患者さん向け ブラック・コホッシュ(PDQ®)

    • 原文更新日:2022-06-02
    • 翻訳更新日:2023-03-27

ご利用について

このPDQがん情報要約では、がん患者さんを治療するためのブラック・コホッシュの使用に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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概要
ブラック・コホッシュに関する質問と回答
1.ブラック・コホッシュとは何ですか。

ブラック・コホッシュは北米の東部および中西部に自生するキンポウゲ科の植物です。学名はActaea racemosaです(Cimicifuga racemosaとも呼ばれます)。ブラック・コホッシュには、ブラック・スネークルートサラシナショウマ、ラトルスネーク・ルート、アメリカショウマ、スクァウルート、マクロトリスまたはマクロティスという別名もあります。ブラック・コホッシュの根茎と根はハーブサプリメントとして使用されています。

ブラック・コホッシュは元々アメリカインディアンやアラスカ先住民が使用していました。ブラック・コホッシュの抽出物は、ヨーロッパで50歳以上の人に生じた閉経期症状の治療として使用されてきました。ドイツでは、ブラック・コホッシュは、月経期間中の痛み、更年期症状、速脈、神経質、いらだち、睡眠の問題、耳鳴り、めまい、発汗、抑うつの治療薬として承認されています。

2.ブラック・コホッシュの投与または摂取方法はどのようなものですか。

ブラック・コホッシュは栄養補助食品として経口で摂取します。粉末ハーブ、ホールハーブ、液体、乾燥エキスの錠剤として販売されています。

3.ブラック・コホッシュを使用した基礎研究や動物試験にはどんなものがありますか。

基礎研究では、腫瘍細胞を使用して、特定の物質が抗がん作用をもつかどうかを調べます。動物試験では、特定の薬物、処置、治療法などが動物において安全で有効かどうかを調べる試験が行われます。基礎研究や動物試験は、ヒトを対象とした試験に先立って行われます。

ブラック・コホッシュの効果について研究する基礎研究や動物試験が行われています。ブラック・コホッシュを使用した基礎研究と動物試験の詳細については、ブラック・コホッシュに関する医療専門家向けの要約で、Laboratory/Animal/Preclinical Studies(基礎研究/動物試験/前臨床研究)のセクションを参照してください。

4.ヒトを対象としたブラック・コホッシュの研究は行われていますか。

乳がんの病歴のない閉経後女性を対象とした複数の観察研究で、ブラック・コホッシュと乳がん予防の間に関連は認められませんでした。しかし、1件の症例対照試験で、ブラック・コホッシュを摂取した閉経後女性は、ブラック・コホッシュを摂取しなかった閉経後女性に比べて乳がんリスクが53%減少しました。また1件の後ろ向きコホート研究で、ブラック・コホッシュの抽出物を摂取した乳がんの患者さんと乳がんの生存者再発のリスクが低いことが認められました。

オープンラベルで実施された複数の観察研究で、がん患者さんとがんでない人の閉経期症状に対するブラック・コホッシュの利益が認められました。しかし、臨床試験ではこれらの効果は検証されていません。

乳がんの患者さんと乳がんの生存者を対象にした複数の観察研究のレビューでは、閉経期症状に対するホルモン療法を受けた場合と受けていない場合に、ブラック・コホッシュ抽出物を含むハーブサプリメントを摂取したときの効果が検討されました。ブラック・コホッシュを摂取した患者さんは、ほてりやその他の閉経期症状を報告する数が少なく、それらの重症度も低いという結果になりました。ドイツで行われた1件の非盲検研究では、乳がんの生存者がブラック・コホッシュを摂取してホルモン療法を受けた場合に同様の結果がみられました。

5.ブラック・コホッシュについて副作用や何らかの危険性は報告されていますか。

ブラック・コホッシュの使用による副作用はほとんど報告されていません。最もよく報告された副作用は吐き気関節痛、発疹です。副作用はブラック・コホッシュ自体より、製品品質の問題に関連している可能性が高いようです。

数件の研究で、ブラック・コホッシュと他の薬剤との相互作用のリスクは低いという報告が行われています。1件の研究で、コレステロールの濃度を下げるスタチンなどの薬剤の効果をブラック・コホッシュが弱める可能性が指摘されています。

6.米国食品医薬品局(FDA)は、米国でブラック・コホッシュをがんの治療として使用することを承認していますか。

FDAは、ブラック・コホッシュをがんやその他の病の治療薬として使用することを承認していません。

米国では、ブラック・コホッシュは栄養補助食品として入手することができます。FDAは栄養補助食品の安全性と有効性に関する承認を行いません。栄養補助食品の製造者には、安全な栄養補助食品を製造し、正確なラベル表示を記載して、消費者の誤解を招かないようにする責任があります。栄養補助食品の製法はFDAにより規制されていないため、ブラック・コホッシュの栄養補助食品の製造ロットや銘柄によって内容が異なる可能性があります。

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、がん患者さんを治療するためのブラック・コホッシュの使用に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Board.PDQ Black Cohosh.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/cam/patient/black-cohosh-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

補完代替医療(CAM)についての一般的な情報

補完代替医療(CAM)は、統合的医療とも呼ばれ、ヒーリングに関する原理やアプローチ、治療法などを幅広く意味します。従来の治療に加えて実施する場合は補完療法と呼ばれ、また、従来の治療の代わりに実施する場合は、よく代替療法と呼ばれます(従来の治療とは医学界で広く受け入れられ、かつ主流となっている治療を意味します)。どのように用いられるかによって、補完療法とみなされる場合と、代替療法とみなされる場合があります。補完代替療法は、病気の予防やストレスの軽減、副作用や症状の予防と軽減、そして疾患の管理や治癒を目的として用いられます。

がんの従来の治療とは異なり、補完代替療法は保険が適用されないことが多くあります。患者さんは加入保険会社に、補完代替医療が保険の適用対象となっているかどうかを確認することをお奨めします。

補完代替療法を検討されているがん患者さんは、どんな治療法でも必ず、担当医や看護師、薬剤師と相談して意思決定を行ってください。補完代替療法の中には、標準治療を妨げるものや、従来の治療と併用した場合に有害となるものがあります。

補完代替医療(CAM)の治療法の評価

CAM療法は、従来の治療に対する検証と同じように、科学的な方法で検証することが重要です。米国国立がん研究所および米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)は医療施設において、がんに対するCAM療法の検証を行うための臨床試験(調査研究)を数多く主催しています。

一般的に、がんの治療における従来のアプローチは、多数の患者さんを対象とした臨床試験の実施など、科学的プロセスを経て、安全性や有効性が検討されています。それに比べ、補完代替医療の安全性や有効性についてはあまり知られていません。ほとんどのCAM療法は厳密な科学的方法で検証されていません。純粋に代替アプローチとみなされていた少数のCAM療法は、治癒を目指すものではなく、患者さんをより楽にし回復を早めるための補完医療として、がんの治療で用いられつつあります。1つの例が鍼療法です。1997年11月に開催された米国国立衛生研究所(NIH)の専門家委員会によると、鍼療法は化学療法に関連した吐き気や嘔吐、そして手術に関連した疼痛の管理を助けることがわかりました。一方で、レートリルの使用などのいくつかのアプローチは、検討の結果、効果がないか、または有害となりうることがわかりました。

1991年に始まったNCIのBest Case Series Programは、臨床で用いられているCAMアプローチの評価を行うプログラムの1つです。このプログラムはNCIのがん補完代替医療オフィス(OCCAM)の監視下で進められています。がん代替医療を行う医療専門家は、患者さんのカルテや関連資料をOCCAMに提出します。OCCAMはこれらの資料を慎重に検討し、さらに調査を行う価値があるかどうかを判断します。

補完代替医療(CAM)について医療提供者に質問すべきこと

補完代替療法を受けることを考えている場合、患者さんは主治医などの医療提供者に次の質問を行ってください。

補完代替医療(CAM)についてさらに知るには

米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)

米国国立衛生研究所(NIH)の国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、補完代替医療の研究および評価を促進し、医療専門家や一般の方を対象に様々なアプローチについての情報を提供しています。

CAM on PubMed

NCCIHおよびNIH国立医学図書館(NLM)は共同でCAM on PubMedを開発し、CAMに関連するジャーナルの記載内容を無料かつ簡単に検索できる機能を提供しています。NLMの図書目録データベースのサブセットとして、CAM on PubMedには様々な科学ジャーナルのCAMに関連する論文から、230,000を超える文献や抄録が登録されています。このデータベースはさらに、1,800を超えるジャーナルにリンクしており、ユーザーが論文全文を参照できるようになっています(論文全文を参照するには、購読料などの費用が発生する場合があります)。

がん補完代替医療オフィス

NCIのがん補完代替医療オフィス(OCCAM)は、補完代替医療(CAM)の分野におけるNCIの活動をコーディネートしています。OCCAMはCAMのがん研究をサポートし、がんに関連するCAMについての情報を、NCIのウェブサイトを通して医療提供者や一般の方に提供しています。

米国国立がん研究所(NCI)のがん情報サービス

米国にお住まいの方は、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)にフリーダイヤル+1-800-4-CANCER(+1-800-422-6237)で電話をすることができます(月曜日から金曜日の午前9時から午後9時まで)。訓練を受けたがん情報スペシャリストが質問にお答えします。

食品医薬品局

食品医薬品局(FDA)は、薬物や医療機器を規制し、それらの安全性と有効性を確保しています。

連邦取引委員会

連邦取引委員会(FTC)は消費者保護法を施行しています。FTCから入手可能な出版物は以下の通りです: