併用するまたは併用しないEBRT):
TURとその後の化学放射線療法
- 1件の多施設第III相試験で、筋層浸潤性膀胱がん患者360人が同時化学療法(フルオロウラシルとマイトマイシンCを使用)を併用するまたは併用しない放射線療法にランダムに割り付けられた。[
22
]
- 2年局所領域無病生存率は化学放射線療法群の方が高かった(67% vs 54%;HR、0.68;95%CI、0.48-0.96;P = 0.03)。5年OS率は化学放射線療法群で48%および放射線療法群で35%であったが、この差は統計的に有意ではなかった(P = 0.16)。
- 同様に、シスプラチン単独またはフルオロウラシルとの併用といった他の化学療法レジメンを用いる同時化学放射線療法により、50~60%の5年OS率が報告されており、40~45%の患者では膀胱に異常なく生存が得られているが、この数値は放射線療法単独の研究で一般的に報告されている数値よりも高い。[ 23 ]
TURとその後の化学放射線療法
- 一部の非ランダム化研究において、膀胱温存療法(すなわち、初回TURでできる限りの腫瘍を切除した後、同時化学放射線療法を実施)を受けた患者の50%以上が5年後に生存しており、これら生存者の75%で膀胱に異常がなかった。[ 24 ][ 25 ][ 26 ]
放射線療法と化学療法
- 1件のランダム化比較試験では、T2~T4b期の膀胱の尿路上皮がんを有する患者99人が、14日間を1サイクルとして3サイクルのシスプラチン(1日目に100mg/m2)を併用するまたは併用しない放射線療法にランダムに割り付けられた。患者と担当医は、放射線療法を根治的に用いるか、または膀胱切除術前の治療として実施するかどうかを選択した。骨盤内再燃率は低下した(多変量回帰モデルでHR、0.50;90%CI、0.29-0.86;P = 0.036)が、遠隔転移の発生またはOSにおける差は認められなかった。根治的放射線療法と膀胱切除術前の放射線療法を受けた患者で骨盤内再燃率の低下はほぼ同じであった。[ 27 ]
術前補助化学療法とその後の化学放射線療法
膀胱部分切除術(特定の患者に施行)
膀胱部分切除術の適応となるのはきわめて限られた患者のみである。[ 1 ]膀胱部分切除術と根治的膀胱切除術を比較したランダム化比較試験は存在しない。尿膜管腺がんの患者のみがルーチンに膀胱部分切除術で治療される。これらの腫瘍は典型的に膀胱頂部に発生する粘液性腺がんで、膀胱頂部および臍を含む尿膜管遺残組織の一塊切除で治療される。[ 29 ][ 30 ][ 31 ][ 32 ]
TURと電気凝固術との併用(特定の患者に施行)
一部の患者においては、II期の膀胱がんは経尿道切除術(TUR)によってコントロールされる場合もあるが、再発腫瘍またはサイズが大きく、多病巣性で、未分化の腫瘍の場合にはさらに積極的な治療法がしばしば必要である。
最新の臨床試験
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- IV期の膀胱がんの治療
-
IV期の膀胱がん患者のうち治癒可能であるのはごく少数であり、多くの患者では症状の緩和に重点が置かれている。治癒の可能性があるのは、直接進展による骨盤内臓器への浸潤または所属リンパ節への転移を有するIV期患者に限られる。[ 1 ]
IV期の膀胱がんに対する標準治療法の選択肢
T4b、N0、M0の病変を有する患者に対する標準治療法の選択肢
T4b、N0、M0の病変を有する患者に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
- 化学療法単独。
- 根治的膀胱切除術。
- 根治的膀胱切除術とその後の化学療法。
- 根治的膀胱切除術単独。
- 同時化学療法を併用する、または併用しない外照射療法(EBRT)。
- 症状緩和目的の尿路変向術または膀胱切除術。
化学療法単独
IV期の膀胱がんに対しては、シスプラチンをベースにした多剤併用化学療法レジメンが標準治療である。[ 2 ][ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ]ランダム化比較試験で生存期間の延長をもたらすことが示されている化学療法レジメンは、メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、およびシスプラチン(MVAC);大量MVAC;シスプラチン、メトトレキサート、およびビンブラスチン(CMV)のみである。1件のランダム化比較試験においてゲムシタビン + シスプラチン(GC)がMVACと比較されたが、奏効率または生存における差は報告されなかった。注目すべきこととして、パフォーマンスステータスが良好でリンパ節にしか病変が認められない患者は、MVACまたはGCによりわずかであるが有意な持続的完全寛解率を達成している。例えば、MVACとGCを比較した大規模ランダム化比較試験では、リンパ節にしか病変が認められない患者における5年全生存(OS)率は20.9%であった。[ 7 ]
1件のランダム化比較試験において、シスプラチン単剤とシスプラチンを含まない多剤レジメンは、生存率を改善することは示されていない。シスプラチンをベースにした多剤併用化学療法レジメンの候補とならない患者に対しては、生存を延長することが示されているレジメンが存在しない; しかし、多くのレジメンは、放射線学的に測定可能な応答を実証している。
これらのレジメンとして、カルボプラチン + パクリタキセル[ 8 ]、カルボプラチン + ゲムシタビン[ 9 ][ 10 ][ 11 ]、パクリタキセル + ゲムシタビン[ 12 ][ 13 ][ 14 ]、ゲムシタビン単剤[ 15 ][ 16 ]、およびパクリタキセル単剤[ 17 ][ 18 ][ 19 ]が挙げられる。カルボプラチン、メトトレキサート、およびビンブラスチン;カルボプラチン、エピルビシン、メトトレキサート、およびビンブラスチン;パクリタキセル、ゲムシタビン、およびカルボプラチンのレジメンが研究されているが、広く用いられていない。[ 20 ][ 21 ][ 22 ][ 23 ]
証拠(化学療法単独):
- 220人の患者においてMVACとドセタキセル + シスプラチンとを比較したランダム化比較試験の結果から、MVACの方が長期のOSが得られた(生存期間中央値、14.2ヵ月 vs 9.3ヵ月; P = 0.026)ことが報告された。[ 24 ]
- MVACとシスプラチン、シクロホスファミド、およびドキソルビシンとを比較したランダム化試験で、MVACレジメンによる奏効率および生存期間中央値(48週 vs 36週;P = 0.003)の改善が実証された。[ 25 ]
- 進行膀胱がんにおけるMVACとシスプラチン単剤とを比較したランダム化試験から得られた結果でも、奏効率と生存期間中央値(12.5ヵ月 vs 8.2ヵ月;P = 0.002)の双方においてMVACが有意に優れていることが示された。[ 26 ]
- 214人の患者を対象にした多施設ランダム化比較試験で、CMVとシスプラチンを併用しないメトトレキサート + ビンブラスチンとが比較された。死亡の相対リスクは0.68(95%信頼区間[CI]、0.51-0.90;P = 0.0065)で、CMVが支持された。生存期間中央値は、CMV群で7ヵ月、メトトレキサート + ビンブラスチン群で4.5ヵ月であった。[ 27 ]
- European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)により、進行膀胱がんの患者263人について研究した別のランダム化試験が実施され、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)とともに2週間ごとに投与する高い用量強度のMVACレジメンの効力を、4週間ごとに投与する古典的MVACレジメンと比較して評価した。[
28
]
- 追跡期間中央値にして3.2年経過時の全生存(OS)における有意差は認められなかった(ハザード比[HR]、0.80;95%CI、0.60-1.06;P = 0.122)が、追跡期間中央値7.3年経過時の更新では、高い用量強度のMVACレジメンの方がOSが改善しており(HR、0.76;95%CI、0.58-0.99;P = 0.042)、5年生存率は、古典的MVACレジメンにより治療された患者の14%と比較して22%であったと報告された。
- また高い用量強度のMVACレジメンの方が、奏効率が高く(72% vs 58%;P = 0.016)、無増悪生存(PFS)期間中央値が改善し(9.5ヵ月 vs 8.1ヵ月;P = 0.017)、好中球減少性発熱の発現が減少した(10% vs 26%;P < 0.001)が、古典的MVACレジメンで治療された患者のうち、G-CSFを受けたのはわずか19%であった。[ 28 ][証拠レベル:1iiA]ベースライン時の予後因子の不均衡(すなわち、内臓転移が、高い用量強度のMVACレジメンにランダムに割り付けられた患者の37人に、古典的MVACレジメンに割り付けられた患者の47人に見つかった)で、これらの結果がある程度説明できる可能性がある。
- ゲムシタビン + シスプラチン。
- 進行期または転移性膀胱がん患者405人を対象にして、GCとMVACレジメンとを比較した多施設ランダム化第III相試験において、GCはMVACと同等の奏効率、増悪までの期間、およびOS(HR、1.04;95%CI、0.82-1.32;P = 0.75)をもたらしたが、GCはMVACよりも安全性が高く、忍容性が高かった。
- この研究は2レジメンの同等性を示すようにはデザインされていなかったが、GCの同等の効力および低い毒性作用は、MVACレジメンに耐えられない可能性がある患者において合理的な代替となる。[ 29 ][証拠レベル:1iiA]
根治的膀胱切除術
直接進展による骨盤内臓器への浸潤または所属リンパ節への転移を有するIV期膀胱がん患者は、骨盤リンパ節郭清を併用する根治的膀胱切除術を受けられる可能性がある。[ 30 ][ 31 ][ 32 ]膀胱切除術中のリンパ節郭清の範囲については、リンパ節郭清による治療成績の改善を実証したプロスペクティブ試験のデータが存在しないため、議論の余地がある。[ 30 ]T4b期腫瘍は一般的に完全切除が行えず、リンパ節転移は通常、遠隔微小転移の現れであるため、局所進行膀胱がん患者には通常の場合、切除を容易にし、微小転移病変を根絶する目的で術前に化学療法が実施される。臨床病期II期およびIII期膀胱がんに対して術前化学療法を支持するデータがあるが、IV期膀胱がん患者は術前化学療法の役割を調査するほとんどの臨床試験から除外された。
同時化学療法を併用する、または併用しない外照射療法(EBRT)
同時化学療法を併用する、または併用しない根治的放射線療法は、主に局所進行がん(T2期-T4期)の患者において評価され、所属リンパ節転移を有する患者は最小限の治癒の可能性しか有さないようである。[ 33 ][ 34 ]リンパ節転移の証拠を有する患者は一般的に、放射線療法の第III相試験から除外されている。[ 35 ][ 36 ]
症状緩和目的の尿路変向術または膀胱切除術
化学療法の候補では尿路症状の緩和のみではなく腎機能を温存する目的でも、尿路変向術の適応となることがある。
すべてのT、すべてのN、M1病変を有する患者に対する標準治療法の選択肢
すべてのT、すべてのN、M1病変を有する患者に対する標準治療法の選択肢には以下のものがある:
- 化学療法を単独または局所治療の補助療法として実施。
- 免疫療法。
- 症状緩和目的のEBRT。
- 症状緩和目的の尿路変向術または膀胱切除術。
化学療法単独または局所治療の補助療法としての化学療法
IV期の膀胱がんに対しては、シスプラチンをベースにした多剤併用化学療法レジメンが耐えられる患者では第一選択治療として標準治療である。[ 2 ][ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ]ランダム化比較試験で生存期間の延長をもたらすことが示されている化学療法レジメンは、MVAC、投与間隔を狭めた(dose-dense)MVAC、CMVのみである。1件のランダム化比較試験においてGCがMVACと比較されたが、どちらのレジメンも奏効率または生存における統計的有意差は認められなかった。2つのレジメンは一般的に同等と考えられるが、非劣性試験では比較されていない。注目すべきこととして、パフォーマンスステータスが良好でリンパ節にしか病変が認められない患者は、MVACまたはGCによりわずかであるが有意な持続的完全寛解率を達成している。例えば、MVACとGCを比較した大規模ランダム化比較試験では、リンパ節にしか病変が認められない患者における5年OS率は20.9%であった。[ 7 ]1件のランダム化比較試験において、投与間隔を狭めた(dose-dense)MVACおよび標準用量のMVACが比較され、投与間隔を狭めたMVACの方が生存期間が長かった。
1件のランダム化比較試験において、シスプラチン単剤とシスプラチンを含まない多剤レジメンは、生存率を改善することは示されていない。シスプラチンをベースにした多剤併用化学療法レジメンの候補とならない患者に対しては、生存を延長することが示されているレジメンが存在しない; しかし、多くのレジメンは、放射線学的に測定可能な応答を実証している。
これらのレジメンとして、カルボプラチン + パクリタキセル[ 8 ]、カルボプラチン + ゲムシタビン[ 9 ][ 10 ][ 11 ]、パクリタキセル + ゲムシタビン[ 12 ][ 13 ][ 14 ]、ゲムシタビン単剤[ 15 ][ 16 ]、およびパクリタキセル単剤[ 17 ][ 18 ][ 19 ]が挙げられる。カルボプラチン、メトトレキサート、およびビンブラスチン;カルボプラチン、エピルビシン、メトトレキサート、およびビンブラスチン;パクリタキセル、ゲムシタビン、およびカルボプラチンのレジメンが研究されているが、広く用いられていない。[ 20 ][ 21 ][ 22 ][ 23 ]
現在進められている研究では、新たな化学療法の併用が評価されている。
証拠(化学療法):
- MVACとシスプラチン、シクロホスファミド、およびドキソルビシンとを比較したプロスペクティブ・ランダム化試験で、MVACレジメンによる奏効率の改善および生存期間中央値の延長(48週 vs 36週;P = 0.003)が実証された。[ 25 ]
- 進行膀胱がんにおけるMVACとシスプラチン単剤とを比較したランダム化試験から得られた結果でも、奏効率と生存期間中央値(12.5ヵ月 vs 8.2ヵ月;P = 0.002)の双方においてMVACが有意に優れていることが示された。[ 26 ]
- 214人の患者を対象にした多施設ランダム化比較試験で、CMVとシスプラチンを併用しないメトトレキサート + ビンブラスチンとが比較された。死亡の相対リスクは0.68(95%CI、0.51-0.90;P = 0.0065)で、CMVが支持された。生存期間中央値は、CMV群で7ヵ月であったのに対し、メトトレキサート + ビンブラスチン群で4.5ヵ月であった。[ 27 ]
- EORTCにより、進行膀胱がんの患者263人について研究した別のランダム化試験が実施され、G-CSFとともに2週間ごとに投与する高い用量強度のMVACレジメンの効力を、4週間ごとに投与する古典的MVACレジメンと比較して評価した。[
28
]
- 追跡期間中央値にして3.2年経過時のOSにおける有意差は認められなかった(HR、0.80;95%CI、0.60-1.06;P = 0.122)が、追跡期間中央値7.3年経過時の更新では、高い用量強度のMVACレジメンの方がOSが改善しており(HR、0.76;95%CI、0.58-0.99;P = 0.042)、5年生存率は、古典的MVACレジメンにより治療された患者の14%と比較して22%であったと報告された。
- また高い用量強度のMVACレジメンの方が、奏効率が高く(72% vs 58%;P = 0.016)、PFS期間中央値が改善し(9.5ヵ月 vs 8.1ヵ月;P = 0.017)、好中球減少性発熱の発現が減少した(10% vs 26%;P < 0.001)が、古典的MVACレジメンで治療された患者のうち、G-CSFを受けたのはわずか19%であった。[ 28 ][証拠レベル:1iiA]ベースライン時の予後因子の不均衡(すなわち、内臓転移が、高い用量強度のMVACレジメンにランダムに割り付けられた患者の37人に、古典的MVACレジメンに割り付けられた患者の47人に見つかった)で、これらの結果がある程度説明できる可能性がある。
- ゲムシタビン + シスプラチン:
- 進行期または転移性膀胱がん患者405人を対象にしたGCとMVACレジメンを比較した多施設ランダム化第III相試験において、GCはMVACと同等の奏効率、増悪までの期間、およびOS(HR、1.04;95%CI、0.82-1.32;P = 0.75)をもたらしたが、GCはMVACよりも安全性が高く、忍容性が高かった。
- この研究は2レジメンの同等性を示すようにはデザインされていなかったが、GCの同等の効力および低い毒性作用は、MVACレジメンに耐えられない可能性がある患者において合理的な代替となる。[ 29 ][証拠レベル:1iiA]
- 転移性膀胱がんで活性が明らかにされているこれ以外の化学療法レジメンには、パクリタキセル単剤、ゲムシタビン単剤、ペメトレキセド単剤、ゲムシタビンまたはパクリタキセルのいずれかと併用するカルボプラチン、およびパクリタキセルと併用するゲムシタビンがある。第二選択化学療法による生存またはQOLの有益性を実証した第III相試験は存在しない。[ 9 ][ 12 ][ 14 ][ 15 ][ 23 ][ 37 ][ 38 ][ 39 ][ 40 ][ 41 ][ 42 ][ 43 ][ 44 ][ 45 ][ 46 ][ 47 ][ 48 ][ 49 ]
現在進められている研究では、新たな化学療法の併用が評価されている。
免疫療法
免疫療法は、IV期の膀胱がん患者に対する代替治療の1つとして登場している。抗プログラム死1(PD-1)または抗プログラム死リガンド1(PD-L1)活性を有する免疫チェックポイント阻害薬は、複数の臨床試験においてプラチナ製剤をベースにした化学療法を以前に受けたか、またはこの化学療法に適格でない患者における尿路上皮がんに対して活性を有することが示されている。[ 50 ][ 51 ][ 52 ][ 53 ][ 54 ]現在、4つの異なる薬物が承認を受けている;しかしながら、ペムブロリズマブは最も証拠レベルが高く、生存に関して最も多くのデータが得られている薬物である。
ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、PD-1に結合するヒト化モノクローナル抗体である。以前にプラチナ製剤をベースにした化学療法で治療された患者において、ペムブロリズマブは第二選択の化学療法と比較してOSを延長することが示されている。その結果、ペムブロリズマブは、局所進行または転移性尿路上皮がんで以下の3つのカテゴリーのいずれかに該当する患者に対して米国食品医薬品局(FDA)により承認されている:
- シスプラチンに適格ではなく、PD-L1を発現している腫瘍を有する(複合陽性スコア[CPS]が10%以上)。
- シスプラチンおよびカルボプラチンに適格ではない。
- プラチナ製剤をベースにした化学療法を用いた治療後に疾患が進行した。
2018年に、FDAは2件の進行中の試験からの予備的データで、ペムブロリズマブまたはアテゾリズマブとシスプラチンまたはカルボプラチンをベースにした治療を比較した第一選択治療に関する試験で短い生存期間が示されたという警告を発表していることに注意することが重要である。その結果、上述の3つのカテゴリーに対して両薬物の使用を制限するようにラベルが修正された。
証拠(ペムブロリズマブ):
- プラチナ製剤をベースにした化学療法を用いた治療後に疾患が進行した患者を対象に、ペムブロリズマブ(21日ごとに200mg静注[IV]) vs 第二選択の化学療法(パクリタキセル、ドセタキセル、またはvinflunineの研究者による選択)を比較した1件のオープンラベル国際第III相ランダム化比較試験(NCT02256436)において、OS期間中央値はペムブロリズマブの方が長かった(10.3ヵ月 vs 7.4ヵ月;HR、0.73;95%CI、0.59-0.91)。[
55
]
- PD-L1 CPSが少なくとも10%以上の患者におけるOS期間中央値は、ペムブロリズマブ群で8.0ヵ月であったのに対し、化学療法群では5.2ヵ月であった(HR、0.57;95%CI、0.37-0.88)。
- 12ヵ月経過時のPFS率はペムブロリズマブ群で16.8%(95%CI、12.3%-22.0%)で、化学療法群で6.2%(95%CI、3.3%-10.2%)であった。
- 客観的奏効率はペムブロリズマブ群で21.1%で、化学療法群で11.4%であった。反応が得られた患者における奏効期間中央値はペムブロリズマブ群では18ヵ月を超えたのに対し、化学療法群の奏効期間は4.3ヵ月であった。
- ペムブロリズマブ群では治療関連有害事象の割合が化学療法群よりも低く(60.9% vs 90.2%)、高いグレードの有害事象の割合も低かった(15.0% vs 49.4%)。ペムブロリズマブ群での最も一般的な有害事象は、そう痒症、疲労、吐き気、下痢、および食欲減退であった。[ ][証拠レベル:1iiA]
- 未治療のシスプラチンに不適格な局所進行または転移性尿路上皮がん患者370人を対象にしたペムブロリズマブに関する1件の単一群第II相試験(NCT02335424)において、全奏効率は29%であった。PD-L1 CPSが少なくとも10%以上の患者における全奏効率は51%であった。[
56
]
- 奏効期間中央値には到達していなかった。奏効の82%が少なくとも6ヵ月以上持続した。
- 10%の患者に重篤な治療関連有害事象がみられ、治療関連有害事象により1人の患者が死亡した。最も一般的な高いグレードの有害事象は疲労(2%)、アルカリホスファターゼ高値(1%)、結腸炎(1%)、および筋力低下(1%)であった。[ ][証拠レベル:3iiiDiv]
アテゾリズマブ
アテゾリズマブは、PD-L1に結合し、PD-L1がその受容体であるPD-1またはB7-1に結合しないようにするヒト化モノクローナル抗体である。複数の臨床試験でアテゾリズマブは尿路上皮がんに作用することが報告されているが、アテゾリズマブによるOSの延長、またはQOLの改善は示されていない。アテゾリズマブについて検証した唯一のランダム化比較試験では、第二選択化学療法と比較してOSにおける有意差は報告されなかった。
アテゾリズマブは、局所進行または転移性尿路上皮がんで以下の3つのカテゴリーのいずれかに該当する患者に対してFDAにより承認されている:
- シスプラチンに適格ではなく、PD-L1を発現している腫瘍を有する(腫瘍面積の5%以上が、PD-L1に染色を示す腫瘍浸潤免疫細胞で覆われている)。
- シスプラチンおよびカルボプラチンに適格ではない。
- プラチナ製剤をベースにした化学療法を用いた治療後に疾患が進行した。
2018年に、FDAは2件の進行中の試験からの予備的データで、ペムブロリズマブまたはアテゾリズマブとシスプラチンまたはカルボプラチンをベースにした治療を比較した第一選択治療に関する試験で短い生存期間が示されたという警告を発表していることに注意することが重要である。その結果、上述の3つのカテゴリーに対して両薬物の使用を制限するようにラベルが修正された。
証拠(アテゾリズマブ):
-
IMvigor211試験(NCT02302807)は、局所進行または転移性尿路上皮がんで以前にプラチナ製剤を含む化学療法により治療された患者931人においてアテゾリズマブと第二選択の化学療法(ドセタキセル、パクリタキセル、またはvinflunine)を比較したランダム化比較試験である。[
57
]試験デザインにより、PD-L1に対して腫瘍細胞の少なくとも5%以上が染色した患者において第一にOSを評価するように規定された。
- PD-L1に対して腫瘍細胞の少なくとも5%以上が染色した患者におけるOS期間中央値は、アテゾリズマブ群で11.1ヵ月 vs 化学療法群で10.6ヵ月であった(P = 0.41)。[ ][証拠レベル:1iiA]
- 奏効率もほぼ同じであった:アテゾリズマブ群で23%および化学療法群で22%。
- アテゾリズマブ群の患者では高いグレードの毒性作用の割合が低く(20% vs 43%)、有害事象による治療中止の割合も低かった(7% vs 18%)。
- シスプラチンに不適格な患者または以前にプラチナ製剤をベースにした化学療法で治療され、手術不能な局所進行または転移性尿路上皮がんを有する患者315人を対象にしたアテゾリズマブ(21日ごとに1,200mg静注)に関する1件の多施設単一群試験(NCT0108652)において、以下の結果が報告された:[
53
][証拠レベル:3iiiD]
- 全奏効率は15%であった。
- 追跡期間中央値11.7ヵ月時に、奏効者45人中38人(84%)では反応が持続していた。
- 奏効率は、PD-L1発現が少なくとも5%以上認められる患者で27%、PD-L1発現が1~5%の患者で10%、およびPD-L1発現が1%未満の患者で8%であった。
- グレード3~4の有害事象は16%の患者に報告され、高いグレードの免疫関連有害事象が5%の患者に報告された。
- 同様に、未治療でシスプラチンに適格でない、局所進行転移性尿路上皮がんで、アテゾリズマブによる治療を受けた患者123人を対象にした1件の研究(NCT02108652)では、追跡期間中央値17.2ヵ月時に、客観的奏効率は23%で、完全奏効率は9%であったと報告された。[
54
][証拠レベル:3iiiD]
- 奏効者27人中19人ではデータ解析時に反応が持続していた。OS期間中央値は15.9ヵ月であった。
- 高いグレードの有害事象が16%の患者に報告され、8%の患者では有害事象のために治療が中止され、治療関連死は1人であった。
ニボルマブ
ニボルマブは、PD-L1およびPD-L2とPD-1との相互作用を遮断する完全ヒト化免疫グロブリンG4 PD-1免疫チェックポイント阻害抗体である。比較試験は発表されておらず、したがってニボルマブにより生存が延長するか、QOLが改善するかどうかに関するデータは存在しない。
証拠(ニボルマブ):
- プラチナ製剤をベースにした化学療法後に疾患が進行した転移性尿路上皮がん患者86人を対象にした1件の多施設試験(NCT01928394)において、患者がニボルマブ(2週間ごとに3mg/kg、IV)で治療された。[
52
][証拠レベル:2iD]
- 最小追跡期間9ヵ月時および追跡期間中央値15ヵ月時に、24%で客観的奏効が認められ、22%にグレード3または4の有害事象がみられた。
- 最も一般的な有害事象は、リパーゼまたはアミラーゼ高値、疲労、発疹、呼吸困難、リンパ球減少、および好中球減少であった。
- プラチナ製剤をベースにした化学療法後に進行した局所進行または転移性尿路上皮がん患者270人を対象にした別の多施設研究(NCT02387996)により、20%の客観的奏効率が報告された。[
51
][証拠レベル:2iD]
- PD-L1発現で評価したところ、客観的奏効率は、PD-L1発現が5%以上認められる患者で28%、PD-L1発現が1%以上の患者で24%、およびPD-L1発現が1%未満の患者で16%であった。
- グレード3~4の有害事象は18%の患者で報告された。
- 治療関連死は3人であった。
アベルマブ
アベルマブは尿路上皮がんに対して活性を示している抗PD-L1モノクローナル抗体である。この薬物により生存の延長またはQOLの改善を実証している発表済みの比較試験もデータも存在しない。
証拠(アベルマブ):
- プラチナ製剤をベースにした化学療法後に増悪した転移性尿路上皮がん患者249人を対象にしたアベルマブ(10mg/kg、静注、14日ごと)の研究(NCT01772004)により、以下の結果が報告された:[
58
][
59
][証拠レベル:3iiiDiv]
- 161人の患者を少なくとも6ヵ月以上追跡したところ、全奏効率は17%で、追跡期間中央値7.3ヵ月時に奏効者28人中23人で奏効が持続していた。6%の患者で完全奏効が得られた。
- PD-L1に対して染色する腫瘍細胞が少なくとも5%以上の患者における全奏効率は25.0%で、PD-L1陽性が5%未満の患者では14.7%であった。
- PFS期間中央値は6.3週間であった;23%の患者が24週間経過時に無増悪状態を維持していた。
- 治療関連有害事象は、高いグレードの有害事象が発生した8.4%の患者を含めて66.7%の患者で報告された。肺炎による治療関連死は1人であった。高いグレードの免疫関連有害事象が2.4%の患者で報告された。
デュルバルマブ
デュルバルマブは尿路上皮がんに対して活性を示している抗PD-L1モノクローナル抗体である。この薬物により生存の延長またはQOLの改善を実証している発表済みの比較試験もデータも存在しない。
証拠(デュルバルマブ):
- 局所進行または転移性尿路上皮がんで、化学療法中に疾患が進行したか化学療法による治療に適格ではないか、化学療法による治療を希望しない患者191人を対象にした1件の研究(NCT01693562)で、デュルバルマブ(14日ごとに10mg/kg、IV)の効力が評価された。[
60
][証拠レベル:3iiiDiv]
- 追跡期間中央値5.78ヵ月時に、全奏効率は17.8%であった。
- 奏効率は、PD-L1発現が高い患者で27.6%であったのに対し、PD-L1発現が低いか全く認められない患者では5.1%であった。
- 高いグレードの有害事象が、高いグレードの免疫関連有害事象が発生した2.1%を含めて6.8%の患者で報告された。
症状緩和目的のEBRT
同時化学療法を併用する、または併用しない根治的放射線療法は、主に局所進行がん(T2期-T4期)の患者において評価され、所属リンパ節転移を有する患者は最小限の治癒の可能性しか有さないようである。
症状緩和目的の尿路変向術または膀胱切除術
化学療法の候補では尿路症状の緩和のみではなく腎機能を温存する目的でも、尿路変向術の適応となることがある。
すべてのT、すべてのN、M1病変を有する患者に対して臨床評価段階にある治療法選択肢
IV期患者の予後は不良であるため、臨床試験への登録を検討するのが適切である。
これ以外の化学療法レジメンも転移がんの治療に活性があると思われる。転移性膀胱がんに活性を有することが示されている化学療法薬物には、パクリタキセル、ドセタキセル、イホスファミド、硝酸ガリウム、およびペメトレキセドがある。[ 61 ][ 62 ][証拠レベル:3iiiDiv]
最新の臨床試験
NCIが支援しているがん臨床試験で現在患者登録中の試験を検索するには、臨床試験アドバンスト・サーチを使用のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。)。このサーチでは、試験の場所、治療の種類、薬物名やその他の基準による絞り込みが可能である。臨床試験に関する一般情報も入手することができる。
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- 再発膀胱がんの治療
-
進行性または再発性の浸潤性膀胱がんが認められるいずれの患者も予後は一般に不良である。再発疾患の管理は先行する治療、再発部位、および個々の患者の考慮事項によって決まる。
再発膀胱がんに対する治療法の選択肢
再発膀胱がん患者に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
多剤併用化学療法
尿路上皮がんに対して以前に化学療法を受けていない患者には、IV期膀胱がんに対する上述の化学療法を検討すべきである。
再発移行上皮がん患者において、多剤併用化学療法によって高い奏効率が得られており、ときに完全奏効も認められている。[ 1 ][ 2 ]
IV期の膀胱がんに対しては、シスプラチンをベースにした多剤併用化学療法レジメンが耐えられる患者では第一選択治療として標準治療である。[ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ][ 7 ]ランダム化比較試験で生存期間の延長をもたらすことが示されている化学療法レジメンは、MVAC(メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、およびシスプラチン)、投与間隔を狭めた(dose-dense)MVAC、CMV(シスプラチン、メトトレキサート、およびビンブラスチン)のみである。
1件のランダム化比較試験においてGC(ゲムシタビンおよびシスプラチン)がMVACと比較されたが、どちらのレジメンも奏効率または生存における統計的有意差は認められなかった。2つのレジメンは一般的に同等と考えられるが、非劣性試験では比較されていない。注目すべきこととして、パフォーマンスステータスが良好でリンパ節にしか病変が認められない患者は、MVACまたはGCによりわずかであるが有意な持続的完全寛解率を達成している。例えば、MVACとGCを比較した大規模ランダム化比較試験では、リンパ節にしか病変が認められない患者における5年全生存(OS)率は20.9%であった。[ 8 ]1件のランダム化比較試験において、投与間隔を狭めた(dose-dense)MVACおよび標準用量のMVACが比較され、投与間隔を狭めたMVACの方が生存期間が長かった。
1件のランダム化比較試験において、シスプラチン単剤とシスプラチンを含まない多剤レジメンは、生存率を改善することは示されていない。シスプラチンをベースにした多剤併用化学療法レジメンの候補とならない患者に対しては、生存を延長することが示されているレジメンが存在しない; しかし、多くのレジメンは、放射線学的に測定可能な応答を実証している。
これらのレジメンとして、カルボプラチン + パクリタキセル[ 9 ]、カルボプラチン + ゲムシタビン[ 10 ][ 11 ][ 12 ]、パクリタキセル + ゲムシタビン[ 13 ][ 14 ][ 15 ]、ゲムシタビン単剤[ 16 ][ 17 ]、およびパクリタキセル単剤[ 18 ][ 19 ][ 20 ]が挙げられる。カルボプラチン、メトトレキサート、およびビンブラスチン;カルボプラチン、エピルビシン、メトトレキサート、およびビンブラスチン;パクリタキセル、ゲムシタビン、およびカルボプラチンのレジメンが研究されているが、広く用いられていない。[ 21 ][ 22 ][ 23 ][ 24 ]
証拠(多剤併用化学療法):
- MVACとシスプラチン、シクロホスファミド、およびドキソルビシンとを比較したプロスペクティブ・ランダム化試験で、MVACレジメンによる奏効率の改善および生存期間中央値の延長(48週 vs 36週;P = 0.003)が実証された。[ 25 ]
- 進行膀胱がんにおけるMVACとシスプラチン単剤とを比較したランダム化試験から得られた結果でも、奏効率と生存期間中央値(12.5ヵ月 vs 8.2ヵ月;P = 0.002)の双方においてMVACが有意に優れていることが示された。[ 26 ]
- 214人の患者を対象にした多施設ランダム化比較試験で、CMVとシスプラチンを併用しないメトトレキサート + ビンブラスチンとが比較された。死亡の相対リスクは0.68(95%信頼区間[CI]、0.51-0.90;P = 0.0065)で、CMVが支持された。生存期間中央値は、CMV群で7ヵ月であったのに対し、メトトレキサート + ビンブラスチン群で4.5ヵ月であった。[ 27 ]
- European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)により、進行膀胱がんの患者263人について研究した別のランダム化試験が実施され、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)とともに2週間ごとに投与する高い用量強度のMVACレジメンの効力を、4週間ごとに投与する古典的MVACレジメンと比較して評価した。[
28
]
- 追跡期間中央値にして3.2年経過時の全生存(OS)における有意差は認められなかった(ハザード比[HR]、0.80;95%CI、0.60-1.06;P = 0.122)が、追跡期間中央値7.3年経過時の更新では、高い用量強度のMVACレジメンの方がOSが改善しており(HR、0.76;95%CI、0.58-0.99;P = 0.042)、5年生存率は、古典的MVACレジメンにより治療された患者の14%と比較して22%であったと報告された。
- また高い用量強度のMVACレジメンの方が、奏効率が高く(72% vs 58%;P = 0.016)、無増悪生存(PFS)期間中央値が改善し(9.5ヵ月 vs 8.1ヵ月;P = 0.017)、好中球減少性発熱の発現が減少した(10% vs 26%;P < 0.001)が、古典的MVACレジメンで治療された患者のうち、G-CSFを受けたのはわずか19%であった。[ 28 ][証拠レベル:1iiA]ベースライン時の予後因子の不均衡(すなわち、内臓転移が、高い用量強度のMVACレジメンにランダムに割り付けられた患者の37人に、古典的MVACレジメンに割り付けられた患者の47人に見つかった)で、これらの結果がある程度説明できる可能性がある。
- ゲムシタビン + シスプラチン。
- 進行期または転移性膀胱がん患者405人を対象にしたGCとMVACレジメンを比較した多施設ランダム化第III相試験において、GCはMVACと同等の奏効率、増悪までの期間、およびOS(HR、1.04;95%CI、0.82-1.32;P = 0.75)をもたらしたが、GCはMVACよりも安全性が高く、忍容性が高かった。
この研究は2レジメンの同等性を示すようにはデザインされていなかったが、GCの同等の効力および低い毒性作用は、MVACレジメンに耐えられない可能性がある患者において合理的な代替となる。[ 29 ][証拠レベル:1iiA]
- 転移性膀胱がんで活性が明らかにされているこれ以外の化学療法レジメンには、パクリタキセル単剤、ゲムシタビン単剤、ペメトレキセド単剤、ゲムシタビンまたはパクリタキセルのいずれかと併用するカルボプラチン、およびパクリタキセルと併用するゲムシタビンがある。第二選択化学療法による生存またはQOLの有益性を実証した第III相試験は存在しない。[ 30 ][ 31 ][ 32 ][ 33 ][ 34 ][ 35 ][ 36 ][ 37 ]
免疫療法
免疫療法は、再発膀胱がん患者に対する代替治療の1つとして登場している。抗プログラム死1(PD-1)または抗プログラム死リガンド1(PD-L1)活性を有する免疫チェックポイント阻害薬は、複数の臨床試験においてシスプラチンをベースにした化学療法を以前に受けたか、またはこの化学療法に適格でない患者における尿路上皮がんに対して活性を有することが示されている。[ 38 ][ 39 ][ 40 ][ 41 ][ 42 ]現在、4つの異なる薬物が承認を受けている;しかしながら、ペムブロリズマブは最も証拠レベルが高く、生存に関して最も多くのデータが得られている薬物である。
ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、PD-1に結合するヒト化モノクローナル抗体である。以前にプラチナ製剤をベースにした化学療法で治療された患者において、ペムブロリズマブは第二選択の化学療法と比較してOSを延長することが示されている。その結果、ペムブロリズマブは、局所進行または転移性尿路上皮がんで以下の3つのカテゴリーのいずれかに該当する患者に対して米国食品医薬品局(FDA)により承認されている:
- シスプラチンに適格ではなく、PD-L1を発現している腫瘍を有する(複合陽性スコア[CPS]が10%以上)。
- シスプラチンおよびカルボプラチンに適格ではない。
- プラチナ製剤をベースにした化学療法を用いた治療後に疾患が進行した。
2018年に、FDAは2件の進行中の試験からの予備的データで、ペムブロリズマブまたはアテゾリズマブとシスプラチンまたはカルボプラチンをベースにした治療を比較した第一選択治療に関する試験で短い生存期間が示されたという警告を発表していることに注意することが重要である。その結果、上述の3つのカテゴリーに対して両薬物の使用を制限するようにラベルが修正された。
証拠(ペムブロリズマブ):
- プラチナ製剤をベースにした化学療法を用いた治療後に疾患が進行した患者を対象に、ペムブロリズマブ(21日ごとに200mg静注[IV]) vs 第二選択の化学療法(パクリタキセル、ドセタキセル、またはvinflunineの研究者による選択)を比較した1件のオープンラベル国際第III相ランダム化比較試験(NCT02256436)において、OS期間中央値はペムブロリズマブの方が長かった(10.3ヵ月 vs 7.4ヵ月;HR、0.73;95%CI、0.59-0.91)。[
43
]
- PD-L1 CPSが少なくとも10%以上の患者におけるOS期間中央値は、ペムブロリズマブ群で8.0ヵ月であったのに対し、化学療法群では5.2ヵ月であった(HR、0.57;95%CI、0.37-0.88)。
- 12ヵ月経過時のPFS率はペムブロリズマブ群で16.8%(95%CI、12.3%-22.0%)で、化学療法群で6.2%(95%CI、3.3%-10.2%)であった。
- 客観的奏効率はペムブロリズマブ群で21.1%で、化学療法群で11.4%であった。反応が得られた患者における奏効期間中央値はペムブロリズマブ群では18ヵ月を超えたのに対し、化学療法群の奏効期間は4.3ヵ月であった。
- ペムブロリズマブ群では治療関連有害事象の割合が化学療法群よりも低く(60.9% vs 90.2%)、高いグレードの有害事象の割合も低かった(15.0% vs 49.4%)。ペムブロリズマブ群での最も一般的な有害事象は、そう痒症、疲労、吐き気、下痢、および食欲減退であった。[ 43 ][証拠レベル:1iiA]
- 未治療のシスプラチンに不適格な局所進行または転移性尿路上皮がん患者370人を対象にしたペムブロリズマブに関する1件の単一群第II相試験(NCT02335424)において、全奏効率は29%であった。PD-L1 CPSが少なくとも10%以上の患者における全奏効率は51%であった。[
44
]
- 奏効期間中央値には到達していなかった。奏効の82%が少なくとも6ヵ月以上持続した。
- 10%の患者に重篤な治療関連有害事象がみられ、治療関連有害事象により1人の患者が死亡した。最も一般的な高いグレードの有害事象は疲労(2%)、アルカリホスファターゼ高値(1%)、結腸炎(1%)、および筋力低下(1%)であった。[ 44 ][証拠レベル:3iiiDiv]
アテゾリズマブ
アテゾリズマブは、PD-L1に結合し、PD-L1がその受容体であるPD-1またはB7-1に結合しないようにするヒト化モノクローナル抗体である。複数の臨床試験でアテゾリズマブは尿路上皮がんに作用することが報告されているが、アテゾリズマブによるOSの延長、またはQOLの改善は示されていない。アテゾリズマブについて検証した唯一のランダム化比較試験では、第二選択化学療法と比較してOSにおける有意差は報告されなかった。
アテゾリズマブは、局所進行または転移性尿路上皮がんで以下の3つのカテゴリーのいずれかに該当する患者に対してFDAにより承認されている:
- シスプラチンに適格ではなく、PD-L1を発現している腫瘍を有する(腫瘍面積の5%以上が、PD-L1に染色を示す腫瘍浸潤免疫細胞で覆われている)。
- シスプラチンおよびカルボプラチンに適格ではない。
- プラチナ製剤をベースにした化学療法を用いた治療後に疾患が進行した。
2018年に、FDAは2件の進行中の試験からの予備的データで、ペムブロリズマブまたはアテゾリズマブとシスプラチンまたはカルボプラチンをベースにした治療を比較した第一選択治療に関する試験で短い生存期間が示されたという警告を発表していることに注意することが重要である。その結果、上述の3つのカテゴリーに対して両薬物の使用を制限するようにラベルが修正された。
証拠(アテゾリズマブ):
-
IMvigor211試験(NCT02302807)は、局所進行または転移性尿路上皮がんで以前にプラチナ製剤を含む化学療法により治療された患者931人においてアテゾリズマブと第二選択の化学療法(ドセタキセル、パクリタキセル、またはvinflunine)を比較したランダム化比較試験である。[
45
]試験デザインにより、PD-L1に対して腫瘍細胞の少なくとも5%以上が染色した患者において第一にOSを評価するように規定された。
- PD-L1に対して腫瘍細胞の少なくとも5%以上が染色した患者におけるOS期間中央値は、アテゾリズマブ群で11.1ヵ月 vs 化学療法群で10.6ヵ月であった(P = 0.41)。[ 45 ][証拠レベル:1iiA]
- 奏効率もほぼ同じであった:アテゾリズマブ群で23%および化学療法群で22%。
- アテゾリズマブ群の患者では高いグレードの毒性作用の割合が低く(20% vs 43%)、有害事象による治療中止の割合も低かった(7% vs 18%)。
- シスプラチンに不適格な患者または以前にプラチナ製剤をベースにした化学療法で治療され、手術不能な局所進行または転移性尿路上皮がんを有する患者315人を対象にしたアテゾリズマブ(21日ごとに1,200mg静注)に関する1件の多施設単一群試験(NCT0108652)において、以下の結果が報告された:[
41
][証拠レベル:3iiiD]
- 全奏効率は15%であった。
- 追跡期間中央値11.7ヵ月時に、奏効者45人中38人(84%)では反応が持続していた。
- 奏効率は、PD-L1発現が少なくとも5%以上認められる患者で27%、PD-L1発現が1~5%の患者で10%、およびPD-L1発現が1%未満の患者で8%であった。
- グレード3/4の有害事象は16%の患者に報告され、高いグレードの免疫関連有害事象が5%の患者に報告された。
- 同様に、未治療でシスプラチンに適格でない、局所進行転移性尿路上皮がんで、アテゾリズマブによる治療を受けた患者123人を対象にした1件の研究(NCT02108652)では、追跡期間中央値17.2ヵ月時に、客観的奏効率は23%で、完全奏効率は9%であったと報告された。[
42
][証拠レベル:3iiiD]
- 奏効者27人中19人ではデータ解析時に反応が持続していた。OS期間中央値は15.9ヵ月であった。
- 高いグレードの有害事象が16%の患者に報告され、8%の患者では有害事象のために治療が中止され、治療関連死は1人であった。
ニボルマブ
ニボルマブは、PD-L1およびPD-L2とPD-1との相互作用を遮断する完全ヒト化免疫グロブリンG4 PD-1免疫チェックポイント阻害抗体である。比較試験は発表されておらず、したがってニボルマブにより生存が延長するか、QOLが改善するかどうかに関するデータは存在しない。
証拠(ニボルマブ):
- プラチナ製剤をベースにした化学療法後に疾患が進行した転移性尿路上皮がん患者86人を対象にした1件の多施設試験(NCT01928394)において、患者がニボルマブ(2週間ごとに3mg/kg、IV)で治療された。[
40
][証拠レベル:2iD]
- 最小追跡期間9ヵ月時および追跡期間中央値15ヵ月時に、24%で客観的奏効が認められ、22%にグレード3または4の有害事象がみられた。
- 最も一般的な有害事象は、リパーゼまたはアミラーゼ高値、疲労、発疹、呼吸困難、リンパ球減少、および好中球減少であった。
- プラチナ製剤をベースにした化学療法後に進行した局所進行または転移性尿路上皮がん患者270人を対象にした別の多施設研究(NCT02387996)により、20%の客観的奏効率が報告された。[
39
][証拠レベル:2iD]
- PD-L1発現で評価したところ、客観的奏効率は、PD-L1発現が5%以上認められる患者で28%、PD-L1発現が1%以上の患者で24%、およびPD-L1発現が1%未満の患者で16%であった。
- グレード3~4の有害事象は18%の患者で報告された。
- 治療関連死は3人であった。
アベルマブ
アベルマブは尿路上皮がんに対して活性を示している抗PD-L1モノクローナル抗体である。この薬物により生存の延長またはQOLの改善を実証している発表済みの比較試験もデータも存在しない。
証拠(アベルマブ):
- プラチナ製剤をベースにした化学療法後に増悪した転移性尿路上皮がん患者249人を対象にしたアベルマブ(10mg/kg、静注、14日ごと)の研究(NCT01772004)により、以下の結果が報告された:[
46
][
47
][証拠レベル:3iiiDiv]
- 161人の患者を少なくとも6ヵ月以上追跡したところ、全奏効率は17%で、追跡期間中央値7.3ヵ月時に奏効者28人中23人で奏効が持続していた。6%の患者で完全奏効が得られた。
- PD-L1に対して染色する腫瘍細胞が少なくとも5%以上の患者における全奏効率は25.0%で、PD-L1陽性が5%未満の患者では14.7%であった。
- 無増悪生存期間中央値は6.3週間であった;23%の患者が24週間経過時に無増悪状態を維持していた。
- 治療関連有害事象は、高いグレードの有害事象が発生した8.4%の患者を含めて66.7%の患者で報告された。肺炎による治療関連死は1人であった。高いグレードの免疫関連有害事象が2.4%の患者で報告された。
デュルバルマブ
デュルバルマブは尿路上皮がんに対して活性を示している抗PD-L1モノクローナル抗体である。この薬物により生存の延長またはQOLの改善を実証している発表済みの比較試験もデータも存在しない。
証拠(デュルバルマブ):
- 局所進行または転移性尿路上皮がんで、化学療法中に疾患が進行したか化学療法による治療に適格ではないか、化学療法による治療を希望しない患者191人を対象にした1件の研究(NCT01693562)で、デュルバルマブ(14日ごとに10mg/kg、IV)の効力が評価された。[
48
][証拠レベル:3iiiDiv]
- 追跡期間中央値5.78ヵ月時に、全奏効率は17.8%であった。
- 奏効率は、PD-L1発現が高い患者で27.6%であったのに対し、PD-L1発現が低いか全く認められない患者では5.1%であった。
- 高いグレードの有害事象が、高いグレードの免疫関連有害事象が発生した2.1%を含めて6.8%の患者で報告された。
標的療法
エンホルツマブ ベドチン
エンホルツマブ ベドチンは抗体-薬物複合体と呼ばれる標的療法の一種である。抗体-薬物複合体は、ある薬物と化学結合したモノクローナル抗体で構成される。エンホルツマブ ベドチンのモノクローナル抗体部分は、ほとんどの膀胱がんの細胞表面上に見られるnectin-4と呼ばれる蛋白に結合する。このモノクローナル抗体は、微小管阻害薬と呼ばれるタイプの化学療法薬であるモノメチルオーリスタチン(monomethyl auristatin)E、すなわちMMAEに化学結合している。複合体がいったん細胞に取り込まれると、微小管阻害薬が細胞分裂を停止させ、細胞死に至らせる。
エンホルツマブ ベドチンは、プラチナ製剤をベースにした第一選択化学療法および免疫チェックポイント阻害薬による第二選択療法の両方での治療後に増悪した転移性尿路上皮がん患者に対して、FDAにより承認されている。承認は、転移性尿路上皮がん患者125人を対象にした単一治療群の試験に基づいていた。[ 49 ]
証拠(エンホルツマブ ベドチン):
- 1件の単一治療群試験において、転移性尿路上皮がん患者125人がエンホルツマブ ベドチンで治療された。[
49
]
- 全奏効率は44%および完全奏効率は12%であった。
- 奏効期間中央値は7.6ヵ月であった。
- 有害事象には、疲労(50%)、末梢神経障害(50%)、脱毛(49%)、発疹(48%)、食欲減退(44%)、および味覚異常(40%)が含まれた。
対照群が設定されなかったため、この研究では全生存またはQOLの改善を実証できなかった。この医薬品の有益性を評価するため、第III相追跡試験が進行中である。
erdafitinib
erdafitinib(JNJ-42756493)は線維芽細胞増殖因子受容体1-4の強力なチロシンキナーゼ阻害薬である。erdafitinibは4つの線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)遺伝子の1つに変異が認められ、化学療法を受けた後に進行した尿路上皮がん患者に対して、FDAにより承認されている。
尿管および腎盂の尿路上皮がんの35%がそうであるように、膀胱の転移性尿路上皮がんの約20%にFGFRの変異が認められる。
証拠(erdafitinb):
- 1件の第II相試験には、転移性尿路上皮がんで疾患が全身化学療法中またはその後に進行した患者が含められた。[
50
]研究に適格となる条件として、被験者はFGFR3における変異またはFGFR2/FGFR3融合が認められる腫瘍を有している必要があった。この試験は当初、連続的治療と間欠的治療を比較する第II相ランダム化試験としてデザインされたが、安全性に関する中間解析後、試験は用量を漸増する連続的治療の単一群研究に転換された。発表されている解析では、「選択されたレジメン群」と称された研究の後半の相に焦点が当てられている。選択されたレジメン群は99人の被験者で構成され、74人がFGFR3変異を有し、25人がFGFR2/FGFR3融合を有した。
- 独立した画像診断による奏効率は34%であった。
- 奏効率はFGFR3変異を有する被験者の方がFGFR2/FGFR3融合を有する被験者よりも高かった。
- 10%以上の被験者に見られたグレード3の有害事象には、口内炎および低ナトリウム血症があった。すべてのグレードで最も一般的な有害事象は、低リン酸血症(77%)、口内炎(58%)、下痢(51%)、口渇(46%)、食欲減退(38%)、および味覚異常(37%)であった。
新たな表在性または限局性腫瘍の手術
表在性膀胱腫瘍に対する従来型の温存治療が実施された状態で発生する新たな表在性または局所浸潤性腫瘍の治療に関しては、本要約のI期で考察している。
緩和療法
症状がある腫瘍の患者には、症状緩和目的の放射線療法を検討すべきである。
臨床試験
遠隔部位または根治的局所治療後に発生する再発性または進行性膀胱がんの予後はきわめて不良であるが、可能であればいつでも臨床試験への参加を検討すべきである。
最新の臨床試験
NCIが支援しているがん臨床試験で現在患者登録中の試験を検索するには、臨床試験アドバンスト・サーチを使用のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。)。このサーチでは、試験の場所、治療の種類、薬物名やその他の基準による絞り込みが可能である。臨床試験に関する一般情報も入手することができる。
参考文献- Sternberg CN, Yagoda A, Scher HI, et al.: Methotrexate, vinblastine, doxorubicin, and cisplatin for advanced transitional cell carcinoma of the urothelium. Efficacy and patterns of response and relapse. Cancer 64 (12): 2448-58, 1989.[PUBMED Abstract]
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- Patel MR, Ellerton J, Infante JR, et al.: Avelumab in metastatic urothelial carcinoma after platinum failure (JAVELIN Solid Tumor): pooled results from two expansion cohorts of an open-label, phase 1 trial. Lancet Oncol 19 (1): 51-64, 2018.[PUBMED Abstract]
- Powles T, O'Donnell PH, Massard C, et al.: Efficacy and Safety of Durvalumab in Locally Advanced or Metastatic Urothelial Carcinoma: Updated Results From a Phase 1/2 Open-label Study. JAMA Oncol 3 (9): e172411, 2017.[PUBMED Abstract]
- Rosenberg JE, O'Donnell PH, Balar AV, et al.: Pivotal Trial of Enfortumab Vedotin in Urothelial Carcinoma After Platinum and Anti-Programmed Death 1/Programmed Death Ligand 1 Therapy. J Clin Oncol 37 (29): 2592-2600, 2019.[PUBMED Abstract]
- Loriot Y, Necchi A, Park SH, et al.: Erdafitinib in Locally Advanced or Metastatic Urothelial Carcinoma. N Engl J Med 381 (4): 338-348, 2019.[PUBMED Abstract]
- 本要約の変更点(05/08/2020)
-
PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。
膀胱がんに対する治療法選択肢の概要
表7が改訂され、再発膀胱がんに対する標準治療法の選択肢として、標的療法が含められた。
IV期の膀胱がんの治療
本文で以下の記述が改訂された;IV期の膀胱がんに対しては、シスプラチンをベースにした多剤併用化学療法レジメンが耐えられる患者ではこの治療が第一選択治療として標準治療である。また本文に以下の記述が追加された;MVAC(メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、およびシスプラチン)およびGC(ゲムシタビンおよびシスプラチン)レジメンは一般的に同等と考えられるが、非劣性試験では比較されていない;1件のランダム化比較試験において、投与間隔を狭めた(dose-dense)MVACおよび標準用量のMVACが比較され、投与間隔を狭めたMVACの方が生存期間が長かった。
本文に以下の記述が追加された;転移性膀胱がんで活性が明らかにされているこれ以外の化学療法レジメンには、パクリタキセル単剤、ゲムシタビン単剤、ペメトレキセド単剤、ゲムシタビンまたはパクリタキセルのいずれかと併用するカルボプラチン、およびパクリタキセルと併用するゲムシタビンがある。第二選択化学療法による生存またはQOLの有益性を実証した第III相試験は存在しない(引用、参考文献37~49として、それぞれVaughn et al.、Zielinski et al.、Bajorin et al.、Carles et al.、Dreicer et al.、Hussain et al.、Meluch et al.、Albers et al.、Li et al.、Lorusso et al.、Fechner et al.、Galsky et al.、およびChee et al.)。
本文で以下の記述が改訂された;ペムブロリズマブは、局所進行または転移性尿路上皮がんで以下の3つのカテゴリーのいずれかに該当する患者に対して米国食品医薬品局(FDA)により承認されている:(1)シスプラチンに適格ではなく、プログラム死リガンド1(PD-L1)を発現している腫瘍を有する、(2)シスプラチンおよびカルボプラチンに適格ではない、または(3)プラチナ製剤をベースにした化学療法を用いた治療後に疾患が進行した。
本文に以下の記述が追加された;2018年に、FDAは2件の進行中の試験からの予備的データで、ペムブロリズマブまたはアテゾリズマブとシスプラチンまたはカルボプラチンをベースにした治療を比較した第一選択治療に関する試験で短い生存期間が示されたという警告を発表した。その結果、上述の3つのカテゴリーに対して両薬物の使用を制限するようにラベルが修正された。
本文に以下の記述が追加された;アテゾリズマブは、局所進行または転移性尿路上皮がんで以下の3つのカテゴリーのいずれかに該当する患者に対してFDAにより承認されている:(1)シスプラチンに適格ではなく、PD-L1を発現している腫瘍を有する、(2)シスプラチンおよびカルボプラチンに適格ではない、または(3)プラチナ製剤をベースにした化学療法を用いた治療後に疾患が進行した。
本文に以下の記述が追加された;2018年に、FDAは2件の進行中の試験からの予備的データで、ペムブロリズマブまたはアテゾリズマブとシスプラチンまたはカルボプラチンをベースにした治療を比較した第一選択治療に関する試験で短い生存期間が示されたという警告を発表した。その結果、上述の3つのカテゴリーに対して両薬物の使用を制限するようにラベルが修正された。
再発膀胱がんの治療
本セクションは広範囲にわたって改訂された。
本要約はPDQ Adult Treatment Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。
- 本PDQ要約について
-
本要約の目的
医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、膀胱がんの治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
査読者および更新情報
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Adult Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:
- 会議での議論、
- 本文の引用、または
- 既に引用されている既存の記事との入れ替え、または既存の記事の更新。
要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。
- Timothy Gilligan, MD (Cleveland Clinic Taussig Cancer Institute)
本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。
証拠レベル
本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Adult Treatment Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。
本要約の使用許可
PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。
本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Bladder Cancer Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/bladder/hp/bladder-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389399]
本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。
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入手可能な証拠の強さに基づき、治療選択肢は「標準」または「臨床評価段階にある」のいずれかで記載される場合がある。これらの分類は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。
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