患者さん向け 小児膀胱がんの治療

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このPDQがん情報要約では、小児膀胱がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小児膀胱がん

小児膀胱がんは、膀胱の組織に発生する非常にまれながんです。

膀胱は腹部の下部に位置する風船型をした中空の臓器で、尿を貯留する場所です。膀胱の壁は筋肉でできていて、腎臓で作られた尿が溜まってくると伸長し、尿が体外に排出されると収縮することができます。腎臓は、腰の高さで背骨の両側に位置する左右一対の臓器です。膀胱と腎臓はともに、体内の毒素や老廃物を尿中に排出する役割を担っています:

泌尿器系の解剖図:図は、左右の腎臓、尿管、尿で満たされた膀胱、尿道を示している。左の腎臓内部には腎盂が示されている。拡大図は、尿細管と尿を示している。脊椎と副腎も描かれている。

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左右の腎臓、尿管、膀胱、尿道を示している泌尿器系の解剖図。左の腎臓内部には腎盂が示されています。拡大図は、尿細管と尿を示しています。脊椎と副腎も描かれています。尿は尿細管で作られ、それぞれの腎臓の腎盂に集められます。尿は腎臓から尿管を通って膀胱に流れます。尿は膀胱に溜められた後、尿道を通って体外へ排出されます。

尿路上皮がん(移行上皮がんとも呼ばれる)は、尿道、膀胱、尿管、腎盂などの臓器の内表面を覆う尿路上皮細胞から発生するがんです。尿路上皮の細胞は、膀胱が尿で一杯になると伸長し、空になると収縮するといったように、形状を変化(移行)させることができるので、移行上皮細胞と呼ばれます。尿路上皮がんは、小児の膀胱がんで最もよくみられるがんです。

扁平上皮がんなどの侵攻性の膀胱がんは、小児では比較的まれです。

小児膀胱がんのリスク因子

膀胱がんは、膀胱の細胞の挙動が変化することで発生し、なかでも細胞が成長し新しい細胞に分裂する仕方が変わると、大きな原因になります。がんの発生の詳細については、がんとは何か(英語)をご覧ください。

以下のようなアルキル化剤という抗がん剤によるがん治療を受けた小児では、膀胱がんのリスクが高くなります: シクロホスファミド、 イホスファミド、 ブスルファン、 テモゾロミド。また、遺伝性網膜芽細胞腫の生存者でも、膀胱がんの発生リスクが高くなります。これらのリスク因子を持つ小児が必ず膀胱がんになるわけではありませんし、既知のリスク因子を一切持たない小児が膀胱がんになることもあります。お子さんのリスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。

小児膀胱がんの症状

膀胱がんの症状は人によって様々です。膀胱がんでよく現れる症状の1つは、尿に血液が混じる血尿です。若干のさび色から明るい赤色の血尿が多くみられます。一時期、小児の尿に血液が混じるようになり、その後、しばらく現れないといった場合もあります。検査でなければわからない程度の、ごく少量の血液が尿に混じっていることもあります。

膀胱がんでよくみられる他の症状には、以下のようなものがあります:

担当医とともに、小児にこれらの症状があるかどうかを確認することが重要です。がんではなく、尿路感染症や腎結石、膀胱結石などの腎臓に関連する問題が原因で発生する病態の可能性もあります。担当医は、小児の症状がいつ始まったか、どのくらいの頻度で起きているかという質問をするでしょう。また多くの場合に、これらの症状の原因を診断するための第一歩として、保護者に小児の尿サンプルを採取するよう依頼します。

小児膀胱がんを診断するための検査

小児に膀胱がんを示唆する症状や臨床検査の結果がみられる場合、医師はその原因ががんなのか、それとも他の状態なのかを確認する必要があると考えます。それを調べるために、医師は以下の調査を行うことがあります:

小児の症状や病歴、身体診察と尿検査の結果に基づいて、医師は小児に膀胱がんがあるかどうかを調べる検査を受けるように勧め、膀胱がんがあった場合は、加えてその程度(病期)を判定する検査も勧めることがあります。膀胱がんを診断するために行われた検査や手技の結果は、治療に関する決定を下すためにも利用されます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

CTスキャン(CATスキャン)

CTスキャン(CATスキャン)は、骨盤などの体内の領域を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法です。この画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。詳細については、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンとがん(英語)をご覧ください。

コンピュータ断層撮影(CTスキャン):図のように小児が台の上に横たわり、この台がCT装置内を水平に移動するうちに、体内の精細なX線画像が連続で撮影される。

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コンピュータ断層撮影(CTスキャン)。小児の患者さんが台の上に横たわり、この台がCTスキャナ内を水平に移動するうちに、体内の精細なX線写真が連続で撮影されます。

超音波検査

超音波検査は、高エネルギーの音波(超音波)を骨盤などの内部の組織や臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法です。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。

腹部超音波検査:診察台の上に横たわり腹部超音波検査を受けている小児の様子が示されている。技師は、小児の腹部表面に振動子(音波を発生させ、体内の組織で反射させる装置)をあてている。コンピュータの画面にはソノグラム(画像)が描画されている。

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腹部超音波検査。コンピュータに接続された超音波振動子を腹部の皮膚に押しあてます。振動子から出た音波は体内の臓器および組織で反射してエコーを生じ、そのエコーからソノグラム(コンピュータ画像)が作成されます。

膀胱鏡検査

膀胱鏡検査は、膀胱と尿道(尿を体外まで運ぶ管)の内部を観察して、異常な部分がないかを調べる検査法です。医師が膀胱鏡を尿道から膀胱へとゆっくり挿入し、内部を観察します。膀胱鏡とは、観察用のライトとレンズを備えた細いチューブ状の器具のことです。生検時に非常に小さな腫瘍や組織のサンプルを切除できるツールを備えた膀胱鏡もあります。診断時に膀胱鏡検査が行われなかった場合は、膀胱の全部または一部を切除する手術中に組織のサンプルを採取し、がんの有無を調べます。

セカンドオピニオンを受けるには

保護者は小児の膀胱がんの診断や治療計画を確認するために、セカンドオピニオンを必要とすることがあります。セカンドオピニオンを求めるときは、最初の担当医に重要な医学的検査の結果と報告書を出してもらい、それを別の医師に見せる必要があります。2番目の医師は、病理報告、スライド、検査画像を確認して、推奨を行います。セカンドオピニオンを行う医師は、最初の医師に同意することもあれば、アプローチの修正や別のアプローチの提案をしてくれたり、お子さんのがんについてより多くの情報を提供してくれることがあります。

医師を選んでセカンドオピニオンを受けることについては、医療サービスを探す(英語)をご覧ください。セカンドオピニオンを提供できる医師や病院の情報については、NCIのCancer Information Serviceまで、チャット、電子メール、電話(英語とスペイン語に対応)でお問い合わせください。面会時に聞いておきたい質問内容については、がんについて主治医に尋ねる質問(英語)をご覧ください。

小児膀胱がんの予後

小児が膀胱がんの診断を受けた場合に、保護者はがんの深刻度や生存の確率について疑問を抱くことがあります。それ以降、がんがどうなっていくかの見通しは、予後と呼ばれます。

予後は、手術でがんが切除できるかどうかにより変わることがあります。通常、小児での膀胱がんは低悪性度の(転移する可能性が低い)疾患であり、一般に手術で腫瘍を切除した後の予後は非常に良好です。

小児膀胱がんの治療の種類

小児や青年の膀胱がんには様々な治療法が存在します。保護者は小児のがん治療チームと協力して、治療法を決定します。小児の全体的な健康状態や、がんが新たに診断されたものかそれとも再発したものかなど、数多くの要因が検討されます。

小児がんの治療を専門とする小児腫瘍医が治療を監督します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とする他の小児医療専門家と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門家が挙げられます:

小児の治療計画には、がんについての情報、治療の目標、治療選択肢、起こりうる副作用などが含まれます。治療に先立って、保護者が小児のがん治療チームと今後の見通しを話し合うための資料になります。実際の進め方については、NCIのがんの小児:ご両親のための手引き(英語)というダウンロード可能な小冊子をご覧ください。

手術

小児膀胱がんの標準治療は、がんと膀胱の一部または全部を切除する手術です。施行される手術の種類は、がんが存在する場所とがんが侵攻性か否かによって異なります。

膀胱がんの手術が排尿、性機能、生殖能力に及ぼす影響について、小児の担当医から説明を受けるようにします。詳細については、がんの女児や女性に発生する生殖能力の問題(英語)がんの男児や男性に発生する生殖能力の問題(英語)をご覧ください。

経尿道的切除術(TUR)

TURでは、医師が尿道から膀胱に切除用内視鏡を挿入し、膀胱の組織を切除します。切除用内視鏡とは観察用のライトとレンズを備えた細いチューブ状の器具で、組織を切除し、残った腫瘍細胞を焼くことができます。腫瘍を切除した領域から採取された組織サンプルについて、顕微鏡でがんの徴候の有無を調べます。

膀胱切除術

膀胱の一部または全部を切除する手術である膀胱切除術は、小児膀胱がんの治療で使用されることはほとんどありません。しかし、扁平上皮がんや侵攻性の強いがんの小児に必要となることがあります。

臨床試験

治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。患者さんによっては、臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

臨床試験の詳しい情報については、患者さんと介護者向けの臨床試験の情報(英語)をご覧ください。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

標的療法

標的療法は再発した(再び現れた)小児膀胱がんの治療法として研究されています。標的療法では、薬物などの物質を使用して、がん細胞の増殖と転移に関連する酵素蛋白、またはその他の分子の働きを阻害します。詳しい情報については、標的療法によるがん治療(英語)をご覧ください。

新たに診断された小児膀胱がんの治療

新たに診断された小児膀胱がんの治療法は通常、以下の手術です:

これらの治療法については、治療の種類のセクションをご覧ください。

再発小児膀胱がんの治療

再発した(再び現れた)小児の膀胱がんの治療法には、以下のようなものがあります:

臨床試験については、治療の種類のセクションをご覧ください。

治療の副作用

詳しい情報については、がん治療の副作用(英語)をご覧ください。

がんの治療の副作用のうち、治療後に始まり、何ヵ月または何年も続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:

晩期合併症(晩期障害)には治療や制御することが可能なものもあります。治療によってお子さんに生じうる晩期合併症(晩期障害)について担当の医師とよく相談することが重要です。詳しい情報については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。

フォローアップ検査

がんの診断のために実施される検査は、治療の効果を確認するために繰り返し行われることがあります。

治療後に膀胱がんが再発する(再び現れる)場合は、通常は診断から3年以内に再発します。手術後も、本人の状態が変化していないか、あるいはがんが再発していないかを調べる検査が度々行われます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

対処とサポート

子供ががんになったときは、家族全員にサポートが必要になります。がんになった子にも兄弟姉妹にも、保護者が正直に落ち着いて話をすることで、信頼が生まれます。この大変な時期を過ごす間、保護者が自身の健康に配慮することも重要です。お子さんの治療チームとの連絡を欠かさず、家族やコミュニティの人々に支援を求めるようにしてください。詳細については、がんの子供がいる家族に対するサポート(英語)をご覧ください。