患者さん向け 小児大腸がんの治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小児大腸がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小児大腸がんについての一般的な情報

大腸がんは、結腸または直腸の組織に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

結腸消化器系の一部をなす臓器です。消化器系は、食物中の栄養素ビタミンミネラル炭水化物、脂質、蛋白質、水分)の消化吸収と、老廃物の体外への排出という役割を担っています。消化器系は、口、食道小腸大腸から構成されます。結腸(太い)は大腸の主要部分で、成人では長さは約5フィート(およそ152cm)です。加えて、大腸の終端部に直腸肛門管があり、これらの長さは6~8インチ(15~20cm)です。そしてこの肛門管の終端部が肛門(大腸の体外への開口部)です。

特定の遺伝性症候群に罹患していると、大腸がんのリスクが上昇します。

疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子があると必ずがんを発症するというわけではありませんし、リスク因子がなければがんにならないというわけでもありません。お子さんにリスクがあるかもしれないと思われる場合は、担当の医師に相談してください。

小児大腸がんは、遺伝性がん症候群の一部として発生することがあります。若年者の大腸がんの一部には、ポリープ(結腸の内壁を覆っている粘膜にできた増殖物)を発生させる遺伝子変異が関係していて、そのポリープが後にがんに変化することがあります。以下のような特定の遺伝性病態があると、大腸がんのリスクが高くなります:

遺伝性症候群がない小児の結腸にできたポリープには、がんのリスク増大との関連は認められていません。

大腸がんの徴候や症状には、腹痛、便秘、下痢などがあります。

小児大腸がんの徴候症状は通常、腫瘍ができる場所によって異なります。これらのような徴候や症状は、大腸がんが原因のこともありますが、別の病態が原因である可能性もあります。

以下の症状が1つでもみられる場合は、お子さんの担当医に相談してください:

大腸がんの診断には、結腸と直腸を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)に影響を及ぼします。

予後を左右する要因としては以下のものがあります:

小児大腸がんの病期

大腸がんの診断がついた後には、がん細胞の結腸または直腸内部での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。

治療計画を立てるには、がん細胞結腸直腸の中で拡がっているかどうかや、他の部位に転移しているかどうかを把握することが重要です。がんが拡がっているかどうかを調べるためのプロセスは、病期診断と呼ばれます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。がんの診断に用いられたの結果は、多くの場合、病期診断にも用いられます。(一般的な情報のセクションをご覧ください。)

小児の大腸がんは、診断時にリンパ節、結腸または直腸の外、腹部の他の臓器に転移していることがよくあります。がんの拡がりの有無を調べるには、以下のような検査法や手技が用いられます:

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系、または血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞が最初に発生した場所(原発巣)から分離して、リンパ系や血液を介して移動します。

転移巣の腫瘍は原発巣と同じ種類の腫瘍です。例えば、大腸がんが骨に転移した場合、その骨にあるがん細胞は実際は大腸がんの細胞です。この疾患は転移性大腸がんであり、骨の悪性腫瘍ではありません。

小児大腸がんはときに治療後に再発することがあります。

再発は結腸や直腸で起こることもあれば、それ以外の部位で起こることもあります。

治療選択肢の概要

小児の大腸がんに対する治療法には様々なものがあります。

その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象に、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。新しい治療法が標準治療よりも優れていることが複数の臨床試験で示された場合、その新しい治療法が標準治療になる可能性があります。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討するべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

小児の大腸がんの治療では、小児がんの治療に精通した医師のチームが治療計画を策定するべきです。

治療は小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が監督します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通しつつ、同時に特定の医療分野を専門とする他の小児医療従事者と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門医や専門家です:

標準治療として以下の4種類が用いられています:

手術

診断時にがんが他の部位に転移していない場合には、がんを切除する手術を行います。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入り、全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。複数の薬剤を使用する化学療法は、多剤併用化学療法と呼ばれます。

免疫療法

免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんと戦う治療法です。体内で生産された物質や人工的に作られた物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。このようながん治療は生物学的療法の一種です。

免疫チェックポイント阻害薬療法は、免疫療法の一種です。T細胞などの免疫細胞や一部のがん細胞は、その表面上にチェックポイント蛋白と呼ばれる免疫反応を抑止する蛋白をもっています。これらの蛋白を大量にもつがん細胞は、T細胞による攻撃と殺傷を回避します。免疫チェックポイント阻害薬は、これらの蛋白を阻害することでT細胞ががん細胞を殺傷する働きを促します。

免疫チェックポイント阻害薬療法には以下の2種類があります:

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

小児大腸がんの治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療中に発生する副作用の詳細については、副作用(英語)のページをご覧ください。

がん治療による副作用のうち、治療後に始まって月単位または年単位で続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:

晩期合併症(晩期障害)には治療やコントロールが可能なものもあります。治療によってお子さんに生じうる晩期合併症(晩期障害)について担当の医師とよく相談することが重要です。詳しい情報については、PDQ小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)に関する要約をご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

がんに対する今日の標準治療の多くは、過去に行われた臨床試験の結果を根拠としています。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、まだ人に用いられたことがない新しい治療法を受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがん治療を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が新しい効果的な治療法の発見につながらなくても、しばしば重要な問題に対する答えが得られ、研究を前進させる助けになります。

患者さんはがん治療の開始前だけでなく、開始後でも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要になることもあります。

治療を進めるにつれて、フォローアップ検査または定期検査が行われます。がんの診断病期診断のために実施された検査の中には、治療の効果を確認するために繰り返し行われるものもあります。治療の継続、変更、中止などの決定がそれらの検査結果に基づいて判断されることもあります。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。それらの検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんが再発したかどうかを知ることができます。

小児大腸がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

新たに診断された小児大腸がんに対する治療法には以下のようなものがあります:

特定の家族性大腸がん症候群の小児では、以下の治療法が考えられます:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発または進行性小児大腸がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

小児の再発または進行性大腸がんに対する治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

小児大腸がんについてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している小児大腸がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小児がんに関するさらなる情報とがん全般に関するその他の資料については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児大腸がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Colorectal Cancer Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/colorectal/patient/child-colorectal-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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