医療専門家向け 小児慢性骨髄性白血病の治療(PDQ®)

    • 原文更新日:2024-06-14
    • 翻訳更新日:2025-03-28

ご利用について

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、小児慢性骨髄性白血病の治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。医療上の意思決定のための正式なガイドラインや推奨事項を提供するものではない。

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardにより定期的にレビューされ、随時更新される。本要約は独自の文献レビューの結果を反映するものであり、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

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発生率および臨床像

慢性骨髄性白血病(CML)はBCR::ABL転座に起因する。CMLは基本的には成人の疾患であるが、小児で最もよくみられる慢性骨髄増殖性疾患である。CMLは小児の骨髄性白血病全体の約13~20%を占め、小児の白血病全体の2%を占める。[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ]低年齢の小児でも報告されているが、大半の患者は6歳以上である。CMLは青年期後期に好発する。

CMLはすべての造血細胞系列に影響を及ぼすクローン性の汎骨髄障害である。CMLは著明な白血球増多を特徴とするが、しばしば血小板増多を、ときに血小板機能の異常も伴う。骨髄穿刺と骨髄生検では、比較的正常な顆粒球成熟を伴う過形成が明らかになり、白血病性芽球数の有意な増加はみられない。CML患者では白血球アルカリホスファターゼ活性の低下がみられるが、これは特異的所見ではない。

CMLは歴史的に以下の3つの臨床病期に分類されていた:

WHO分類の最新版である第5版では、臨床像は慢性期と急性転化期に分けられ、移行期は排除されている。この変更はTKIが疾患経過に及ぼした影響を加味したもので、その影響により進行する患者の割合は減少している。またWHO分類の第5版では、慢性期における特定の特徴が進行およびTKI耐性の高リスク因子として同定されている。[ 6 ]それらの特徴は診断時またはTKI療法中に認められ、具体的には以下のものがある:

参考文献
  1. Ries LA, Smith MA, Gurney JG, et al., eds.: Cancer incidence and survival among children and adolescents: United States SEER Program 1975-1995. National Cancer Institute, SEER Program, 1999. NIH Pub.No. 99-4649.Also available online. Last accessed December 22, 2023.[PUBMED Abstract]
  2. Surveillance Research Program, National Cancer Institute: SEER*Explorer: An interactive website for SEER cancer statistics. Bethesda, MD: National Cancer Institute.Available online. Last accessed March 6, 2024.[PUBMED Abstract]
  3. National Cancer Institute: NCCR*Explorer: An interactive website for NCCR cancer statistics. Bethesda, MD: National Cancer Institute.Available online. Last accessed December 15, 2023.[PUBMED Abstract]
  4. Mattano L Jr, Nachman J, Ross J, et al.: Leukemias. In: Bleyer A, O’Leary M, Barr R, et al., eds.: Cancer Epidemiology in Older Adolescents and Young Adults 15 to 29 Years of Age, Including SEER Incidence and Survival: 1975-2000. National Cancer Institute, 2006. NIH Pub. No. 06-5767., pp 39-52.[PUBMED Abstract]
  5. Khoury JD, Solary E, Abla O, et al.: The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Myeloid and Histiocytic/Dendritic Neoplasms. Leukemia 36 (7): 1703-1719, 2022.[PUBMED Abstract]
  6. Loghavi S, Kanagal-Shamanna R, Khoury JD, et al.: Fifth Edition of the World Health Classification of Tumors of the Hematopoietic and Lymphoid Tissue: Myeloid Neoplasms. Mod Pathol 37 (2): 100397, 2024.[PUBMED Abstract]
  7. O'Dwyer ME, Mauro MJ, Kurilik G, et al.: The impact of clonal evolution on response to imatinib mesylate (STI571) in accelerated phase CML. Blood 100 (5): 1628-33, 2002.[PUBMED Abstract]
CMLの細胞遺伝学的検査

CMLのゲノミクス

CMLの診断に必須とされている細胞遺伝学的異常はフィラデルフィア染色体(Ph)であるが、これはBCR::ABL1融合蛋白の発現につながる9番染色体と22番染色体の転座(t(9;22))を反映したものである。[ 1 ]

TKI時代の成人CML患者を対象とした研究で、ほかにも染色体異常が発見されている。それらの研究では、慢性期の高リスク因子と同定されているものも含めて、予後不良の変異型がいくつか具体的に示されている。[ 2 ][ 3 ]

参考文献
  1. Quintás-Cardama A, Cortes J: Molecular biology of bcr-abl1-positive chronic myeloid leukemia. Blood 113 (8): 1619-30, 2009.[PUBMED Abstract]
  2. Loghavi S, Kanagal-Shamanna R, Khoury JD, et al.: Fifth Edition of the World Health Classification of Tumors of the Hematopoietic and Lymphoid Tissue: Myeloid Neoplasms. Mod Pathol 37 (2): 100397, 2024.[PUBMED Abstract]
  3. Wang W, Cortes JE, Tang G, et al.: Risk stratification of chromosomal abnormalities in chronic myelogenous leukemia in the era of tyrosine kinase inhibitor therapy. Blood 127 (22): 2742-50, 2016.[PUBMED Abstract]
がんの小児の治療に関する特別な考慮事項

小児および青年のがんはまれであるが、全体の発生率は1975年以降徐々に上昇してきている。[ 1 ]小児および青年のがん患者は、小児期および青年期に発生するがんの治療経験を有するがん専門医で構成される集学的チームを擁する医療機関に紹介すべきである。[ 2 ]この集学的チームのアプローチには、小児が至適な生存期間および生活の質を達成できる治療、支持療法、リハビリテーションを受けられることを保証するべく、以下に該当する小児科専門医および職種の技能が必要とされる。

小児および青年のがん患者に対する支持療法に関する具体的な情報については、支持療法および緩和ケアに関する要約を参照のこと。

American Academy of Pediatricsは、小児がんセンターと小児および青年がん患者の治療におけるその役割について、ガイドラインの概要を示している。[ 3 ]それらの小児がん施設では、小児および青年に発生するがん種の大半について、それらを対象とする臨床試験が実施されており、大半の患者とその家族に参加の機会が提供されている。がんと診断された小児および青年患者を対象とする臨床試験は一般に、より優れている可能性がある治療法を最新の標準治療と比較するべくデザインされている。そのほかに、対象のがんに対して標準治療が存在しない場合に新規の治療法を検討するタイプの臨床試験もある。小児がんに対する根治的治療法の特定において得られた進歩は、その大半が臨床試験を通じて達成されたものである。現在実施中の臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトから入手することができる。

参考文献
  1. Smith MA, Seibel NL, Altekruse SF, et al.: Outcomes for children and adolescents with cancer: challenges for the twenty-first century. J Clin Oncol 28 (15): 2625-34, 2010.[PUBMED Abstract]
  2. Wolfson J, Sun CL, Wyatt L, et al.: Adolescents and Young Adults with Acute Lymphoblastic Leukemia and Acute Myeloid Leukemia: Impact of Care at Specialized Cancer Centers on Survival Outcome. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 26 (3): 312-320, 2017.[PUBMED Abstract]
  3. American Academy of Pediatrics: Standards for pediatric cancer centers. Pediatrics 134 (2): 410-4, 2014. Also available online. Last accessed December 15, 2023.[PUBMED Abstract]
小児CMLに対するかつての(チロシンキナーゼ阻害薬導入前の)治療法

チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)が導入されるまでは、慢性骨髄性白血病(CML)の小児患者に対する一次治療は同種造血幹細胞移植(HSCT)であった。この時代に公表された報告によると、慢性期初期の小児患者の治療にHLA適合家族ドナー(MFD)を用いた場合の生存率は70~80%であった。HLA適合非血縁ドナーを用いた研究で報告された生存率はこれより低かった。[ 1 ][ 2 ][ 3 ]

慢性期に移植を行った場合の再燃率は低かった(20%未満)。[ 1 ][ 2 ]第一の死因は治療関連死で、大半の報告ではHLA-MFDと比較してHLA適合非血縁ドナーを用いた場合でより多くみられた。[ 1 ][ 2 ]HLAアレルに対する高分解能DNAマッチングは、治療関連死亡の頻度を低下させ、非血縁ドナーを用いるHSCTの成績改善につながると考えられた。[ 4 ]

慢性期での移植と比較すると、移行期または急性転化期および第2慢性期での移植では、生存率が有意に低かった。[ 1 ][ 2 ][ 3 ]移植片対宿主病を回避するためのTリンパ球除去は再燃率の上昇と全生存期間の短縮につながり[ 5 ]、このことから、同種HSCT後の良好な成績に移植片対白血病効果が寄与していることが裏付けられた。

BCR-ABL1融合キナーゼを特異的に阻害する治療薬としてのTKIイマチニブの導入により、小児と成人の両方でCML患者の治療に革命がもたらされた。[ 6 ]CMLに対するTKIの使用に関するデータの大半は、成人の臨床試験から得られたものである。詳細については、慢性骨髄性白血病の治療を参照のこと。以下では、小児における限られた経験について記載する。

参考文献
  1. Millot F, Esperou H, Bordigoni P, et al.: Allogeneic bone marrow transplantation for chronic myeloid leukemia in childhood: a report from the Société Française de Greffe de Moelle et de Thérapie Cellulaire (SFGM-TC). Bone Marrow Transplant 32 (10): 993-9, 2003.[PUBMED Abstract]
  2. Cwynarski K, Roberts IA, Iacobelli S, et al.: Stem cell transplantation for chronic myeloid leukemia in children. Blood 102 (4): 1224-31, 2003.[PUBMED Abstract]
  3. Weisdorf DJ, Anasetti C, Antin JH, et al.: Allogeneic bone marrow transplantation for chronic myelogenous leukemia: comparative analysis of unrelated versus matched sibling donor transplantation. Blood 99 (6): 1971-7, 2002.[PUBMED Abstract]
  4. Lee SJ, Klein J, Haagenson M, et al.: High-resolution donor-recipient HLA matching contributes to the success of unrelated donor marrow transplantation. Blood 110 (13): 4576-83, 2007.[PUBMED Abstract]
  5. Horowitz MM, Gale RP, Sondel PM, et al.: Graft-versus-leukemia reactions after bone marrow transplantation. Blood 75 (3): 555-62, 1990.[PUBMED Abstract]
  6. Druker BJ: Translation of the Philadelphia chromosome into therapy for CML. Blood 112 (13): 4808-17, 2008.[PUBMED Abstract]
小児CMLの治療

慢性骨髄性白血病(CML)の小児に対する治療選択肢には以下を含めることができる:

  1. チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)療法

TKI療法

イマチニブ

イマチニブは、CMLの小児患者においても成人患者での観察結果と同等の高水準の活性を示している。[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ][ 5 ]この高水準の活性を受けて、CMLの小児患者では、直ちに同種造血幹細胞移植に進むのではなく、イマチニブで治療を開始するのが一般的になっている。[ 6 ]小児におけるイマチニブの薬物動態は、成人における過去の研究結果と一致するとみられている。[ 7 ]

CMLの小児患者を対象とした第II相試験で採用されたイマチニブの用量は260 mg/m2~340 2であるが、この用量範囲で成人における固定用量400~600 mgと同等の薬物曝露量が得られる。[ 3 ][ 4 ][ 5 ]

証拠(小児におけるイマチニブ):

  1. ある臨床試験において、初発CMLの小児患者44名がイマチニブ(260mg/日)による治療を受けた。[ 5 ]
  2. イタリアの研究では、慢性期CMLの小児患者47名がイマチニブ340 mg/m2/日による治療を受けた。[ 5 ]

治療3カ月時点のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法による微小残存病変(MRD)の測定でBCR-ABL1/ABL融合 mRNAが10%など、早期の分子遺伝学的奏効については、成人における早期分子遺伝学的奏効のデータに類似したPFSの改善との関連が報告されている。[ 8 ]European LeukemiaNet(ELN)は、BCR::ABL mRNAレベルの至適な分子遺伝学的マイルストーンを治療開始後3カ月時点で10%以下、6カ月時点で1%以下、12カ月以降で0.1%以下と定義している。[ 9 ]

成人のCMLを対象として報告されたモニタリングパラメーターを小児に用いることは妥当である。MMRの達成までは3カ月毎にモニタリングを行い、その後は3~6カ月毎に確認する。詳細については、慢性骨髄性白血病の治療を参照のこと。

小児におけるイマチニブの忍容性は総じて良好である。有害作用は一般に軽度から中等度であり、投与中止または減量で可逆的である。[ 3 ][ 4 ]イマチニブの投与を受けている思春期前小児の大半に発育遅延がみられる。[ 10 ]イマチニブの投与を受けて成長障害がみられる小児は、思春期の成長スパートで遅れをいくらか取り戻せることがあるが、大半の患者が親の中間身長に達しないことから、成人身長が予想より低くなるリスクがある。[ 10 ][ 11 ]

ダサチニブ

ダサチニブは、小児CMLの治療を適応として米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)の承認を受けたTKIである。

証拠(小児におけるダサチニブ):

  1. 小児を対象としたダサチニブの第I相試験では、この薬剤の体内動態、忍容性、および有効性が成人での観察結果と同様であることが示された。[ 12 ][ 13 ]
  2. 初発の慢性期CMLを有する小児患者84名を組み入れたダサチニブの第II相試験では、用量として60 mg/m2(錠剤)または72 mg/m2(経口液)の1日1回投与が採用された。[ 14 ]

ニロチニブ

ニロチニブは、小児CMLの治療を適応としてFDAの承認を受けたTKIである。

証拠(小児におけるニロチニブ):

2018年3月の小児CMLの治療を適応したFDAによるニロチニブの承認は、何らかの資金提供を受けた2試験の結果に基づいていた。[ 15 ][ 16 ]

  1. 11名の患者を対象とした最初の研究(NCT01077544[CAMN107A2120])では、薬物動態、安全性、および予備的有効性のデータが評価された。
  2. 58名の患者を対象とした2つ目の研究(NCT01844765[CAMN107A2203;AAML1321])では、有効性と安全性が評価された。[ 16 ]

    両研究を併合した計69例のデータで解析が実施され、併合データは初発CML患者25名と前治療で耐性または不耐容を示したCML患者44名で構成された。どちらの研究でも、用量は230 mg/m2の1日2回投与が採用された(50 mg単位で丸められ、最大400 mgとされた)。[ 15 ][ 16 ]

その他のTKI

CMLに対するTKIの使用に関するデータは、その大半が成人の臨床試験から得られたものである。ポナチニブについては、安全な小児用量がまだ確立されていない。

ボスチニブは、BCR::ABL1融合遺伝子を標的とするTKIである。FDAは、別のTKIによる前治療で不耐容または耐性を示した全段階のCML成人患者の治療を適応として、ボスチニブを承認した。

小児に対するボスチニブの第II相推奨用量は、スクリーニングを受けた小児30名を組み入れた(うち28名が治療を受けた)第I相研究で決定された。他のTKIによる前治療で耐性または不耐容となった小児患者に対する用量は400 mg/m2、食後、1日1回(最大600 mg)とされた。初発CMLの小児患者に対する用量は300 mg/m2、食後、1日1回とされた(最大500 mg)。[ 17 ]

ポナチニブは、T315I変異に対して有効性を示すBCR::ABL1融合蛋白阻害薬である。[ 18 ]ポナチニブは、多数の前治療歴を有する慢性期CML成人患者の約70%で客観的奏効をもたらした。奏効はベースラインで認められたBCR::ABL1キナーゼドメインの変異に関係なく認められた。[ 19 ]ポナチニブの使用は、投与された患者に高率で血管閉塞が観察されたことから、複雑化している。治療を受けた患者の20%以上で動脈および静脈の血栓および閉塞(心筋梗塞と脳卒中を含む)が発生した。[ 20 ]ポナチニブは現在、小児集団を対象とする前向き研究が実施されている。

TKI療法の中止

TKI治療の中止は、治療期間および治療効果に関連した厳格な基準を満たすCMLの成人患者に対する治療戦略の一つとして受け入れられている。TKIの中止に関するガイドラインが、ELNと米国を拠点とするNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)によってそれぞれ策定されている。[ 9 ][ 21 ]両ガイドラインの鍵となる要素として以下のものがある:

これらのガイドラインでは、TKI中止後にBCR::ABL1 mRNAレベルを綿密にモニタリングするよう明記されている。MMR(またはMR3)の喪失(BCR::ABL1 ≤ 0.1% IS)は一般にTKI療法再開のトリガーとして用いられる。

MMRの喪失はTKI中止後6カ月以内に起こる可能性が最も高い。TKI中止後1年以上が経過してからMMRの喪失が起こる頻度ははるかに低くなる。あるメタアナリシスでは、初回のTKI中止を試みた成人患者3,105名が対象とされた。この研究により、分子生物学的再発の確率は0~6カ月後で35%、6~12カ月後で8%、12~18カ月後で3%、18~24カ月後で3%であったことが明らかにされた。[ 22 ]これらの結果から、成人患者の約50%がTKI中止の2年後時点で分子遺伝学的奏効を維持していたことが示された。TKIの中止から2年以上が経過した時点でも再発は起こりうるが、そのような再発の頻度は低いようである(2%未満)。再発が起きた場合に不良な転帰をたどることもまれであった。さらに、TKIの再開後には90%の患者が深い分子生物学的寛解を再び達成した。

CMLの小児患者におけるTKIの中止に関するデータは限られている。このように経験が限られている理由の一つは、小児におけるCMLの発生率が低いことにある。さらに、TKIによる治療を受けているCMLの小児患者がTKIの中止基準を満たすことはほとんどない。例えば、International Chronic Myeloid Leukemia Pediatric Study(I-CML-Ped[NCT01281735])に登録された患者のうち、TKIによる治療を受けたCMLの小児がTKIの中止基準を満たした割合はわずか9%であった。[ 23 ]この傾向は他の報告によっても裏づけられている。[ 24 ][ 25 ]研究対象とされる小児患者の数が少ないことが限界の一つであるが、CMLの小児患者でのTKI中止の転帰は成人のそれと同様とみられている。小児を対象としてこのトピックについて検討した2つの大規模研究を以下に要約する:

臨床評価段階にある治療選択肢

米国国立がん研究所(NCI)が支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーを務める臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。

以下は、現在実施されている国および/または医療機関が主導する臨床試験の例である:

参考文献
  1. Champagne MA, Capdeville R, Krailo M, et al.: Imatinib mesylate (STI571) for treatment of children with Philadelphia chromosome-positive leukemia: results from a Children's Oncology Group phase 1 study. Blood 104 (9): 2655-60, 2004.[PUBMED Abstract]
  2. Millot F, Guilhot J, Nelken B, et al.: Imatinib mesylate is effective in children with chronic myelogenous leukemia in late chronic and advanced phase and in relapse after stem cell transplantation. Leukemia 20 (2): 187-92, 2006.[PUBMED Abstract]
  3. Millot F, Baruchel A, Guilhot J, et al.: Imatinib is effective in children with previously untreated chronic myelogenous leukemia in early chronic phase: results of the French national phase IV trial. J Clin Oncol 29 (20): 2827-32, 2011.[PUBMED Abstract]
  4. Champagne MA, Fu CH, Chang M, et al.: Higher dose imatinib for children with de novo chronic phase chronic myelogenous leukemia: a report from the Children's Oncology Group. Pediatr Blood Cancer 57 (1): 56-62, 2011.[PUBMED Abstract]
  5. Giona F, Putti MC, Micalizzi C, et al.: Long-term results of high-dose imatinib in children and adolescents with chronic myeloid leukaemia in chronic phase: the Italian experience. Br J Haematol 170 (3): 398-407, 2015.[PUBMED Abstract]
  6. Andolina JR, Neudorf SM, Corey SJ: How I treat childhood CML. Blood 119 (8): 1821-30, 2012.[PUBMED Abstract]
  7. Menon-Andersen D, Mondick JT, Jayaraman B, et al.: Population pharmacokinetics of imatinib mesylate and its metabolite in children and young adults. Cancer Chemother Pharmacol 63 (2): 229-38, 2009.[PUBMED Abstract]
  8. Millot F, Guilhot J, Baruchel A, et al.: Impact of early molecular response in children with chronic myeloid leukemia treated in the French Glivec phase 4 study. Blood 124 (15): 2408-10, 2014.[PUBMED Abstract]
  9. Hochhaus A, Baccarani M, Silver RT, et al.: European LeukemiaNet 2020 recommendations for treating chronic myeloid leukemia. Leukemia 34 (4): 966-984, 2020.[PUBMED Abstract]
  10. Shima H, Tokuyama M, Tanizawa A, et al.: Distinct impact of imatinib on growth at prepubertal and pubertal ages of children with chronic myeloid leukemia. J Pediatr 159 (4): 676-81, 2011.[PUBMED Abstract]
  11. Millot F, Guilhot J, Baruchel A, et al.: Growth deceleration in children treated with imatinib for chronic myeloid leukaemia. Eur J Cancer 50 (18): 3206-11, 2014.[PUBMED Abstract]
  12. Aplenc R, Blaney SM, Strauss LC, et al.: Pediatric phase I trial and pharmacokinetic study of dasatinib: a report from the children's oncology group phase I consortium. J Clin Oncol 29 (7): 839-44, 2011.[PUBMED Abstract]
  13. Zwaan CM, Rizzari C, Mechinaud F, et al.: Dasatinib in children and adolescents with relapsed or refractory leukemia: results of the CA180-018 phase I dose-escalation study of the Innovative Therapies for Children with Cancer Consortium. J Clin Oncol 31 (19): 2460-8, 2013.[PUBMED Abstract]
  14. Gore L, Kearns PR, de Martino ML, et al.: Dasatinib in Pediatric Patients With Chronic Myeloid Leukemia in Chronic Phase: Results From a Phase II Trial. J Clin Oncol 36 (13): 1330-1338, 2018.[PUBMED Abstract]
  15. Novartis Pharmaceuticals Corporation: TASIGNA (nilotinib): Prescribing Information. East Hanover, NJ: Novartis, 2018.Available online. Last accessed April 7, 2022.[PUBMED Abstract]
  16. Hijiya N, Maschan A, Rizzari C, et al.: Phase 2 study of nilotinib in pediatric patients with Philadelphia chromosome-positive chronic myeloid leukemia. Blood 134 (23): 2036-2045, 2019.[PUBMED Abstract]
  17. Brivio E, Pennesi E, Willemse ME, et al.: Bosutinib in Resistant and Intolerant Pediatric Patients With Chronic Phase Chronic Myeloid Leukemia: Results From the Phase I Part of Study ITCC054/COG AAML1921. J Clin Oncol 42 (7): 821-831, 2024.[PUBMED Abstract]
  18. O'Hare T, Shakespeare WC, Zhu X, et al.: AP24534, a pan-BCR-ABL inhibitor for chronic myeloid leukemia, potently inhibits the T315I mutant and overcomes mutation-based resistance. Cancer Cell 16 (5): 401-12, 2009.[PUBMED Abstract]
  19. Cortes JE, Kim DW, Pinilla-Ibarz J, et al.: A phase 2 trial of ponatinib in Philadelphia chromosome-positive leukemias. N Engl J Med 369 (19): 1783-96, 2013.[PUBMED Abstract]
  20. Prasad V, Mailankody S: The accelerated approval of oncologic drugs: lessons from ponatinib. JAMA 311 (4): 353-4, 2014 Jan 22-29.[PUBMED Abstract]
  21. National Comprehensive Cancer Network: NCCN Guidelines for Patients: Chronic Myeloid Leukemia, 2021. Plymouth Meeting, PA: National Comprehensive Cancer Network, 2021.Available online with free subscription. Last accessed August 29, 2022.[PUBMED Abstract]
  22. Dulucq S, Astrugue C, Etienne G, et al.: Risk of molecular recurrence after tyrosine kinase inhibitor discontinuation in chronic myeloid leukaemia patients: a systematic review of literature with a meta-analysis of studies over the last ten years. Br J Haematol 189 (3): 452-468, 2020.[PUBMED Abstract]
  23. Millot F, Suttorp M, Ragot S, et al.: Discontinuation of Imatinib in Children with Chronic Myeloid Leukemia: A Study from the International Registry of Childhood CML. Cancers (Basel) 13 (16): , 2021.[PUBMED Abstract]
  24. de Bruijn CMA, Millot F, Suttorp M, et al.: Discontinuation of imatinib in children with chronic myeloid leukaemia in sustained deep molecular remission: results of the STOP IMAPED study. Br J Haematol 185 (4): 718-724, 2019.[PUBMED Abstract]
  25. Shima H, Kada A, Tanizawa A, et al.: Discontinuation of tyrosine kinase inhibitors in pediatric chronic myeloid leukemia. Pediatr Blood Cancer 69 (8): e29699, 2022.[PUBMED Abstract]
  26. Berger MG, Pereira B, Rousselot P, et al.: Longer treatment duration and history of osteoarticular symptoms predispose to tyrosine kinase inhibitor withdrawal syndrome. Br J Haematol 187 (3): 337-346, 2019.[PUBMED Abstract]
再発または難治性小児CMLの治療

再発または難治性の慢性骨髄性白血病(CML)の小児に対する治療選択肢には以下を含めることができる:

  1. ダサチニブやニロチニブ、ボスチニブなどの代替チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)療法
  2. 同種造血幹細胞移植(HSCT)

代替TKI療法

イマチニブによる治療中に血液学的または細胞遺伝学的再発を起こしたか、最初のTKIに対して十分な初期反応がえられなかった小児患者では、以降の治療方針決定の参考にするため、BCR::ABL1キナーゼドメインの変異状況の特定を考慮すべきである。患者の変異状況に応じて、ダサチニブやニロチニブ、ボスチニブなどの代替TKIを、これらの薬剤の成人および小児における使用経験に基づき考慮することができる。[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ]

証拠(耐性または不耐容のCML小児患者におけるダサチニブ):

  1. 前治療で耐性または不耐容となったCMLの小児患者14名を対象とした研究において、以下の結果が観察された:[ 6 ]

証拠(耐性または不耐容のCML小児患者におけるニロチニブ):

  1. イマチニブまたはダサチニブによる前治療で耐性または不耐容となったCMLの小児患者44名を対象とした研究において、以下の結果が観察された:[ 7 ]

ダサチニブおよびニロチニブは、イマチニブ耐性を付与する多数のBCR::ABL1変異に対して活性を示すものの、T315I変異を有する患者には無効である。T315I変異は米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)が承認したすべてのTKIに耐性を示すが、この変異がみられる場合は、同種HSCTを考慮すべきである。ポナチニブは、成人のT315I変異に対して効果的なBCR::ABL1阻害薬であるが、小児集団を対象とした前向き研究は行われていない。

同種HSCT

複数のTKIが使用可能な状況でCMLの小児患者に同種HSCTを行うべきか否かという問題については、依然として答えが得られていない。しかしながら、HSCTを施行しても、イマチニブを継続投与する場合と比較してPFSは改善しないことが複数の報告から示唆されている。[ 8 ]考えられる長所と短所について、患者および家族と話し合う必要がある。HSCTは現時点でCMLに対して知られている唯一の根治的治療法であるが、持続的な分子遺伝学的寛解の達成後にTKIによる治療を中止して、分子遺伝学的寛解を維持する症例が複数報告されている。[ 9 ]

臨床評価段階にある治療選択肢

米国国立がん研究所(NCI)が支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーを務める臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。

以下は、現在実施されている国および/または医療機関が主導する臨床試験の例である:

参考文献
  1. Hochhaus A, Baccarani M, Deininger M, et al.: Dasatinib induces durable cytogenetic responses in patients with chronic myelogenous leukemia in chronic phase with resistance or intolerance to imatinib. Leukemia 22 (6): 1200-6, 2008.[PUBMED Abstract]
  2. le Coutre P, Ottmann OG, Giles F, et al.: Nilotinib (formerly AMN107), a highly selective BCR-ABL tyrosine kinase inhibitor, is active in patients with imatinib-resistant or -intolerant accelerated-phase chronic myelogenous leukemia. Blood 111 (4): 1834-9, 2008.[PUBMED Abstract]
  3. Kantarjian H, O'Brien S, Talpaz M, et al.: Outcome of patients with Philadelphia chromosome-positive chronic myelogenous leukemia post-imatinib mesylate failure. Cancer 109 (8): 1556-60, 2007.[PUBMED Abstract]
  4. Kantarjian H, Shah NP, Hochhaus A, et al.: Dasatinib versus imatinib in newly diagnosed chronic-phase chronic myeloid leukemia. N Engl J Med 362 (24): 2260-70, 2010.[PUBMED Abstract]
  5. Saglio G, Kim DW, Issaragrisil S, et al.: Nilotinib versus imatinib for newly diagnosed chronic myeloid leukemia. N Engl J Med 362 (24): 2251-9, 2010.[PUBMED Abstract]
  6. Gore L, Kearns PR, de Martino ML, et al.: Dasatinib in Pediatric Patients With Chronic Myeloid Leukemia in Chronic Phase: Results From a Phase II Trial. J Clin Oncol 36 (13): 1330-1338, 2018.[PUBMED Abstract]
  7. Novartis Pharmaceuticals Corporation: TASIGNA (nilotinib): Prescribing Information. East Hanover, NJ: Novartis, 2018. Available online. Last accessed April 7, 2022.[PUBMED Abstract]
  8. Giona F, Putti MC, Micalizzi C, et al.: Long-term results of high-dose imatinib in children and adolescents with chronic myeloid leukaemia in chronic phase: the Italian experience. Br J Haematol 170 (3): 398-407, 2015.[PUBMED Abstract]
  9. Ross DM, Branford S, Seymour JF, et al.: Safety and efficacy of imatinib cessation for CML patients with stable undetectable minimal residual disease: results from the TWISTER study. Blood 122 (4): 515-22, 2013.[PUBMED Abstract]
本要約の最新更新(06/14/2024)

PDQがん情報要約は、定期的にレビューされ、新たな情報が得られ次第更新される。このセクションでは、上記の日付で本要約に加えられた最新の変更内容を記載する。

小児CMLの治療

ボスチニブの第II相推奨用量を決定した小児を対象とする第I相研究の結果に関する記載を追加した(参考文献17としてBrivio et al.を引用)。

再発または難治性小児CMLの治療

再発または難治性白血病の小児患者が参加できる実施中の臨床試験としてNCT03934372を追加した。

本要約の作成および更新作業はPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが行っており、同委員会は編集面においてNCIから独立している。本要約は独自に実施した文献レビューの結果を反映するものであり、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ Editorial Boardsの要約方針および役割に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseのページを参照のこと。

本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、小児慢性骨髄性白血病の治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。医療上の意思決定のための正式なガイドラインや推奨事項を提供するものではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardにより定期的にレビューされ、随時更新される。本要約は独自の文献レビューの結果を反映したものであり、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、直近で発表された記事をレビューし、個々の記事について以下を行うべきかどうかを判断する:

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

本要約の内容についてコメントまたは質問がある場合は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govに連絡されたい。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

証拠レベル

本要約で引用されている参考文献の一部には証拠レベルの指定が明記されている。それらの指定は、読者が特定の介入またはアプローチの利用を支持している証拠の強さを評価する上で参考になることを意図したものである。PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardは、証拠レベルの指定を策定するにあたり公式順位分類を使用している。

本要約の使用許可

PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約として特定することはできない。ただし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋】.”のような一文を記載することができる。

本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board. PDQ Childhood Chronic Myeloid Leukemia Treatment. Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/types/leukemia/hp/child-aml-treatment-pdq/childhood-cml-treatment-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

免責条項

入手可能な証拠の強さに基づき、治療選択肢は「標準」または「臨床評価段階にある」のいずれかで記載される。これらの分類は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。