ご利用について
医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、胆嚢がんの治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Adult Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
CONTENTS
- 胆嚢がんに関する一般情報
-
発生率および死亡率
米国において、2020年に推定される胆嚢(および他の胆管)がんの新規症例数および死亡数:[ 1 ]
胆嚢に発生するがんはまれである。
臨床的特徴
胆嚢がんが原因の最もよくみられる症状は、黄疸、疼痛および発熱である。
病理組織学と診断学
別の理由による胆嚢摘出術後の組織の病理学的検査で表在がん(T1または粘膜に限局)が発見された患者では、しばしば継続療法を伴わずに治癒する。症状が認められる患者において、術前に腫瘍が診断されることはまれである。[ 2 ]このような症例では、しばしば手術によって腫瘍を完全には摘出することができず治癒をみないが、これらの患者には症状緩和措置が有益であろう。T2またはより進行した病変を有する患者については、部分肝切除および門脈リンパ節郭清術を伴う拡大切除が1つの選択肢になりうる。[ 3 ][ 4 ]
その他の予後因子
胆石症は症例の大半に関連する所見であるが、胆石症患者に胆嚢がんを合併するのは1%未満である。
参考文献- American Cancer Society: Cancer Facts and Figures 2020. Atlanta, Ga: American Cancer Society, 2020. Available online. Last accessed May 12, 2020.[PUBMED Abstract]
- Chao TC, Greager JA: Primary carcinoma of the gallbladder. J Surg Oncol 46 (4): 215-21, 1991.[PUBMED Abstract]
- Shoup M, Fong Y: Surgical indications and extent of resection in gallbladder cancer. Surg Oncol Clin N Am 11 (4): 985-94, 2002.[PUBMED Abstract]
- Sasson AR, Hoffman JP, Ross E, et al.: Trimodality therapy for advanced gallbladder cancer. Am Surg 67 (3): 277-83; discussion 284, 2001.[PUBMED Abstract]
- 胆嚢がんの細胞分類
-
胆嚢がんには予後良好な組織型があり、乳頭がんの予後はきわめて良好である。胆嚢がんの組織型には、以下のものがある:[ 1 ]
参考文献- Gallbladder. In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual. 8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 303–9.[PUBMED Abstract]
- 胆嚢がんの病期情報
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AJCC病期分類とTNMの定義
米国がん合同委員会(AJCC)は、胆嚢がんを定義するためにTNM分類による病期判定を指定している。[ 1 ]
表1.TNM分類における0期の定義a 病期 TNM 説明 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 a AJCCから許諾を得て転載:Gallbladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 303-9. 0 Tis、N0、M0 Tis = 上皮内がん。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表2.TNM分類におけるI期の定義a 病期 TNM 説明 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 a AJCCから許諾を得て転載:Gallbladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 303-9. I T1、N0、M0 T1 = 粘膜固有層または筋層への浸潤を認める腫瘍。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表3.TNM分類におけるIIA期の定義a 病期 TNM 説明 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 a AJCCから許諾を得て転載:Gallbladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 303-9. IIA T2a、N0、M0 T2a = 腹膜側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、漿膜(臓側腹膜)への転移は認めない。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表4.TNM分類におけるIIB期の定義a 病期 TNM 説明 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 a AJCCから許諾を得て転載:Gallbladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 303-9. IIB T2b、N0、M0 T2b = 肝側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、肝臓への進展は認めない。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表5.TNM分類におけるIIIA期の定義a 病期 TNM 説明 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 a AJCCから許諾を得て転載:Gallbladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 303-9. IIIA T3、N0、M0 T3 = 漿膜(臓側腹膜)を貫通した腫瘍、および/または、肝臓および/またはそれ以外の胃、十二指腸、結腸、膵臓、網、または肝外胆管などの1つの隣接臓器または組織に直接浸潤する腫瘍。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表6.TNM分類におけるIIIB期の定義a 病期 TNM 説明 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 a AJCCから許諾を得て転載:Gallbladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 303-9. IIIB T1-3、N1、M0 T1 = 粘膜固有層または筋層への浸潤を認める腫瘍。 -T1a = 粘膜固有層への浸潤を認める腫瘍。 -T1b = 筋層への浸潤を認める腫瘍。 T2 = 腹膜側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、漿膜(臓側腹膜)への転移は認めない。または、肝側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、肝臓への進展は認めない。 -T2a = 腹膜側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、漿膜(臓側腹膜)への転移は認めない。 -T2b = 肝側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、肝臓への進展は認めない。 T3 = 漿膜(臓側腹膜)を貫通した腫瘍、および/または、肝臓および/またはそれ以外の胃、十二指腸、結腸、膵臓、網、または肝外胆管などの1つの隣接臓器または組織に直接浸潤する腫瘍。 N1 = 1~3つの所属リンパ節に転移を認める。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表7.TNM分類におけるIVA期の定義a 病期 TNM 説明 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 a AJCCから許諾を得て転載:Gallbladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 303-9. IVA T4、N0-1、M0 T4 = 主門脈または肝動脈に浸潤、または2つ以上の肝外臓器または組織に浸潤する腫瘍。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 N1 = 1~3つの所属リンパ節に転移を認める。 M0 = 遠隔転移を認めない。 表8.TNM分類におけるIVB期の定義a 病期 TNM 説明 T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節;M = 遠隔転移。 a AJCCから許諾を得て転載:Gallbladder.In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual.8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 303-9. IVB すべての T, N2, M0 TX = 原発腫瘍の評価が不可能。 T0 = 原発腫瘍を認めない。 Tis = 上皮内がん。 T1 = 粘膜固有層または筋層への浸潤を認める腫瘍。 -T1a = 粘膜固有層への浸潤を認める腫瘍。 -T1b = 筋層への浸潤を認める腫瘍。 T2 = 腹膜側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、漿膜(臓側腹膜)への転移は認めない。または、肝側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、肝臓への進展は認めない。 -T2a = 腹膜側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、漿膜(臓側腹膜)への転移は認めない。 -T2b = 肝側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、肝臓への進展は認めない。 T3 = 漿膜(臓側腹膜)を貫通した腫瘍、および/または、肝臓および/またはそれ以外の胃、十二指腸、結腸、膵臓、網、または肝外胆管などの1つの隣接臓器または組織に直接浸潤する腫瘍。 T4 = 主門脈または肝動脈に浸潤、または2つ以上の肝外臓器または組織に浸潤する腫瘍。 N2 = 4つ以上の所属リンパ節に転移を認める。 M0 = 遠隔転移を認めない。 すべてのT、すべてのN、M1 TX = 原発腫瘍の評価が不可能。 T0 = 原発腫瘍を認めない。 Tis = 上皮内がん。 T1 = 粘膜固有層または筋層への浸潤を認める腫瘍。 -T1a = 粘膜固有層への浸潤を認める腫瘍。 -T1b = 筋層への浸潤を認める腫瘍。 T2 = 腹膜側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、漿膜(臓側腹膜)への転移は認めない。または、肝側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、肝臓への進展は認めない。 -T2a = 腹膜側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、漿膜(臓側腹膜)への転移は認めない。 -T2b = 肝側の筋層周囲結合組織への浸潤を認める腫瘍で、肝臓への進展は認めない。 T3 = 漿膜(臓側腹膜)を貫通した腫瘍、および/または、肝臓および/またはそれ以外の胃、十二指腸、結腸、膵臓、網、または肝外胆管などの1つの隣接臓器または組織に直接浸潤する腫瘍。 T4 = 主門脈または肝動脈に浸潤、または2つ以上の肝外臓器または組織に浸潤する腫瘍。 NX = 所属リンパ節の評価が不可能。 N0 = 所属リンパ節に転移を認めない。 N1 = 1~3つの所属リンパ節に転移を認める。 N2 = 4つ以上の所属リンパ節に転移を認める。 M1 = 遠隔転移を認める。 限局性および局所進行疾患
I期疾患を有する患者は、完全に切除可能な胆嚢壁に限局したがんを有する。ルーチンの胆嚢切除術中に偶然見つかり、切除されるI期腫瘍の5年生存率はほぼ100%である。[ 2 ]
II期またはIII期疾患を有する患者は、筋層、漿膜、または隣接臓器への直接浸潤を認める腫瘍を有し、局所領域リンパ節への転移を伴う場合も伴わない場合もある。
切除不能疾患
局所領域リンパ節を越えるか、遠隔臓器に転移した病変を有する患者の腫瘍は切除不能であり、標準治療は症状緩和に向けられる。比較的早期腫瘍であるものの、パフォーマンスステータスが不良および/または重篤な併存症を有する患者もまた、外科手術の対象とはみなされない。
参考文献- Gallbladder. In: Amin MB, Edge SB, Greene FL, et al., eds.: AJCC Cancer Staging Manual. 8th ed. New York, NY: Springer, 2017, pp 303–9.[PUBMED Abstract]
- Shirai Y, Yoshida K, Tsukada K, et al.: Inapparent carcinoma of the gallbladder. An appraisal of a radical second operation after simple cholecystectomy. Ann Surg 215 (4): 326-31, 1992.[PUBMED Abstract]
- 限局性および局所進行胆嚢がんの治療
-
それまでに胆嚢がんが疑われず、病理学的検査で胆嚢粘膜にがんが偶然発見された場合は、80%以上の症例が根治可能である。しかし、症状を認めるため術前から疑われていた胆嚢がんは通常、筋層および漿膜を越え、根治する患者は5%未満である。
ある研究では、1981年から1995年にかけて、単一施設内の連続した手術患者111人において、胆嚢がんのリンパ節転移のパターンおよびリンパ節転移を認める患者の治療成績が報告された。[ 1 ][証拠レベル:3iiiA]標準とされた術式は、胆嚢摘出術、肝楔状切除術、肝外胆管切除術、および所属リンパ節(N1およびN2)切除であった。Kaplan-Meier法により推定した病理学的病期がT2~T4期腫瘍の5年生存率は、リンパ節陰性腫瘍で42.5%±6.5%、リンパ節陽性腫瘍で31%±6.2%であった。
限局性および局所進行胆嚢がんに対する標準治療法の選択肢
限局性および局所進行胆嚢がんに対する標準治療法の選択肢には、以下のものがある:
- 外科的手術:それまでに胆嚢がんの疑いがなく、ルーチンの胆嚢手術後の手術標本に発見され粘膜に限局する胆嚢がん(T1)では、大多数の患者が治癒する。[
2
][
3
]腹腔鏡下の予想しなかったがんの摘出中は、全ポート部位(内視鏡挿入部を含む)でのがんの組織移植の恐れがある。[
4
]一般的にI期のがんでも、すべてのポート部位が完全切除される。
偶然発見されたT1b病変においてより広範な切除のための再検査の必要性については、見解が一致していない。1件の多施設レトロスペクティブ・レビューで、胆嚢切除後に再切除を受けた患者の12%にリンパ節転移が確認されたが、こうした患者における2回目の手術に関連する転帰についてプロスペクティブなデータは得られていない。[ 5 ][証拠レベル:3iiiD]
T2またはT3病変を有する患者は、診断時に予想外の浸潤性病変が見られる割合が高い。がんが偶然発見された後、再切除を受けた患者について、多施設レトロスペクティブ・レビューが実施された。T2病変を有した患者の57%(リンパ節転移を認めた31%および肝転移を来した10%を含む)およびT3病変を有する患者の77%(リンパ節転移を認めた46%および肝転移を来した36%を含む)で残存腫瘍が認められた。[ 5 ]これらの観察に基づいて、適格患者は胆嚢床、門脈リンパ節、肝十二指腸間膜のリンパ組織に近い肝組織を切除するために再検査を受けてもよい。複数のレトロスペクティブ解析で、広範な再切除により再発が遅くなり、生存が改善する可能性が示唆されている。[ 6 ][ 7 ][ 8 ][証拠レベル:3iiiD]
(胆嚢管、総胆管、肝動脈、および門脈において)局所領域リンパ節転移が認められる患者では、根治的切除によって長期無病生存がときに達成できる。黄疸を呈する患者(III期またはIV期)には、胆道閉塞軽減のため、術前の経皮経肝胆道ドレナージを検討すべきである。
局所領域リンパ節を越えるか、遠隔臓器への転移性の拡がりが認められる患者では、治癒目的の手術が可能であるとは考えられていない。
- 外照射療法(EBRT):初回治療として化学療法を併用するまたは併用しない外照射療法の使用は、少数の患者グループで短期間の制御が得られると報告されている。切除後に化学療法を併用するまたは併用しない放射線療法も同様の恩恵が報告されている。[
9
][
10
]
高リスクの限局性病変を有する患者であっても、補助放射線療法の使用を支持する第III相研究は存在しない。
限局性および局所進行胆嚢がんに対して臨床評価段階にある治療法の選択肢
限局性および局所進行胆嚢がんに対して臨床評価段階にある治療法の選択肢には、以下のものがある:
最新の臨床試験
NCIが支援しているがん臨床試験で現在患者登録中の試験を検索するには、臨床試験アドバンスト・サーチを使用のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。)。このサーチでは、試験の場所、治療の種類、薬物名やその他の基準による絞り込みが可能である。臨床試験に関する一般情報も入手することができる。
参考文献- Tsukada K, Kurosaki I, Uchida K, et al.: Lymph node spread from carcinoma of the gallbladder. Cancer 80 (4): 661-7, 1997.[PUBMED Abstract]
- Fong Y, Brennan MF, Turnbull A, et al.: Gallbladder cancer discovered during laparoscopic surgery. Potential for iatrogenic tumor dissemination. Arch Surg 128 (9): 1054-6, 1993.[PUBMED Abstract]
- Chijiiwa K, Tanaka M: Carcinoma of the gallbladder: an appraisal of surgical resection. Surgery 115 (6): 751-6, 1994.[PUBMED Abstract]
- Wibbenmeyer LA, Wade TP, Chen RC, et al.: Laparoscopic cholecystectomy can disseminate in situ carcinoma of the gallbladder. J Am Coll Surg 181 (6): 504-10, 1995.[PUBMED Abstract]
- Pawlik TM, Gleisner AL, Vigano L, et al.: Incidence of finding residual disease for incidental gallbladder carcinoma: implications for re-resection. J Gastrointest Surg 11 (11): 1478-86; discussion 1486-7, 2007.[PUBMED Abstract]
- Shirai Y, Yoshida K, Tsukada K, et al.: Inapparent carcinoma of the gallbladder. An appraisal of a radical second operation after simple cholecystectomy. Ann Surg 215 (4): 326-31, 1992.[PUBMED Abstract]
- Yamaguchi K, Chijiiwa K, Saiki S, et al.: Retrospective analysis of 70 operations for gallbladder carcinoma. Br J Surg 84 (2): 200-4, 1997.[PUBMED Abstract]
- Downing SR, Cadogan KA, Ortega G, et al.: Early-stage gallbladder cancer in the Surveillance, Epidemiology, and End Results database: effect of extended surgical resection. Arch Surg 146 (6): 734-8, 2011.[PUBMED Abstract]
- Smoron GL: Radiation therapy of carcinoma of gallbladder and biliary tract. Cancer 40 (4): 1422-4, 1977.[PUBMED Abstract]
- Hejna M, Pruckmayer M, Raderer M: The role of chemotherapy and radiation in the management of biliary cancer: a review of the literature. Eur J Cancer 34 (7): 977-86, 1998.[PUBMED Abstract]
- 外科的手術:それまでに胆嚢がんの疑いがなく、ルーチンの胆嚢手術後の手術標本に発見され粘膜に限局する胆嚢がん(T1)では、大多数の患者が治癒する。[
2
][
3
]腹腔鏡下の予想しなかったがんの摘出中は、全ポート部位(内視鏡挿入部を含む)でのがんの組織移植の恐れがある。[
4
]一般的にI期のがんでも、すべてのポート部位が完全切除される。
- 切除不能、転移性、または再発胆嚢がんの治療
-
切除不能、転移性、および再発胆嚢がんは根治不可能である。胆道閉塞の軽減により、しばしば有意な症状軽減効果が得られる。少数の患者は腫瘍の成長がきわめて遅く、数年間生存しうる。切除不能、転移性、または再発胆嚢がん患者は、可能な限り臨床試験への組み入れを検討されるべきである。現在実施中の臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトから入手することができる。
切除不能、転移性、または再発胆嚢がんに対する治療法の選択肢
切除不能、転移性、または再発胆嚢がんに対する治療法の選択肢には、以下のものがある:
- そう痒感、肝機能障害などの症状ががんの他の症状よりも重い場合には、胆道閉塞の軽減が支持される。好ましいアプローチは経皮経肝ドレナージまたは内視鏡的ステント留置である[
1
];これらのアプローチが不可能な場合には外科的バイパス術が適切である。
胆道ドレナージ後は症状緩和目的の放射線療法が有益な場合があり、患者は、温熱療法、放射線増感剤、または細胞毒性を有する化学療法薬など、さまざまな放射線増感剤を用いて放射線療法の効果の改善する方法を探る臨床試験への組み入れの候補となりうる。
- パフォーマンスステータスが良好で臓器機能が損なわれていない一部の患者には、全身化学療法が適切である。フルオロピリミジン、ゲムシタビン、プラチナ製剤、およびドセタキセルは、少数の患者において一過性の部分寛解をもたらすことが報告されている。胆嚢がんの発生率は低く、臨床試験にはしばしば胆道がんのすべての亜部位の患者が登録される。そのため、胆嚢がん患者に限定して適用する場合、データの解釈には注意が必要である。(詳しい情報については、胆管がんの治療に関するPDQ要約を参照のこと。)
1件の第III相研究では、切除不能、転移性、または再発胆道がん患者410人が、最長6ヵ月のゲムシタビン vs ゲムシタビンおよびシスプラチンを受ける群にランダムに割り付けられた。[ 2 ]
切除不能胆嚢がん患者を対象にした3群の第III相ランダム化研究では、最適な支持療法(n = 27)、フルオロウラシル + フォリン酸(FUFA)、週1回、30週間(n = 28)、および修正ゲムシタビン + オキサリプラチン(mGEMOX)、21日を1サイクルとして最大6サイクルが比較された。[ 3 ][証拠レベル:1iiA]
1件の第III相非劣性研究(NCT01470443)では、原発性胆嚢がんの30人(26%)を含む転移性胆道がん患者114人が登録された。患者は、カペシタビン + オキサリプラチン(XELOX)またはゲムシタビン + オキサリプラチン(GEMOX)を受ける群にランダムに割り付けられた。[ 4 ][証拠レベル:1iiD]
さらなる臨床試験が待たれており、シスプラチン + ゲムシタビンは、切除不能、転移性、または再発胆嚢がん患者に対する参照基準と考えられている。潜在的な代替療法としては、ゲムシタビン + カペシタビン、GEMOX、XELOXなどが挙げられる。すべての患者で臨床試験を検討すべきである。
切除不能、転移性、または再発胆嚢がん患者はすべて、ミスマッチ修復欠損(dMMR)またはマイクロサテライト不安定性-高(MSI-H)について分子検査を受けるべきである。I-PREDICT(NCT02534675)およびKEYNOTE-158(NCT02628067)研究における消化管腫瘍および肝胆膵腫瘍を有する患者のサブグループから外挿して、dMMRまたはMSI-Hのいずれかが認められる腫瘍を有する患者は、ペムブロリズマブによる治療を検討できる。[ 5 ][ 6 ][証拠レベル:3iiiDiv]
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)変異、および線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)融合に対する追加の検査により、臨床試験で潜在的な標的が提供される可能性がある。
最新の臨床試験
NCIが支援しているがん臨床試験で現在患者登録中の試験を検索するには、臨床試験アドバンスト・サーチを使用のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。)。このサーチでは、試験の場所、治療の種類、薬物名やその他の基準による絞り込みが可能である。臨床試験に関する一般情報も入手することができる。
参考文献- Baron TH: Expandable metal stents for the treatment of cancerous obstruction of the gastrointestinal tract. N Engl J Med 344 (22): 1681-7, 2001.[PUBMED Abstract]
- Valle J, Wasan H, Palmer DH, et al.: Cisplatin plus gemcitabine versus gemcitabine for biliary tract cancer. N Engl J Med 362 (14): 1273-81, 2010.[PUBMED Abstract]
- Sharma A, Dwary AD, Mohanti BK, et al.: Best supportive care compared with chemotherapy for unresectable gall bladder cancer: a randomized controlled study. J Clin Oncol 28 (30): 4581-6, 2010.[PUBMED Abstract]
- Kim ST, Kang JH, Lee J, et al.: Capecitabine plus oxaliplatin versus gemcitabine plus oxaliplatin as first-line therapy for advanced biliary tract cancers: a multicenter, open-label, randomized, phase III, noninferiority trial. Ann Oncol 30 (5): 788-795, 2019.[PUBMED Abstract]
- Sicklick JK, Kato S, Okamura R, et al.: Molecular profiling of cancer patients enables personalized combination therapy: the I-PREDICT study. Nat Med 25 (5): 744-750, 2019.[PUBMED Abstract]
- Marabelle A, Le DT, Ascierto PA, et al.: Efficacy of Pembrolizumab in Patients With Noncolorectal High Microsatellite Instability/Mismatch Repair-Deficient Cancer: Results From the Phase II KEYNOTE-158 Study. J Clin Oncol 38 (1): 1-10, 2020.[PUBMED Abstract]
- そう痒感、肝機能障害などの症状ががんの他の症状よりも重い場合には、胆道閉塞の軽減が支持される。好ましいアプローチは経皮経肝ドレナージまたは内視鏡的ステント留置である[
1
];これらのアプローチが不可能な場合には外科的バイパス術が適切である。
- 本要約の変更点(03/25/2020)
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PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。
本要約は包括的に見直され、広範囲にわたって改訂された。
本要約はPDQ Adult Treatment Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。
- 本PDQ要約について
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本要約の目的
医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、胆嚢がんの治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
査読者および更新情報
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Adult Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:
要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。
本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。
証拠レベル
本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Adult Treatment Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。
本要約の使用許可
PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。
本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Gallbladder Cancer Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/gallbladder/hp/gallbladder-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389371]
本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。
免責条項
入手可能な証拠の強さに基づき、治療選択肢は「標準」または「臨床評価段階にある」のいずれかで記載される場合がある。これらの分類は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。
お問い合わせ
Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。