患者さん向け 非ホジキンリンパ腫の治療(PDQ®)

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このPDQがん情報要約では、非ホジキンリンパ腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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非ホジキンリンパ腫についての一般的な情報

非ホジキンリンパ腫は、リンパ系に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

非ホジキンリンパ腫は、リンパ系に発生するがんの一種です。リンパ系は免疫系の一部です。感染や疾患から体を守る働きを担っています。

リンパ系は以下の要素で構成されています:

リンパ系:この図はリンパ管とリンパ器官(リンパ節、扁桃、胸腺、脾臓、骨髄など)を示している。小腸(粘膜関連リンパ組織の一部です)も示している。2つの拡大図のうち、1つはリンパ節の内部構造とそれにつながる動脈、静脈、およびリンパ管を拡大したもので、リンパ節内外へのリンパ液(透明な水のような液体)の流れを矢印で示しており、もう1つの拡大図は骨髄と血液細胞を示している。

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リンパ系は免疫系の一部で、体を感染や疾患から守る働きのある組織と臓器で構成されています。具体的には、扁桃、咽頭扁桃(図には示されていません)、胸腺、脾臓、骨髄、リンパ管、リンパ節などがあります。リンパ組織は小腸など、他の多くの部位にも存在します。

リンパ組織は消化管の粘膜や気管支、皮膚といった体の他の部位にも存在します。

リンパ腫には大きく分けてホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2種類があります。本要約は、妊娠中を含む成人の非ホジキンリンパ腫の治療法について書かれたものです。

非ホジキンリンパ腫はインドレントリンパ腫とアグレッシブリンパ腫に分類されます。

非ホジキンリンパ腫が増殖して拡がる速さは様々ですが、インドレントアグレッシブのどちらかに該当します。インドレントリンパ腫は、ゆっくりと増殖して拡がる傾向があり、徴候症状はあまりみられません。アグレッシブリンパ腫は、急速に増殖して拡がり、重度の徴候や症状が現れることもあります。インドレントリンパ腫とアグレッシブリンパ腫は治療法が異なります。

本要約は、以下の種類の非ホジキンリンパ腫について書かれたものです:

インドレント非ホジキンリンパ腫

アグレッシブ非ホジキンリンパ腫

年齢が高いこと、男性であること、免疫機能が低下していることにより、非ホジキンリンパ腫のリスクが上昇する可能性があります。

疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。このようなリスク因子がある人全員が非ホジキンリンパ腫を発症するわけではなく、また、リスク因子が認められない人に非ホジキンリンパ腫が発生することもあります。ご自分にリスクがあるかもしれないと思われる場合は、担当の医師に相談してください。

以下のようなリスク因子により、特定の種類の非ホジキンリンパ腫のリスクが高まることがあります:

非ホジキンリンパ腫の徴候と症状には、リンパ節の腫れ、発熱、著しい寝汗、体重減少、疲労などがあります。

これらの徴候や症状は、非ホジキンリンパ腫が原因のこともありますが、別の病態が原因である可能性もあります。以下の症状が1つでもみられる場合は、医師の診察を受けてください:

発熱、著しい寝汗、体重減少が一緒に生じる場合、この症状の組合せをB症状といいます。

非ホジキンリンパ腫のその他の徴候や症状は、以下の要因に応じて現れることがあります:

非ホジキンリンパ腫の診断と病期診断には、リンパ系とその他の部位を調べる検査法が用いられます。

医師は病歴および家族歴の聴取と身体診察に加えて、以下の検査や手技を行うことがあります:

がんが発見されれば、以下のような検査を行って、がん細胞を詳しく調べます:

認められる徴候・症状やがんの発生部位に応じて、上記以外の検査や手技が行われることもあります。

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療選択肢に影響を及ぼします。

予後や治療選択肢を左右する要因としては以下のものがあります:

妊娠中の非ホジキンリンパ腫では、治療選択肢は以下の要因にも左右されます:

非ホジキンリンパ腫の中には、ほかより進行が速い種類のものがあります。妊娠中に発生する非ホジキンリンパ腫は、大半がアグレッシブリンパ腫です。アグレッシブリンパ腫の治療を出産が終わるまで延期することは、患者さんの生存の可能性を低下させることにつながる場合があります。多くの場合は、たとえ妊娠中であっても、直ちに治療を開始することが推奨されます。

非ホジキンリンパ腫の病期

非ホジキンリンパ腫の診断がついた後には、がん細胞のリンパ系内部での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。

がん細胞リンパ系内部での拡がりや他の部位への転移の有無を調べるためのプロセスは、病期診断と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。非ホジキンリンパ腫診断するために行われた検査と手技の結果は、治療に関する決定を下すための検討材料になります。

病期診断の過程では、以下のような検査法や手技も用いられます:

妊娠中の女性の非ホジキンリンパ腫に対する病期診断には、胎児放射線による害から保護できる検査法や手技が用いられます。そのような検査法や手技としては、MRI検査(造影剤を使用しないもの)、腰椎穿刺、超音波検査などがあります。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系、または血液を介して拡がります:

非ホジキンリンパ腫には以下の病期が用いられます:

I期

成人のI期リンパ腫:この図は1つのリンパ節群にあるがんと脾臓内のがんを示している。ワルダイエル輪と胸腺も示している。拡大図はリンパ管、動脈、静脈につながったリンパ節を示している。リンパ節の中にがん細胞が認められる。

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成人のI期リンパ腫。がんが1つのリンパ節群内の1つ以上のリンパ節に認められるか、まれにワルダイエル輪、胸腺、脾臓にみられることがあります。IE期(図には示されていません)では、がんがリンパ系の外にある1つの領域に拡がっています。

I期非ホジキンリンパ腫は、さらにI期とIE期に分けられます。

I期では、がんリンパ系の中で以下の部位のいずれかに認められます:

IE期では、がんがリンパ系の外にある1つの領域に認められます。

II期

II期非ホジキンリンパ腫は、さらにII期とIIE期に分けられます。

II期では、巨大腫瘤という用語で大きな腫瘍の塊(腫瘤)を表現します。巨大腫瘤とみなされる腫瘤の大きさは、リンパ腫の種類によって異なります。

III期

成人のIII期リンパ腫:この図は体の右側と左側を示している。体の右側では、横隔膜の上方と下方に位置するリンパ節群にがんが認められる。体の左側では、横隔膜の上方に位置するリンパ節群と脾臓にがんが認められる。

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成人のIII期リンパ腫。がんが横隔膜の上方にあるリンパ節群と下方にあるリンパ節群の両方、または横隔膜より上方のリンパ節群と脾臓に認められます。

III期非ホジキンリンパ腫では、がんが以下の部位に認められます:

IV期

成人のIV期リンパ腫:この図は4つの図に分かれている:(a)左上の図は肝臓のがんを、(b)右上の図は左肺のがんと横隔膜の下方に位置する2つのリンパ節群のがんを、(c)左下の図は左肺のがんと横隔膜の上下に位置するリンパ節群のがんを、(d)右下の図は両肺、肝臓、骨髄(拡大図)のがんを示している。リンパ節から発生したがんと、髄液の流れを(青色で)示した脳の差し込み図も示している。

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成人のIV期リンパ腫。がんが(a)リンパ系の外の臓器に転移しているか、(b)横隔膜の上方または下方のいずれかに位置する複数のリンパ節群に認められ、がんが転移したリンパ節の近くにないリンパ系外の1つの臓器にも認められるか、(c)横隔膜の上下に位置するリンパ節群とリンパ系の外にあるいずれかの臓器に認められるか、(d)肝臓、骨髄、肺内の複数箇所、または髄液に認められます。周辺のリンパ節から肝臓、骨髄、肺、髄液に直接拡がったがんではありません。

IV期非ホジキンリンパ腫では、がんが以下の部位に認められます:

非ホジキンリンパ腫は、インドレントとアグレッシブのどちらか、侵されたリンパ節同士が隣接しているかどうか、新たに診断されたがんか再発したがんかによって、治療法が異なります。

インドレント(増殖が遅い)またはアグレッシブ(増殖が速い)非ホジキンリンパ腫の種類に関する詳細については、一般的な情報のセクションをご覧ください。

非ホジキンリンパ腫は、以下のように隣接型(contiguous)または非隣接型(noncontiguous)と表現されることもあります:

非ホジキンリンパ腫は治療後に再発することがあります。

リンパ腫の再発は、リンパ系で起こることもあれば、それ以外の部位で起こることもあります。インドレントリンパ腫がアグレッシブリンパ腫として再発する場合もあります。アグレッシブリンパ腫がインドレントリンパ腫として再発する場合もあります。

治療選択肢の概要

非ホジキンリンパ腫に対する治療法には様々なものがあります。

非ホジキンリンパ腫の患者さんは、様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象に、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。新しい治療法が標準治療よりも優れていることが複数の臨床試験で示された場合、その新しい治療法が標準治療になる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

妊娠中の非ホジキンリンパ腫の女性では、胎児を守るため、慎重に治療方針を選択する必要があります。治療法の決定は、患者さんの希望、非ホジキンリンパ腫の病期、および妊娠週数に基づいて判断します。徴候症状、がん、妊娠状況の変化に伴って、治療計画を変更することもあります。最も適切ながん治療を選択する上では、患者さんとそのご家族、そして医療チームが関与して決定を下していくのが理想的な形となります。

非ホジキンリンパ腫の患者さんには、リンパ腫の治療に精通した医療従事者で構成されるチームが治療計画を策定するべきです。

治療は腫瘍内科医(がんの治療を専門とする医師)または血液専門医造血器腫瘍の治療を専門とする医師)が監督します。腫瘍内科医は、非ホジキンリンパ腫の治療に精通しつつ同時に特定の医療分野を専門とする別の医療従事者に、患者さんを紹介することがあります。具体的には以下のような専門医や専門家です:

非ホジキンリンパ腫の治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療中に発生する副作用の詳細については、副作用(英語)のページをご覧ください。

がん治療による副作用のうち、治療後に始まって月単位または年単位で続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。非ホジキンリンパ腫に対する化学療法放射線療法、または造血幹細胞移植による治療は、晩期合併症(晩期障害)のリスクを高めることがあります。

がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:

晩期合併症(晩期障害)には治療やコントロールが可能なものもあります。がん治療によってご自身に生じうる影響について担当医とよく相談することが重要です。晩期合併症(晩期障害)を検出するための定期的なフォローアップも重要です。

以下のような治療法が用いられます:

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図るがん治療です。

外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。造血幹細胞移植に先立って全身照射が行われることがあります。

陽子線治療は、大きなエネルギーを用いる外照射療法の一種で、陽子(正の電荷を帯びた微細な粒子)の流れを利用して、腫瘍細胞を殺傷します。この種の治療では、腫瘍の近くにある心臓や乳房などの正常組織の放射線による損傷を少なく抑えることができます。

外照射療法は非ホジキンリンパ腫に対する治療として用いられるほか、症状を和らげて生活の質(QOL)を高める緩和療法として用いられることもあります。

妊娠中の非ホジキンリンパ腫の女性に対しては、可能であれば、胎児へのリスクを回避するために放射線療法は分娩後まで延期されるべきです。妊娠中の女性が直ちに治療を受けなければならない場合には、妊娠を継続しながら放射線療法を受けるという選択も可能です。その場合は鉛シールドで妊婦の腹部を覆うことで、胎児を可能な限り放射線から保護します。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止するがん治療です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入り、全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。髄液髄腔内化学療法)や臓器、あるいは腹部などの体の中に薬剤を直接投与する化学療法では、その領域にあるがん細胞に薬が集中的に作用します(局所化学療法)。多剤併用化学療法は複数の抗がん剤を使用する治療法です。炎症を緩和し、体の免疫反応を抑制するために、ステロイド薬が追加されることもあります。

非ホジキンリンパ腫の治療には多剤併用の全身化学療法が用いられます。

精巣または副鼻腔(鼻の骨の周りにある空洞)で最初に発生したリンパ腫びまん性大細胞型B細胞リンパ腫バーキットリンパ腫リンパ芽球性リンパ腫、一部のアグレッシブT細胞リンパ腫の治療には、髄腔内化学療法も用いられることがあります。これはリンパ腫細胞が脳や脊髄に転移する可能性を低下させる目的で行われます。この治療は中枢神経系予防と呼ばれます。

髄腔内化学療法:この図は、脳と脊髄の中の髄液とオンマイヤーレザバー(手術中に頭皮の下に設置されるドーム状の容器で、これにより細い管を通して脳内に薬剤を流し込むことができる)を示している。図の上の部分は、注射器と針を用いてオンマイヤーレザバーに抗がん剤を注入している様子を示している。図の下の部分は、注射器と針を用いて脊柱の下部から髄液中に直接抗がん剤を注入している様子を示している。

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髄腔内化学療法。髄液(青色で示されている)で満たされた空洞である脊髄腔の中に抗がん剤が注入されます。これには2種類の方法があります。1つめはこの図の上の部分に示されているもので、オンマイヤーレザバー(手術中に頭皮の下に設置されるドーム状の容器で、細い管を通して脳内に薬剤を投与することを可能にします)に薬剤を注入する方法です。もう1つは図の下の部分に示されているもので、腰の小さな領域に麻酔を施してから、脊柱の下部から直接髄液内に薬剤を注入する方法です。

妊娠中の女性が非ホジキンリンパ腫に対して化学療法による治療を受ける場合は、胎児を化学療法薬の影響から守ることはできません。一部の化学療法レジメンは、妊娠初期に使用すると胎児の先天障害を引き起こすことがあります。

詳しい情報については、非ホジキンリンパ腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。

免疫療法

免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんと戦う治療法です。体内で生産された物質や人工的に作られた物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。

CAR T細胞療法:この図は、T細胞を採取するために患者の腕の静脈から血液が採取されている様子を示している。また、製造ラボで作製されるキメラ抗原受容体(CAR)と呼ばれる特別な受容体も示している。CARの遺伝子がT細胞に導入され、CAR T細胞が数百万個に培養される。また、患者に投与されたCAR T細胞が、がん細胞の抗原に結合して、それらの細胞を殺傷している様子も示している。

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CAR T細胞療法。製造ラボで患者さんのT細胞(免疫細胞の一種)を改変し、それらをがん細胞に結合させて殺傷する治療法です。患者さんの腕の静脈から血液をチューブを介してアフェレーシス装置(図には示されていません)に通し、T細胞などの白血球を採取して、残った血液は患者さんの体に戻します。その後、製造ラボでキメラ抗原受容体(CAR)と呼ばれる特別な受容体の遺伝子をT細胞に導入します。製造ラボでCAR T細胞を数百万個まで培養して、それらを患者さんに投与します。CAR T細胞は、がん細胞の抗原に結合して、それらの細胞を殺傷することができます。

詳しい情報については、非ホジキンリンパ腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。

分子標的療法

分子標的療法は、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物やその他の物質を用いる治療法です。モノクローナル抗体療法プロテアソーム阻害薬療法、キナーゼ阻害薬療法は、いずれも非ホジキンリンパ腫の治療に用いられる分子標的療法の一種です。

詳しい情報については、非ホジキンリンパ腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。

血漿交換療法

過剰な抗体蛋白により血液の粘度が増し、血液の循環が損なわれている場合は、血液中の余分な血漿と抗体蛋白を除去するために血漿交換療法を行います。この治療では、患者さんの体から抜き出した血液を専用の機械に通して、血液細胞(血球)と血漿(血液の液体部分)を分離します。患者さんの血漿中には不要な抗体が含まれていますので、それらの抗体は体内に戻さないようにします。正常な血液細胞は、補充用の血漿製剤や置換液と一緒に患者さんの血流に戻します。血漿交換療法では新たな抗体の生産を阻止することはできません。

注意深い経過観察

注意深い経過観察とは、徴候や症状の出現や変化がみられるまで、治療を一切行わずに状態を注意深くモニタリングしていくことです。

抗菌薬療法

抗菌薬療法は、細菌やその他の微生物が引き起こす感染症やがんに対して薬剤を使用する治療法です。

手術

手術は、インドレントまたはアグレッシブ非ホジキンリンパ腫の特定の患者さんに対して、リンパ腫を除去する目的で用いられることがあります。

手術の種類はリンパ腫の発生部位に応じて異なります:

心臓、肝臓腎臓、または膵臓移植を受けた患者さんは通常、生涯にわたり免疫系を抑制する薬剤の投与を受ける必要があります。臓器移植後の長期にわたる免疫抑制は、移植後リンパ増殖性疾患(PLTD)と呼ばれる種類の非ホジキンリンパ腫の原因になることがあります。

ある種のT細胞リンパ腫を発症した成人でセリアック病診断するには、多くの場合、小の手術が必要になります。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は、大量化学療法や全身照射を行うための手段として、これらのがん治療によって破壊される造血幹細胞を外部から補充する目的で行われます。患者さん(自家移植の場合)またはドナー同種移植の場合)から採取した血液または骨髄から造血幹細胞(未成熟の血液細胞)を取り出し、それを凍結保存しておきます。化学療法や放射線療法の完了後に、保存していた造血幹細胞を解凍し、それを点滴で患者さんの体内に戻します。体内に戻された造血幹細胞が成長することで、血液の機能が回復します。

ドナー造血幹細胞移植(1枚目):この図は、アフェレーシス装置を用いてドナーの血流から幹細胞を採取している様子を示している。ドナーの腕の静脈から血液を採取して、幹細胞を取り出す装置の中を通過させる。残った血液は反対側の腕の静脈からドナーの体内に戻される。(2枚目):この図は、患者の胸部に入れられたカテーテルから化学療法薬が投与されている様子を示している。化学療法は、がん細胞を殺傷する効果があり、患者の体がドナーの幹細胞を受け入れる環境を作るために行われる。(3枚目):この図は、患者が胸部のカテーテルからドナー幹細胞の投与を受けている様子を示している。

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ドナー造血幹細胞移植。(ステップ1):ドナーから造血幹細胞を採取する4~5日前に、血流内を循環する幹細胞の数を増やすための薬剤をドナーに投与します(図には示されていません)。その後、ドナーの腕の太い静脈から造血幹細胞を採取します。造血幹細胞を取り出すアフェレーシス装置の中に血液を流します。残った血液は反対側の腕の静脈からドナーの体内に戻されます。(ステップ2):患者さんに化学療法を行うことでがん細胞を殺傷して、患者さんの体がドナーの造血幹細胞を受け入れる環境を作ります。放射線療法を行う場合もあります(図には示されていません)。(ステップ3):患者さんにドナー幹細胞を投与します。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

ワクチン療法

ワクチン療法は、免疫系を刺激する物質を使用して、免疫系が腫瘍を見つけて殺傷する働きを促すがん治療です。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

がんに対する今日の標準治療の多くは、過去に行われた臨床試験の結果を根拠としています。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、まだ人に用いられたことがない新しい治療法を受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがん治療を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が新しい効果的な治療法の発見につながらなくても、しばしば重要な問題に対する答えが得られ、研究を前進させる助けになります。

患者さんはがん治療の開始前だけでなく、開始後でも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要になることもあります。

治療を進めるにつれて、フォローアップ検査または定期検査が行われます。がんの診断病期診断のために実施された検査の中には、治療の効果を確認するために繰り返し行われるものもあります。治療の継続、変更、中止などの決定がそれらの検査結果に基づいて判断されることもあります。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。それらの検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんが再発したかどうかを知ることができます。

インドレント非ホジキンリンパ腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

I期または隣接型(contiguous)II期インドレント非ホジキンリンパ腫に対する治療法には以下のようなものがあります:

腫瘍が大きすぎて放射線療法を行えない場合は、非隣接型(noncontiguous)II期III期、またはIV期のインドレント非ホジキンリンパ腫に対する治療選択肢が適用されます。

非隣接型(noncontiguous)II期、III期、IV期のインドレント非ホジキンリンパ腫に対する治療法には以下のようなものがあります:

インドレント非ホジキンリンパ腫に対するその他の治療法は、非ホジキンリンパ腫の種類によって異なります。以下のような治療法があります:

アグレッシブ非ホジキンリンパ腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

I期または隣接型(contiguous)II期アグレッシブ非ホジキンリンパ腫に対する治療法には以下のようなものがあります:

非隣接型(noncontiguous)II期III期IV期のアグレッシブ非ホジキンリンパ腫に対する治療法には以下のようなものがあります:

その他の治療法はアグレッシブ非ホジキンリンパ腫の種類によって異なります。以下のような治療法があります:

リンパ芽球性リンパ腫の治療に関する情報はリンパ芽球性リンパ腫の治療選択肢を、バーキットリンパ腫の治療に関する情報はバーキットリンパ腫の治療選択肢をご覧ください。

リンパ芽球性リンパ腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

リンパ芽球性リンパ腫に対する治療法には以下のようなものがあります:

バーキットリンパ腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

バーキットリンパ腫に対する治療法には以下のようなものがあります:

再発非ホジキンリンパ腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

再発したインドレント非ホジキンリンパ腫に対する治療法には以下のようなものがあります:

再発したアグレッシブ非ホジキンリンパ腫に対する治療法には以下のようなものがあります:

アグレッシブリンパ腫として再発したインドレントリンパ腫の治療法は非ホジキンリンパ腫の種類に応じて異なりますが、症状を和らげて生活の質(QOL)を高める緩和療法として放射線療法が行われることがあります。インドレントリンパ腫として再発したアグレッシブリンパ腫の治療法には化学療法などがあります。

妊娠中の非ホジキンリンパ腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

妊娠中のインドレント非ホジキンリンパ腫

インドレント(増殖が遅い)非ホジキンリンパ腫妊娠中の女性には、出産を終えるまで注意深い経過観察が行われることがあります。(詳しい情報については、インドレント非ホジキンリンパ腫の治療選択肢のセクションをご覧ください。)

妊娠中のアグレッシブ非ホジキンリンパ腫

妊娠中のアグレッシブ非ホジキンリンパ腫に対する治療法には以下のようなものがあります:

非ホジキンリンパ腫についてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している非ホジキンリンパ腫に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資料については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、成人非ホジキンリンパ腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。詳しい情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

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PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Non-Hodgkin Lymphoma Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/lymphoma/patient/adult-nhl-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389337]

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免責事項

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お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。