患者さん向け がん医療におけるコミュニケーション(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、がんの患者さんやその家族とのコミュニケーションに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

CONTENTS 全て開く全て閉じる

概要

がんケアにおいては、患者さん、介護を行うご家族、医療チームの三者間の良好なコミュニケーションは非常に重要です。

がんの患者さん、介護を行うご家族、医療チームの三者間の良好なコミュニケーションは、患者さんの幸福と生活の質を向上させる助けとなります。がんに対する治療および支持療法を行っていく過程の全ての段階において、懸念される事柄や意思決定についてコミュニケーションが重要です。

がんケアにおける良好なコミュニケーションの目標としては以下のものがあります:

がんの患者さんには特別なコミュニケーションが必要です。

がんという診断が下されると、患者さん、ご家族、および医療チームは数多くの問題に直面します。治療法の進歩によって治癒寛解に至る可能性は以前よりも向上してきていますが、がんが命を脅かす病気であることに変わりはありません。がんと診断された患者さんは、しばしば困難で高額で複雑となりがちな治療法について恐れや不安を感じることがあります。そのため患者さんへのケアに関する決定が非常に難しくなる可能性があります。良好なコミュニケーションは、患者さん、ご家族、医師の三者がこうした意思決定を共同で行って患者さんの幸福と生活の質を向上させることに役立つ可能性があります。

がんケアにおいて患者さんと医師との間で良好なコミュニケーションが取られると数多くの有益な結果が得られるということが、複数の研究から示されています。通常、以下のような結果が得られます:

多くの情報を求め、ケアに関する意思決定を自ら行っていこうとする患者さんやご家族もいます。

患者さんとそのご家族は、患者さんが罹っているがんやその治療法について自分たちがどれくらいの情報を知りたいと考えているのかを医療チームに伝えておくべきです。詳細な情報を多く求める患者さんやご家族もいます。一方で、詳しい情報提供を希望しない患者さんやご家族もいます。また、情報に対するニーズは、診断から治療へと続く一連の過程の中でも刻々と変化していきます。進行がんの患者さんの中には、自身の状態について多くは知りたくないと考える人もいます。

がんケアに関する意思決定にどの程度まで関与したいと思うかは、患者さんとそのご家族によって異なります。がんケアに関する意思決定に深く関与し、自分たちで決断したいと考える患者さんやご家族もいます。一方で、意思決定を医師に委ねようとする患者さんやご家族もいます。

コミュニケーションは、がんケアの様々な時点で重要です。

コミュニケーションは、がんケアのいかなる時点においても重要ですが、大事な意思決定が行われるときには特に重要性が高まります。そうした重要な意思決定の時期としては以下のものがあります:

医療チームとの終末期についての話し合いは、処置を減らし、生活の質を向上させることにつながる場合があります。

研究によると、主治医との間で終末期についての話し合いを行ったがんの患者さんは、心肺蘇生や人工呼吸器の使用などの処置を選択することが少なくなるようです。また、集中治療を受けることも少なくなり、最後の数週間の医療コストは低くなる傾向にあります。介護者からの報告によれば、こうした患者さんは、より多くの処置を選択した患者さんと同程度の期間にわたって生存し、最後の数日間の生活の質はより高いものになるそうです。

本要約は、成人および小児のがん患者さんにはコミュニケーションが必要であるということについて書かれたものです。小児に関する情報が記載されているセクションでは、タイトルにその旨が記載されています。

介護を行う家族の役割

介護を行うご家族もコミュニケーションに参加すべき一員です。

患者さんのご家族は、患者さんが自身のがんケアについてより良い意思決定を行う手助けをすることができます。患者さんとそのご家族は、お互いをパートナーとして協力し合いながら医師や医療チームとコミュニケーションを取っていくことができます。患者さんは、もし可能であれば、意思決定の際にご家族からどの程度の手助けを求めるのかをあらかじめ決めておくべきです。介護を行うご家族と医療チームは、がんケアの全体を通じてコミュニケーションを継続していくべきです。その内容としては、治療の目標、ケアの計画、その後に予想される出来事などの情報が含められるべきです。

医師とのコミュニケーションは患者さんだけでなく介護者にとっても助けとなります。

患者さんとそのご家族を含めたコミュニケーションは家族中心型のコミュニケーションと呼ばれています。医師との間で家族中心型のコミュニケーションを取っていくことは、ご家族が介護における自身の役割を理解していく上で助けとなります。医療チームから具体的かつ実践的な指示を受けている介護者は、より大きな自信をもってケアに臨むことができます。そして介護者がこうした支援を受けていれば、患者さんにより良いケアを提供することが可能です。

言語や文化がコミュニケーションに影響を及ぼすことがあります。

医師が患者さんやそのご家族と同じ言語を話すことができない場合や、文化的な隔たりが存在する場合には、コミュニケーションが難しくなる可能性があります。全てのがんの患者さんは、意思決定の過程に全面的に参加できるように診断や治療について分かりやすい情報提供を受ける権利を有しています。そのためほとんどの医療センターでは、訓練を受けた通訳が勤務しているか、言語の違いに対処すべく何らかの対策がなされています。

文化的な信念が治療やケアに関する意思決定に何らかの影響を及ぼしている場合には、医療チームにその信念のことを伝えておくべきです。例えば、欧米においては、がんケアに関する最終的な意思決定は十分に情報提供を受けた患者さん自身が行うべきという考え方が一般的にみられます。

コミュニケーションに問題が生じることもあります。

患者さんと医師とのコミュニケーションの障害となりうる事情は数多く存在します。これは以下のような場合に起こりえます:

ときとして、コミュニケーションの問題の解決に介護を行うご家族が重要な役割を果たす場合もあります。

詳しい情報については、PDQがんにおける非公式の介護者に関する要約をご覧ください。

両親の役割

小児のがんの患者さんにも年齢相応の情報提供が求められます。

小児のがんの患者さんでも自身の病気や行われる治療について知りたがるということが、複数の研究から示されています。小児の患者さんが求める情報の量は1つには年齢に依存します。ほとんどの小児の患者さんは、自身の病気や治療が自分の日常生活や周囲の人々に対してどのような影響を及ぼすのかを心配します。一方で、小児の患者さんが自身の病気について告知を受けたときに抱く疑念や恐怖心は、たとえそれが悪い知らせであっても、比較的小さいということも、複数の研究から示されています。

小児の患者さんに対してその両親が取れるコミュニケーションの方法には様々なものがあります。

小児の患者さんが重篤な状態にあるとき、以下のような場合には、両親は比較的良好なコミュニケーションが取れていると感じるようです:

小児のがんの患者さんを対象とした介護に関する詳しい情報については、PDQ小児の支持療法に関する要約をご覧ください。

医療チームとの話し方

患者さんとその介護を行うご家族には、毎回の受診に際して前もって準備できる事があります。

患者さんとその介護者には、受診に際して事前に計画を立てておくことが有益です。受診の機会を最大限に活用するには以下のことを実践するのが有用です:

患者さんとその介護を行うご家族は、悪い知らせや予想外の情報を知らされた場合に対する心構えをしておくためにも受診前に話し合いを行っておくべきです。

患者さんとその介護者は治療に関する具体的な質問事項をチェックリストの形でまとめておくべきです。

医師と話をする際には、気になることがあればどんなことであっても、具体的に質問するようにしましょう。返答が分かりにくいと感じた場合は、自分に理解できる言葉で説明してくれるように医師に要求しましょう。患者さんの治療に関する質問としては以下のものがあります:

家族ががんになったときのコミュニケーションについてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供しているがん医療におけるコミュニケーションに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

現在実施中の臨床試験

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、がんの患者さんやその家族とのコミュニケーションに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board.PDQ Communication in Cancer Care.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/coping/adjusting-to-cancer/communication-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389345]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。