患者さん向け 小児多発性内分泌腫瘍(MEN)症候群の治療(PDQ®)

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このPDQがん情報要約では、小児多発性内分泌腫瘍(MEN)症候群の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小児多発性内分泌腫瘍(MEN)症候群についての一般的な情報

多発性内分泌腫瘍(MEN)症候群は、内分泌系を侵す遺伝性疾患です。

内分泌系は、ホルモンを生産して血液中に放出する細胞で構成されています。MEN症候群は、過形成(正常細胞の過剰な増殖)や良性がんではない)または悪性(がん)の腫瘍を引き起こす場合があります。

MEN症候群にはいくつかの種類があり、それぞれが異なった病態やがんを引き起こすことがあります。

MEN症候群には、主にMEN1MEN2の2種類があります。MEN2症候群は、MEN2A症候群MEN2B症候群という2種類のサブグループに分類されます。MEN2A症候群には家族性甲状腺髄様がんが含まれます。

多発性内分泌腫瘍(MEN)症候群に侵される部位。左図はMEN1症候群に侵されることのある下垂体、副甲状腺、膵臓を示している。拡大図は甲状腺の背面と4つの豆粒大の副甲状腺を示している。右図は、MEN2症候群に侵されることのある甲状腺、副甲状腺、副腎を示している。拡大図は副腎髄質(副腎内部の組織)を示している。

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多発性内分泌腫瘍(MEN)症候群は、内分泌系の腺や臓器を侵すまれな遺伝性疾患です。MEN症候群にはいくつかの種類があり、種類によって発生する病態やがんの種類が異なります。MEN症候群の主な種類にはMEN1とMEN2の2つがあります。MEN1症候群では通常、下垂体、副甲状腺、膵臓に腫瘍が生じます。MEN2症候群では通常、甲状腺、副甲状腺、副腎に腫瘍が生じます。この種の腫瘍には良性(がんではない)のものと、悪性(がん)のものがあります。

MEN1症候群は多くの場合に、副甲状腺や下垂体、膵島細胞の腫瘍を引き起こします。

通常、MEN1症候群の診断は、腫瘍が副甲状腺下垂体島細胞のうち、2つの腺または臓器に認められる場合に下されます。腫瘍は過剰なホルモンを分泌し、特定の徴候症状を引き起こすことがあります。徴候や症状は、腫瘍が分泌するホルモンの種類によって異なります。MEN1症候群はウェルナー症候群とも呼ばれます。

予後回復の見込み)は通常、良好です。

MEN1症候群に伴う病態で最もよくみられるものは、副甲状腺機能亢進症です。副甲状腺機能亢進症(副甲状腺ホルモン)では、以下のような徴候や症状がみられます:

MEN1症候群に関連する他の病態やその徴候と症状には、以下のようなものがあります:

原発性の副甲状腺機能亢進症が認められる小児やMEN1症候群に随伴する腫瘍を有する小児、または高カルシウム血症もしくはMEN1症候群の家族歴がある小児には、MEN1遺伝子変異について調べる遺伝子検査が実施されることがあります。親は遺伝子検査に先立って遺伝カウンセリング遺伝性疾患のリスクに関する訓練を受けた専門家との話し合い)を受けるべきです。遺伝カウンセリングでは、子どもや家族に関係するMEN1症候群のリスクについての話し合いも行われます。

MEN1症候群と診断された小児は、がんの徴候がないかどうか調べる検査を5歳から始め、生涯にわたって続けます。がんの徴候を調べるために必要な検査や処置、望ましい実施頻度について、担当の医師と話し合ってください。

MEN2A症候群は、甲状腺髄様がん、褐色細胞腫、副甲状腺の疾患を引き起こすことがあります。

MEN2A症候群はシップル症候群とも呼ばれます。患者さん自身か、患者さんの両親、兄弟、姉妹、子どもに以下の病態が2つ以上みられる場合は、MEN2A症候群の診断が下されることがあります:

通常、予後は良好です。

通常、MEN2症候群の甲状腺髄様がんは、RET遺伝子の変異に関連しています。小児にMEN2症候群の診断が疑われる場合やMEN2症候群の診断を受けた家族がいる場合は、その小児に遺伝子検査を受けさせる前に、親が遺伝カウンセリングを受けるべきです。遺伝カウンセリングでは、子どもや家族がもつMEN2症候群のリスクについての話し合いも行われます。

MEN2B症候群はいくつかの病態を引き起こします。

MEN2B症候群の患者さんは、やせて手足の細長い体型になることがあります。粘膜にできる良性腫瘍のために、唇が大きくでこぼこした見た目になる場合があります。MEN2B症候群は以下のような病態を引き起こします:

MEN2B症候群の予後は、甲状腺髄様がんが侵攻性の高いがんであるため、MEN1またはMEN2A症候群の予後ほど良好ではありません。

MEN2A症候群、MEN2B症候群、FMTCの小児には、遺伝子検査が必要になる場合があります。

通常、MEN2症候群の甲状腺髄様がんは、RET遺伝子の変異に関連しています。小児にMEN2症候群の診断が疑われる場合やMEN2症候群の診断を受けた家族がいる場合は、その小児に遺伝子検査を受けさせる前に、親が遺伝カウンセリングを受けるべきです。遺伝カウンセリングでは、子どもや家族がもつMEN2症候群のリスクについての話し合いも行われます。

MEN症候群に関連するがんの診断と病期分類に使用される検査は、徴候や症状と患者さんの家族歴により異なります。

がんの診断と病期分類を進めるために検査を行います。がんの診断後に、がん細胞が周辺領域で拡がっているかどうか、または他の部位に転移しているかどうかを調べる検査が行われます。このプロセスは病期分類と呼ばれます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

甲状腺髄様がんなどのがんがある場合は、がん細胞が周辺領域で拡がっているかどうか、または他の部位に転移しているかどうかを調べる検査が行われます。

がんが周辺領域や他の部位に拡がっているかどうかを調べるプロセスは、病期分類と呼ばれます。MEN症候群に関連する小児がんには、標準的な病期分類システムはありません。がんを診断するために行われた検査や手技の結果は、治療に関する決定を下すためにも利用されます。

小児MEN症候群は治療後に再発する(再び現れる)ことがあります。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、甲状腺髄様がんがに転移した場合、肺にできたがん細胞は、実際は甲状腺髄様がんの細胞です。この疾患は転移性甲状腺髄様がんであり、肺がんではありません。

治療選択肢の概要

MEN症候群の小児には様々な治療法が存在します。

その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

MEN症候群の小児の治療では、小児がんの治療に精通した医師のチームが治療計画を作成するべきです。

この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が統括します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とする他の小児医療専門家と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門家が挙げられます:

実施される検査法は患者さんのMEN症候群の種類によって異なります。

MEN1症候群MEN2A症候群MEN2B症候群の治療については、本要約の治療のセクションをご覧ください。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

小児MEN症候群の治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療中に発生する副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、お子さんの状態の変化やがんの再発の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

小児MEN1症候群の治療

副甲状腺機能亢進症MEN1症候群で最もよくみられる徴候です。MEN1症候群または原発性副甲状腺機能亢進症の小児は、3つ以上の副甲状腺胸腺を切除する手術を受けることがあります。必要に応じて、島細胞腫瘍や下垂体腫瘍、またはその他のMEN1症候群に関連する病態に対する治療も行われます。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

小児MEN2A症候群の治療

甲状腺髄様がんMEN2A症候群に関連しています。MEN2A症候群でRET遺伝子に特定の変化がみられる小児は、がん診断を受けるために、またはがんの発生や転移の発生確率を下げる処置として、通常は5歳までに甲状腺を切除する手術を受けます。また必要に応じて、褐色細胞腫副甲状腺機能亢進症の治療も行われます。

MEN2A症候群で甲状腺髄様がんを患っている小児は、標的療法を受けることがあります。標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物などの物質を用いる治療法の一種です。標的療法では一般に、化学療法放射線療法に比べて、正常な細胞に及ぼす害が少なくなります。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

小児MEN2B症候群の治療

侵攻性の甲状腺がんの病型である甲状腺髄様がんも、MEN2B症候群に関連しています。MEN2B症候群でRET遺伝子に特定の変化がみられる乳児は通常、がんの発生確率を下げる処置として、甲状腺を切除する手術を受けます。

MEN2B症候群で甲状腺髄様がんを患っている小児は、標的療法を受けることがあります。標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物などの物質を用いる治療法の一種です。標的療法では一般に、化学療法放射線療法に比べて、正常な細胞に及ぼす害が少なくなります。

必要に応じて、褐色細胞腫などの病態に対する治療も行われます。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発小児MEN症候群の治療

再発した(再び現れた)MEN症候群に関連するがんの治療法には以下のようなものがあります:

小児MEN症候群についてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供しているMEN症候群に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小児がんに関する情報と一般的ながんに関するその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児多発性内分泌腫瘍(MEN)症候群の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

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本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Multiple Endocrine Neoplasia (MEN) Syndromes Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/multiple-endocrine-neoplasia/patient-child-men-syndromes-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

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