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このPDQがん情報要約では、非ホジキンリンパ腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 非ホジキンリンパ腫についての一般的な情報
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非ホジキンリンパ腫は、リンパ系の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。
非ホジキンリンパ腫はリンパ系で発生するがんの一種です。リンパ系は免疫系の一部です。感染や疾患から体を守る働きがあります。
リンパ系は以下のものから構成されています:
リンパ組織は消化管の内壁の表面や気管支、皮膚といった体の他の部位にも存在します。
リンパ腫には大きく分けてホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2種類があります。本要約は、妊娠中を含む成人の非ホジキンリンパ腫の治療法について書かれたものです。
非ホジキンリンパ腫は緩慢性または侵攻性のどちらかに分類できます。
非ホジキンリンパ腫が増殖して拡がる速度は様々であり、緩慢性または侵攻性のどちらかの性質を帯びます。緩慢性リンパ腫はゆっくりと増殖し拡がる傾向があり、徴候や症状はあまりみられません。侵攻性リンパ腫は急速に増殖して拡がり、重度の徴候や症状が現れることもあります。緩慢性と侵攻性のリンパ腫に対する治療法は様々です。
本要約は、以下の種類の非ホジキンリンパ腫について書かれたものです:
緩慢性の非ホジキンリンパ腫
- 濾胞性リンパ腫。濾胞性リンパ腫は最もよくみられる緩慢性非ホジキンリンパ腫です。非常に増殖の遅い非ホジキンリンパ腫であり、Bリンパ球から発生します。リンパ節に影響を及ぼし、骨髄や脾臓に転移することがあります。濾胞性リンパ腫の患者さんのほとんどは、診断時に50歳以上です。濾胞性リンパ腫は治療しなくても消失することがあります。その場合、患者さんは再発の徴候や症状がないか、注意深い観察を受けます。がんの消失後、または初回のがん治療が終了した後に、徴候や症状が再び現れた場合は治療が必要です。濾胞性リンパ腫は、より侵攻性の強いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫などのリンパ腫に変わることがあります。
- リンパ形質細胞性リンパ腫。ほとんどのリンパ形質細胞性リンパ腫では、形質細胞へと成長しつつあるBリンパ球がモノクローナル免疫グロブリンM(IgM)抗体という蛋白を大量に作ります。IgM抗体が血液中に大量に存在するようになると、血漿の粘度が増します。これにより、視覚または聴覚の障害、心臓障害、息切れ、頭痛、めまい、手足のしびれや刺痛などの徴候や症状が現れる場合があります。リンパ形質細胞性リンパ腫では、徴候や症状がみられないことがあります。他の理由で行われた血液検査でみつかる場合もあります。リンパ形質細胞性リンパ腫はしばしば骨髄、リンパ節、脾臓に転移します。リンパ形質細胞性リンパ腫の患者さんは、 C型肝炎ウイルス感染の検査を受けるべきです。ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症とも呼ばれます。
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辺縁帯リンパ腫。この種類の非ホジキンリンパ腫は、辺縁帯と呼ばれるリンパ組織の一部でBリンパ球から発生します。患者さんが70歳以上で病期がIII期またはIV期であり、加えて乳酸脱水素酵素(LDH)の値が高い場合は、予後が不良となることがあります。辺縁帯リンパ腫には5種類のものがあります。リンパ腫が形成された組織の種類によって、次のように分類されます:
- 節性辺縁帯リンパ腫。節性辺縁帯リンパ腫はリンパ節で発生します。この種の非ホジキンリンパ腫はまれです。単球様B細胞リンパ腫とも呼ばれます。
- 胃粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫。胃MALTリンパ腫は通常、胃で発生します。この種の辺縁帯リンパ腫は、粘膜内の抗体を作る細胞で発生します。胃MALTリンパ腫の患者さんは、ヘリコバクター胃炎、または橋本甲状腺炎やシェーグレン症候群などの自己免疫疾患を患っていることもあります。
- 胃外MALTリンパ腫。胃外MALTリンパ腫は胃以外の体のほぼ全て、例えば消化管、唾液腺、甲状腺、肺、皮膚、眼の周囲などの部位で発生します。この種の辺縁帯リンパ腫は、粘膜内の抗体を作る細胞で発生します。胃外MALTリンパ腫は、治療後かなりの年数が経ってから再発する場合があります。
- 地中海腹部リンパ腫。この種のMALTリンパ腫は、東地中海諸国の若年成人に発生します。腹部に発生することが多く、患者さんはカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)と呼ばれる細菌に感染している場合もあります。この種のリンパ腫は、免疫増殖性小腸疾患とも呼ばれます。
- 脾辺縁帯リンパ腫。この種の辺縁帯リンパ腫は脾臓で発生し、その後、末梢血や骨髄に拡がることがあります。脾辺縁帯リンパ腫に最も多くみられる徴候は、脾臓の異常な肥大です。
- 原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫。この種の非ホジキンリンパ腫は、皮膚にのみ発生します。自然に消失する良性の小結節である場合もありますが、皮膚の多くの部位に転移しかねない要治療の腫瘍の場合もあります。
侵攻性の非ホジキンリンパ腫
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びまん性大細胞型B細胞リンパ腫。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、最もよくみられる非ホジキンリンパ腫です。リンパ節で急速に増殖し、脾臓、肝臓、骨髄やその他の臓器を侵すことも少なくありません。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の徴候や症状には、発熱、ひどい寝汗、体重減少などがあります。これらの症状はB症状とも呼ばれます。
- 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫。この種の非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一種です。特徴として、線維性(瘢痕に似た)リンパ組織の過剰増殖が認められます。腫瘍は多くの場合、胸骨の裏側に形成されます。これが気道を圧迫し、咳や呼吸困難を引き起こすことがあります。原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の患者さんのほとんどは、30~40歳の女性です。
- 濾胞性大細胞型リンパ腫、病期III。濾胞性大細胞型リンパ腫、病期IIIは、非常にまれな種類の非ホジキンリンパ腫です。この種の濾胞性リンパ腫に対しては、緩慢性NHLよりも侵攻性NHLの治療法に近い治療が行われます。
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未分化大細胞型リンパ腫。未分化大細胞型リンパ腫は、通常はTリンパ球から発生する非ホジキンリンパ腫の一種です。このがん細胞の表面には、CD30と呼ばれるマーカーが存在しています。
未分化大細胞型リンパ腫には次の2種類があります:
- 皮膚未分化大細胞型リンパ腫。この種の未分化大細胞型リンパ腫はほとんどが皮膚に発生しますが、体の他の部位に生じることもあります。皮膚未分化大細胞型リンパ腫の徴候には、皮膚に現れる1つ以上のできものや潰瘍などがあります。この種のリンパ腫は進行が遅く、まれにしか発生しません。
- 全身性未分化大細胞型リンパ腫。この種の未分化大細胞型リンパ腫はリンパ節から発生し、場合によっては他の部位に拡がります。この種のリンパ腫は増殖が速い種類のがんです。患者さんのリンパ腫細胞の内部には、多量の未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)蛋白が認められる場合があります。こうした患者さんは、過剰なALK蛋白が認められない患者さんに比べて予後が良好です。全身性未分化大細胞型リンパ腫は、成人より小児に多くみられます。詳しい情報については、小児非ホジキンリンパ腫の治療をご覧ください。
- 節外性NK/T細胞リンパ腫。節外性NK/T細胞リンパ腫は通常、鼻の周囲の領域から発生します。さらに、副鼻腔(鼻の周辺の骨の中にある小さな空洞)、口腔の天井部分、気管、皮膚、胃、腸にみられることもあります。ほとんどの節外性NK/T細胞リンパ腫では、腫瘍細胞内にエプスタイン-バーウイルスが存在します。ときに血球貪食症候群(活性化した組織球とT細胞が増えすぎて重篤な炎症を引き起こす病態)を起こします。免疫系を抑制する治療が必要です。米国では、この種の非ホジキンリンパ腫は多くありません。
- リンパ腫様肉芽腫症。リンパ腫様肉芽腫症は大半が肺に発生します。さらに、副鼻腔(鼻の周辺の骨の中にある小さな空洞)、皮膚、腎臓、中枢神経系にみられることもあります。リンパ腫様肉芽腫症では、がんは血管に浸潤し、組織を破壊します。がんが脳に転移する可能性があるため、髄腔内化学療法または脳に対する放射線療法が施行されます。
- 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫。この種の非ホジキンリンパ腫はT細胞から発生します。多くみられる徴候に、リンパ節の腫れがあります。他の徴候には、発疹、発熱、体重減少、ひどい寝汗などがあります。血液中のγグロブリン(抗体)値が高くなる場合もあります。患者さんの免疫系が弱まり、日和見感染を起こすこともあります。
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末梢T細胞リンパ腫。末梢T細胞リンパ腫は成熟したTリンパ球から発生します。この種のTリンパ球は胸腺で成熟し、リンパ節や骨髄、脾臓などの他のリンパ組織に移動します。末梢T細胞リンパ腫には次の3種類があります:
- 肝脾T細胞リンパ腫。まれな種類の末梢T細胞リンパ腫であり、そのほとんどが若年男性に発生します。最初に肝臓や脾臓で発生し、細胞表面にγ/δ(ガンマ/デルタ)というT細胞受容体が存在します。
- 皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫。皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫は皮膚または粘膜に発生します。血球貪食症候群(活性化した組織球とT細胞が増えすぎて重篤な炎症を引き起こす重度の病態)を伴うことがあります。免疫系を抑制する治療が必要です。
- 腸症型腸管T細胞リンパ腫。この種の末梢T細胞リンパ腫は、未治療のセリアック病(グルテンに対する免疫反応により栄養失調が生じる病態)を患っている患者さんの小腸で発生します。小児期にセリアック病と診断された患者さんがグルテン除去食を続けた場合、腸症型腸管T細胞リンパ腫を発症することはまれです。
- 血管内大細胞型B細胞リンパ腫。この種の非ホジキンリンパ腫は血管に発生し、特に脳や腎臓、肺、皮膚の細い血管に多くみられます。血管内大細胞型B細胞リンパ腫の徴候と症状は、血管の閉塞によって引き起こされます。血管内リンパ腫症とも呼ばれます。
- バーキットリンパ腫。バーキットリンパ腫は、非常に急速に増殖して拡がるB細胞非ホジキンリンパ腫の一種です。顎、顔の骨、腸、腎臓、卵巣やその他の臓器に発生します。主に3種類のバーキットリンパ腫があります(地域性、散発性、免疫不全に関するもの)。地域性のバーキットリンパ腫はアフリカで多く発生しており、エプスタイン-バーウイルスに関連している一方、散発性のバーキットリンパ腫は世界中で発生しています。免疫不全関連バーキットリンパ腫は、AIDSの患者さんに最も多くみられます。バーキットリンパ腫は脳や脊髄に転移することがあり、転移を予防するための治療が行われる場合があります。バーキットリンパ腫は小児および若年成人で最もよくみられます。詳しい情報については、小児非ホジキンリンパ腫の治療をご覧ください。バーキットリンパ腫は、びまん性小型非切れ込み核細胞型リンパ腫とも呼ばれます。
- リンパ芽球性リンパ腫。リンパ芽球性リンパ腫はT細胞またはB細胞から発生しますが、通常はT細胞で生じます。この種の非ホジキンリンパ腫では、リンパ節や胸腺内にリンパ芽球(未熟な白血球)が過剰に存在します。これらのリンパ芽球は、体内で骨髄や脳、脊髄などの他の部位に転移することがあります。リンパ芽球性リンパ腫は、10代の若者や若年成人に最もよくみられます。急性リンパ芽球性白血病(主に骨髄と血液中にリンパ芽球が認められる)によく似ています。詳しい情報については、成人急性リンパ芽球性白血病の治療をご覧ください。
- T細胞白血病/リンパ腫。T細胞白血病/リンパ腫は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)が原因で発生します。徴候には、骨や皮膚の病変、高い血中カルシウム濃度、リンパ節、脾臓、肝臓の肥大などがあります。
- マントル細胞リンパ腫。マントル細胞リンパ腫は通常、中年以降の成人に発生するB細胞非ホジキンリンパ腫の一種です。最初にリンパ節で発生し、脾臓、骨髄、血液に拡がり、ときに食道や胃、腸に転移することもあります。マントル細胞リンパ腫の患者さんでは、リンパ腫細胞においてサイクリン-D1という蛋白が過剰に認められるか、特定の遺伝子変異が起きています。リンパ腫の徴候や症状がみられない一部の患者さんでは、治療開始が遅れても予後には影響しません。
- 移植後リンパ増殖性疾患。この疾患は、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓の移植を受けた患者さんに発生し、生涯にわたる免疫抑制療法が必要とされます。ほとんどの移植後リンパ増殖性疾患はB細胞で発生し、細胞内にエプスタイン-バーウイルスが存在しています。リンパ増殖性疾患には、がんの場合と似た治療法がとられることが少なくありません。
- 真性組織球性リンパ腫。まれで、非常に侵攻性の高いリンパ腫です。B細胞とT細胞のどちらから発生するか不明です。標準の化学療法を用いた治療にはあまり反応しません。
- 原発性滲出液リンパ腫。原発性滲出液リンパ腫は、大量の液体が貯留している領域、例えば、肺の表面を覆う組織と胸壁の間などに溜まる体液(胸水)や、心臓を取り囲む袋と心臓の間(心のう液)、腹腔などに存在するB細胞で最初に発生します。通常、確認できる腫瘍は発生しません。この種のリンパ腫は、しばしばHIVに感染している患者さんにおいて発生します。
- 形質芽球性リンパ腫。形質芽球性リンパ腫は、非常に侵攻性の高い大細胞型B細胞非ホジキンリンパ腫の一種です。特にHIVに感染している患者さんに多くみられます。
年齢が高いこと、男性であること、免疫系機能が低下していることにより、非ホジキンリンパ腫のリスクが上昇する場合があります。
疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。このようなリスク因子がある人がみな非ホジキンリンパ腫になるわけではありませんし、既知のリスク因子がないのに非ホジキンリンパ腫になる人もいます。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。
以下のリスク因子をはじめ、いくつかの因子により、特定の非ホジキンリンパ腫のリスクが高まることがあります:
- 高齢であること、男性であること、または白人であること。
- 免疫系の働きを低下させる以下の病態のいずれかが存在すること:
- 遺伝性免疫疾患(例えば、低ガンマグロブリン血症やヴィスコット-オールドリッチ症候群)。
- 自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、乾癬、シェーグレン症候群)。
- HIV/AIDS。
- ヒトTリンパ球向性ウイルスI型またはエプスタイン-バーウイルスへの感染。
- ヘリコバクターピロリ菌感染。
- 臓器移植後の免疫抑制薬の使用。
非ホジキンリンパ腫の徴候や症状には、リンパ節の腫れ、発熱、著しい寝汗、体重減少、疲労などがあります。
これらの徴候や症状は非ホジキンリンパ腫により引き起こされることがありますが、その他の病態によって生じることもあります。以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:
- 頸部、わきの下、鼠径部、胃のリンパ節の腫れ。
- 原因不明の発熱。
- ひどい寝汗。
- ひどい疲労感。
- 原因不明の体重減少。
- 皮膚の発疹や皮膚のかゆみ。
- 胸部、腹部、骨などの原因不明の痛み。
発熱、ひどい寝汗、体重減少がまとめて生じる場合、これらの症状群はB症状と呼ばれます。
他の非ホジキンリンパ腫の徴候や症状は、以下の項目に応じて現れることがあります:
- がんの発生部位。
- 腫瘍の大きさ。
- 腫瘍の増殖する速さ。
非ホジキンリンパ腫の診断と病期分類には、リンパ系とその他の身体部位を調べる検査法が用いられます。
担当医は個人歴と家族歴をたずね、身体診察を行うことに加えて、以下の検査や手技を行うことがあります:
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全血球算定(CBC):血液を採取して以下の項目について調べる検査法:
- 血液生化学検査:採取した血液を調べて、体内の臓器や組織から血液中に放出される特定の物質の濃度を測定する検査法。ある物質で異常な値(正常値よりも高い値や低い値)が出るということは、疾患の徴候である可能性があります。
- LDH検査:採取した血液を調べて、乳酸脱水素酵素の量を測定する検査。血液中のLDHの増加は、組織損傷やリンパ腫、もしくは他の疾患の徴候である可能性があります。
- B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルス検査:血液のサンプルを採取して、B型肝炎ウイルスに特異的な抗原や抗体の量とC型肝炎ウイルスに特異的な抗体の量を測定する検査法。これらの抗原や抗体はマーカーと呼ばれます。患者さんがB型またはC型肝炎ウイルスに感染しているか、過去に感染したりワクチン接種を受けたりしたことがあるか、感染しやすいかどうかといった点を明らかにするために、様々なマーカーやマーカーの組み合わせが用いられます。過去にB型肝炎ウイルス感染に対する治療を受けたことのある患者さんは、継続的なモニタリングを受けて、ウイルスが再活性化していないかどうかを確認する必要があります。B型またはC型肝炎の有無を把握することは、治療計画の作成に役立つことがあります。
- HIV検査:血液サンプル中のHIV抗体の量を測定する検査法。体内に異物が侵入すると、体内で抗体が作られます。HIV抗体の値が高いということは、その人がHIVに感染しているということを意味します。
- CTスキャン(CATスキャン):頸部、胸部、腹部、骨盤、リンパ節などの体内の領域を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法。この画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに造影剤を飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。
- PETスキャン(陽電子放射断層撮影):体内の悪性腫瘍細胞を検出するための検査法。まず放射性のあるブドウ糖の溶液を少量だけ静脈内に注射します。その後、周囲を回転しながら体の内部を調べていくPETスキャナという装置を用いて、ブドウ糖が消費されている体内の領域を示す画像を作成していきます。悪性腫瘍細胞は、正常な細胞よりも活発でブドウ糖をより多く取り込む性質があるため、画像ではより明るく映し出されます。
- 骨髄穿刺と骨髄生検:腰骨または胸骨に針を挿入して骨髄や骨の小片などを採取する手技。採取された骨髄や骨は、病理医によって顕微鏡で観察され、がんの徴候がないか調べられます。
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リンパ節生検:リンパ節の全体または一部を切除する手技。切除された組織は、病理医が顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。実施される生検には以下のような種類があります:
- 摘出生検:リンパ節の全体を摘出する。
- 切除生検:リンパ節の一部を採取する。
- コア生検:太い針を用いてリンパ節の一部を採取する。
そこでがんが発見されれば、以下の検査を実施してがん細胞を詳しく調べます:
- 免疫組織化学検査:抗体を利用して、患者さんから採取した組織のサンプルに含まれる特定の抗原(マーカー)を調べる臨床検査。使用される抗体には、通常、酵素や蛍光色素が結合されています。この抗体が組織サンプル内の特定の抗原に結合すると、酵素や色素が活性化し、顕微鏡で抗原を観察できるようになります。この種の検査はがんの診断に利用されるほか、各種のがんの違いを示すためにも用いられます。
- 細胞遺伝学的分析:血液または骨髄のサンプルに含まれる細胞を検査し、染色体の損傷や欠失、再構成、過剰などの変異を計測して調べる臨床検査。特定の染色体に認められる変化は、がんの徴候を示している可能性があります。細胞遺伝学的分析はがんの診断、治療計画、治療効果の判定に利用されます。
- 免疫表現型検査:抗体を使用し、細胞表面の抗原またはマーカーの種類に基づいてがん細胞を特定する臨床検査。この検査は特定のリンパ腫の診断に役立ちます。
- FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション):細胞や組織内の遺伝子や染色体を調べて計測するために使用される臨床検査。蛍光色素を含有するDNAの断片を製造ラボで作成し、患者さんの細胞や組織のサンプルにそのDNA片を添加します。この蛍光標識されたDNA片がサンプルに含まれる特定の遺伝子や染色体領域と結合した場合に、蛍光顕微鏡を用いて観察すると、結合している部分が光って見えます。FISH検査はがんの診断や治療計画に利用されます。
現れている徴候や症状とがんの発生部位に応じて、他の検査や手技が実施されることもあります。
特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。
予後と治療選択肢を左右する因子には以下のものがあります:
妊娠中の非ホジキンリンパ腫では、治療選択肢は以下の要因にも左右されます:
- 患者さんの希望。
- 患者さんの妊娠週数。
- 胎児を早期に分娩できるかどうか。
非ホジキンリンパ腫の中には、他より速く拡がる種類のものがあります。妊娠中に発生する非ホジキンリンパ腫のほとんどは侵攻性です。侵攻性のリンパ腫の治療を出産が終わるまで延期することは、患者さんの生存の可能性を低くすることにつながる場合があります。多くの場合は、たとえ妊娠中であっても、直ちに治療を開始することが推奨されます。
- 非ホジキンリンパ腫の病期
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非ホジキンリンパ腫の診断がついた後には、がん細胞のリンパ系内部での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。
がん細胞のリンパ系内部での拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。非ホジキンリンパ腫を診断するために行われた検査と手技の結果は、治療に関する決定を下すための検討材料になります。
病期分類の過程では、以下のような検査法や手技も用いられます:
- ガドリニウムを使用するMRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、脳や脊髄などの体内領域の精細な連続画像を作成する検査法。まずガドリニウムと呼ばれる物質を患者さんの静脈内に注射します。ガドリニウムにはがん細胞の周辺に集まる性質があるため、撮影された画像ではがん細胞が明るく映し出されます。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。
- 腰椎穿刺:脊柱内から脳脊髄液(CSF)を採取する際に用いられる手技。脊椎内の2本の骨の間から脊柱内に針を刺し、脊髄周囲を流れるCSFに到達させ、CSFを採取します。CSFのサンプルは顕微鏡で観察し、脳や脊髄に転移したがんの徴候を調べます。この手技はLPまたは脊椎穿刺とも呼ばれます。
妊娠している非ホジキンリンパ腫の女性に対する病期分類では、放射線による害から胎児を保護できる検査法や手技が用いられます。具体的には、MRI(造影剤の使用なし)、腰椎穿刺、超音波検査といった検査法や手技などです。
体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。
非ホジキンリンパ腫では、以下のような病期が用いられます:
非ホジキンリンパ腫は、がんが緩慢性か侵攻性か、侵されたリンパ節同士が隣接しているかどうか、新たに診断されたがんか再発したがんかによって、異なる治療対象に分類されます。
緩慢性(増殖が遅い)または侵攻性(増殖が速い)非ホジキンリンパ腫の種類に関する詳細については、一般的な情報のセクションをご覧ください。
非ホジキンリンパ腫は、以下のように隣接または非隣接と表現されることもあります:
非ホジキンリンパ腫は、治療後に再発する(再び現れる)ことがあります。
リンパ腫の再発は、リンパ系に生じることもあれば、それ以外の場所に発生することもあります。緩慢性リンパ腫が侵攻性リンパ腫として再発する場合もあります。侵攻性リンパ腫が緩慢性リンパ腫として再発する場合もあります。
- 治療選択肢の概要
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成人非ホジキンリンパ腫の患者さんには様々な治療法が存在します。
非ホジキンリンパ腫の患者さんは、様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
妊娠中の非ホジキンリンパ腫の女性については、胎児を防護するために、慎重に治療法が選択されます。治療法の決定は、患者さんの希望と非ホジキンリンパ腫の病期、妊娠週数を基準に行われます。徴候や症状、がん、妊娠状態の変化に伴って、治療計画が変更されることもあります。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形です。
非ホジキンリンパ腫の患者さんの治療では、リンパ腫の治療に精通した医療提供者で構成されるチームによって治療計画が作成されるべきです。
この疾患の治療は腫瘍内科医(がんの治療を専門とする医師)または血液医(血液がんの治療を専門とする医師)が指揮します。腫瘍内科医は、非ホジキンリンパ腫の治療に精通し、特定の医療分野を専門とする別の医療提供者に、患者さんを紹介することもあります。具体的には以下のような専門医や専門家です:
非ホジキンリンパ腫の治療は副作用を引き起こすことがあります。
がんの治療中に発生する副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。
がんの治療の副作用のうち、治療後に始まり、何ヵ月または何年も続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。非ホジキンリンパ腫に対する化学療法、放射線療法、幹細胞移植による治療は、晩期合併症(晩期障害)のリスクを高めることがあります。
がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:
晩期合併症(晩期障害)には治療や制御が可能なものもあります。ご自身が受けるがん治療の影響について担当医と話し合うことが肝心です。晩期合併症(晩期障害)に対する定期的なフォローアップを受けることも重要です。
以下のような治療法が用いられます:
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。
外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。幹細胞移植に先立って全身照射が行われることがあります。
陽子線治療は高エネルギー外照射療法の一種で、陽子(正の電荷を帯びた微小な粒子)の流れを照射して腫瘍を殺傷します。この種の治療法は、腫瘍付近に位置する心臓や乳房などの健康な組織に放射線が与える損傷を少なく抑えることができます。
外照射療法は非ホジキンリンパ腫の治療に用いられるほか、症状を和らげ生活の質を高める緩和療法としても用いられることがあります。
妊娠中の非ホジキンリンパ腫の女性に対しては、もし可能であれば、胎児へのリスクを避けるために放射線療法は分娩後まで延期されるべきです。妊娠中の女性が直ちに治療を受けなければならない場合には、妊娠を継続しながら放射線療法を受けるという選択も可能です。その場合は鉛シールドを使用して妊婦の腹部を覆い、可能な限り放射線から胎児を保護します。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内(髄腔内化学療法)や臓器内、あるいは腹部などの体腔内に薬剤を直接注入する化学療法では、その領域にあるがん細胞に薬が集中的に作用します(局所化学療法)。併用化学療法は複数の抗がん剤を使用する治療法です。炎症を緩和し、体の免疫反応を抑制するために、ステロイド薬が追加されることもあります。
全身併用化学療法は非ホジキンリンパ腫の治療に用いられます。
髄腔内化学療法は、精巣または鼻の周囲の腔(空洞になった領域)で最初に発生したリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、一部の侵攻性T細胞リンパ腫の治療にも用いられることがあります。その場合は、リンパ腫細胞が脳や脊髄に転移する可能性を低下させるために実施されます。この療法はCNS予防と呼ばれます。
非ホジキンリンパ腫の患者さんが妊娠中に化学療法による治療を受ける場合は、胎児が化学療法薬の影響を受けないように防護することができません。一部の化学療法レジメンは、妊娠初期に使用すると胎児の先天障害を引き起こすことがあります。
詳しい情報については、非ホジキンリンパ腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
免疫療法
免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんと戦う治療法です。体内で生産された物質や製造ラボで合成された物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。
- 免疫調節剤:レナリドミドは非ホジキンリンパ腫の治療に用いられる免疫調節剤です。
- CAR T細胞療法:患者さんのT細胞(免疫系細胞の一種)を改変して、がん細胞表面にある特定の蛋白を攻撃させます。患者さんからT細胞を採取し、製造ラボでその表面に特殊な受容体を付加します。こうして改変した細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞と呼ばれます。製造ラボでCAR T細胞を増やし、点滴で患者さんに投与します。投与されたCAR T細胞は患者さんの血液内で増加し、がん細胞を攻撃します。CAR T細胞療法(アキシカブタゲン・シロロイセルまたはチサゲンレクロイセルなど)は、治療に反応しない大細胞型B細胞リンパ腫の治療に使用されています。CAR T細胞療法は、再発したまたは治療に反応しなかったマントル細胞リンパ腫の治療法として研究されています。
詳しい情報については、非ホジキンリンパ腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
標的療法
標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物やその他の物質を用いる治療法です。モノクローナル抗体療法、プロテアソーム阻害薬療法、キナーゼ阻害薬療法は、いずれも標的療法の一種で、成人非ホジキンリンパ腫の治療に用いられています。
- モノクローナル抗体療法:モノクローナル抗体は製造ラボで作られ、がんなどの様々な疾患に対する治療に用いられる免疫系蛋白です。がん治療薬として、これらの抗体は、がん細胞や他の細胞上に存在してがん細胞の増殖に関与する特定の標的に結合する性質をもちます。これにより、抗体はがん細胞の死滅、増殖の阻止、転移の抑止などの効果を発揮できるようになります。モノクローナル抗体は点滴によって投与されます。単独で使用されることもありますが、薬や毒素、放射性物質などをがん細胞に直接送り届けるという用途でも用いられます。
次のようなモノクローナル抗体があります:
- リツキシマブは、様々な非ホジキンリンパ腫の治療に用いられます。
- オビヌツズマブは、濾胞性リンパ腫の治療に用いられます。
- モガムリズマブは、特定の種類の再発または難治性T細胞リンパ腫に対する治療に用いられます。
- タファシタマブは、再発または難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療にレナリドミドと併用されます。
- ペムブロリズマブは、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の治療に用いられます。
- ポラツズマブ ベドチンは、再発または難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療にベンダムスチンおよびリツキシマブと併用されます。
- ブレンツキシマブ ベドチンは、一部のリンパ腫細胞に存在するCD30という蛋白に結合するモノクローナル抗体を含んでいます。がん細胞を殺傷する働きのある抗がん剤も含んでいます。
- イットリウム90イブリツモマブ チウキセタンは、放射標識モノクローナル抗体の一例です。
- 免疫系を助ける二重特異性モノクローナル抗体であるモスネツズマブはがん細胞を認識して死滅させます。再発または難治性の濾胞性リンパ腫の治療に用いられます。
- プロテアソーム阻害薬療法:がん細胞中に存在するプロテアソームの作用を阻害します。プロテアソームは細胞にとって不要になった蛋白を除去します。プロテアソームの働きを阻害すると細胞内に蛋白が蓄積し、それによりがん細胞を殺傷できる可能性があります。ボルテゾミブやイキサゾミブは、がんの治療後に血液中に存在するリンパ形質細胞性リンパ腫(ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症)という免疫グロブリンMの量を減らすために使用されます。再発したマントル細胞リンパ腫の治療薬としても研究されています。
- キナーゼ阻害薬療法:特定の蛋白を阻害することで、リンパ腫細胞の増殖を阻止して殺傷できる可能性があります。以下のようなキナーゼ阻害薬療法があります:
- ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害薬療法:タゼメトスタットは再発したまたは他の治療で改善しなかった濾胞性リンパ腫の治療に用いられます。EZH2遺伝子に特定の変異(変化)があるがんを患い、既に他の2種類の抗がん治療を受けている成人に用いられます。
- B細胞リンパ腫-2(BCL-2)阻害薬療法:ベネトクラクスはマントル細胞リンパ腫の治療に用いられることがあります。この薬物はBCL-2という蛋白の作用を阻害し、がん細胞の殺傷を促進できる可能性があります。
詳しい情報については、非ホジキンリンパ腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
血漿交換療法
過剰な抗体蛋白により血液の粘度が増し、循環が損なわれている場合は、血液中の余分な血漿と抗体蛋白を除去するために血漿交換を実施します。この療法では、患者さんの体内から抜き出した血液を専用の機械に通して、血液細胞と血漿(血液の液体部分)を分離します。患者さんの血漿中には不要な抗体が含まれていますので、このような抗体は体内に戻さないようにします。正常な血液細胞は、補充用の血漿製剤や置換液と一緒に患者さんの血流に戻します。ただし、血漿交換療法では新たな抗体の生成を防ぐことはできません。
手術
手術は、緩慢性または侵攻性の非ホジキンリンパ腫を患う特定の患者さんに対し、リンパ腫を除去するために用いられることがあります。
手術の種類は、リンパ腫が発生した部位に応じて異なります:
- 粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、PTLD、小腸T細胞リンパ腫の特定の患者さんには、局所切除術。
- 脾臓の辺縁帯リンパ腫の患者さんには、脾摘出術。
心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓の移植を受けた患者さんは、通常、残りの生涯にわたって免疫系を抑制する薬物の投与を受ける必要があります。臓器移植後の長期にわたる免疫抑制は、移植後リンパ増殖性疾患(PLTD)と呼ばれる種類の非ホジキンリンパ腫を引き起こすことがあります。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。
本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。
患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。
患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。
今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。
患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。
患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。
ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。
臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
- 緩慢性非ホジキンリンパ腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
I期または隣接II期の緩慢性非ホジキンリンパ腫の治療法には以下のようなものがあります:
腫瘍が大きすぎて放射線療法を施行できない場合は、緩慢性の非隣接II期、III期、またはIV期非ホジキンリンパ腫の治療選択肢が適用されます。
緩慢性の非隣接II期、III期、IV期非ホジキンリンパ腫の治療法には以下のようなものがあります:
- 徴候や症状のないの患者さんには、注意深い経過観察。
- モノクローナル抗体療法(リツキシマブ)と場合により化学療法。
- レナリドミドとリツキシマブ。
- リツキシマブによる維持療法。
- モノクローナル抗体療法(オビヌツズマブ)と場合により化学療法。
- PI3K阻害薬療法(コパンリシブ)。
- EZH2阻害薬療法(タゼメトスタット)。
- 放射標識モノクローナル抗体療法。
- 大量化学療法単独後、または大量化学療法と全身照射あるいは放射標識モノクローナル抗体療法との併用治療後に自家または同種幹細胞移植を行う臨床試験への参加。
- 化学療法とワクチン療法との併用治療(化学療法単独の場合もある)の臨床試験への参加。
- 新しい種類のモノクローナル抗体療法の臨床試験への参加。
- III期の患者さんには、周辺リンパ節への照射を含む放射線療法を行う臨床試験への参加。
- 症状を和らげ生活の質を高める緩和療法として低線量放射線療法を行う臨床試験への参加。
緩慢性の非ホジキンリンパ腫に対する他の治療法は、非ホジキンリンパ腫の種類によって異なります。以下のような治療法があります:
- 濾胞性リンパ腫の場合は、新しいモノクローナル抗体療法や新しい化学療法レジメン、または幹細胞移植についての臨床試験で治療を行うことがあります。
- 治療後に再発した(再び現れた)または悪化した濾胞性リンパ腫には、PI3K阻害薬(コパンリシブ)などの療法が用いられることがあります。
- リンパ形質細胞性リンパ腫(ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症)には、チロシンキナーゼ阻害薬療法、血漿交換療法、プロテアソーム阻害薬療法(血液の希釈が必要な場合)のいずれかまたは複数を行います。その他、濾胞性リンパ腫に対する治療法と類似の治療を用いることもあります。
- 胃の粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫には、最初にヘリコバクターピロリ菌感染に対する抗生物質療法を行います。抗生物質療法に反応しない腫瘍には、放射線療法や手術、またはリツキシマブ単独か化学療法との併用治療を施行します。
- 眼の胃外MALTリンパ腫と地中海腹部リンパ腫では、抗生物質療法で感染を治療します。
- 脾臓の辺縁帯リンパ腫には、初回治療としてリツキシマブ単独または化学療法との併用と、B細胞受容体療法を行います。腫瘍が治療に反応しない場合は、脾摘出術を施行することがあります。
- 侵攻性非ホジキンリンパ腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
I期または隣接II期の侵攻性非ホジキンリンパ腫の治療法には以下のようなものがあります:
侵攻性の非隣接II期、III期、IV期非ホジキンリンパ腫の治療法には以下のようなものがあります:
- モノクローナル抗体療法(リツキシマブ)と併用化学療法。
- 併用化学療法。
- モノクローナル抗体療法と併用化学療法の後に放射線療法を行う臨床試験への参加。
その他の治療法は侵攻性非ホジキンリンパ腫の種類によって異なります。以下のような治療法があります:
- 節外性NK/T細胞リンパ腫には、化学療法およびCNS予防と場合によりその施行前、施行中、施行後のいずれかにおける放射線療法。
- マントル細胞リンパ腫には、モノクローナル抗体療法と併用化学療法、およびその後の幹細胞移植。モノクローナル抗体療法は、後で維持療法(最初の治療の後にがんの再発を防ぐために行われる治療)として行われることもあります。
- 移植後リンパ増殖性疾患では、免疫抑制薬による治療を中止することがあります。効果が得られない、または中止できない場合は、モノクローナル抗体療法単独か化学療法との併用を行うことがあります。転移していないがんの場合は、がんを切除する手術または放射線療法を用いることがあります。
- 形質芽球性リンパ腫には、リンパ芽球性リンパ腫またはバーキットリンパ腫の場合と同様の治療を行います。
リンパ芽球性リンパ腫の治療に関する情報はリンパ芽球性リンパ腫の治療選択肢を、バーキットリンパ腫の治療に関する情報についてはバーキットリンパ腫の治療選択肢をご覧ください。
- リンパ芽球性リンパ腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
リンパ芽球性リンパ腫の治療法には以下のようなものがあります:
- バーキットリンパ腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
バーキットリンパ腫の治療法には以下のようなものがあります:
- 再発非ホジキンリンパ腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
緩慢性の再発非ホジキンリンパ腫の治療法には以下のようなものがあります:
侵攻性の再発非ホジキンリンパ腫の治療法には以下のようなものがあります:
- 原発難治性または1年以内の再発例に対してはアキシカブタゲン・シロルユーセルを用いるCAR T細胞療法。
- 骨髄移植または幹細胞移植による地固め療法。
- 自家幹細胞移植後の再発例に対してはCAR T細胞療法。
- タファシタマブとレナリドミド。
- リツキシマブとレナリドミド。
- ポラツズマブ ベドチン+リツキシマブとベンダムスチン。
- ロンカスツキシマブ テシリン。
- 二重特異性モノクローナル抗体療法(モスネツズマブ)。
- 化学療法と場合により幹細胞移植。
- 特定のT細胞リンパ腫には、モガムリズマブによるモノクローナル抗体療法。
- モノクローナル抗体療法と場合により併用化学療法、その後の自家幹細胞移植。
- 症状を和らげ生活の質を高める緩和療法としての放射線療法。
- 放射標識モノクローナル抗体療法。
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マントル細胞リンパ腫の治療法には以下のようなものがあります:
- ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬療法。
- リツキシマブと場合によりチロシンキナーゼ阻害薬(イブルチニブ)。
- レナリドミド。
- レナリドミドの投与とモノクローナル抗体療法を行う臨床試験への参加。
- レナリドミドと他の療法を比較する臨床試験への参加。
- プロテアソーム阻害薬療法(ボルテゾミブ)を行う臨床試験への参加。
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びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療法には以下のようなものがあります:
- タファシタマブとレナリドミド。
- ポラツズマブ ベドチンとベンダムスチンおよびリツキシマブの併用。
- 自家幹細胞移植または同種幹細胞移植の臨床試験への参加。
侵攻性リンパ腫として再発した緩慢性リンパ腫の治療法は非ホジキンリンパ腫の種類に応じて異なり、症状を和らげ生活の質を高める緩和療法として放射線療法が行われることもあります。緩慢性リンパ腫として再発した侵攻性リンパ腫の治療法には化学療法などがあります。
- 妊娠中の非ホジキンリンパ腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
妊娠中の緩慢性非ホジキンリンパ腫
緩慢性(増殖が遅い)の非ホジキンリンパ腫の妊娠中の女性では、出産を終えるまで注意深い経過観察を行うことがあります。(詳しい情報については、緩慢性非ホジキンリンパ腫の治療選択肢のセクションをご覧ください。)
- 非ホジキンリンパ腫についてさらに学ぶために
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米国国立がん研究所が提供している非ホジキンリンパ腫に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、成人非ホジキンリンパ腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
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PDQ® Adult Treatment Editorial Board. PDQ Non-Hodgkin Lymphoma Treatment. Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/lymphoma/patient/adult-nhl-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389337]
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