患者さん向け 前立腺がんのスクリーニング(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、前立腺がんのスクリーニングに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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スクリーニングとは

スクリーニングとは、症状が現れてくる前にがんを発見しようとする試みのことです。実際にがんの早発見に役立つ場合もあります。異常組織やがんも、早期に発見されれば治療が容易になる場合があります。症状が現れる頃には、がんが増殖し拡がり始めていることもあります。

ある種類のがんにかかりやすいのはどのような人々なのか、ということをより深く理解しようと科学者たちは挑み続けています。さらに、がんの原因となりうる生活習慣や環境についても研究が重ねられています。こうして得られた情報は、どういった人ががんのスクリーニングを受けるべきか、どのスクリーニング検査を用いるべきか、そしてその検査をどのくらいの頻度で受けるべきかについて、医師が患者さんに助言をしていく際に役立てられています。

担当の医師からスクリーニング検査を勧められたとしても、必ずしもがんの存在を疑ってそうしているわけではないということを覚えておくことが重要です。スクリーニング検査はがんの症状が現れる前に実施されるものなのです。スクリーニング検査を定期的に繰り返し行う場合もあります。

スクリーニング検査の結果が異常であれば、がんの存在を確認するために、さらなる検査が必要になる場合もあります。こうした検査は診断検査と呼ばれます。

前立腺がんについての一般的な情報

前立腺がんは、前立腺の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

前立腺は男性生殖系に属するの1つで、膀胱尿の貯留と排出を担う臓器)のすぐ下、直腸の下部)の前方に位置しています。その大きさはクルミほどで、尿道(排尿時に膀胱から出た尿が通っていく管)を取り囲むように存在しています。前立腺は精液の一部を構成する液体を生産しています。

男性の生殖器系および泌尿器系の解剖図:尿管、リンパ節、直腸、膀胱、前立腺、輸精管、陰茎、精巣、尿道、精嚢、射精管の正面図と側面図を示す。

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男性の生殖器系および泌尿器系の解剖図:前立腺、精巣、膀胱、その他の臓器を示しています。

高齢の男性では、前立腺が大きくなることがあります。大きくなった前立腺は、膀胱からの尿の流れを妨げたり、性的機能の異常の原因となったりします。このような病態良性前立腺過形成(BPH)と呼ばれ、がんではないものの、治療するのに手術が必要となる場合もあります。良性前立腺過形成を始めとする前立腺の疾患では、その症状前立腺がんの症状とよく似てくることがあります。

2つの図に正常な男性泌尿生殖器系の解剖図と良性前立腺過形成(BPH)が示されている。左の図は、正常な前立腺と、膀胱から尿道を介した尿の流れを示している。右の図では、大きくなった前立腺によって膀胱と尿道が圧迫されているために、尿の流れが妨げられている。

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正常な前立腺と良性前立腺過形成(BPH)。正常な前立腺は膀胱からの尿の流れを妨げることはありません。一方、肥大した前立腺は膀胱と尿道を圧迫し、尿の流れを妨げます。

前立腺がんに関する詳しい情報については以下のPDQの要約をご覧ください:

前立腺がんは、皮膚がんを除くと、米国人男性の間で最も多く発生しているがんです。

前立腺がんは主に高齢の男性に発生します。前立腺がんの患者数は非常に多いですが、前立腺がんと診断された男性がこのがんが原因で死亡することはほとんどありません。前立腺がんは、肺がんに次いで、多くの男性の死亡を引き起こしています。アフリカ系アメリカ人男性では、白人男性よりも前立腺がんの発生頻度が高くなっています。前立腺がんのあるアフリカ系アメリカ人では、前立腺がんのある白人の男性と比べて、この疾患が原因で死亡する可能性が高くなっています。

前立腺がんの発生リスクを増減する因子には様々なものがあります。

疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。疾患が発生する可能性を低減させるものは全て防御因子と呼ばれます。

前立腺がんのリスク因子と防御因子に関する詳しい情報については、PDQ前立腺がんの予防に関する要約をご覧ください。

前立腺がんのスクリーニング

各種のがんを見つけるために、症状が現れていない人を対象として検査を実施し選別を行います。

最も害が少なく最も有益な方法を発見すべく、科学者によりスクリーニング検査の研究が行われています。また、がんスクリーニングの臨床試験を行う目的には、早期発見(症状が現れる前にがんを発見すること)によって寿命が延びるか、あるいは疾患により死亡する確率が下がるかどうかを明らかにすることも含まれています。一部の種類のがんでは、早のうちに発見し治療することで、回復の見込みが高まる場合があります。

前立腺がんのスクリーニング検査には、標準的なものや決まって行われるものはありません。

前立腺がんに対するスクリーニング検査には標準的なものや決まって用いられるものはありませんが、以下のような検査法がその候補として現在研究されています:

直腸指診

直腸指診(DRE)は直腸を調べる検査です。医師または看護師が、手袋をはめて潤滑剤を塗った指を直腸の下部に挿入し、前立腺を触ってしこりなどの異常がないかを調べます。

直腸指診:前立腺、直腸、膀胱を含めた男性の生殖器および泌尿器の解剖の側面図を示す。また、手袋をして潤滑剤を塗った指を直腸内に挿入し前立腺を触診している様子も示す。

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直腸指診(DRE)。医師は手袋をして潤滑剤を塗った指を直腸内に挿入し、直腸、肛門、および前立腺(男性の場合)に触れて異常がないか確認します。

前立腺特異抗原検査

前立腺特異抗原(PSA)検査は、血液中のPSAの濃度を測定する検査です。PSAはその大部分が前立腺から分泌される物質で、前立腺がんの男性では、この物質の血中濃度が高くなることがあります。ただし、このPSAの値は、前立腺の感染症や炎症、あるいは良性前立腺過形成(BPH:前立腺が肥大した状態で、がんではない)のある男性でも上昇する場合があります。

PSA検査またはDREにより前立腺がんを早期に発見することはできますが、早期の発見と治療が前立腺がんによる死亡リスクを低下させるかどうかは不明です。

数件の研究で、早期にがんを発見するためにPSA検査の精度を高める方法が検討されています。

特定の患者さんに、前立腺がん遺伝子3(PCA3)RNA検査が行われることがあります。

PSA検査で高い値が出たものの、前立腺の生検ではがんが見つからず、生検後もPSA値が高いままの場合は、前立腺がん遺伝子3(PCA3)RNA検査が実施されることがあります。この検査では、尿中のPCA3 RNAの量を測定します。PCA3 RNA値が正常より高い場合は、前立腺がんを診断するために他の生検を行うことがあります。

現在、前立腺がんのスクリーニング検査法が臨床試験で検証されています。

NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

前立腺がんのスクリーニングのリスク

スクリーニング検査にはリスクが伴います。

スクリーニング検査に関する判断は難しくなる場合があります。全てのスクリーニング検査が役に立つわけではなく、ほとんどはリスクを伴います。スクリーニング検査を受けようとする場合は、その前に検査について担当の医師とよく話し合っておくのがよいでしょう。検査に伴うリスクを把握し、さらにがん死亡のリスク低減という効果が実際に証明されているのかを知っておくことが重要です。

前立腺がんのスクリーニングのリスクとしては以下のものがあります:

前立腺がんが発見されても健康状態の改善や余命の延長につながらない場合もあります。

がんがすでに前立腺の外側や体内の他の領域に拡がっている場合は、スクリーニングを受けても健康状態の改善や余命の延長につながらないことがあります。

がんの中には、何の症状も引き起こさず命を脅かす心配がないものも存在しますが、スクリーニング検査で見つかれば、そのようながんにも治療が行われることがあります。こうしたがんの発見は過剰診断と呼ばれます。このようながんの治療が、無治療の場合よりも余命を長くするかどうかについては不明です。

根治的前立腺全摘除術や放射線療法などの前立腺がんに対する治療法は、多くの男性に長期に及ぶ副作用をもたらすことがあります。最もよくみられる副作用は、勃起不全尿失禁です。

前立腺がんと新規に診断された患者さんを対象とした複数の研究で、これらの患者さんは心血管(心臓と血管)の疾患や自殺による死亡リスクが高いことが示されました。リスクが最も高くなるのは、診断後、最初の数週間または数ヵ月でした。

がんの診断を行うために、生検などのフォローアップ検査が実施される場合があります。

PSA検査で正常値よりも高い値が出た場合には、前立腺の生検が実施されることがあります。前立腺の生検では、発熱、痛み、尿または精液への血液の混入、尿路感染症などの合併症が起こる可能性があります。また、たとえ生検によって前立腺がんの存在が否定された場合でも、検査を受けた男性には、将来の前立腺がんの発生が心配の種になる場合があります。

偽陰性の検査結果が出る可能性もあります。

実際には前立腺がんが存在しているのにもかかわらず、スクリーニング検査の結果が正常と出る場合もあります。偽陰性の検査結果(実際にはがんが存在しているのに存在しないと判定された検査結果)を受けた男性では、たとえ症状が現れていても、医師の診察を受けるのが遅くなる場合があります。

偽陽性の検査結果が出る可能性もあります。

実際にはがんが存在していないにもかかわらず、スクリーニング検査の結果が異常となる場合もあります。偽陽性の検査結果(実際にはがんは存在しないのに存在すると判定された検査結果)は不安の原因となることもあり、さらに、その後も検査(生検など)が引き続き実施されていくのが通常で、そうした検査によるリスクも生じてきます。

ご自身に関する前立腺がんのリスクやスクリーニング検査の必要性については、担当の医師にご相談ください。

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、前立腺がんのスクリーニングに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Screening and Prevention Editorial Board.PDQ Prostate Cancer Screening.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/prostate/patient/prostate-screening-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389306]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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