患者さん向け 肛門がんの予防(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、肛門がんの予防に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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予防とは

がん予防とは、がんになる可能性を減らすためにとる対策です。がんを予防することで、集団または人口におけるがんの新規症例の数が減少します。うまくいけば、それによって、がんによる死亡者の数が減ることにもつながります。

新たながんの発生を予防するため、科学者たちはリスク因子防御因子に注目します。がん発生の可能性を高めるものは全てがんのリスク因子と呼ばれ、がん発生の可能性を低減させるものは全てがんの防御因子と呼ばれます。

がんのリスク因子には回避できるものもありますが、回避できないものも数多くあります。例えば、喫煙の習慣と特定の遺伝子をもっていることは、どちらもある種のがんのリスク因子ですが、避けることができるのは喫煙だけです。普段から運動や健康的な食事を心がけることは、いくつかの種類のがんに対する防御因子となります。リスク因子を避けて防御因子を増やすことはリスクの低減につながりますが、それでがんにかからなくなるということではありません。

現在、以下のような様々ながんの予防法が研究されています:

肛門がんについての一般的な情報

肛門がんは、肛門の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

肛門大腸の末端部で、直腸の下にあり、便の体外への排出口となる部分です。肛門の一部分は皮膚から構成され、それ以外の部分はから構成されています。括約筋と呼ばれる輪状の筋肉が2つ存在し、これらが肛門の開口部を開閉して、便の通過を可能にします。肛門管は、直腸と肛門の間の部分のことで、その長さは約2.5~3.8cm(約1~1.5インチ)です。

消化器系の解剖図;食道、肝臓、胃、結腸、小腸、直腸、および肛門を示す。

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下部消化器系の解剖図:結腸と他の臓器を示しています。

肛門の外側の周囲の皮膚は肛門周囲と呼ばれます。この領域にできる腫瘍は皮膚腫瘍であり、肛門がんではありません。

肛門がんに関する詳しい情報については、以下のPDQの要約をご覧ください:

扁平上皮がんは、肛門がんのなかで最も多くみられる種類のものです。

米国で最も多くみられる肛門がんの種類は、扁平上皮がんです。この種類の肛門がんを引き起こす主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染であることが、複数の研究で示されています。

別の種類の肛門がんである肛門腺がんは非常にまれであるため、本要約では扱われていません。

米国では、近年、肛門がんの新規症例数が増加しています。

2007年から2016年にかけて、肛門がんの新規症例数と肛門がんによる死亡数は年々増加しています。

肛門がんの予防

リスク因子を回避することと防御因子を増やすことは、がんの予防につながる可能性があります。

がんリスク因子を避けることは、特定のがんの予防につながります。リスク因子には、喫煙や過体重、運動不足などがあります。禁煙や運動などの防御因子を高めることも、がん予防に役立ちます。がんのリスクを低減させる方法については、担当の医師か他の医療専門家にご相談ください。

肛門がんのリスク因子には以下のものがあります:

肛門HPV感染

ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染は、肛門がんの主なリスク因子です。HPVへの感染は、最も多くみられる肛門がんである肛門扁平上皮がんの発生につながることがあります。肛門がんの患者さんでは、10例中約9例に肛門のHPV感染が認められます。

免疫系が正常な患者さんであれば、通常はHPV感染に抵抗することができます。免疫系が弱っている患者さんがHPVに感染すると、肛門がんのリスクが高くなります。

特定の病態

子宮頸がん、膣がん、外陰がんの病歴

子宮頸がん膣がん外陰がんには、HPV感染との関連性が認められています。子宮頸がん、膣がんまたは外陰がんの病歴がある女性では、肛門がんのリスクが増大します。

HIV感染/AIDS

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染は、肛門がんの強力なリスク因子です。HIVは後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こします。HIVは体の免疫系を弱らせ、感染への抵抗力を低下させます。HIV陽性の患者さんでは、肛門のHPV感染がよくみられます。

肛門がんのリスクは、男性と性交渉を行うHIV陰性の男性と比べて、男性と性交渉を行うHIV陽性の男性の方が高くなります。また、HIV陽性の女性でも、HIV陰性の女性と比べて肛門がんリスクが高くなります。

複数の研究によると、静脈注射薬物の常用と紙巻きタバコの喫煙は、HIV陽性の患者さんの肛門がんリスクをさらに高める可能性があります。

免疫抑制

免疫抑制とは、免疫系の機能が弱まり、感染やその他の疾患に抵抗する力が低下した状態です。慢性(長期)の免疫抑制は、HPV感染に対する抵抗力を低下させるため、肛門がんのリスクを増大させる可能性があります。

臓器移植を受け、移植臓器に対する拒絶反応を予防するために免疫抑制を投与されている患者さんでは、肛門がんのリスクが高まります。

クローン病乾癬などの自己免疫疾患を患っている患者さんでは、肛門がんのリスクが高くなる可能性があります。このリスク増大の原因が自己免疫疾患にあるのか、その疾患に対する治療にあるのか、あるいはその両方であるのかは不明です。

特定の性的習慣

以下の性的習慣は、HPVに感染する機会の増加につながるため、肛門がんのリスクを高めます:

肛門疣贅(ゆうぜい)(いぼのこと)やその他の性感染症の病歴がある男女では、肛門がんのリスクが増大します。

喫煙

複数の研究によると、紙巻きタバコの喫煙は肛門がんのリスクを高めます。また、喫煙習慣のある人では、禁煙した人や喫煙経験のない人よりも、肛門がんのリスクが高くなります。

以下の防御因子は、肛門がんのリスクを低下させます:

HPVワクチン

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、HPVが原因で生じる肛門がん、子宮頸がん、外陰がん、膣がんの予防に使用されています。また、HPVによって引き起こされ、将来的にがんになる可能性のある病変の予防にも用いられています。

複数の研究によると、HPVに対する予防接種を受けることで、肛門がんのリスクは低下します。このワクチンは、対象者がHPVにさらされる前に接種された場合に最も効果を発揮します。

以下の防御因子が肛門がんのリスクが低下させるかどうかは、明らかになっていません:

コンドームの使用

コンドームの使用が肛門のHPV感染に対する予防策となるかどうかは、明らかになっていません。これは、この問題に関する研究がまだ十分に行われていないためです。

がんを予防する方法を検証するために、がん予防の臨床試験が実施されています。

特定のがんの発生リスクを低下させる方法を検証するために、がん予防臨床試験が実施されています。がん予防の臨床試験の中には、今はがんではないものの、がんのリスクが高い健康な人を対象に実施されるものがあります。その他の予防試験として、すでにがんになったことがあり、同じ種類のがんの再発を予防しようとする人、あるいは新たな種類のがんが発生する可能性を減らそうとする人を対象に実施されるものがあります。さらに、がんのリスク因子があるかどうか判明していない健康な志願者を対象に実施される試験もあります。

一部のがん予防の臨床試験の目的は、何らかの行動によってがんを予防できるかどうかを検証することです。これらの対応策としては、果物や野菜が豊富な食事、運動、禁煙のほか、特定の医薬品、ビタミンミネラル栄養補助食品の摂取などがあります。

現在、肛門がんの新たな予防法が臨床試験で検証されています。

NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、肛門がんの予防に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Screening and Prevention Editorial Board.PDQ Anal Cancer Prevention.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/anal/patient/anal-prevention-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389512]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。