患者さん向け 肺がんのスクリーニング(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、肺がんのスクリーニングに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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スクリーニングとは

スクリーニングとは、症状が現れてくる前にがんを発見しようとする試みのことです。実際にがんの早発見に役立つ場合もあります。異常組織やがんも、早期に発見されれば治療が容易になる場合があります。症状が現れる頃には、がんが増殖し拡がり始めていることもあります。

ある種類のがんにかかりやすいのはどのような人々なのか、こうした疑問をより深く解明しようとする努力が科学者たちによって続けられています。さらに、がんの原因となりうる生活習慣や環境についても研究が重ねられています。こうして得られた情報は、どういった人ががんのスクリーニングを受けるべきか、どのスクリーニング検査を用いるべきか、そしてその検査をどのくらいの頻度で受けるべきかについて、医師が患者さんに助言をしていく際に役立てられています。

担当の医師からスクリーニング検査を勧められたとしても、必ずしもがんの存在を疑ってそうしているわけではないということを覚えておくことが重要です。スクリーニング検査はがんの症状が現れる前に実施されるものなのです。

スクリーニング検査の結果が異常であれば、がんの存在を確認するために、さらなる検査が必要になる場合もあります。こうした検査は診断検査と呼ばれます。

肺がんについての一般的な情報

肺がんは、肺の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

は、胸部に位置する円錐形をした左右一対の呼吸器官です。肺の主な役割は、息を吸い込んだときに酸素を体内に取り込み、息を吐き出すときに二酸化炭素を体外に排出することです。左右の肺はそれぞれいくつかの部分に分かれていて、それらのことを肺と呼びます。左側の肺は2つの肺葉で構成されています。右側の肺には3つの肺葉があり、全体としては左側の肺よりも若干大きくなっています。肺の周りは胸膜と呼ばれる薄いで覆われています。また、肺には気管支と呼ばれる管が1本ずつ入り込んでいますが、これらは気管から伸びています。肺がんはときにこの気管支も侵します。肺の内部は、細気管支と呼ばれる小さな管と、肺胞と呼ばれる空気の入った微小な袋から構成されています。

呼吸器系の解剖図:右肺の上葉、中葉、下葉;左肺の上葉と下葉;気管、気管支、リンパ節、横隔膜を示す。拡大図には細気管支、肺胞、動脈、静脈が示されている。

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呼吸器系の解剖図:気管、左右の肺とそれぞれの肺葉、気道を示しています。リンパ節と横隔膜も示されています。肺に吸い込まれた酸素は、肺胞の薄い膜を通過して血液中に取り込まれます(拡大図を参照)。

肺がんは小細胞肺がん非小細胞肺がんの2種類に分けられます。

肺がんに関する詳しい情報については以下のPDQの要約をご覧ください:

肺がんは、米国におけるがんによる死亡原因の第1位です。

肺がんは、米国において皮膚がん以外で3番目に多いがんです。肺がんは、男女ともにがんによる死亡原因の第1位を占めています。

様々な因子が肺がんのリスクを増減します。

疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。疾患が発生する可能性を低減させるものは全て防御因子と呼ばれます。

タバコの喫煙は肺がんの最大のリスク因子です。紙巻きタバコ葉巻パイプタバコの喫煙はいずれも、肺がんのリスクを上昇させます。タバコの喫煙は、男性の肺がんの10例に9例ほど、女性の肺がんの10例に8例ほどを引き起こす原因になっています。肺がんを予防する最良の方法は、喫煙しないことです。

肺がんのリスク因子と防御因子に関する詳しい情報については、PDQ肺がんの予防の要約をご覧ください。

肺がんのスクリーニング

各種のがんを見つけるために、症状が現れていない人を対象として検査を実施し選別を行います。

最小の害で最大の利益が得られる方法を発見するために、科学者たちによってスクリーニング検査の研究が進められています。また、がんスクリーニングの臨床試験を行う目的には、早期発見(症状が現れる前にがんを発見すること)によって寿命が延びるか、あるいは疾患により死亡する確率が下がるかどうかを明らかにすることも含まれています。一部の種類のがんでは、早のうちに発見し治療することで、回復の見込みが高まる場合があります。

肺がんによる死亡のリスクを低減するかどうかについて、3つのスクリーニング検査に対する研究が行われました。

肺がんによる死亡のリスクを低減するかどうかについて、以下のスクリーニング検査に対する研究が行われました:

LDCTスキャンによるスクリーニングは、重度喫煙者の肺がんによる死亡のリスクを低減することが示されています。

30年以上にわたって紙巻タバコを1日1箱以上吸っている55~74歳までの人を対象に、全米肺スクリーニング試験が実施されました。参加者は現在喫煙者か15年以内に喫煙した元喫煙者でした。この試験では、胸部X線またはLDCTスキャンを実施して、肺がんの徴候が調べられました。

年1回のLDCTによるスクリーニングを3年間実施すると、重度の現在喫煙者および元喫煙者において、胸部X線よりも早期肺がんの発見成績が良好で、肺がんによる死亡リスクが低下しました。

現在の喫煙者はLDCTスキャンの結果、がんの徴候を示されると禁煙をする可能性が高くなります。

LDCTによるスクリーニングは以下のような害をもたらす可能性があります:

これらの潜在的な有害性についての詳しい情報は、下記の肺がんのスクリーニングのリスクをご覧ください。

患者さんや医師が肺がんのスクリーニングの有益性と有害性について学ぶためのガイドが利用できます。

胸部X線検査や喀痰細胞診によるスクリーニングは、肺がんによる死亡リスクを低下させません。

胸部X線検査と喀痰細胞診は、いずれも肺がんの徴候を調べるために用いられているスクリーニング検査です。胸部X線検査または喀痰細胞診、もしくはその両方によるスクリーニングは、肺がんによる死亡リスクを低下させません。

現在、肺がんのスクリーニング検査法が臨床試験で検証されています。

NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

肺がんのスクリーニングのリスク

スクリーニング検査にはリスクが伴います。

スクリーニング検査に関する判断は難しくなる場合があります。全てのスクリーニング検査が役に立つわけではなく、ほとんどはリスクを伴います。スクリーニング検査を受けようとする場合は、その前に検査について担当の医師とよく話し合っておくのがよいでしょう。検査に伴うリスクを把握し、さらにがん死亡のリスク低減という効果が実際に証明されているのかを知っておくことが重要です。

肺がんのスクリーニング検査に伴うリスクとしては以下のものがあります:

肺がんが発見されても健康状態の改善や余命の延長につながらない場合もあります。

肺がんが他の部位に転移している場合は、スクリーニングを受けたとしても健康状態の改善や余命の延長はあまり望めないでしょう。

スクリーニング検査の結果、症状を引き起こすことも命を脅かすこともなかったであろう疾患が診断され、その治療が行われることになった場合、これを過剰診断と呼びます。このようながんに対する治療に無治療の場合よりも余命を長くする効果があるのかどうかは不明ですし、その治療によって逆に重篤な副作用がもたらされる可能性もあります。重度または長期の喫煙による医学的問題がみられる患者さんには、治療の弊害がより頻繁に生じます。

偽陰性の検査結果が出る可能性もあります。

実際には肺がんが存在しているのにもかかわらず、スクリーニング検査の結果が正常と出る場合もあります。偽陰性の検査結果(実際にはがんが存在しているのに存在しないと判定された検査結果)を受けた人では、たとえ症状が現れていても、医師の診察を受けるのが遅くなる場合があります。

偽陽性の検査結果が出る可能性もあります。

実際にはがんが存在していないにもかかわらず、スクリーニング検査の結果が異常となる場合もあります。偽陽性の検査結果(実際にはがんは存在しないのに存在すると判定された検査結果)は不安の原因となることもあり、さらに、その後も検査(生検など)が引き続き実施されていくのが通常で、そうした検査によるリスクも生じてきます。肺がんを診断するための生検が原因での一部に虚脱(しぼんで戻らなくなること)が起きる場合もあります。場合によっては、肺を再び膨らませるために手術が必要になることもあります。重度または長期の喫煙による医学的問題がみられる患者さんには、診断検査の害がより頻繁に生じます。

胸部X線検査とCTスキャンでは胸部が放射線に曝されます。

胸部X線検査や低線量CTスキャンで浴びた放射線が、がんのリスクを高める可能性があります。年齢が若い人や肺がんのリスクが低い人は、スクリーニングで肺がんによる死亡を免れるよりも、放射線照射を受けて肺がんになる可能性のほうが大きいようです。

ご自身に関する肺がんのリスクやスクリーニング検査の必要性については、担当の医師にご相談ください。

肺がんのリスクやスクリーニング検査がご自身に適しているかどうか、またその有益性と有害性については、担当の医師か他の医療専門家にご相談ください。スクリーニング検査がご自身に適しているかどうかの話し合いに参加すべきです。(詳しい情報については、PDQがんのスクリーニングの概要の要約をご覧ください。)

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、肺がんのスクリーニングに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Screening and Prevention Editorial Board.PDQ Lung Cancer Screening.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/lung/patient/lung-screening-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389428]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

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