ご利用について
このPDQがん情報要約では、小児子宮頸がんと腟がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 小児子宮頸がんと小児腟がん
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小児子宮頸がんと小児腟がんは、非常にまれながんです。子宮頸がんは子宮頸部の細胞で発生し、腟がんは腟の細胞で発生します。子宮頸部とは、子宮(胎児の成長の場となる、洋ナシの形をした中空の臓器)下方の狭くなった部分です。子宮頸部は子宮から腟(産道)への移行部にあたります。腟は子宮頸部と体外をつなぐ管状の臓器です。出産時には、腟を通って新生児が体外へ出て行きます。がんの発生の詳細については、がんとは何か(英語)をご覧ください。
女性生殖系の解剖図。女性生殖系の臓器としては、子宮、卵巣、卵管、子宮頸部、腟などがあります。子宮は子宮筋層と呼ばれる筋肉の外層と子宮内膜と呼ばれる内側の膜で構成されています。 小児子宮頸がんと小児腟がんの症状
小児の子宮頸がんと腟がんでよくみられる症状は、腟からの出血です。他の病態が腟出血の原因である場合もあります。お子さんに腟出血がみられた場合は、担当医に知らせることが重要です。医師は診断に向けた第一歩として、症状がいつから始まり、どのくらいの頻度で起きているかを質問します。
小児の子宮頸がんと腟がんの診断に用いられる検査
小児に腟がんや子宮頸がんを示唆する症状がみられる場合、それらの原因ががんなのか、それとも別の病態なのかを医師が確認する必要があります。医師は保護者に小児の病歴と家族歴をたずね、身体診察を行うことがあります。
医師は、患者さんの症状、病歴、身体診察の結果に基づき、腟がんまたは子宮頸がんの有無を調べる検査と、がんがあった場合にがんの拡がりの程度(病期)を調べる検査を受けるように勧めることがあります。子宮頸がんや腟がんを診断するために行われた検査や手技の結果は、治療に関する決定を下すための検討材料になります。
小児の子宮頸がんまたは腟がんの診断と病期診断では、以下の検査や手技が行われることがあります:
子宮頸部細胞診
子宮頸部細胞診(パパニコロウ試験やパパニコロウ塗抹検査とも呼ばれる)では、柔らかくて細いブラシや小さなへらを使用して、子宮頸部や腟の表面から細胞を採取します。採取された細胞を顕微鏡で観察して、異常がないかを調べます。
生検
経腟的針生検は、超音波画像のガイドに従って針で組織を採取する手技です。その組織を病理医が顕微鏡で観察して、がんの徴候がないか調べます。
血清腫瘍マーカー検査
血清腫瘍マーカーは、腟がんや子宮頸がんの細胞が作る物質や、それらのがんに対する反応として体が作り出した物質が血液中に放出されたものです。この検査では、血液のサンプルを検査室で分析して、体内の臓器、組織、腫瘍細胞から血液中に放出された特定の物質の量を測定します。
超音波検査
超音波検査は、周波数の高い音波(超音波)を骨盤内の組織や臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法です。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。
MRI(磁気共鳴画像)検査
MRI検査は、磁気と電波を用いて骨盤などの体内領域の精細な連続画像を作成する検査法です。画像はコンピュータによって作成されます。この検査法は核磁気共鳴画像法とも呼ばれます。
CTスキャン
CTスキャンは、骨盤などの体内の領域を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法です。それらの画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。この検査法はコンピュータ断層撮影とも呼ばれます。詳細については、CTスキャンとがん(英語)をご覧ください。
CT(コンピュータ断層撮影)スキャン。患者さんが台の上に横たわり、その台がCT装置の中を水平に移動する間に、体内の精細なX線画像が連続で撮影されます。 セカンドオピニオンを受ける
小児の子宮頸がんまたは腟がんの診断を確定して治療計画を立てるにあたって、保護者はセカンドオピニオンを求めることができます。セカンドオピニオンを求めるときは、最初の担当医に重要な医学的検査の結果と報告書を提供してもらい、それらを別の医師に見せる必要があります。2人目の医師は、病理報告書、スライド、検査画像を確認してから、推奨を提示します。セカンドオピニオンを行う医師は、最初の医師の見解に同意するか、アプローチの変更や別のアプローチを提案したり、患者さんのがんについて新たな情報を提供したりします。
医師を選んでセカンドオピニオンを受けるプロセスの詳細については、がん治療の医療機関を探す(英語)をご覧ください。セカンドオピニオンを提供できる医師や病院の情報については、NCIのCancer Information Serviceまで、チャット、電子メール、電話(英語とスペイン語に対応)でお問い合わせください。受診時に聞いておくとよい質問については、がんについて主治医に尋ねるべき質問(英語)をご覧ください。
子宮頸がんと腟がんの病期
がんの病期とは、腫瘍の大きさ、転移の有無、最初の発生部位からどれくらい離れて転移しているかなど、体内でのがんの拡がりの程度を表す指標です。最善の治療計画を立てるには、子宮頸がんや腟がんの病期を把握しておくことが重要です。
がんの拡がりの程度を記述する枠組みである病期分類システムがいくつかあります。国際産科婦人科連合(FIGO)の病期分類システム(FIGO分類)は、子宮頸がんと腟がんに適用されます。病理報告には、この病期分類システムで表された病期が記載されていることがあります。FIGO分類に基づいて、がんにI期、II期、III期、IV期(1期、2期、3期、4期と書かれることもあります)の病期が割り当てられます。医師との面会時に病期についての説明を受けることもあります。
小児の子宮頸がんと腟がんの診断や病期診断に用いられる検査法と手技についての説明をご覧ください。
再発子宮頸がんまたは再発腟がん
再発がんとは、治療後に再発したがんのことです。子宮頸がんや腟がんは、子宮頸部または腟に再発する場合があり、転移性腫瘍として体の他の部位に再発することもあります。がんが再発した場所、拡がっているかどうか、拡がりの程度を明らかにするために、検査が行われます。がんが再発した場合の治療法は、がんの拡がりの程度によって異なります。
詳しい情報については、再発がん:がんが再び発生する場合(英語)をご覧ください。
小児の子宮頸がんと腟がんの治療法
小児と青年の子宮頸がんまたは腟がんに対する治療法には様々なものがあります。保護者と担当のがん治療チームが協力して、治療法を決定します。小児の全体的な健康状態や、がんが新たに診断されたものかそれとも再発したものかなど、数多くの要因が検討されます。
治療は小児がんの治療を専門とする小児腫瘍医が監督します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通しつつ、同時に特定の医療分野を専門とする他の小児医療従事者と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門医や専門家です:
小児の治療計画では、がんについての情報、治療の目標、治療選択肢、起こりうる副作用などが検討対象に含まれます。これは、治療に先立って担当のがん治療チームと今後の見通しを話し合う上で役に立ちます。実際の進め方については、NCIのがんの小児:ご両親のための手引き(英語)というダウンロード可能な小冊子をご覧ください。
子宮頸がんの診断を受けると、治療が小児の生殖能力に及ぼす悪影響が気になることでしょう。治療を開始する前に、小児のがん治療チームと治療後に起きうることについて話し合ってください。詳しい情報やサポートについては、がんの女児や女性に発生する生殖能力の問題(英語)をご覧ください。
手術
手術は、子宮頸部または腟からがんを可能な限り切除することを目的として行われます。手術後にがん細胞が残存している場合や、リンパ節への転移がみられる場合は、追加の治療が必要になることがあります。
詳しい情報については、手術によるがん治療(英語)をご覧ください。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。子宮頸がんや腟がんには、ときに外照射療法による治療が行われることがあります。この種の放射線療法では、体外に設置された装置を用いて、がんがある部分に放射線を照射します。放射線療法は単独で行われることもあれば、化学療法など他の種類の治療と併用されることもあります。
詳細については、がんの外照射療法(英語)と放射線療法の副作用(英語)をご覧ください。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止するがん治療です。腟がんまたは子宮頸がんの治療では、化学療法薬が静脈に注射されます。この方法で投与すると、薬剤を血流に入れて、全身のがん細胞に到達させることができます。
化学療法が小児の子宮頸がんや腟がんに有効かどうかは明らかになっていませんが、成人の子宮頸がんまたは腟がんの治療で広く使用されているカルボプラチンやパクリタキセルなどの薬剤が、小児にも用いられることがあります。
化学療法の効果、投与方法、よく発生する副作用などの詳細については、化学療法によるがん治療(英語)と化学療法:がんの患者さんへの支援(英語)をご覧ください。
臨床試験
治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象に、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。患者さんによっては、臨床試験に参加することが選択肢の1つとなる場合もあります。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
臨床試験の詳細については、患者さんと介護者のための臨床試験情報(英語)をご覧ください。
小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討するべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
新たに診断された小児子宮頸がんと腟がんの治療
新たに診断された小児子宮頸がんと腟がんに対する治療法には以下のようなものがあります:
小児の子宮頸がんと腟がんは、ときに治療後に再発することがあります。お子さんが再発子宮頸がんまたは再発腟がんと診断された場合、担当医はあなたとともに治療計画を立てます。
治療の副作用
がんの治療中に発生する副作用に関する詳しい情報については、がん治療の副作用(英語)のページをご覧ください。
がん治療による副作用のうち、治療後に始まって月単位または年単位で続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。治療の晩期合併症(晩期障害)として、生殖能力の問題などの身体的な問題が生じることがあります。
晩期合併症(晩期障害)には治療やコントロールが可能なものもあります。治療によってお子さんに生じうる晩期合併症(晩期障害)について担当の医師とよく相談することが重要です。詳しい情報については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。
フォローアップ検査
がんの診断のために実施された検査の中には、治療の効果を確認するために繰り返し行われるものもあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。
治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、お子さんの状態の変化やがんの再発の有無を知ることができます。それらの検査はフォローアップ検査や定期検査と呼ばれることがあります。
対処とサポート
小児ががんを発症すると、そのご家族全員に対してサポートが必要になります。がんになった子にも兄弟姉妹にも、保護者が正直に落ち着いて話をすることで、信頼が生まれます。この困難な時期には、保護者が自分自身のことに気を配ることも重要になります。担当の治療チームやご家族や地域の人々に助けを求めましょう。詳細については、小児がん患者さんのご家族のためにという記事と、がんの小児:ご両親のための手引き(英語)という冊子をご覧ください。