患者さん向け 小児消化管神経内分泌腫瘍の治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小児消化管神経内分泌腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小児消化管神経内分泌腫瘍についての一般的な情報

消化管神経内分泌腫瘍は、消化管の内壁、虫垂、その他の腹部臓器に存在する神経内分泌細胞で発生します。

消化管神経内分泌腫瘍(消化管カルチノイドとも呼ばれます)は、特定の種類の神経内分泌細胞神経細胞ホルモン産生細胞に似た細胞)から発生します。これらの細胞は胸部と腹部の全体に散在していますが、ほとんどは腹部のいくつかの臓器に認められます。消化管の神経内分泌細胞は、食物をからに送る際に使われる筋肉や消化液を調節するホルモンを生成します。

ほとんどの小児消化管神経内分泌腫瘍は、虫垂小腸末端部に近い、大腸の最初の部分から突き出ている小さな袋)に発生します。この腫瘍は、虫垂を切除する手術の際に発見されることがよくあります。また、消化管(胃、の内壁)、膵臓肝臓にも発生します。

これらの腫瘍は通常、小型で増殖が遅く、良性です(がんではありません)。しかし、一部の腫瘍は悪性(がん)であり、体内の他の部位に転移します。

図には、肝臓、胃、膵臓、小腸、結腸、虫垂などの消化管が示されている。

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消化管神経内分泌腫瘍は、消化管の内壁、およびその他の腹部臓器に発生します。ほとんどの小児消化管神経内分泌腫瘍は虫垂に発生しますが、胃、腸、膵臓、肝臓に発生することもあります。

消化管神経内分泌腫瘍の徴候や症状は、腫瘍が形成される場所により異なります。

お子さんに消化管神経内分泌腫瘍や他の病態によって引き起こされる徴候症状の疑いがある場合は、担当医の診察を受けてください。

虫垂の神経内分泌腫瘍は、以下のような徴候や症状を引き起こすことがあります:

虫垂以外の部分に生じた消化管神経内分泌腫瘍は、ホルモンなどの物質を分泌することがあります。消化管の神経内分泌腫瘍がセロトニンというホルモンなどの物質を分泌すると、カルチノイド症候群が起こる場合があります。その場合は、以下のような徴候や症状がみられることがあります。お子さんに以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:

消化管神経内分泌腫瘍の診断には消化管、肝臓、膵臓を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)に影響を及ぼします。

予後を左右する因子には以下のものがあります:

小児の虫垂に生じた神経内分泌腫瘍は、腫瘍を切除する手術以後の予後が通常は非常に良好です。虫垂以外に発生した消化管神経内分泌腫瘍は、たいてい大型であるか診断時に他の部位に転移しており、化学療法にあまり反応しません。大型の腫瘍は再発しやすい傾向がみられます。

消化管神経内分泌腫瘍の病期

消化管神経内分泌腫瘍の診断後に、がん細胞が周辺領域に拡がっているかどうか、他の部位に転移しているかどうかを明らかにするための検査を行います。

がんの周辺領域への拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。小児消化管神経内分泌腫瘍には、標準的な病期分類システムはありません。

虫垂神経内分泌腫瘍が拡がるかどうかは明らかになっていませんが、他の種類の消化管神経内分泌腫瘍は周辺に拡がったり他の部位に転移したりすることがあります。消化管神経内分泌腫瘍を診断するために行われた検査や手技の結果は、治療に関する決定を下すためにも利用されます。

小児消化管神経内分泌腫瘍は治療後に再発する(再び現れる)ことがあります。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、小腸の神経内分泌腫瘍細胞が肝臓に転移した場合、肝臓にできたがん細胞は、実際は神経内分泌腫瘍細胞です。この肝臓の細胞は転移性神経内分泌腫瘍細胞であり、肝がんではありません。

治療選択肢の概要

小児消化管神経内分泌腫瘍の患者さんには様々な治療法が存在します。

その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

小児の虫垂に生じた消化管神経内分泌腫瘍の治療では、小児がんの治療に精通した医師のチームが治療計画を作成するべきです。

この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が統括します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とする他の小児医療専門家と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門家が挙げられます:

標準治療として以下の5種類が用いられています:

手術

虫垂神経内分泌腫瘍に必要な治療は、腫瘍を切除する手術のみです。

塞栓術

塞栓術は、造影剤と粒子をカテーテルという細い管を通して肝動脈注入する治療法です。注入された粒子が動脈を塞ぎ、腫瘍への流を遮断します。少量の放射性物質とこれらの粒子を結合させて投与する場合もあります。そうすると大半の放射線が腫瘍に照射されるようになり、がん細胞を殺傷します。この治療法は放射線塞栓術と呼ばれます。

ホルモン療法

ソマトスタチンアナログオクトレオチドまたはランレオチド)を用いるホルモン療法は、転移したまたは手術で切除できない消化管神経内分泌腫瘍の治療に用いられることがあります。この治療は、神経内分泌腫瘍による過剰なホルモンの分泌を抑止します。ソマトスタチンアナログであるオクトレオチドまたはランレオチドを皮膚下または筋肉内に注射します。

ペプチド受容体放射性核種療法

がん細胞を殺傷するために、少量の放射性物質をオクトレオチドやランレオチドといったソマトスタチンアナログに結合させることがあります。

標的療法

標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物や物質を用いる治療法です。標的療法では一般に、化学療法放射線療法に比べて、正常な細胞に及ぼす害が少なくなります。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

消化管神経内分泌腫瘍の治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療中に発生する副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

がんの治療の副作用のうち、治療後に始まり、何ヵ月または何年も続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:

晩期合併症(晩期障害)には治療や制御することが可能なものもあります。治療によってお子さんに生じうる晩期合併症(晩期障害)について担当の医師とよく相談することが重要です。詳しい情報については、PDQの小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)に関する要約をご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、お子さんの状態の変化やがんの再発の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

消化管神経内分泌腫瘍の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

新たに診断された小児の虫垂における神経内分泌腫瘍の治療法には以下のようなものがあります:

新たに診断された大腸膵臓の神経内分泌腫瘍の治療法は通常、手術です。

新たに診断された手術で切除できない腫瘍、複数の腫瘍、または他の部位に転移した腫瘍の治療法には、以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発消化管神経内分泌腫瘍の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

小児の再発消化管神経内分泌腫瘍の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

消化管神経内分泌腫瘍についてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している消化管神経内分泌腫瘍に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小児がんに関する情報と一般的ながんに関するその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児消化管神経内分泌腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board. PDQ Childhood Gastrointestinal Neuroendocrine Tumors Treatment. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/types/gi-neuroendocrine-tumors/patient/child-gi-neuroendocrine-treatment-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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