医療専門家向け 小児の皮膚基底細胞がんおよび皮膚扁平上皮がん(有棘細胞がん)の治療(PDQ®)

ご利用について

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、小児の皮膚基底細胞がんおよび皮膚扁平上皮がん(有棘細胞がん)の治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

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発生率と危険因子

非黒色腫(基底細胞がん[BCC]および扁平上皮がん[SCC])皮膚がんは非常にまれである。2000年から2008年までにSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースに記録された30歳未満の患者における原発性皮膚がん7,814例の報告で、全症例に占める割合は0.008%であった。[ 1 ]

28人の患者を対象にした1件のシリーズにおいて、約半数の患者が母斑性BCC症候群(ゴーリン症候群)のような素因となる疾患を有し、半数の患者が長期の免疫抑制または放射線といった医原性条件に曝露していた。[ 2 ]ゴーリン症候群は、早発型の新生物発生の素因を伴うまれな疾患で、BCC、卵巣線維腫、および線維形成性髄芽腫を含む。[ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ]

参考文献
  1. Senerchia AA, Ribeiro KB, Rodriguez-Galindo C: Trends in incidence of primary cutaneous malignancies in children, adolescents, and young adults: a population-based study. Pediatr Blood Cancer 61 (2): 211-6, 2014.[PUBMED Abstract]
  2. Khosravi H, Schmidt B, Huang JT: Characteristics and outcomes of nonmelanoma skin cancer (NMSC) in children and young adults. J Am Acad Dermatol 73 (5): 785-90, 2015.[PUBMED Abstract]
  3. Gorlin RJ: Nevoid basal cell carcinoma syndrome. Dermatol Clin 13 (1): 113-25, 1995.[PUBMED Abstract]
  4. Kimonis VE, Goldstein AM, Pastakia B, et al.: Clinical manifestations in 105 persons with nevoid basal cell carcinoma syndrome. Am J Med Genet 69 (3): 299-308, 1997.[PUBMED Abstract]
  5. Amlashi SF, Riffaud L, Brassier G, et al.: Nevoid basal cell carcinoma syndrome: relation with desmoplastic medulloblastoma in infancy. A population-based study and review of the literature. Cancer 98 (3): 618-24, 2003.[PUBMED Abstract]
  6. Veenstra-Knol HE, Scheewe JH, van der Vlist GJ, et al.: Early recognition of basal cell naevus syndrome. Eur J Pediatr 164 (3): 126-30, 2005.[PUBMED Abstract]
臨床像

基底細胞がんは一般に、隆起するしこりまたは潰瘍化病変を呈し、通常は日光紫外線に曝露したことがある部位に発生する。[ 1 ]こうした腫瘍は多岐にわたり、放射線療法によって増悪することがある。[ 2 ]扁平上皮がんの病変は通常赤褐色であり、大きさにも痂皮形成の程度にも差が認められ、湿疹、感染症、外傷または乾癬の症状に類似している。

参考文献
  1. Efron PA, Chen MK, Glavin FL, et al.: Pediatric basal cell carcinoma: case reports and literature review. J Pediatr Surg 43 (12): 2277-80, 2008.[PUBMED Abstract]
  2. Griffin JR, Cohen PR, Tschen JA, et al.: Basal cell carcinoma in childhood: case report and literature review. J Am Acad Dermatol 57 (5 Suppl): S97-102, 2007.[PUBMED Abstract]
診断的評価

いずれの皮膚がんでも、診断の確定には生検または切除術が必要である。追加治療に関する意思決定を行うためには、診断を下す必要がある。基底細胞がんおよび扁平上皮がんは一般に手術のみで根治可能で、追加の診断的精密検査は適応とされない。

小児の皮膚基底細胞がん(BCC)および皮膚扁平上皮がん(SCC)の治療

小児のBCCおよびSCCに対する治療法の選択肢には以下のものがある:

  1. 手術。

非黒色腫皮膚がんの治療はほとんどが手術であり、外科的切除またはモース顕微鏡手術のいずれかが行われる。[ 1 ]

BCCのほとんどでヘッジホッグ経路が活性化しているが、これは一般的にPTCH1における変異の結果である。[ 2 ]ヘッジホッグ経路阻害薬であるビスモデギブ(GDC-0449)は、転移または進行BCC成人患者の治療に対して承認されている。[ 3 ][ 4 ][ 5 ]この薬物はまた、基底細胞母斑症候群の患者における腫瘍負荷も低下させる。[ 6 ]

(詳しい情報については、成人の皮膚がんの治療に関するPDQ要約を参照のこと。)

参考文献
  1. Khosravi H, Schmidt B, Huang JT: Characteristics and outcomes of nonmelanoma skin cancer (NMSC) in children and young adults. J Am Acad Dermatol 73 (5): 785-90, 2015.[PUBMED Abstract]
  2. Caro I, Low JA: The role of the hedgehog signaling pathway in the development of basal cell carcinoma and opportunities for treatment. Clin Cancer Res 16 (13): 3335-9, 2010.[PUBMED Abstract]
  3. Von Hoff DD, LoRusso PM, Rudin CM, et al.: Inhibition of the hedgehog pathway in advanced basal-cell carcinoma. N Engl J Med 361 (12): 1164-72, 2009.[PUBMED Abstract]
  4. Sekulic A, Migden MR, Oro AE, et al.: Efficacy and safety of vismodegib in advanced basal-cell carcinoma. N Engl J Med 366 (23): 2171-9, 2012.[PUBMED Abstract]
  5. Basset-Séguin N, Hauschild A, Kunstfeld R, et al.: Vismodegib in patients with advanced basal cell carcinoma: Primary analysis of STEVIE, an international, open-label trial. Eur J Cancer 86: 334-348, 2017.[PUBMED Abstract]
  6. Tang JY, Mackay-Wiggan JM, Aszterbaum M, et al.: Inhibiting the hedgehog pathway in patients with the basal-cell nevus syndrome. N Engl J Med 366 (23): 2180-8, 2012.[PUBMED Abstract]
小児の皮膚基底細胞がんおよび皮膚扁平上皮がん(有棘細胞がん)の治療に対して臨床評価段階にある治療法の選択肢

米国国立がん研究所(NCI)が支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。

以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:

小児がん治療に関する特別な考慮事項

小児および青年におけるがんはまれであるが、小児がんの全発生率は1975年以降徐々に増加している。[ 1 ]小児および青年のがん患者については、小児期および青年期に発生するがんの治療経験を有するがん専門家から構成される集学的チームのある医療機関への紹介を検討すべきである。この集学的チームのアプローチとは、至適生存期間および至適QOLを得られるような治療、支持療法、およびリハビリテーションを小児が必ず受けられるようにするため、以下に示す医療専門家の技術を集結したものである:

(小児および青年のがんの支持療法に関する具体的な情報については、PDQの支持療法および緩和ケアの要約を参照のこと。)

米国小児科学会によって、小児がん施設とそれらが小児がん患者の治療において担う役割に関するガイドラインが概説されている。[ 2 ]このような小児がん施設では、小児および青年に発症するほとんどの種類のがんに関する臨床試験が行われており、大半の患者およびその家族に参加する機会が与えられている。小児および青年のがんに関する臨床試験は一般に、現在標準とされている治療法と、それより効果的であると思われる治療法とを比較するようデザインされる。小児がんの治癒を目指した治療法の進歩の大部分は、このような臨床試験によって達成されたものである。現在実施中の臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトから入手することができる。

小児および青年のがん患者の生存において、劇的な改善が達成されている。1975年から2010年の間に、小児がんの死亡率は50%以上低下した。[ 3 ]小児および青年のがん生存者では、治療から数ヵ月または数年経過後もがん療法の副作用が持続または発現することがあるため、綿密なモニタリングが必要である。(小児および青年のがん生存者における晩期合併症(晩期障害)の発生率、種類、およびモニタリングに関する具体的な情報については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)に関するPDQ要約を参照のこと。)

小児がんはまれな疾患であり、米国において20歳未満で診断される症例は年間約15,000例である。[ 4 ]米国の2002年希少疾患対策法(Rare Diseases Act of 2002)では、希少疾患を罹患者が20万人未満の疾患と定めている。そのため、小児がんはすべて希少疾患とみなされる。

まれな腫瘍の指定は小児および成人のグループ間で統一されていない。成人のまれながんは、年間発生率が10万人当たり6例未満のがんとして定義され、欧州連合で診断されるすべてのがんの最大24%および米国で診断されるすべてのがんの約20%を占めていると推定される。[ 5 ][ 6 ]また、小児のまれな腫瘍の指定は、以下に示すように国際的グループ間で統一されていない:

このようなまれながんは、個々の診断を受ける患者の発生率が低いこと、青年集団にまれながんが多いこと、およびまれながんの青年についての臨床試験が行われていないことから、研究がきわめて困難である。

これらの腫瘍に関する情報は、成人の皮膚がんの治療に関するPDQ要約など、成人のがんに関連する情報源でも記載されている場合がある。

参考文献
  1. Smith MA, Seibel NL, Altekruse SF, et al.: Outcomes for children and adolescents with cancer: challenges for the twenty-first century. J Clin Oncol 28 (15): 2625-34, 2010.[PUBMED Abstract]
  2. Corrigan JJ, Feig SA; American Academy of Pediatrics: Guidelines for pediatric cancer centers. Pediatrics 113 (6): 1833-5, 2004.[PUBMED Abstract]
  3. Smith MA, Altekruse SF, Adamson PC, et al.: Declining childhood and adolescent cancer mortality. Cancer 120 (16): 2497-506, 2014.[PUBMED Abstract]
  4. Ward E, DeSantis C, Robbins A, et al.: Childhood and adolescent cancer statistics, 2014. CA Cancer J Clin 64 (2): 83-103, 2014 Mar-Apr.[PUBMED Abstract]
  5. Gatta G, Capocaccia R, Botta L, et al.: Burden and centralised treatment in Europe of rare tumours: results of RARECAREnet-a population-based study. Lancet Oncol 18 (8): 1022-1039, 2017.[PUBMED Abstract]
  6. DeSantis CE, Kramer JL, Jemal A: The burden of rare cancers in the United States. CA Cancer J Clin 67 (4): 261-272, 2017.[PUBMED Abstract]
  7. Ferrari A, Bisogno G, De Salvo GL, et al.: The challenge of very rare tumours in childhood: the Italian TREP project. Eur J Cancer 43 (4): 654-9, 2007.[PUBMED Abstract]
  8. Pappo AS, Krailo M, Chen Z, et al.: Infrequent tumor initiative of the Children's Oncology Group: initial lessons learned and their impact on future plans. J Clin Oncol 28 (33): 5011-6, 2010.[PUBMED Abstract]
  9. Howlader N, Noone AM, Krapcho M, et al., eds.: SEER Cancer Statistics Review, 1975-2012. Bethesda, Md: National Cancer Institute, 2015. Also available online. Last accessed December 10, 2019.[PUBMED Abstract]
本要約の変更点(12/23/2019)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

本要約が新たに追加された。

本要約はPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、小児の皮膚基底細胞がんおよび皮膚扁平上皮がん(有棘細胞がん)の治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

証拠レベル

本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

本要約の使用許可

PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Basal Cell Carcinoma and Squamous Cell Carcinoma of the Skin Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/skin/hp/child-skin-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

免責条項

入手可能な証拠の強さに基づき、治療選択肢は「標準」または「臨床評価段階にある」のいずれかで記載される場合がある。これらの分類は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。