患者さん向け 小児乳がんの治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小児乳がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

CONTENTS 全て開く全て閉じる

小児乳がんについての一般的な情報

乳がんは、乳房の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

乳房乳管から構成されています。左右の乳房には葉と呼ばれる区分が15~20個ずつ存在します。それぞれの葉は小葉と呼ばれる多数の小さな区分に分かれています。小葉の先には小さな腺房という構造が多数存在しており、そこで乳汁が作られています。これらの葉、小葉、腺房は乳管と呼ばれる細い管でつながっています。

乳房の中にはさらに血管リンパ管が通っています。リンパ管にはリンパ液と呼ばれるほぼ無色の水のような液体が流れています。リンパ管はリンパ節の間でリンパ液を運びます。リンパ節は小さな豆のような形をした構造物で、全身に分布しています。リンパ液をろ過し、感染や疾患に対する防御を担う白血球の貯蔵場所でもあります。腋窩(わきの下)の乳房付近や鎖骨の上、胸部などには、このリンパ節が群れを成すように存在しています。

乳がんは男児と女児の乳房の組織に発生することがあります。

女性の乳房の解剖図:この図はリンパ節、乳頭、乳輪、胸壁、肋骨、筋肉、脂肪組織、葉、乳管、小葉を示している。

画像を拡大する

女性の乳房の解剖図。乳頭と乳輪が乳房の外表面に示されています。リンパ節、葉、小葉、乳管などの乳房内の各部分も示されています。

乳がんは青年と若年成人(15~39歳)の女性で最もよくみられるがんですが、この年齢層の女性に発生する乳がんは全ての乳がん症例の5%未満です。青年と若年成人に発生する乳がんは、侵攻性が高いことが多く、それよりも年長の女性より治療が難しい傾向にありますが、治療選択肢は類似しています。

小児に発生する乳がん腫瘍の大半は線維腺腫です(がんではありません)。

線維腺腫良性腫瘍です。他の良性乳房腫瘍には、管状腺腫葉状腫瘍、線維上皮腫瘍などがあります。葉状腫瘍は大半が良性ですが、一部はがんです。乳房の良性腫瘍が急速に増殖する、大きい、または複数ある場合は、コア針生検または摘出生検が行われます。生検で採取された組織は、病理医によって顕微鏡で観察され、がんの徴候がないか調べられます。

過去のがん治療で行われた乳房または胸部への放射線療法は、乳がんのリスクを上昇させます。

疾患が発生する危険性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子がある小児全員が乳がんを発症するわけではなく、また、リスク因子が認められない小児に乳がんが発生することもあります。お子さんに乳がんのリスクがあるかもしれないと思われる場合は、担当の医師に相談してください。

小児、青年、若年成人の乳がんのリスク因子には以下のものがあります:

乳がんのある、または乳がんの家族歴を持つ患者さんに対して、遺伝カウンセリングが行われることがあります。

ある状態が遺伝するかどうかは、家族歴から必ず判明するとは限りません。特定の条件に当てはまる家族は、遺伝カウンセリング遺伝子検査を受けるメリットがあります。遺伝カウンセラーやその他の特別な訓練を受けた専門家は、保護者が以下のような点を把握するための支援を提供することができます:

遺伝カウンセラーは遺伝子検査の結果について家族と話し合う方法を助言するなどして、保護者が検査結果に対処するための支援を行います。

乳がんの徴候には、乳房やその付近のしこりや肥厚(皮膚が厚くなること)などがあります。

これらのような徴候や症状は、乳がんが原因のこともありますが、別の病態が原因である可能性もあります。

以下の症状が1つでもみられる場合は、お子さんの担当医に相談してください。

乳がんの診断には乳房を調べる検査法が用いられます。

医師は病歴および家族歴の聴取と身体診察に加えて、以下の検査や手技を行うことがあります:

小児乳がんの病期

小児乳がんには、標準的な病期分類システムがありません。

がん乳房から周辺領域や他の部位に拡がっているかどうかを調べるためのプロセスは、病期診断と呼ばれます。小児乳がんには、標準的な病期分類システムがありません。乳がんを診断するために行われた検査や手技の結果は、治療に関する決定を下すための検討材料になります。

小児乳がんはときに、治療後に乳房や体の他の部位で再発することがあります。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系、または血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞が最初に発生した場所(原発巣)から分離して、リンパ系や血液を介して移動します。

転移巣の腫瘍は原発巣と同じ種類の腫瘍です。例えば、乳がんが骨に転移した場合、その骨にあるがん細胞は実際は乳がんの細胞です。この疾患は転移性乳がんであり、骨の悪性腫瘍ではありません。

治療選択肢の概要

小児と青年の乳房腫瘍または乳がんに対する治療法には様々なものがあります。

その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象に、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。新しい治療法が標準治療よりも優れていることが複数の臨床試験で示された場合、その新しい治療法が標準治療になる可能性があります。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討するべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

小児と青年の乳がんの治療では、小児がんの治療に精通した医師のチームが治療計画を策定するべきです。

治療は小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が監督します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通しつつ、同時に特定の医療分野を専門とする他の小児医療従事者と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門医や専門家です:

良性乳房腫瘍の治療には以下の2種類の標準治療が用いられます:

注意深い経過観察

注意深い経過観察とは、徴候症状の出現や変化がみられるまで、治療を一切行わずに患者さんの状態を注意深くモニタリングしていくことです。良性乳房腫瘍は治療を行わなくても消失することがあります。

手術

手術では腫瘍を切除し、乳房全体は切除しません。

乳がんには標準治療として以下の3種類が用いられています:

手術

手術では、乳房全体を切除するのではなく、がんを切除します。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入り、全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

小児乳がんの治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療中に発生する副作用の詳細については、副作用(英語)のページをご覧ください。

がん治療による副作用のうち、治療後に始まって月単位または年単位で続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:

晩期合併症(晩期障害)には治療やコントロールが可能なものもあります。治療によってお子さんに生じうる晩期合併症(晩期障害)について担当の医師とよく相談することが重要です。詳しい情報については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

がんに対する今日の標準治療の多くは、過去に行われた臨床試験の結果を根拠としています。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、まだ人に用いられたことがない新しい治療法を受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがん治療を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が新しい効果的な治療法の発見につながらなくても、しばしば重要な問題に対する答えが得られ、研究を前進させる助けになります。

患者さんはがん治療の開始前だけでなく、開始後でも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要になることもあります。

治療を進めるにつれて、フォローアップ検査または定期検査が行われます。がんの診断のために実施された検査の中には、治療の効果を確認するために繰り返し行われるものもあります。治療の継続、変更、中止などの決定がそれらの検査結果に基づいて判断されることもあります。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。それらの検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんが再発したかどうかを知ることができます。

良性小児乳房腫瘍の治療

以下の治療法に関する詳しい情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

新たに診断された小児の良性乳房腫瘍に対する治療法には以下のようなものがあります:

小児乳がんの治療

以下の治療法に関する詳しい情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

新たに診断された小児の乳がんに対する治療法には以下のようなものがあります:

小児乳がんはときに治療後に再発することがあります。お子さんが再発乳がんと診断された場合、担当医はあなたとともに治療計画を立てます。

乳がんの青年と若年成人の治療の詳しい情報については、乳がんの治療(成人)をご覧ください。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

小児乳がんについてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している乳がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小児がんに関するさらなる情報とがん全般に関するその他の資料については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児乳がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Breast Cancer Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/breast/patient/child-breast-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。