ご利用について
このPDQがん情報要約では、神経芽腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 神経芽腫についての一般的な情報
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神経芽腫は、副腎、頸部、胸部、脊髄の神経芽細胞(未熟な神経組織)に発生するがんの一種です。
神経芽腫は多くの場合、副腎の神経組織から発生します。副腎は体内に2つあり、上腹部の背側に位置する左右の腎臓の上部に1つずつ存在しています。副腎では、心拍数や血圧、血糖、ストレスに対する反応などの調節で重要な働きをする数種類のホルモンが作られています。
神経芽腫の多くは乳児期に発生します。通常は生後1ヵ月から5歳までの間に診断されます。腫瘍が大きくなり、徴候や症状を引き起こし始めてから、その存在が明らかになります。ときには出生前に発生し、胎児の超音波検査で発見される場合もあります。
がんと診断されるまでに、通常はがんが他の部位に転移して(拡がって)います。神経芽腫がよく転移する部位は、乳幼児ではリンパ節、骨、骨髄、肝臓、皮膚です。また青年では、肺や脳に転移することもあります。
特定の遺伝的状態は、神経芽腫の発生リスクに影響を及ぼすことがあります。
神経芽腫は、神経芽細胞の挙動が変化することで発生し、特に細胞が成長して新しい細胞に分裂する仕方が変わると、大きな原因になります。神経芽腫には様々なリスク因子がありますが、その多くはがんの直接の原因にはなりません。ただし、細胞内のDNAに、神経芽腫の発生につながる損傷を与える場合があります。がんの発生の詳細については、がんとは何か(英語)をご覧ください。
リスク因子とは、疾患が発生する可能性を増大させるあらゆる要因のことです。リスク因子のなかには、変えることが可能なものがあります。一方で、家族歴のように、変えることができないものもあります。神経芽腫のリスク因子について知ることは、がんのスクリーニングに関する決定を行う際に役立つ場合があるため重要です。
神経芽腫のリスク因子には、以下のようなものがあります:
遺伝子検査で、小児が遺伝性の神経芽腫かどうかを判定することができます。
神経芽腫のリスクを高める遺伝子変異は、遺伝する(親から子へと受け継がれる)ことがあります。この遺伝子変異を有する小児では、神経芽腫が通常は若年で発生し、副腎や頸部、胸部、腹部、骨盤の神経組織に複数の腫瘍ができることがあります。
ある状態が遺伝するかどうかは、家族歴から必ず判明するとは限りません。特定の条件に当てはまる家族は、遺伝カウンセリングや遺伝子検査を受けるメリットがあります。遺伝カウンセラーやその他の特別な訓練を受けた専門家は、小児の診断と家族の病歴について保護者と話し合い、以下の点を説明することができます:
- ALKまたはPHOX2Bの遺伝子検査の選択肢。
- 小児とその兄弟姉妹に神経芽腫が発生するリスク。
- 遺伝情報を詳しく知ることのリスクと利益。
遺伝カウンセラーは遺伝子検査の結果について家族と話し合う方法を助言するなどして、保護者が検査結果に対処するための支援を行います。
小児が遺伝性の神経芽腫を患っていることが明らかになったら、他の家族もALKまたはPHOX2Bの変異に対するスクリーニングを受けることができます。
特定の遺伝子変異がある小児は、神経芽腫の徴候を調べる検査を受けるべきです。
特定の遺伝子変異を有する小児や遺伝性症候群の小児は、10歳になるまで時折、神経芽腫の徴候を調べる検査を受けるべきです。以下のような検査法が用いられます:
これらの検査をどのくらいの頻度で受ける必要があるかは、担当の医師にご確認ください。
神経芽腫の徴候や症状には、腹部、頸部、胸部のしこりや骨の痛みなどがあります。
神経芽腫で最もよくみられる徴候や症状には、増殖した腫瘍によって周囲の組織が圧迫されることで引き起こされるものや、がんが骨に転移することで引き起こされるものがあります。
お子さんに以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:
神経芽腫では、あまり多くはありませんが、以下のような徴候や症状もみられます:
これらに加え、別の徴候や症状が神経芽腫により引き起こされることがありますが、その他の病態によって生じることもあります。実態を把握する唯一の方法は、担当医の見解を聞くことです。担当医は、診断に向けた第一歩として、小児の症状がいつ始まったか、どのくらいの頻度で起きているかという質問をするでしょう。
神経芽腫を診断するために、体の様々な組織と体液を調べる検査が行われます。
小児に神経芽腫を示唆する症状がみられる場合、医師はその原因ががんなのか、それとも他の状態なのかを確認する必要があると考えます。それを調べるために、医師は保護者に小児の病歴や家族歴をたずね、身体診察を行います。
小児の症状や病歴、身体診察と神経学的検査の結果に基づいて、医師は小児に神経芽腫があるかどうかを調べる検査を受けるように勧め、もし神経芽腫があった場合は、加えてその程度(病期)を判定する検査も勧めることがあります。神経芽腫の診断に使用された検査と手技の結果は、治療に関する意思決定を行う際にも参照されます。
以下のような検査法や手技が用いられます:
- 尿中カテコールアミン検査:カテコールアミンが分解されて尿中に排泄されたバニリルマンデル酸(VMA)およびホモバニリン酸(HVA)という特定の物質の量を測定する検査法。VMAやHVAの量が正常より高くなることは、神経芽腫の徴候である可能性があります。
- 血液生化学検査:採取した血液を調べて、体内の臓器や組織から血液中に放出される特定の物質の濃度を測定する検査法。乳酸脱水素酵素(LDH)の値が正常より高くなることは、疾患の徴候である可能性があります。
- フェリチン濃度:採取した血液を調べて、フェリチン(細胞内に鉄を貯蔵する働きのある蛋白)の濃度を測定する検査法。正常より高い値は、疾患の徴候である可能性があります。
- MIBGスキャン:神経芽腫などの神経内分泌腫瘍を検出するために用いられる検査法。まずごく少量の放射性MIBGと呼ばれる物質を静脈内に注入し、血流に乗せて全身に巡らせます。神経内分泌腫瘍の細胞は、放射性MIBGを取り込むため、スキャナで検知されます。スキャンを実施するまでに、1~3日かかる場合があります。MIBGが甲状腺で大量に吸収されてしまわないように、検査前または検査中にヨウ素溶液が投与されることがあります。この検査は、治療に対する腫瘍の反応を調べる場合にも使用されます。神経芽腫の治療では、MIBGが高用量で使用されます。
- CTスキャン(CATスキャン):体内の領域を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法。この画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに造影剤を飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。詳しい情報については、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンとがん(英語)をご覧ください。
- ガドリニウムを使用するMRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、体内領域の精細な連続画像を作成する検査法。まずガドリニウムと呼ばれる物質を患者さんの静脈内に注射します。ガドリニウムにはがん細胞の周辺に集まる性質があるため、撮影された画像ではがん細胞が明るく映し出されます。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。
- PETスキャン(陽電子放射断層撮影):体内の悪性の腫瘍細胞を検出する検査法。まず放射性ブドウ糖の溶液を少量だけ静脈内に注射します。その後、周囲を回転しながら体の内部を調べていくPETスキャナという装置を用いて、ブドウ糖が消費されている体内の領域を示す画像を作成します。悪性腫瘍細胞は、正常な細胞よりも活発でブドウ糖をより多く取り込む性質があるため、画像ではより明るく映し出されます。この検査は通常、腫瘍がMIBGを取り込まない場合にのみ行われます。
- 胸部または骨のX線検査:X線は放射線の一種で、これを人の体を通してフィルム上に照射すると、そのフィルム上に体内領域の画像が映し出されます。
- 超音波検査:高エネルギーの音波(超音波)を内部の組織や臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。CTまたはMRIによる検査が済んでいる場合は、超音波検査は行われません。
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腫瘍生検:生検で細胞や組織を採取した後、病理医がそれらを顕微鏡で観察して、がんの徴候を調べます。生検の実施方法は、体内での腫瘍の位置により異なります。ときには、生検を実施すると同時に、腫瘍を全て切除することもあります。医師は腫瘍生検の結果を確認して、腫瘍に予後良好な特徴、もしくは予後不良な特徴がみられるかどうかを判定します。これらの特徴は、治療や生存に影響を及ぼすことがあります。
生後6ヵ月未満の乳児では、治療を行わなくても腫瘍が消失することがあるため、腫瘍を切除する生検や手術が不要な場合があります。
- 骨髄穿刺と骨髄生検:腰骨または胸骨に中空の針を挿入して、骨髄、血液、骨の小片などを採取する手技。採取された骨髄、血液、骨は、病理医によって顕微鏡で観察され、がんの徴候がないか調べられます。この検査は腫瘍の病期分類にも使用されます。
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リンパ節生検:リンパ節の全体または一部を切除する手技。採取されたリンパ節の組織は病理医が顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。この検査は腫瘍の診断や病期分類にも使用されます。実施される生検には以下のような種類があります:
- 摘出生検:リンパ節の全体を摘出する。
- 切除生検:リンパ節の一部を採取する。
- コア生検:太い針を用いてリンパ節から組織を採取する。
- 穿刺吸引生検(FNA生検):細い針を用いてリンパ節から組織または液体を採取する。
- 光学顕微鏡検査:組織サンプル中の細胞を通常の顕微鏡および高解像度顕微鏡で観察して、細胞に特定の変化がみられないかを調べる臨床検査。
- 免疫組織化学検査:抗体を利用して、患者さんから採取した組織のサンプルに含まれる特定の抗原(マーカー)を調べる臨床検査。使用される抗体には、通常、酵素や蛍光色素が結合されています。この抗体が組織サンプル内の特定の抗原に結合すると、酵素や色素が活性化し、顕微鏡で抗原を観察できるようになります。この種の検査はがんの診断に利用されるほか、各種のがんの違いを示すためにも用いられます。
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バイオマーカー検査:バイオマーカー検査は、がんについての情報を示す遺伝子や蛋白などの物質(バイオマーカーまたは腫瘍マーカー)を見つける検査法です。バイオマーカーは、がんの挙動を変化させたり治療の効果に影響を及ぼしたりすることがあります。医師はがんの治療法を選択する際に、バイオマーカー検査の結果を参考にします。
これらのバイオマーカーを調べる場合は、生検や手術中に神経芽腫細胞を含んだ組織のサンプルを採取し、検査室で検査を行います。
神経芽腫のバイオマーカー検査には、以下のようなものがあります:
- MYCN増幅検査:腫瘍や骨髄のサンプルに含まれる細胞を調べて、腫瘍DNA内のMYCN遺伝子のコピー数を明らかにする臨床検査。MYCNは細胞の成長に重要です。遺伝子コピー数が10を超える状態は、MYCN増幅と呼ばれます。MYCN増幅を伴う神経芽腫は、体内で拡がりやすく、急速に増殖することの多い腫瘍です。
- ALK:腫瘍細胞のALK遺伝子を調べて、変異または増幅(数を調べる)があるかどうかを確認することがあります。これらの変化はがん細胞の増殖を促す可能性があります。腫瘍組織のALK遺伝子に変化が認められた場合は、それを受けてがんの治療計画が変更されることもあります。
- 細胞遺伝学的分析:組織のサンプルに含まれる細胞を検査し、染色体の損傷や欠失、再構成、過剰などの変異を計測して調べる臨床検査。特定の染色体に認められる変化は、がんの徴候を示している可能性があります。細胞遺伝学的分析はがんの診断、治療計画、治療効果の判定に利用されます。
- ALKまたはPHOX2B遺伝子検査:血液または組織のサンプルを調べて、正常な細胞のALK遺伝子またはPHOX2B遺伝子に変化があるかどうかを確認する臨床検査。
セカンドオピニオンを受けるには。
保護者は小児の神経芽腫の診断や治療計画を確認するために、セカンドオピニオンを必要とすることがあります。セカンドオピニオンを求めるときは、最初の担当医に重要な医学的検査の結果と報告書を出してもらい、それを別の医師に見せる必要があります。2番目の医師は、病理報告、スライド、検査画像を確認して、推奨を行います。セカンドオピニオンを行う医師は、最初の医師に同意することもあれば、アプローチの修正や別のアプローチの提案をしてくれたり、お子さんのがんについてより多くの情報を提供してくれることがあります。
医師を選んでセカンドオピニオンを受けることについては、医療サービスを探す(英語)をご覧ください。セカンドオピニオンを提供できる医師や病院の情報については、NCIのCancer Information Serviceまで、チャット、電子メール、電話(英語とスペイン語に対応)でお問い合わせください。面会時に聞いておきたい質問内容については、がんについて主治医に尋ねる質問(英語)をご覧ください。
特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。
小児が神経芽腫の診断を受けた場合に、保護者はがんの深刻度や生存の確率について疑問を抱くことがあります。それ以降、がんがどうなっていくかの見通しは、予後と呼ばれます。
予後と治療選択肢を左右する因子には以下のものがあります:
神経芽腫の予後や治療選択肢は、以下のような腫瘍の組織型による影響も受けます:
- 腫瘍細胞の外観
- 正常細胞との相違の程度
- 腫瘍細胞の増殖のペース
腫瘍の組織型は、これらの要因を基準にして、生物学的に予後良好型と予後不良型に分類されます。予後良好型の小児は、回復する見込みが大きいと考えられます。
生後6ヵ月までの一部の乳児では、治療なしで神経芽腫が消失することがあります。これは自然退縮と呼ばれます。このような乳児では、神経芽腫の徴候や症状を注意深く観察していきます。徴候や症状が現れた場合は、治療が必要と考えられます。
- 神経芽腫の病期
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神経芽腫の診断がついた後には、発生部位から他の部位へのがんの拡がりの有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。
がんの存在範囲や拡がりの程度を調べていく過程は、病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。神経芽腫では、病期によって、がんが低リスク、中リスク、高リスクのいずれであるかが異なります。また、病期は治療計画にも影響を及ぼします。神経芽腫の診断に用いられた検査法や手技で得られた結果が、病期分類に利用されることもあります。これらの検査法や手技の説明については、一般的な情報のセクションをご覧ください。
国際神経芽腫リスクグループの病期分類システム(INRGSS)
L1期
L1期では、がんが1つの領域内にのみ存在し、画像で明らかにされたリスク因子は存在しません。画像で明らかにされたリスク因子(IDRF)とは、診断時のMRIまたはCTスキャンに認められる因子を指します。IDRFは、手術のリスクと完全に腫瘍を切除できる確率を見極めるための情報として利用されます。
L2期
L2期では、がんは1つの領域に存在し、周辺組織の外には拡がっておらず、1つ以上のIDRFが存在します。
M期
M期では、神経芽腫は遠く離れた領域に拡がっています。MS期に該当するものを除きます。
神経芽腫の治療法はリスク分類に基づいて決定されます。
多くの種類のがんでは、治療計画を立てる際には病期が参考にされます。しかし、神経芽腫では、患者さんが属するリスク群に応じて治療法が決定されます。リスク群は、以下の因子を考慮して判定されます:
リスク群は低リスク、中リスク、高リスクの3つに分けられます。
- 低リスクおよび中リスクの神経芽腫では治癒の可能性が高くなる。
- 高リスクの神経芽腫では、治癒が難しいことがある。
リスク分類の詳細については、神経芽腫の治療(専門家向けバージョン)の神経芽腫の改定国際反応基準(INRC)に関する記述のセクションをご覧ください。
- 治療選択肢の概要
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神経芽腫の患者さんには様々な治療法が存在します。
神経芽腫の小児と青年には、様々な治療法があります。保護者は小児のがん治療チームと協力して、治療法を決定します。小児の全体的な健康状態や、がんが新たに診断されたものかそれとも再発したものかなど、数多くの要因が検討されます。
神経芽腫の小児の治療では、小児がん(特に神経芽腫)の治療に精通した医師で構成されるチームによって治療計画が作成されるべきです。
小児がんの治療を専門とする小児腫瘍医が治療を監督します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とする他の小児医療提供者と協力しながら治療に取り組んでいきます。以下のような専門家が関与することがあります:
小児の治療計画には、がんについての情報、治療の目標、治療選択肢、起こりうる副作用などが含まれます。治療に先立って、保護者が小児のがん治療チームと今後の見通しを話し合うための資料になります。実際の進め方については、NCIのがんの小児:ご両親のための手引き(英語)というダウンロード可能な小冊子をご覧ください。
以下の治療法が用いられることがあります:
手術
他の部位に転移していない神経芽腫の治療では、手術が行われます。安全に手術できる範囲で、できるだけ多くの腫瘍を切除します。リンパ節も切除され、がんの徴候が調べられます。
がんの摘出が不可能な場合には、代わりに生検が実施されます。
詳しい情報については、手術によるがん治療(英語)をご覧ください。
化学療法
化学療法(ケモと呼ばれることもある)は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。
2種類以上の抗がん剤を使用するものは、併用化学療法と呼ばれます。
詳しい情報については、神経芽腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
より理解を深めるために、化学療法によるがん治療(英語)をご覧ください。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には2種類のものがあります:
詳しい情報については、放射線療法によるがん治療(英語)をご覧ください。
幹細胞救援を伴う大量化学療法と放射線療法
大量化学療法と放射線療法は、再増殖して再発を引き起こしうるがん細胞を死滅させるために行われます。このがん治療は造血細胞などの健康な細胞も破壊します。幹細胞救援は造血細胞を置き換える治療法です。まず患者さんから採取した血液や骨髄から幹細胞(成熟前の血液細胞)を取り出して、それを凍結保存しておきます。その後、患者さんの化学療法と放射線療法が終了したら、保存していた幹細胞を解凍し、点滴で患者さんの体内に戻します。こうして再注入された幹細胞が血液細胞に成長することにより、血液の機能が回復していきます。
ヨウ素131-MIBG療法
ヨウ素131-MIBG療法は放射性ヨウ素を用いる治療法です。放射性ヨウ素は、静脈内(IV)ラインを通して投与され、血流に入って、腫瘍細胞に放射線を直接届けます。放射性ヨウ素は、神経芽腫細胞に集まる性質があり、そこから照射される放射線により腫瘍細胞を殺傷します。ヨウ素131-MIBG療法は、最初の治療後に再発した高リスク神経芽腫の治療に用いられることがあります。
標的療法
標的療法では、薬物などの物質を使用して、がん細胞の増殖と転移に関連する酵素、蛋白、またはその他の分子の働きを阻害します。
- モノクローナル抗体療法:モノクローナル抗体は製造ラボで作られ、がんなどの様々な疾患に対する治療に用いられる免疫系蛋白です。がんの治療薬として、これらの抗体は、がん細胞や他の細胞上に存在してがん細胞の増殖に関与する特定の標的に結合する性質をもちます。これにより、抗体はがん細胞の死滅、増殖の阻止、転移の抑止などの効果を発揮できるようになります。モノクローナル抗体は点滴で投与されます。単独で使用されることもありますが、薬や毒素、放射性物質などをがん細胞に直接送り届けるという用途でも用いられます。
- ジヌツキシマブは、高リスク神経芽腫や治療後に再発した神経芽腫、または治療に反応しなかった神経芽腫の患者さんの治療に使用されます。
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チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)療法:この治療薬は腫瘍の増殖に必要な信号の伝達を阻害します。
- ロルラチニブは、腫瘍内のALK遺伝子に変化がある神経芽腫が新たに診断された患者さんの治療に化学療法と併用されます。
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ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬療法は、がん細胞の増殖と分裂を抑止する化学的変化を引き起こします。
- ボリノスタットは、治療後に再発したか、または治療に反応しなかった神経芽腫の治療薬として研究されています。
- オルニチン脱炭酸酵素阻害薬療法は、がん細胞の増殖と分裂を遅らせます。
- エフロルニチンは、治療後に再発したか、または治療に反応しなかった神経芽腫の治療で、化学療法と併用する薬物として研究されています。
詳しい情報については、標的療法によるがん治療(英語)をご覧ください。
その他の薬物療法
神経芽腫の治療に組み合わせて用いられる他の薬物には、以下のようなものがあります:
- イソトレチノイン:ビタミンに類似した薬で、がん細胞の増殖速度を鈍らせ、がん細胞の外観や挙動に変化をもたらします。この薬は、経口で服用します。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。
治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象に、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。患者さんによっては、臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
詳しい情報については、患者さんと介護者向けの臨床試験の情報(英語)をご覧ください。
免疫療法
免疫療法は、小児の免疫系ががんに対抗する働きを支援します。
- 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(CM-CSF):顆粒球やマクロファージといった、がん細胞を攻撃し殺傷することができる白血球の増産に関与するサイトカイン。またGM-CSFには、T細胞の数を増やして、がんに抵抗する免疫系の反応を強化する働きもあります。
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CAR T細胞療法:患者さんのT細胞(免疫系細胞の一種)を改変することで、がん細胞の表面に存在する特定の蛋白に対する攻撃性を持たせます。患者さんからT細胞を採取し、製造ラボでその表面に特殊な受容体を付加します。こうして改変した細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞と呼ばれます。製造ラボでCAR T細胞を増やし、点滴で患者さんに投与します。投与されたCAR T細胞は患者さんの血液内で増加し、がん細胞を攻撃します。
CAR T細胞療法は、治療後に再発したまたは治療に反応しなかった神経芽腫の治療薬として研究されています。
詳しい情報については T細胞移入療法(英語)をご覧ください。
神経芽腫の治療は副作用や晩期合併症(晩期障害)を引き起こすことがあります。
がんの治療中に発生する副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。
がんの治療の副作用のうち、治療後に始まり、何ヵ月または何年も続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:
晩期合併症(晩期障害)には治療や制御することが可能なものもあります。がんの治療によってお子さんに生じうる影響について担当医とよく相談することが重要です。詳しい情報については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。
- モノクローナル抗体療法:モノクローナル抗体は製造ラボで作られ、がんなどの様々な疾患に対する治療に用いられる免疫系蛋白です。がんの治療薬として、これらの抗体は、がん細胞や他の細胞上に存在してがん細胞の増殖に関与する特定の標的に結合する性質をもちます。これにより、抗体はがん細胞の死滅、増殖の阻止、転移の抑止などの効果を発揮できるようになります。モノクローナル抗体は点滴で投与されます。単独で使用されることもありますが、薬や毒素、放射性物質などをがん細胞に直接送り届けるという用途でも用いられます。
- 低リスク神経芽腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
新たに診断された低リスク神経芽腫の治療法には以下のようなものがあります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 中リスク神経芽腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
新たに診断された中リスク神経芽腫の治療法には以下のようなものがあります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 高リスク神経芽腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
高リスクの神経芽腫と新たに診断された小児は通常、寛解導入、地固め、維持という3段階の治療を受けます。
寛解導入段階で行われる治療には以下のようなものがあります:
地固め段階で行われる治療には以下のようなものがあります:
維持段階で行われる治療には以下のようなものがあります:
- モノクローナル抗体療法(ジヌツキシマブ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、イソトレチノイン。
研究中の治療法には以下のようなものがあります:
- ヨウ素131-MIBG療法または標的療法(ロルラチニブ)、またはその他の治療を行う臨床試験への参加。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- MS期神経芽腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
新たに診断されたMS期神経芽腫に対する標準治療はありませんが、以下の治療選択肢があります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 再発神経芽腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
再発前は低リスクの神経芽腫として治療を受けていた患者さん
がんが最初に発生した領域に再発した神経芽腫の治療法には以下のようなものがあります:
体内の他の部位に転移した、または治療に反応しなかった再発神経芽腫の治療法には以下のようなものがあります:
- 経過観察。
- 化学療法。
- 手術とその後の化学療法。
- 1歳以上の小児には、新たに診断された高リスクの神経芽腫と同様の治療。
再発前は中リスクの神経芽腫として治療を受けていた患者さん
がんが最初に発生した領域に再発した神経芽腫の治療法には以下のようなものがあります:
体内の他の部位に転移した再発神経芽腫の治療法には以下のようなものがあります:
- 1歳以上の小児には、新たに診断された高リスクの神経芽腫と同様の治療。
再発前は高リスクの神経芽腫として治療を受けていた患者さん
高リスク神経芽腫の初回治療を受けた患者さんの再発神経芽腫に対する標準治療は存在しません。治療法には以下のようなものがあります:
標準治療が存在しないため、高リスク神経芽腫に対する初回治療を受けた患者さんは臨床試験の検討が必要になる場合があります。臨床試験に関する情報については、NCIのウェブサイトをご覧ください。
進行性/再発神経芽腫に対する研究中の治療法
再発(再び現れた)または進行(増殖、転移、または治療に対する反応がみられない)を示す神経芽腫に対して臨床試験で研究されている治療法のいくつかを以下に示します:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 神経芽腫についてさらに学ぶために
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米国国立がん研究所が提供している神経芽腫に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
小児がんに関する情報と一般的ながんに関するその他の資源については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、神経芽腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Neuroblastoma Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/types/neuroblastoma/patient/neuroblastoma-treatment-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389278]
本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。
免責事項
PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。
お問い合わせ
Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。