ご利用について
このPDQがん情報要約では、骨髄異形成症候群の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 骨髄異形成症候群についての一般的な情報
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骨髄異形成症候群とは、骨髄の未熟な血液細胞が正常な血液細胞に成熟しなくなる一群のがんのことです。
正常な状態の骨髄では、造血幹細胞と呼ばれる未熟な細胞が作られていて、それらが時間とともに成熟して血液細胞(血球)に成長します。
骨の解剖図。骨は緻密骨、海面骨、骨髄で構成されています。緻密骨は、骨の外層を形成しています。海面骨は、そのほとんどが骨の末端にみられる部分で、赤色骨髄を含んでいます。骨髄は、大半の骨の中心部にあって、内部には多くの血管が走っています。骨髄には赤色骨髄と黄色骨髄の2種類があります。赤色骨髄には、白血球、赤血球、血小板になることができる造血幹細胞が含まれています。黄色骨髄は、大部分が脂肪でできています。 造血幹細胞はリンパ系幹細胞と骨髄系幹細胞のどちらかに成長します。リンパ系幹細胞は白血球に成長します。骨髄系幹細胞は成熟して以下の3種類の血液細胞のいずれかになります:
血液細胞の成長。造血幹細胞はいくつかの段階を経て赤血球、血小板、または白血球になります。 骨髄異形成症候群の人では、造血幹細胞(未熟な細胞)が骨髄内で成熟した赤血球、白血球、血小板に成長することができません。それらの未熟な血液細胞は芽球と呼ばれ、正常な働きをすることができず、骨髄から血液に移行する前や血液に移行してすぐに死んでしまいます。その結果、骨髄内で正常な白血球、赤血球、血小板が成長するスペースが少なくなります。正常な血液細胞が少なくなると、感染や貧血が起きたり、出血が起きやすくなったりします。
各種の骨髄異形成症候群は、血液細胞と骨髄にみられる特定の変化に基づいて診断されます。
年齢と化学療法または放射線療法による治療歴は、骨髄異形成症候群のリスクに影響を与えます。
疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。このようなリスク因子がある人全員が骨髄異形成症候群を発症するわけではなく、また、リスク因子が認められない人に骨髄異形成症候群が発生することもあります。ご自分にリスクがあるかもしれないと思われる場合は、担当の医師に相談してください。骨髄異形成症候群のリスク因子には以下のものがあります:
骨髄異形成症候群の患者さんでは、ほとんどの場合、原因は不明です。
骨髄異形成症候群の症状・徴候としては息切れや疲労感などがあります。
骨髄異形成症候群では、早期の段階では徴候や症状がみられないことがよくあります。通常の血液検査で偶然発見されることもあります。徴候や症状は、骨髄異形成症候群が原因のこともありますが、別の病態が原因である可能性もあります。以下の症状が1つでもみられる場合は、医師の診察を受けてください:
特定の要因が予後(回復の見込み)や治療選択肢に影響を及ぼします。
予後や治療選択肢を左右する要因としては以下のものがあります:
- 骨髄中の芽球の数
- 異常がみられる血液細胞の種類は1つだけか複数か
- 貧血、出血、または感染の徴候や症状の有無
- 白血病のリスクが高いか低いか
- 染色体の特定の変化
- その骨髄異形成症候群ががんに対する化学療法または放射線療法の実施後に発生したものかどうか
- 年齢と健康状態
- 治療選択肢の概要
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骨髄異形成症候群に対する治療法には様々なものがあります。
骨髄異形成症候群の患者さんは、様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象に、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。新しい治療法が標準治療よりも優れていることが複数の臨床試験で示された場合、その新しい治療法が標準治療になる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
骨髄異形成症候群の治療法としては、支持療法、薬物療法、造血幹細胞移植などがあります。
血球の減少による症状が生じている骨髄異形成症候群の患者さんには、症状を和らげて生活の質(QOL)を改善する目的で支持療法が行われます。病状の進行を遅らせる目的で薬物療法が行われることもあります。特定の患者さんでは、化学療法に続いてドナーから提供された幹細胞を用いた造血幹細胞移植を行う積極的治療によって、治癒が得られる可能性があります。
以下のような治療法が用いられます:
支持療法
支持療法は、疾患やその治療が原因で生じた問題を軽減するために行われます。支持療法には以下のようなものがあります:
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輸血療法
輸血療法(輸血)は、疾患や治療によって破壊された血液細胞を補充するために赤血球、白血球、血小板などを投与する治療法です。赤血球輸血は、赤血球数が少なく、息切れや強い疲労感など貧血の徴候や症状が生じている場合に行われます。血小板輸血は通常、出血が起きている場合、出血する可能性がある処置を受ける場合、または血小板数が非常に少なくなっている場合に行われます。
赤血球輸血を何度も受けている患者さんでは、組織や臓器に鉄が過剰に蓄積して損傷が起こる可能性があります。そのような患者さんには、血液中から過剰な鉄を除去するために鉄キレート療法が行われる場合があります。
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赤血球造血刺激因子製剤
成熟した赤血球の数を増やして貧血症状を和らげるために、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が使用されることがあります。ときには治療効果を高めるために、ESAとともに顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)が使用されることもあります。
- 抗菌薬療法
薬物療法
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レナリドミド
del(5q)単独の染色体異常を伴う骨髄異形成症候群の患者さんが頻繁に赤血球輸血を必要としている場合は、レナリドミドによる治療が行われることがあります。レナリドミドは赤血球輸血の必要性を抑えるために使用されます。
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免疫抑制療法
抗胸腺細胞グロブリン(ATG)は免疫系を抑制する作用があります。赤血球輸血の必要性を抑えるために使用されます。
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アザシチジンとデシタビン
アザシチジンとデシタビンは、急速に分裂している細胞を殺傷する仕組みにより骨髄異形成症候群を治療する目的で使用されます。細胞の増殖に関係する遺伝子が正常に機能するよう補助する働きもあります。アザシチジンとデシタビンによる治療には、骨髄異形成症候群から急性骨髄性白血病への進行を遅らせる効果が見込まれます。
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急性骨髄性白血病(AML)で用いられる化学療法
骨髄に多数の芽球がみられる骨髄異形成症候群の患者さんは、急性白血病のリスクが高まっています。そのような人には、急性骨髄性白血病と同じレジメンによる化学療法が行われることがあります。
造血幹細胞移植を伴う化学療法
まず、がん細胞を死滅させる目的で化学療法を行います。すると、このがん治療によって、造血幹細胞(未熟な血液細胞)を含めた正常な細胞も破壊されてしまいます。そこで造血幹細胞移植を行って、造血幹細胞を新しいものに置き換えます。患者さんまたはドナーから採取した血液または骨髄から造血幹細胞(未成熟の血液細胞)を取り出し、それを凍結保存しておきます。化学療法の終了後に、保存していた造血幹細胞を解凍し、それを点滴で患者さんの体内に戻します。体内に戻された造血幹細胞が成長することで、血液の機能が回復します。
がんに対する過去の治療が原因で発生した骨髄異形成症候群には、この療法では十分な効果が得られないことがあります。
ドナー造血幹細胞移植。(ステップ1):ドナーから造血幹細胞を採取する4~5日前に、血流内を循環する幹細胞の数を増やすための薬剤をドナーに投与します(図には示されていません)。その後、ドナーの腕の太い静脈から造血幹細胞を採取します。造血幹細胞を取り出すアフェレーシス装置の中に血液を流します。残った血液は反対側の腕の静脈からドナーの体内に戻されます。(ステップ2):患者さんに化学療法を行うことでがん細胞を殺傷して、患者さんの体がドナーの造血幹細胞を受け入れる環境を作ります。放射線療法を行う場合もあります(図には示されていません)。(ステップ3):患者さんにドナー幹細胞を投与します。 この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。
臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。
患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。
患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。
がんに対する今日の標準治療の多くは、過去に行われた臨床試験の結果を根拠としています。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、まだ人に用いられたことがない新しい治療法を受けることになる場合もあります。
患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがん治療を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が新しい効果的な治療法の発見につながらなくても、しばしば重要な問題に対する答えが得られ、研究を前進させる助けになります。
患者さんはがん治療の開始前だけでなく、開始後でも臨床試験に参加することができます。
ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。
臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
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輸血療法
- 小児骨髄異形成症候群の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
骨髄異形成症候群に対する治療法には以下のようなものがあります:
過去の治療で化学療法または放射線療法を受けた患者さんには、その治療法に関連した骨髄系腫瘍が発生することがあります。治療選択肢は、他の骨髄異形成症候群の場合と同じです。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 再発または難治性骨髄異形成症候群の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
難治性または再発骨髄異形成症候群には、確立された標準治療がありません。治療に反応しないがんや治療後に再発したがんの患者さんは、臨床試験に参加してもよいでしょう。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 骨髄異形成症候群についてさらに学ぶために
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米国国立がん研究所が提供している骨髄異形成症候群に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資料については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、骨髄異形成症候群の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。詳しい情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Myelodysplastic Syndromes Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/myeloproliferative/patient/myelodysplastic-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389239]
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