ご利用について
このPDQがん情報要約では、膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)の一般情報
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膵神経内分泌腫瘍は、膵臓のホルモンを生産する細胞(膵島細胞)に発生します。
膵臓は全長約15cm(約6インチ)の腺で、細長い洋ナシを横にしたような形をしています。幅の広い方の端は膵頭部、中央部は膵体部、幅の狭い方の端は膵尾部と呼ばれます。膵臓は胃の後方、脊椎の前方に位置しています。
膵臓には次の2種類の細胞があります:
本要約では、膵臓内分泌部にできる膵島細胞腫瘍に関する情報を取り上げます。膵臓外分泌系がんに関する情報については、PDQの膵がんの治療に関する要約をご覧ください。
膵神経内分泌腫瘍(NET)は良性(がんではありません)の場合も、悪性(がん)の場合もあります。悪性の膵NETは、膵内分泌がんまたは膵島細胞がんと呼ばれます。
膵NETは、膵外分泌腫瘍に比べるとはるかに発生数が少なく、予後は良好です。
機能性膵NETには様々な種類があります。
膵NETは、ガストリン、インスリン、グルカゴンなど、様々な種類のホルモンを生産します。機能性の膵NETには以下のものがあります:
特定の症候群を患うと、膵NETの発生リスクが増大します。
疾患が発生する危険性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。
多発性内分泌腫瘍1型(MEN1)症候群は膵NETのリスク因子です。
膵NETの種類によって、様々な徴候や症状が見られます。
徴候や症状は、腫瘍の増殖によって発生することや、腫瘍または他の病態によって分泌されるホルモンが原因で生じることがあります。腫瘍の中には、徴候や症状を引き起こさないものもあります。これらの問題が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください。
非機能性膵NETの徴候と症状
非機能性膵NETは、徴候や症状を引き起こさずに長期間にわたって増殖する場合があります。大きく増殖したり、体内の他の部位に転移した後で、以下のような徴候や症状が現れることもあります:
- 下痢。
- 消化不良。
- 腹部のしこり。
- 腹部または背部の痛み。
- 皮膚や白目が黄色くなる。
機能性膵NETの徴候と症状
機能性膵NETの徴候や症状は、生産されるホルモンの種類によって異なります。
ガストリンの過剰により生じる症状:
インスリンの過剰により生じる症状:
- 低血糖。目のかすみ、頭痛、頭のふらつき、疲労感、衰弱、震え、神経質、過敏、発汗、混乱、空腹感などを引き起こす。
- 速脈。
グルカゴンの過剰により生じる症状:
血管作動性腸管ペプチド(VIP)の過剰により生じる症状:
ソマトスタチンの過剰により生じる症状:
膵NETは過剰な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を分泌し、クッシング症候群を引き起こすこともあります。クッシング症候群の徴候と症状には以下のものがあります:
ACTHを過剰分泌する膵NETとクッシング症候群の治療法については、本要約では扱われていません。
膵NETの診断には、臨床検査と画像検査が用いられます。
以下のような検査法や手技が用いられます:
- 身体診察と病歴聴取:しこりなどの通常みられない疾患の徴候に注意しながら、総体的に身体を調べる診察法。患者さんの健康習慣、過去の病歴、治療歴なども調べます。
- 血液生化学検査:採取した血液を調べて、体内の臓器や組織から血液中に放出されるグルコース(糖)などの特定の物質の濃度を測定する検査法。ある物質で異常な値(正常値よりも高い値や低い値)が出るということは、疾患の徴候である可能性があります。
- クロモグラニンA検査:採取した血液を調べて、血液中のクロモグラニンAの量を測定する検査法。クロモグラニンAの量が正常値よりも高く、ガストリン、インスリン、グルカゴンなどのホルモンの量が正常であれば、非機能性膵NETの徴候である可能性があります。
- 腹部CTスキャン(CATスキャン):腹部を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法。この画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに造影剤を飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。
- MRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、体内領域の精細な連続画像を作成する検査法。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。
- ソマトスタチン受容体シンチグラフィ:放射性核種スキャンの一種で、小さな膵NETを発見するのに用いられます。少量の放射性オクトレオチド(腫瘍に結合するホルモン)を静脈内に注入して、血液を介して全身を巡らせます。放射性オクトレオチドは腫瘍に結合するため、放射能を検知できる特殊なカメラを用いて、体内での腫瘍の位置を特定します。この方法はオクトレオチドスキャンまたはSRSとも呼ばれています。
- 内視鏡超音波検査(EUS):内視鏡を通常は口または直腸から体内に挿入して行われる検査法。内視鏡は、観察用のライトとレンズを備えた細いチューブ状の器具のことです。内視鏡の末端部にはプローブが付いていて、これを用いて高エネルギーの音波(超音波)を体内の組織や臓器に反響させ、エコーを作り出します。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。この検査法は内視鏡下超音波検査とも呼ばれます。
- 内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP):胆汁が肝臓から胆嚢へ流れる際に通る管と、胆嚢から小腸へ流れる際に通る管をX線撮影する検査法。膵がんでは、ときにこれらの管が狭くなることによって胆汁の流れが遮られ、その結果として黄疸が発生することがあります。この検査では、まず内視鏡を口から挿入し、食道と胃を経由させて小腸の最初の部分まで到達させます。内視鏡とは、観察用のライトとレンズを備えた細いチューブ状の器具のことです。次に内視鏡の中にカテーテル(内視鏡より細い管)を通して膵管内まで到達させます。その後このカテーテルを通して胆管内に造影剤を注入し、X線撮影を行います。胆管が腫瘍によって塞がれている場合には、細い管を挿入してその部分を開通させることがあります。この細い管(ステント)は、その開通を維持しておくために留置される場合もあります。また、組織のサンプルを採取して、その組織を顕微鏡で観察し、がんの徴候がないかを調べる場合もあります。
- 血管造影:血管と血液の流れを観察するための検査法。まず造影剤を血管内に注射します。そして造影剤が血管内を移動している間にX線撮影が行われ、それらの血管に塞がった部分がないかが調べられます。
- 開腹術:腹腔内に疾患の徴候がないかを確かめるために腹壁を切開する手術法。切開創の大きさは、開腹手術の目的により異なります。ときには臓器を摘出したり組織を採取したりすることもあり、切除された組織は顕微鏡で観察され、疾患の徴候がないか調べられます。
- 術中超音波検査:手術中に高エネルギーの音波(超音波)を使用して、体内の臓器や組織の画像を作成する検査法。振動子を臓器または組織上に直接配置し、音波を放出して、エコーを発生させます。超音波振動子はそのエコーを受信してコンピュータに送信し、そのコンピュータでエコーを基にソノグラムと呼ばれる画像が作成されます。
- 生検:細胞や組織を採取する手技のことで、採取されたサンプルは病理医によって顕微鏡で観察され、がんの徴候がないか調べられます。膵NETの場合に実施される生検には、いくつかの種類があります。X線検査または超音波検査の際に、細針または太い針を膵臓に挿入して細胞を採取する場合があります。また、腹腔鏡検査(腹壁に小切開を施す)の際に組織を切除する場合もあります。
- 骨スキャン:骨の内部に活発に分裂している細胞(がん細胞など)が存在していないかを調べる検査法。まずごく少量の放射性物質を静脈内に注入し、血流に乗せて全身に巡らせます。この放射性物質にはがんが生じている骨に集まっていく性質があるため、これをスキャナを用いて検出します。
特定の種類の膵NETについて調べるために、その他の臨床検査も実施されます。
以下のような検査法や手技が用いられます:
ガストリノーマ
- 空腹時血清ガストリン検査:採取した血液を調べて、血液中のガストリンの量を測定する検査法。この検査は、患者さんが8時間以上何も飲食していない状態で実施されます。ガストリノーマ以外の状態では、血液中のガストリンの量は増加すると考えられます。
- 基礎酸分泌量検査:胃で作られる酸の量を測定するのに用いられる検査法。この検査は、患者さんが8時間以上何も飲食していない状態で実施されます。鼻または喉から胃に管を通して実施します。この管を通して胃の内容物を取り出した後、胃酸のサンプルを4回採取します。これらのサンプルを使用して、検査中に分泌された胃酸の量と胃の分泌物のpH値を測定します。
- セクレチン刺激検査:基礎酸分泌量検査の結果が正常でなかった場合に実施されることがある検査法。管を小腸まで通し、セクレチンという薬物の注入後に小腸からサンプルを採取します。セクレチンは小腸での酸の生産を促します。ガストリノーマが存在している場合、セクレチンによって胃酸の分泌量と血液中のガストリンの量が増加します。
- ソマトスタチン受容体シンチグラフィ:放射性核種スキャンの一種で、小さな膵NETを発見するのに用いられます。少量の放射性オクトレオチド(腫瘍に結合するホルモン)を静脈内に注入して、血液を介して全身を巡らせます。放射性オクトレオチドは腫瘍に結合するため、放射能を検知できる特殊なカメラを用いて、体内での腫瘍の位置を特定します。この方法はオクトレオチドスキャンまたはSRSとも呼ばれています。
インスリノーマ
- 空腹時血清グルコースおよびインスリン検査:採取した血液を調べて、血液中のグルコース(糖)とインスリンの量を測定する検査法。この検査は、患者さんが24時間以上何も飲食していない状態で実施されます。
グルカゴノーマ
- 空腹時血清グルカゴン検査:採取した血液を調べて、血液中のグルカゴンの量を測定する検査法。この検査は、患者さんが8時間以上何も飲食していない状態で実施されます。
その他の種類の腫瘍
- VIP産生腫瘍
- 血清VIP(血管作動性腸管ペプチド)検査:採取した血液を調べて、VIPの量を測定する検査法。
- 血液生化学検査:採取した血液を調べて、体内の臓器や組織から血液中に放出される特定の物質の濃度を測定する検査法。ある物質で異常な値(正常値よりも高い値や低い値)が出るということは、疾患の徴候である可能性があります。VIP産生腫瘍の場合、カリウムの測定値が正常より低くなります。
- 便検査:便のサンプルを調べて、ナトリウム(塩)とカリウムの量が正常値より高いかどうかを測定する検査法。
- ソマトスタチノーマ
- 空腹時血清ソマトスタチン検査:採取した血液を調べて、血液中のソマトスタチンの量を測定する検査法。この検査は、患者さんが8時間以上何も飲食していない状態で実施されます。
- ソマトスタチン受容体シンチグラフィ:放射性核種スキャンの一種で、小さな膵NETを発見するのに用いられます。少量の放射性オクトレオチド(腫瘍に結合するホルモン)を静脈内に注入して、血液を介して全身を巡らせます。放射性オクトレオチドは腫瘍に結合するため、放射能を検知できる特殊なカメラを用いて、体内での腫瘍の位置を特定します。この方法はオクトレオチドスキャンまたはSRSとも呼ばれています。
- 膵神経内分泌腫瘍の病期
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がんの治療計画は、膵臓内でNETが見つかった位置やその腫瘍が拡がっているかどうかに基づいて決定されます。
がんの膵臓内での拡がりや他の部位への転移の有無を調べる過程は、病期分類と呼ばれます。膵神経内分泌腫瘍(NET)の診断に用いられる検査や手技の結果は、がんが拡がっているかどうかを調べるためにも利用されます。検査とその方法については、一般的な情報のセクションを参照してください。
膵NETには標準的な病期分類システムが存在せず、治療計画には利用されません。膵NETの治療法は以下の点に基づいて決定されます:
体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。
がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。
がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。
転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類の腫瘍です。例えば、膵神経内分泌腫瘍が肝臓に転移した場合、その肝臓のがん細胞は、実際は膵神経内分泌腫瘍の細胞です。この疾患は転移性膵神経内分泌腫瘍であり、肝がんではありません。
膵NETは治療後に再発(再び現れる)ことがあります。
腫瘍の再発は、膵臓に起こることもあれば、体の他の部位に起こることもあります。
- 治療選択肢の概要
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膵NETの患者さんには様々な治療法が存在します。
膵神経内分泌腫瘍(NET)の患者さんは、様々な治療を受けることができます。そのなかには標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がん患者さんの新しい治療法に関する情報を集めたりするための調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
以下のような治療法が用いられます:
手術
腫瘍の摘出手術が行われる場合があります。以下の手術法のいずれかが用いられます:
- 核出術:腫瘍のみを切除する手術。この手術は、がんが膵臓内の1ヵ所のみで発生した場合に実施されます。
- 膵頭十二指腸切除術:膵頭部、胆嚢、周辺のリンパ節のほか、胃、小腸、胆管の一部を切除対象とする手術法。消化液やインスリンを十分に生産できる量の膵臓が残されます。この手技では、患者さんの状態に応じて臓器が切除されます。ウィップル法とも呼ばれます。
- 膵体尾部切除術:膵体部と膵尾部を切除する手術。がんが脾臓に拡がっている場合は、脾臓も切除する場合があります。
- 胃全摘出術:胃全体を切除する手術。
- 壁細胞迷走神経切断術:胃の細胞での酸の分泌を引き起こす神経を切除する手術。
- 肝臓切除術:肝臓の全体または一部を切除する手術。
- ラジオ波焼灼術:小さな電極の付いた特殊なプローブを用いてがん細胞を死滅させる治療法。プローブを皮膚から直接刺し込む方法もあり、その場合は局所麻酔のみでの実施が可能です。その他の場合には、腹部を切開した上でそこからプローブを挿入していきます。この方法は、大きな病院で全身麻酔を施して実施されます。
- 凍結切除術:組織を凍結して異常な細胞を破壊する手技。通常は、液体窒素か液体二酸化炭素の入った専用の装置を使用して実施されます。この装置は手術または腹腔鏡検査時に用いられるほか、皮膚を通して挿入される場合もあります。この検査法は冷凍アブレーションとも呼ばれます。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬物は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、もしくは腹腔などの体腔内に薬剤を直接注入する化学療法では、薬はその領域にあるがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。併用化学療法は、複数の抗がん剤を使用する治療法です。化学療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類に応じて異なります。
ホルモン療法
ホルモン療法は、ホルモンを体内から除去したりその働きを阻害したりすることによって、がん細胞の増殖を阻止する治療法です。ホルモンとは、体内の内分泌腺で作られて血流内を循環する物質のことです。ホルモンのなかには一部のがんを増殖させるものがあります。がん細胞内にホルモンが結合する分子(受容体)が存在するということが検査によって判明した場合は、薬物投与や手術、放射線療法などの手段を用いて、そのホルモンの分泌を抑制したり作用を阻害したりする治療を行います。
肝動脈塞栓術または化学塞栓
肝動脈塞栓術は、薬物や微小粒子などの物質を使用して、肝動脈(肝臓に血液を運ぶ主要な血管)から肝臓への血流を遮断したり減少させたりします。この手技は、肝臓内で増殖しているがん細胞を死滅させるために実施します。腫瘍には、その増殖に必要となる酸素や栄養分が供給されなくなります。一方で肝臓への血液供給は、胃や腸から血液を運んでくる肝門脈によって維持されます。
肝動脈塞栓術の実施中に行われる化学療法は、化学塞栓と呼ばれます。この方法では、カテーテル(細い管)を介して抗がん剤を肝動脈の中に注入します。その薬剤には動脈を詰まらせる物質が混ぜられていて、これによって腫瘍への血液の供給が遮断されます。その結果、抗がん剤の大半が腫瘍の近くにとどまり、体内の他の部位に送られる抗がん剤の量が少なくなります。
動脈を遮断するのに使用する物質の種類に応じて、動脈の閉塞は一時的なものにも永久的なものにもできます。
標的療法
標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物や物質を用いる治療法です。標的療法では一般に、化学療法や放射線療法に比べて、正常な細胞に及ぼす害が少なくなります。膵NETの治療法として、数種類の標的療法が研究されています:
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。
臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。
患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。
患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。
今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。
患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。
患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。
ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。
臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
- ガストリノーマの治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
- 胃酸の量が多すぎるために起こる症状の場合、治療には胃で作られる酸の量を減らす薬物が用いられます。
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膵頭部に発生した単一の腫瘍に対しては以下の治療法が使用されます:
- 膵体部または膵尾部に発生した単一の腫瘍の治療法は、通常、膵体部または膵尾部を切除する手術です。
- 膵臓に発生した複数の腫瘍の治療法は、通常、膵体部または膵尾部を切除する手術です。手術後に腫瘍が残存している場合、以下のような治療が行われます:
- 胃の細胞による酸の生産を引き起こす神経を切除する手術と、胃酸を減らす薬物を用いた治療;または
- 胃全体を切除する手術(まれ)。
- 十二指腸(小腸の一部で胃と接続している部位)に1つ以上の腫瘍が存在する場合の治療法は、通常、膵頭十二指腸切除術(膵頭部、胆嚢、周辺のリンパ節のほか、胃、小腸、胆管の一部を切除する手術)です。
- 腫瘍が認められない場合、以下のような治療が行われます:
- 胃の細胞による酸の生産を引き起こす神経を切除する手術と、胃酸を減らす薬物を用いた治療。
- 胃全体を切除する手術(まれ)。
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がんが肝臓に拡がっている場合、以下のような治療が行われます:
- がんが体の他の部位に転移している場合、または手術や胃酸を減らす薬物治療を実施しても改善しない場合、以下のような治療が行われます:
- がんが主に肝臓に影響を及ぼしており、患者さんがホルモンまたは腫瘍の大きさによる重い症状を抱えている場合、以下のような治療が行われます:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- インスリノーマの治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
インスリノーマの治療法には以下のようなものがあります:
- 膵頭部または膵尾部に発生した単一の小さな腫瘍の治療法は、通常、腫瘍を切除する手術です。
- 膵頭部に発生し、手術では切除できない単一の大きな腫瘍の治療法は、通常、膵頭十二指腸切除術(膵頭部、胆嚢、周辺のリンパ節のほか、胃、小腸、胆管の一部を切除する手術)です。
- 膵体部または膵尾部に発生した単一の大きな腫瘍の治療法は、通常、膵体尾部切除術(膵体部および膵尾部を切除する手術)です。
- 膵臓に発生した複数の腫瘍の治療法は、通常、膵頭部の腫瘍と膵体部および膵尾部を切除する手術です。
- 手術で腫瘍を切除できない場合、以下のような治療が行われます:
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リンパ節や体の他の部位に転移したがんの場合、以下のような治療が行われます:
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がんが主に肝臓に影響を及ぼしており、患者さんがホルモンまたは腫瘍の大きさによる重い症状を抱えている場合、以下のような治療が行われます:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- グルカゴノーマの治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
治療法には以下のようなものがあります:
- 膵頭部または膵尾部に発生した単一の小さな腫瘍の治療法は、通常、腫瘍を切除する手術です。
- 膵頭部に発生し、手術では切除できない単一の大きな腫瘍の治療法は、通常、膵頭十二指腸切除術(膵頭部、胆嚢、周辺のリンパ節のほか、胃、小腸、胆管の一部を切除する手術)です。
- 膵臓に発生した複数の腫瘍の治療法は、通常、腫瘍を切除する手術か、膵体部および膵尾部を切除する手術です。
- 手術で腫瘍を切除できない場合、以下のような治療が行われます:
- リンパ節や体の他の部位に転移したがんの場合、以下のような治療が行われます:
- がんの摘出手術。
- がんが手術で除去できない場合は、ラジオ波焼灼術または凍結手術(冷凍アブレーション)。
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がんが主に肝臓に影響を及ぼしており、患者さんがホルモンまたは腫瘍の大きさによる重い症状を抱えている場合、以下のような治療が行われます:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- その他の膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
VIP産生腫瘍の治療法には以下のようなものがあります:
ソマトスタチノーマの治療法には以下のようなものがあります:
- 腫瘍の摘出手術。
- 体内の遠く離れた部位に転移したがんに対しては、症状を緩和し生活の質を改善するためにできるだけ多くのがんを切除する手術。
- 治療中にも増殖を続けている腫瘍や他の部位に転移した腫瘍の場合、以下のような治療が行われます:
- 化学療法。
- 標的療法。
その他の膵神経内分泌腫瘍(NET)の治療法には以下のようなものがあります:
- 腫瘍の摘出手術。
- 体内の遠く離れた部位に転移したがんに対しては、症状を緩和し生活の質を改善するために、できるだけ多くのがんを切除する手術またはホルモン療法。
- 治療中にも増殖を続けている腫瘍や他の部位に転移した腫瘍の場合、以下のような治療が行われます:
- 化学療法。
- 標的療法。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 再発または進行性膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
治療中に増殖を続けている、または再発した(再び現れた)膵神経内分泌腫瘍(NET)の治療法には以下のようなものがあります:
膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)についてさらに学ぶために
米国国立がん研究所が提供している膵神経内分泌腫瘍(NET)に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Pancreatic Neuroendocrine Tumors (Islet Cell Tumors) Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/types/pancreatic/patient/pnet-treatment-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389340]
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免責事項
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お問い合わせ
Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。