患者さん向け 卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんの予防(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんの予防に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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予防とは

がん予防とは、がんになる可能性を減らすためにとる対策です。がんを予防することで、集団または人口におけるがんの新規症例の数が減少します。うまくいけば、それにより、がんによる死亡者の数を減らすことができます。

新たながんの発生を予防するため、科学者リスク因子防御因子に注目します。がん発生の可能性を高めるものは全てがんのリスク因子と呼ばれ、がん発生の可能性を低減させるものは全てがんの防御因子と呼ばれます。

がんのリスク因子には回避できるものもありますが、回避できないものも数多くあります。例えば、喫煙の習慣と特定の遺伝子をもっていることは、どちらもある種のがんのリスク因子ですが、避けることができるのは喫煙だけです。普段から運動や健康的な食事を心がけることは、いくつかの種類のがんに対する防御因子となります。リスク因子を避けて防御因子を増やすことはリスクの低減につながりますが、それでがんに罹らなくなるということではありません。

現在、以下のような様々ながんの予防法が研究されています:

卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんについての一般的な情報

卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんは、卵巣や卵管、または腹膜に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

卵巣は女性の生殖系に属する左右一対の臓器です。この臓器は骨盤の内部にあり、子宮胎児の成長の場となる、洋ナシのような形をした中空の臓器)の左右に1つずつ存在しています。卵巣の大きさはアーモンドと同じくらいで、その形状も似ています。卵巣は卵子の生産と女性ホルモン(体内で特定の細胞や臓器の機能を制御する化学物質)の分泌を行っています。

卵管は子宮の左右両側に1本ずつ存在する、1対の細長い管です。卵巣から出た卵子は、卵管を通って子宮に移動します。がんが卵管の卵巣側の終端部で発生し、卵巣に拡がることもあります。

腹膜は、壁の内側と腹部の臓器表面を覆う組織です。原発性腹膜がんは腹膜にできるがんで、他の部位から転移してきたものではありません。がんは腹膜で発生した後、卵巣に拡がることがあります。

女性生殖系の解剖図:図は、子宮、子宮筋層(子宮の外側の筋層)、子宮内膜(子宮内腔を覆う膜)、卵巣、卵管、子宮頸部、膣を示している。

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女性生殖系の解剖図。女性生殖系の臓器には、子宮、卵巣、卵管、子宮頸部、膣などが含まれます。子宮には、子宮筋層と呼ばれる筋肉の外層と子宮内膜と呼ばれる内膜があります。

卵巣がんは、女性生殖系のがんに限れば第1位の死亡原因です。

卵巣がん閉経後の女性に最も多くみられます。1980年代中頃~2017年にかけて、卵巣がんの新規症例数は毎年わずかに減少しています。また、2009年から2018年にかけて卵巣がんによる死亡者数も毎年わずかに減少しました。

卵巣がんの家族歴がある、または遺伝によってBRCA1BRCA2といった特定の遺伝子変異を受け継いでいる女性、あるいはその両方に該当する女性は、家族歴やそうした遺伝子変異のない女性よりもリスクが高くなります。遺伝的リスクが高い女性の場合は、遺伝カウンセリング遺伝子検査を実施して、卵巣がんの発生する可能性を詳しく調べることができます。

卵巣がんを早期に発見することは困難です。早期の卵巣がんでは、徴候や症状が全く現れてこない場合があります。そのため卵巣がんでは、症状が出現する頃にはすでに進行していることも少なくありません。

卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんに関する詳しい情報については、以下のPDQの要約をご覧ください:

卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんの予防

リスク因子を回避することと防御因子を増やすことは、がんの予防につながる可能性があります。

がんリスク因子を避けることは、特定のがんの予防につながる可能性があります。リスク因子には、喫煙や過体重、運動不足などがあります。一方で禁煙や運動などの防御因子を高めることも、がん予防に役立ちます。がんのリスクを低減させる方法については、担当の医師か他の医療専門家にご相談ください。

以下のリスク因子は卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんのリスクを高める可能性があります:

卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんの家族歴

母親または姉妹が卵巣がんにかかったことのある女性は、卵巣がんの発生リスクが高くなります。卵巣がんにかかったことのある近親者が2人以上いる女性でも、卵巣がんの発生リスクが高くなります。

遺伝性のリスク

BRCA1BRCA2などの遺伝子の突然変異を遺伝により受け継いだ女性では、卵巣がんのリスクが高くなります。

卵巣がんのリスクは、以下の遺伝性症候群を患っている女性でも高くなります:

ホルモン補充療法

閉経期ホルモン補充療法(HRT)を受けている女性は、卵巣がんのリスクがわずかに高くなります。また最近HRTを受けていた女性は、その期間が5年未満でも、卵巣がんのリスクが高まります。エストロゲンのみを使用するHRTでもエストロゲンとプロゲスチンを併用するHRTでも、卵巣がんのリスクは同等です。HRTを中止すると、時間とともに卵巣がんのリスクは低下していきます。HRTを受けている女性の年齢は、卵巣がんのリスクに影響しません。

体重と身長

過体重または肥満の人は、卵巣がんのリスクが高くなります。肥満であると、卵巣がんによる死亡リスクも高くなります。高身長であることも、卵巣がんのリスクをわずかに高めます。

子宮内膜症

子宮内膜症の女性は卵巣がんのリスクが高くなります。

卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんの防御因子には、以下のものがあります:

経口避妊薬

経口避妊薬(「ピル」)を使用すると、卵巣がんのリスクが低下します。経口避妊薬の使用期間が長いほどリスクの低下幅も大きくなるようです。このリスクの低下は、女性が経口避妊薬の使用をやめた後も最長で30年間維持されます。

経口避妊薬を服用すると、血栓のリスクが高くなります。このリスクは喫煙習慣のある女性ではさらに高くなります。

卵管結紮術

卵管結紮術(両方の卵管を閉じる手術)を受けた女性では、卵巣がんのリスクが低くなります。

出産

出産を経験した女性は、未経験の女性よりも卵巣がんのリスクが低くなります。複数回の出産を経験すると、さらに卵巣がんのリスクは低下します。

卵管切除術

複数の研究で、卵管切除術(片方または両方の卵管を切除する手術)は卵巣がんのリスク低下に関連していることが示されました。両方の卵管を切除すると、卵巣がんのリスクは片方の卵管を切除した場合より低くなります。

授乳

授乳は、卵巣がんのリスク低下に関係しています。授乳期間が長くなるほど、卵巣がんのリスクは下がります。授乳期間が8~10ヵ月を超える女性は、卵巣がんのリスクが大幅に低下します。

リスク低減のための卵管卵巣摘除術

卵巣がんのリスクが高い女性のなかには、リスクを低減する卵管卵巣摘除術(がんの徴候がない時点で卵管と卵巣を摘出する手術)を受けることを選択する人もいます。これには、BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子の特定の変異を遺伝により受け継いだ女性や遺伝性症候群を患っている女性などが含まれます。(詳しい情報については、PDQ乳がんおよび婦人科がんの遺伝学に関する医療専門家向け要約のリスク低減のための卵管卵巣摘除術(RRSO)のセクションをご覧ください。)

こうした決断をする前に、がんに関するリスク評価とカウンセリングを受けることが非常に重要です。以下のような要素について話し合いが行われます:

以下の要因が卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんのリスクに影響するかどうかは明らかになっていません:

食事

食事要因の研究では、卵巣がんとの強い関連は見られませんでした。

アルコール

アルコール摂取と卵巣がんリスクとの関連は、研究で証明されていません。

アスピリンと非ステロイド性抗炎症薬

いくつかの研究では、アスピリン非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が卵巣がんのリスクを低下させることが示されましたが、別のいくつかの研究ではその効果はみられませんでした。

タルク

複数の研究で、タルカムパウダー(タルク)を会陰肛門の間の領域)にはたいて使っていた女性について、卵巣がんのリスクが高いことを示す明確な証拠は見つかりませんでした。

不妊治療

いくつかの研究を総合的にみて、排卵誘発剤を使用している女性の卵巣がんリスクが高いことを示す明確な証拠は見つかっていません。また、排卵誘発剤の使用後に妊娠しない女性は、浸潤性卵巣がんのリスクが高い可能性があります。

がんの予防法の研究では、がん予防臨床試験が実施されます。

特定のがんの発生リスクを低下させる方法を研究するには、がん予防臨床試験が実施されます。がん予防臨床試験には、がんにかかってはいないものの、がんのリスクが高い人々を対象として行われるものもあります。また、すでにがんにかかっていて、同種のがんのさらなる発生を予防しようとしている人々や、別の種類のがんが発生する可能性を小さくしようとしている人々を対象とした予防試験もあります。その他にも、がんのリスク因子をもっていることが判明していない健康なボランティアを対象とした試験もあります。

一部のがん予防の臨床試験の目的は、何らかの行動によってがんを予防できるかどうかを検証することです。具体的には、果実や野菜を食べる、運動をする、喫煙をやめる、特定のビタミンミネラル栄養補助食品を摂取する、などが挙げられます。

現在、卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんの新たな予防法が臨床試験で検証されています。

NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんの予防に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Screening and Prevention Editorial Board.PDQ Ovarian, Fallopian Tube, and Primary Peritoneal Cancer Prevention.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/ovarian/patient/ovarian-prevention-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389375]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

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Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。