ご利用について
このPDQがん情報要約では、黒色腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 黒色腫についての一般的な情報
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黒色腫は、メラニン形成細胞(皮膚の色を作り出している細胞)から悪性(がん)細胞が発生する疾患です。
皮膚は体のなかで最も大きな臓器です。その機能の1つは、熱や日光、外傷、感染などから体を保護することです。皮膚はまた、体温の調節を助けるとともに、水、脂肪、ビタミンDを貯蔵します。皮膚にはいくつかの層がありますが、主には表皮(上層、外層)と真皮(下層、内層)という2つの層があります。皮膚がんはこのうちの表皮から発生し、表皮は以下の3種類の細胞から構成されています:
2010年から2019年にかけて、黒色腫の新規症例数は毎年約1%ずつ増加しましたが、黒色腫による死亡者の数は毎年減少し続けています。黒色腫はほとんどが成人に発生しますが、たまに小児や青年に生じることもあります。詳しい情報については、小児黒色腫の治療をご覧ください。
皮膚から発生するがんには様々な種類があります。
皮膚がんには、主に黒色腫と非黒色腫という2種類の病型があります。
黒色腫はまれな種類の皮膚がんです。他の種類の皮膚がんよりも、周辺の組織に拡がりやすく、体の他の部位に転移しやすいがんです。皮膚から発生した黒色腫は皮膚黒色腫と呼ばれます。黒色腫は粘膜(唇などの表面を覆っている湿った薄い組織の層)にも発生することがあります。本要約は、皮膚黒色腫と粘膜に発生する黒色腫について書かれたものです。
最もよくみられる皮膚がんは基底細胞がんと扁平上皮がんです。これらは非黒色腫皮膚がんです。非黒色腫皮膚がんは、まれにしか体の他の部位に転移しません。詳しい情報については、皮膚がんの治療をご覧ください。
黒色腫は皮膚上のどの部分にも発生します。
男性では、黒色腫は体幹(肩から股関節部までの領域)や頭頸部によく発生します。女性では、ほとんどの黒色腫が腕や脚に発生します。
黒色腫が眼球に発生すると、眼内黒色腫または眼黒色腫と呼ばれます。詳しい情報については、眼内(ブドウ膜)黒色腫の治療をご覧ください。
黒色腫のリスクに影響を及ぼす要因に、異常なほくろ、日光への曝露、病歴があります。
疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。このようなリスク因子の1つ以上をもつ人がみな黒色腫になるわけではありませんし、既知のリスク因子をもたない人が黒色腫になることもあります。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。
黒色腫のリスク因子には以下のものがあります:
白人または色白であることは黒色腫のリスクを高めますが、濃い色の肌の人を含め、誰でも黒色腫になる可能性があります。
黒色腫のリスク因子に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
黒色腫の徴候には、ほくろやあざの外観の変化などがあります。
これらの徴候や症状などは、黒色腫や他の病態によって引き起こされます。以下の問題がみられる場合は担当の医師にご相談ください:
通常のほくろと黒色腫の画像と説明については、通常母斑、異形成母斑、黒色腫のリスク(英語)をご覧ください。
黒色腫を診断するために皮膚を調べる検査が行われます。
黒色腫を発見し診断するために、担当医は個人歴や家族歴の聴取と身体診察に加えて、以下の検査や手技を行うことがあります:
- 黒色腫の病期
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黒色腫の診断がついた後には、がん細胞の皮膚内での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われることがあります。
がんの皮膚内での拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。
他の部位への転移や再発が起こりにくい黒色腫に対しては、追加の検査を行う必要がない場合もあります。他の部位への転移や再発が起こりやすい黒色腫に対しては、手術で黒色腫を切除した後に、以下のような検査や手技が行われることがあります:
- リンパ節マッピングとセンチネルリンパ節生検:手術中に行われるセンチネルリンパ節の切除。センチネルリンパ節とは、リンパ節群のなかで原発腫瘍からのリンパ節ドレナージ(リンパ液の流れ)を最初に受けるリンパ節です。これは原発腫瘍中のがん細胞が最初に転移する可能性の高いリンパ節です。まず、放射性物質や青色の色素が腫瘍の付近に注入されます。注入された放射性物質や色素は、リンパ管を通ってリンパ節へと流れ込みます。そうして、放射性物質や色素が最初に到達したリンパ節が切除されます。その組織を病理医が顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。がん細胞が検出されなければ、それ以上のリンパ節の切除が不要となることもあります。ときに、複数のリンパ節群で1つのセンチネルリンパ節が見つかることがあります。
- CTスキャン(CATスキャン):体内の領域を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法。この画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに造影剤を飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。黒色腫の場合は、頸部、胸部、腹部、骨盤が撮影対象です。
- PETスキャン(陽電子放射断層撮影):体内の悪性の腫瘍細胞を検出するための検査法。まず放射性のあるブドウ糖の溶液を少量だけ静脈内に注射します。その後、周囲を回転しながら体の内部を調べていくPETスキャナという装置を用いて、ブドウ糖が消費されている体内の領域を示す画像を作成していきます。悪性腫瘍細胞は、正常な細胞よりも活発でブドウ糖をより多く取り込む性質があるため、画像ではより明るく映し出されます。
- ガドリニウムを用いたMRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、脳など、体内の精細な連続画像を作成する検査法。まずガドリニウムと呼ばれる物質を静脈内に注射します。ガドリニウムにはがん細胞の周辺に集まる性質があるため、撮影された画像ではがん細胞が明るく映し出されます。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。
- 超音波検査:高エネルギーの音波(超音波)をリンパ節などの体内の組織や臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。この画像は後で見られるように印刷することもできます。
- 血液生化学検査:採取した血液を調べて、体内の臓器や組織から血液中に放出される特定の物質の濃度を測定する検査法。黒色腫の血液検査では、乳酸脱水素酵素(LDH)と呼ばれる酵素を調べます。LDHの値が高い患者さんでは、転移が認められるがんに対する治療が奏効しにくい場合があります。
これらの検査の結果と腫瘍の生検結果が併せて検討され、黒色腫の病期が判定されます。
体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。
がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。
がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。
転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、黒色腫が肺に転移した場合、肺にできたがん細胞は、実際は黒色腫の細胞です。こうした疾患は転移性黒色腫であって、肺がんではありません。
黒色腫の病期は、腫瘍の厚さ、リンパ節や他の部位への転移の有無などの要因を基に分類されます。
黒色腫の病期を判定するために、腫瘍を完全に切除し、周辺リンパ節を検査してがんの徴候を調べます。がんの病期は、最適な治療法を決定するために利用されます。ご自身のがんの病期は、担当の医師に確認してください。
黒色腫の病期は、以下の項目に基づいています:
- 腫瘍の厚さ。腫瘍の厚さは、皮膚表面から腫瘍の最深部までの厚みが測定されます。
- 腫瘍が潰瘍化(皮膚を破って)しているかどうか。
- 身体診察、画像検査、センチネルリンパ節生検で、がんがリンパ節に認められるかどうか。
- リンパ節が融合している(互いに癒着している)かどうか。
- 以下の病変が認められるかどうか:
- 衛星病巣:原発腫瘍から2cm以内の距離に転移した腫瘍細胞の小集団。
- 顕微鏡的衛星病巣:原発腫瘍のすぐ横または下に転移した腫瘍細胞の小集団。
- in-transit転移:原発腫瘍から2cmを超えて離れた皮膚内のリンパ管に転移している腫瘍で、リンパ節への転移ではないもの。
- 体の他の部位、例えば肺、肝臓、脳、軟部組織(筋肉を含む)、胃腸管などや遠く離れたリンパ節にがんが転移しているかどうか。がんが最初に発生した皮膚から遠く離れた皮膚に転移している場合もあります。
黒色腫では以下のような病期が用いられます:
0期(上皮内黒色腫)
0期では、異常なメラニン形成細胞が表皮内に認められます。こうした異常なメラニン形成細胞は、がん化して周辺の正常組織に拡がっていく可能性があります。0期は上皮内黒色腫とも呼ばれます。
III期
III期は、IIIA期、IIIB期、IIIC期、IIID期に分けられます。
- IIIA期:腫瘍の厚さが1mm以下であり、潰瘍化を伴うか、または厚さが2mm以下で潰瘍化を伴わない。センチネルリンパ節生検で1~3個のリンパ節にがんが認められる。
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IIIB期:
- (3)腫瘍の厚さが1mmを超えるが2mm以下で潰瘍化を伴うか、または厚さが2mmを超えるが4mm以下で潰瘍化を伴わず、以下のいずれかに該当する:
- がんは1~3個のリンパ節に認められる。または
- 皮膚上または皮膚下に顕微鏡的衛星病巣、衛星病巣、in-transit転移のいずれかまたは複数が存在する。
- (3)腫瘍の厚さが1mmを超えるが2mm以下で潰瘍化を伴うか、または厚さが2mmを超えるが4mm以下で潰瘍化を伴わず、以下のいずれかに該当する:
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IIIC期:
- (3)腫瘍の厚さは2mmを超えるが4mm以下で潰瘍化が認められる、または厚さが4mmを超え、潰瘍化は認められない。がんは1個以上のリンパ節に認められるか、複数のリンパ節からなる融合リンパ節に認められる、もしくはその両方に認められる。皮膚上または皮膚下に顕微鏡的衛星病巣、衛星病巣、in-transit転移のいずれかまたは複数が存在することがある。
または
- (4)腫瘍の厚さは4mmを超えており潰瘍化を伴う。がんは1個以上のリンパ節に認められ、皮膚上または皮膚下に顕微鏡的衛星病巣、衛星病巣、in-transit転移のいずれかまたは複数が存在する。
- (3)腫瘍の厚さは2mmを超えるが4mm以下で潰瘍化が認められる、または厚さが4mmを超え、潰瘍化は認められない。がんは1個以上のリンパ節に認められるか、複数のリンパ節からなる融合リンパ節に認められる、もしくはその両方に認められる。皮膚上または皮膚下に顕微鏡的衛星病巣、衛星病巣、in-transit転移のいずれかまたは複数が存在することがある。
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IIID期:腫瘍の厚さは4mmを超えており、潰瘍化を伴う。がんは以下のように転移している:
- 4個以上のリンパ節に認められるか、複数のリンパ節からなる融合リンパ節に認められる。または
- 2個以上のリンパ節に認められるか、複数のリンパ節からなる融合リンパ節に認められる、もしくはその両方に認められる。皮膚上または皮膚下に顕微鏡的衛星病巣、衛星病巣、in-transit転移のいずれかまたは複数が存在する。
- 治療選択肢の概要
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黒色腫の患者さんには様々な治療法が存在します。
黒色腫の患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
以下のような治療法が用いられます:
手術
腫瘍を切除する手術は、全ての病期の黒色腫に対して実施される一次治療です。広範囲局所切除術は、黒色腫と周囲の正常組織の一部を切除します。皮膚移植(体の別の部分から皮膚を切り取って、手術で切除した皮膚と置き換える手術)を実施して、手術によってできた創傷を目立たなくする場合もあります。
場合によっては、がんのリンパ節転移の有無を把握することが重要です。リンパ節マッピングとセンチネルリンパ節生検では、センチネルリンパ節(原発腫瘍からのリンパ節ドレナージ[リンパ液の流れ]を最初に受けるリンパ節)内のがんを調べます。これは原発腫瘍中のがん細胞が最初に転移する可能性の高いリンパ節です。まず、放射性物質や青色の色素が腫瘍の付近に注入されます。注入された放射性物質や色素は、リンパ管を通ってリンパ節へと流れ込みます。そうして、放射性物質や色素が最初に到達したリンパ節が切除されます。その組織を病理医が顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。がん細胞が見つかったら、より多くのリンパ節を採取して、それらのサンプルにがんの徴候がないか確認します。これはリンパ節切除と呼ばれる手技です。ときに、複数のリンパ節群で1つのセンチネルリンパ節が見つかることがあります。
手術の際に確認できる全ての黒色腫を切除した後に、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に化学療法や放射線療法が実施される場合があります。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる化学療法は、術後補助療法と呼ばれます。
症状をコントロールして患者さんの生活の質を改善するために、手術でリンパ節、肺、消化管、骨、脳に転移したがんを切除することがあります。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨げたりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、あるいは腹部などの体腔内に薬剤を直接注入する化学療法では、その領域にあるがん細胞に薬が集中的に作用します(局所化学療法)。
局所化学療法の一種に、温熱患肢灌流があります。この投与法では、がんが存在している腕や脚に直接抗がん剤を送り込みます。腕や脚との間の血液の流れを一時的に止血帯で止めます。そして、抗がん剤を含む暖かい溶液を、その腕または脚の血管に直接注入します。この方法では、がんが存在している領域に高用量の抗がん剤を投与できます。
化学療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。
詳しい情報については、黒色腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。外照射療法は黒色腫の治療に用いられるほか、症状を和らげ生活の質を高める緩和療法として用いられることもあります。
免疫療法
免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんを攻撃する治療法です。体内で生産された物質や製造ラボで合成された物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。
以下の免疫療法が黒色腫の治療に使用されています:
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免疫チェックポイント阻害薬療法:免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞などの免疫系細胞や一部のがん細胞により作られるチェックポイントと呼ばれる蛋白の働きを阻害します。これらのチェックポイント蛋白は、免疫反応が強くなり過ぎないように抑制する働きがあり、T細胞によるがん細胞の殺傷を妨げることがあります。こうしたチェックポイント蛋白を阻害すると、T細胞によるがん細胞の殺傷が促進される可能性があります。この種の薬剤は、進行黒色腫や手術で切除不能な腫瘍を有する患者さんの治療に用いられることがあります。
免疫チェックポイント阻害薬療法には次の2種類があります:
- CTLA-4阻害薬療法:CTLA-4はT細胞の表面に存在する蛋白で、体の免疫反応を抑制する働きがあります。CTLA-4ががん細胞上の別の蛋白、B7に結合すると、T細胞はがん細胞を殺傷しなくなります。CTLA-4阻害薬はCTLA-4に結合することで、T細胞ががん細胞を殺傷できるようにします。イピリムマブはCTLA-4阻害薬の一種です。
- PD-1またはPD-L1阻害薬療法:PD-1はT細胞表面に存在する蛋白で、体の免疫反応を抑制する働きがあります。PD-L1は数種類のがん細胞上に存在する蛋白です。PD-1がPD-L1に結合すると、T細胞はがん細胞を殺傷しなくなります。PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬は、PD-1蛋白とPD-L1蛋白の結合を阻止します。そうすることでT細胞によるがん細胞の殺傷を可能にします。ペムブロリズマブとニボルマブはPD-1阻害薬の一種です。アテゾリズマブはコビメチニブとベムラフェニブ(標的療法の一種)との併用が研究されているPD-L1阻害薬です。
詳しい情報については、黒色腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
標的療法
標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物や物質を用いる治療法です。以下の標的療法が黒色腫の治療に使用されているか、治療法として研究されています:
- シグナル伝達阻害薬:シグナル伝達阻害薬は、細胞内で分子から分子へと伝達されるシグナルを遮断します。こうしたシグナルを阻害することで、がん細胞を殺傷できる可能性があります。この種の薬剤は、進行黒色腫や手術で切除不能な腫瘍を有する患者さんの治療に用いられることがあります。シグナル伝達阻害薬には以下のようなものがあります:
BRAF阻害薬とMEK阻害薬は以下の組み合わせで黒色腫の治療に使用されます:
- 腫瘍溶解性ウイルス療法:黒色腫治療の分野で使用されている標的療法の一種。腫瘍溶解性ウイルス療法では、正常な細胞には感染せず、がん細胞にのみ感染して分解するウイルスを使用します。腫瘍溶解性ウイルス療法の後に放射線療法や化学療法を実施して、より多くのがん細胞を殺傷します。タリモジーン・ラハーパレプベックは、製造ラボでヘルペスウイルスを改変して作られる腫瘍溶解性ウイルス療法薬です。皮膚とリンパ節の腫瘍に直接注入します。
- 血管新生阻害薬:黒色腫治療の分野で研究されている標的療法の一種。血管新生阻害薬は新しい血管の成長を阻害します。がん治療では、腫瘍の増殖に必要な新しい血管の成長を阻止するために投与します。
治療後に再発するリスクが高い黒色腫の患者さんには、リスクを低減させるために実施できる補助療法の選択肢が増えてきています。補助療法には免疫チェックポイント阻害薬を用いるものやシグナル伝達阻害薬の併用などがあります。
新しい標的療法や併用法が黒色腫の治療法として研究されています。
詳しい情報については、黒色腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。
本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。
患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。
患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。
今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。
患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。
患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。
ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。
臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
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免疫チェックポイント阻害薬療法:免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞などの免疫系細胞や一部のがん細胞により作られるチェックポイントと呼ばれる蛋白の働きを阻害します。これらのチェックポイント蛋白は、免疫反応が強くなり過ぎないように抑制する働きがあり、T細胞によるがん細胞の殺傷を妨げることがあります。こうしたチェックポイント蛋白を阻害すると、T細胞によるがん細胞の殺傷が促進される可能性があります。この種の薬剤は、進行黒色腫や手術で切除不能な腫瘍を有する患者さんの治療に用いられることがあります。
- 0期(上皮内黒色腫)の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
通常、0期黒色腫に対する治療では、異常細胞が存在する領域全体と周囲の正常組織を少量だけ切除する手術が行われます。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- I期黒色腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
I期の黒色腫の治療法には以下のようなものがあります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- II期黒色腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
II期の黒色腫の治療法には以下のようなものがあります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 手術で切除可能なIII期黒色腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
手術で切除可能なIII期の黒色腫の治療法には以下のようなものがあります:
- 腫瘍全体と周囲の正常組織の一部を切除する手術。手術でできた創傷を目立たなくするために、皮膚移植が行われる場合もあります。ときには、腫瘍を切除する手術と同時にリンパ節マッピングとセンチネルリンパ節生検を実施して、リンパ節にがんが存在するかどうかを調べることもあります。がんがセンチネルリンパ節に認められた場合は、さらに多くのリンパ節を切除します。
- がんが再発するリスクが高い場合は、手術とその後の免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ)による免疫療法。
- がんが再発するリスクが高い場合は、手術とその後のシグナル伝達阻害薬(ダブラフェニブ、トラメチニブ)による標的療法。
- 免疫療法と場合によりワクチン療法を行う臨床試験への参加。
- 手術とその後に特定の遺伝子の変化を対象とした療法を行う臨床試験への参加。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 手術で切除不可能なIII期黒色腫、IV期黒色腫、再発黒色腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
手術で切除不可能なIII期の黒色腫、IV期の黒色腫、再発黒色腫の治療法には以下のようなものがあります:
手術で切除不可能なIII期黒色腫、IV期黒色腫、再発黒色腫に対する以下の治療法が、現在、臨床試験で研究されています:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 黒色腫についてさらに学ぶために
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米国国立がん研究所が提供している黒色腫に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、黒色腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
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本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Melanoma Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/skin/patient/melanoma-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389388]
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免責事項
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お問い合わせ
Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。