ご利用について
このPDQがん情報要約では、小児唾液腺腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 唾液腺腫瘍とは
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唾液腺腫瘍は、唾液腺の組織が異常に増殖したものです。良性(がんではない)の場合もあれば、悪性(がん)の場合もあります。良性腫瘍は体のほかの部位に転移することはありませんが、際限ない増殖や周辺組織の圧迫を阻止しりために治療が必要になることがあります。悪性腫瘍はほかの部位に転移する可能性があり、がん細胞を死滅させる治療の対象になります。唾液腺腫瘍が小児に発生することはまれです。
唾液腺は唾液を作って口の中に分泌しています。唾液には食物の消化を助ける酵素と、口や喉を感染から保護する抗体が含まれています。主要な唾液腺として、以下の3つが左右にあります:
唾液腺の解剖図。主要な唾液腺として、耳下腺、舌下腺、顎下腺の3つが左右にそれぞれあります。 - 小児唾液腺腫瘍の原因とリスク因子
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小児の唾液腺腫瘍は、唾液腺細胞の挙動、特に成長して新しい細胞に分裂する過程での挙動が変化することによって発生します。そうした細胞の変化が生じる正確な原因は多くの場合、不明です。がんの発生の詳細については、がんとは何か(英語)をご覧ください。
リスク因子とは、疾患が発生する可能性を増大させるあらゆる要因のことです。がんに対して化学療法または放射線療法を受けた経験があることは、小児唾液腺腫瘍のリスク因子の1つです。このリスク因子をもっている全ての小児が唾液腺腫瘍を発症するわけではありません。また、リスク因子が認められない小児が発症することもあります。お子さんにリスクがあるかもしれないと思われる場合は、担当の医師に相談してください。
- 小児唾液腺腫瘍の症状
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小児の唾液腺腫瘍では、腫瘍が大きくなるまで症状が現れないことがあります。以下の症状がみられる場合は、お子さんの担当医に相談するべきです:
これらの症状は、唾液腺腫瘍以外の病態によって引き起こされることもあります。状況を把握する唯一の方法は、担当医の話を聞くことです。
- 小児唾液腺腫瘍の診断に用いられる検査
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小児に唾液腺腫瘍をを示唆する症状がみられる場合、それらの原因が唾液腺腫瘍なのか、それとも別の問題なのかを医師が確認する必要があります。医師は症状がいつから始まり、どのくらいの頻度で起きているかを質問します。医師はまた、保護者に小児の病歴と家族歴をたずね、身体診察を行います。それらの結果に応じて、ほかの検査を勧めることもあります。それらの検査の結果は、唾液腺腫瘍と診断された場合に保護者と担当医で治療計画を立てるのに役立ちます。
小児の唾液腺腫瘍の診断に用いられることがある検査として、以下のものがあります:
MRI(磁気共鳴画像)検査
MRI検査は、磁気、電波、コンピュータを用いて頭部と頸部など体の一部分の精細な連続画像を作成する検査法です。この検査法は核磁気共鳴画像法とも呼ばれます。
MRI(磁気共鳴画像)スキャン。患者さんが台の上に横たわり、その台がMRI装置の中を水平に移動する間に、体内の精細な画像が連続で撮影されます。台の上で患者さんがとる姿勢は、撮影する体の部位によって異なります。 CTスキャン
CTスキャンは、X線装置に接続したコンピュータを用いて体内の領域の精細な連続画像を作成する検査法です。様々な角度から画像が撮影され、それらを用いて組織と臓器の3次元画像が作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影とも呼ばれます。詳細については、CTスキャンとがん(英語)をご覧ください。
頭頸部のCT(コンピュータ断層撮影)スキャン。患者さんが台の上に横たわり、その台がCT装置の中を水平に移動する間に、頭頸部の精細なX線画像が連続で撮影されます。 超音波検査
超音波検査は、周波数の高い音波(超音波)を骨盤など体内の組織や臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法です。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。
生検
生検とは、腫瘍から組織のサンプルを採取する手技のことで、採取されたサンプルは病理医が顕微鏡で観察して、がんの徴候がないか調べます。唾液腺がんの有無を調べる目的では、生検の一種である穿刺吸引細胞診が用いられます。穿刺吸引細胞診では、細い針を用いて組織や体液を採取します。
- セカンドオピニオンを受ける
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小児の診断を確定して治療計画を立てるにあたって、保護者はセカンドオピニオンを求めることができます。セカンドオピニオンを求めるときは、最初の担当医に医学的検査の結果と報告書を提供してもらい、それらを別の医師に見せる必要があります。2人目の医師は、病理報告書、スライド、検査画像を確認します。そして、最初の医師の見解に同意するか、治療計画の変更を提案したり、患者さんの腫瘍について新たな情報を提供したりします。
医師を選んでセカンドオピニオンを受けるプロセスの詳細については、がん治療の医療機関を探す(英語)をご覧ください。セカンドオピニオンを提供できる医師や病院の情報については、NCIのCancer Information Serviceまで、チャット、電子メール、電話(英語とスペイン語に対応)でお問い合わせください。受診時に聞いておくとよい質問については、がんについて主治医に尋ねるべき質問(英語)をご覧ください。
- 唾液腺腫瘍の小児の治療を担う医療従事者
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唾液腺腫瘍の治療は、小児がんの治療を専門とする小児腫瘍医が監督します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通しつつ、同時に他の医療分野を専門とする他の医療従事者と協力しながら治療に取り組んでいきます。その他の専門職としては以下のものがあります:
- 小児唾液腺腫瘍の治療
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小児と青年の唾液腺腫瘍に対する治療法には様々なものがあります。保護者と担当のがん治療チームが協力して、治療法を決定します。小児の全体的な健康状態や、腫瘍が新たに診断されたものかそれとも再発したものかなど、数多くの要因が検討されます。
小児の治療計画では、腫瘍についての情報、治療の目標、治療選択肢、起こりうる副作用などが検討対象に含まれます。これは、治療に先立って担当の治療チームと今後の見通しを話し合う上で役に立ちます。実際の進め方については、NCIのがんの小児:ご両親のための手引き(英語)をご覧ください。
唾液腺腫瘍に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 臨床試験
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臨床試験に参加することが選択肢の1つになる場合もあります。小児がんを対象とする臨床試験にはいくつかの種類があります。例えば、治療の臨床試験では、新しい治療法や既存の治療法の新しい利用方法を検証します。支持療法や緩和ケアの臨床試験では、生活の質を改善する方法が検討され、特にがんの影響やその治療による副作用がみられる人が対象になります。
臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。この検索では、がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて試験を絞り込むことができます。
詳細については、患者さんと介護者のための臨床試験情報(英語)をご覧ください。
- 小児唾液腺腫瘍の予後と予後因子
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子どもが唾液腺腫瘍と診断されると、多くの保護者は、そのがんの深刻度や生存の可能性を知りたくなるでしょう。がんがどのような経過をたどるかの見通しを予後といいます。予後は、診断時にがんがリンパ節や他の部位に転移していたかどうかや、がんが手術で完全に切除されたかどうかに影響を受けます。小児の唾液腺がんの予後は通常、良好です。
治療に対する反応には個人差があり、大きな差がみられる場合もあります。保護者が子どもの予後について知りたい場合は、担当のがん治療チームと話をするのが最善です。
- 治療の副作用と晩期障害
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がん治療は副作用を引き起こす可能性があります。起こりうる副作用は、受けている治療の種類、用量、体の反応によって異なります。注意すべき副作用とその対処法について、担当の治療チームとよく話をしてください。
がんの治療中に発生する副作用の詳細については、副作用(英語)のページをご覧ください。
がん治療による問題のうち、治療後6カ月以降に始まって月単位または年単位で続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:
- 以下のような身体的な問題:
- ドライマウス
- 視覚障害
- 顔面のしびれや顔面筋の筋力低下
- 頭部と顔面の骨の成長における変化
- 外見に関するその他の変化
- 気分、感情、思考、学習、記憶の変化
- 二次がん(新たに発生するがん)
晩期合併症(晩期障害)には治療やコントロールが可能なものもあります。治療によってお子さんに生じうる晩期合併症(晩期障害)について担当の医師とよく相談することが重要です。詳細については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。
- 以下のような身体的な問題:
- フォローアップケア
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治療を進めるにつれて、フォローアップ検査または定期検査が行われます。腫瘍の診断のために実施された検査の中には、治療の効果を確認するために繰り返し行われるものもあります。治療の継続、変更、中止などの決定がそれらの検査結果に基づいて判断されることもあります。
治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。それらの検査の結果から、患者さんの状態の変化や腫瘍が再発したかどうかを知ることができます。
- 子どものがんへの対処
小児が腫瘍を発症すると、そのご家族全員に対してサポートが必要になります。この困難な時期には、保護者が自分自身のことに気を配ることも重要になります。担当の治療チームやご家族や地域の人々に助けを求めましょう。詳細については、小児がん患者さんのご家族のためにという記事と、がんの小児:ご両親のための手引き(英語)という冊子をご覧ください。
- 関連資料
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小児がんに関するさらなる情報とがん全般に関するその他の資料については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、小児唾液腺腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。詳しい情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board. PDQ Childhood Salivary Gland Tumors. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/types/head-and-neck/patient/child/salivary-gland-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.
本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。
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