患者さん向け 大腸がんのスクリーニング(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、大腸がんのスクリーニングに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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スクリーニングとは

スクリーニングとは、症状が現れてくる前にがんを発見しようとする試みのことです。実際にがんの早発見に役立つ場合もあります。異常組織やがんも、早期に発見されれば治療が容易になる場合があります。症状が現れる頃には、がんが増殖し拡がり始めていることもあります。

ある種類のがんにかかりやすいのはどのような人々なのか、ということをより深く理解しようと科学者たちは挑み続けています。さらに、がんの原因となりうる生活習慣や環境についても研究が重ねられています。こうして得られた情報は、どういった人ががんのスクリーニングを受けるべきか、どのスクリーニング検査を用いるべきか、そしてその検査をどのくらいの頻度で受けるべきかについて、医師が患者さんに助言をしていく際に役立てられています。

担当の医師からスクリーニング検査を勧められたとしても、必ずしもがんの存在を疑ってそうしているわけではないということを覚えておくことが重要です。スクリーニング検査はがんの症状が現れる前に実施されるものなのです。スクリーニング検査を定期的に繰り返し行う場合もあります。

スクリーニング検査の結果が異常であれば、がんの存在を確認するために、さらなる検査が必要になる場合もあります。こうした検査は診断検査と呼ばれます。

大腸がんについての一般的な情報

大腸がんは、結腸または直腸の組織に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

結腸直腸消化器系の一部を構成する臓器です。消化器系は、食物中の栄養素ビタミンミネラル炭水化物、脂質、蛋白質、水分)の消化吸収と、老廃物の体外への排出という役割を担っています。消化器系は口腔、咽頭食道小腸、および大腸から構成されています。結腸(太い)は大腸の最初の部分で、長さは約5フィート(およそ152cm)です。加えて、大腸の終端部に直腸肛門管があり、これらの長さは約6~8インチ(15~20cm)です。そしてこの肛門管の終端部が肛門(大腸の体外への開口部)です。

消化器系の解剖図;食道、肝臓、胃、結腸、小腸、直腸、および肛門を示す。

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下部消化器系の解剖図:結腸と他の臓器を示しています。

結腸から発生するがん結腸がんと呼ばれ、直腸から発生するがんは直腸がんと呼ばれます。これらの臓器から発生するがんは、いずれも大腸がんとも呼ばれます。

大腸がんに関する詳しい情報については以下のPDQの要約をご覧ください:

米国では、大腸がんはがんによる死亡原因の第3位を占めています。

最近、大腸がんの新規症例数と大腸がんによる死亡者数は、いずれも毎年わずかに減少しています。しかしながら、50歳未満の成人では大腸がんの新規症例数は、近年、やや増加しています。大腸がんは、女性よりも男性により多くみられます。

大腸がんになるリスクを増減する因子には様々なものがあります。

疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。疾患が発生する可能性を低減させるものは全て防御因子と呼ばれます。

大腸がんに関するリスク因子と防御因子の詳しい情報については、PDQ大腸がんの予防に関する要約をご覧ください。

大腸がんのスクリーニング

各種のがんを見つけるために、症状が現れていない人を対象として検査を実施し選別を行います。

最も害が少なく最も有益な方法を発見すべく、科学者によりスクリーニング検査の研究が行われています。また、がんスクリーニングの臨床試験を行う目的には、早期発見(症状が現れる前にがんを発見すること)によって寿命が延びるか、あるいは疾患により死亡する確率が下がるかどうかを明らかにすることも含まれています。一部の種類のがんでは、早のうちに発見し治療することで、回復の見込みが高まる場合があります。

複数の研究によると、一部の大腸がんスクリーニング検査はがんの早期発見に役立ち、この疾患による死亡数を減少させる可能性があります。

大腸がんのスクリーニングには以下の5種類の検査法が用いられています:

便潜血検査

便潜血検査(FOBT)は、便の中に顕微鏡でしか見えないほどの微量な血液が含まれていないかを調べる検査です。患者さんに少量の便を専用のカードか特別な容器に採取してもらい、それを医師か検査室に提出してもらって、検査を行います。 便中への血液の混入はポリープやがん、または他の病態の徴候である可能性があります。

2種類のFOBTがあります:

S状結腸鏡検査

S状結腸鏡検査は、ポリープや異常組織、がんを発見するために、直腸S状(下部)結腸の内部を調べる検査法です。この検査ではS状結腸鏡が直腸からS状結腸内部へと挿入されます。S状結腸鏡とは、観察用のライトとレンズを備えた細いチューブ状の器具のことです。ポリープや組織のサンプルを採取するための器具が付いているものもあり、それで切除された組織は、顕微鏡での観察によってがんの徴候がないか調べられます。

S状結腸鏡検査:S状結腸鏡が肛門と直腸からS状結腸に挿入される様子を示す。右上の図には、台の上の患者さんがS状結腸鏡検査を受けている様子が示されている。

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S状結腸鏡検査。ライトの付いた細い管を肛門と直腸から結腸下部まで挿入して、異常な部分がないかを調べます。

結腸鏡検査

結腸鏡検査は、ポリープや異常組織、がんなどを発見するために直腸と結腸の内部を調べる検査法です。この検査では結腸鏡が直腸から結腸内部へと挿入されます。結腸鏡とは、観察用のライトとレンズを備えた細いチューブ状の器具のことです。ポリープや組織のサンプルを採取するための器具が付いているものもあり、それで切除された組織は、顕微鏡での観察によってがんの徴候がないか調べられます。

結腸鏡検査:結腸鏡が肛門と直腸から結腸に挿入される様子を示す。右上の図には、台の上の患者さんが結腸鏡検査を受けている様子が示されている。

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結腸鏡検査。ライトの付いた細い管を肛門と直腸から結腸の内部まで挿入して、異常な部分がないかを調べます。

バーチャル結腸鏡検査

バーチャル結腸鏡検査は、コンピュータ断層撮影と呼ばれる特殊なX線撮影法を用いて結腸の連続画像を作成する検査法です。コンピュータによってこれらの画像が統合され、結腸内部の表面にできたポリープや異常な領域も描出可能な精細な画像が作成されます。この検査はコンピュータ断層撮影コロノグラフィやCTCとも呼ばれます。

このバーチャル結腸鏡検査と他の大腸がんのスクリーニング検査とを比較する臨床試験が現在実施されています。また、緩下薬を使用して結腸内を空にする代わりに、便をコーティングする造影剤を飲んでもらうことでポリープを鮮明に映し出す検査法もあり、その効果を検証する臨床試験も実施されています。

DNA検便

この検査では、便の中に含まれる細胞DNAを調べることによって、大腸がんの徴候となる遺伝子変化を検出します。

数件の研究により、直腸指診による大腸がんのスクリーニングはこの疾患による死亡数を減少させないことが実証されています。

直腸指診(DRE)は、通常の身体診察で行われることのある直腸の検査です。医師または看護師が、手袋をはめて潤滑剤を塗った指を直腸内に挿入し、しこりなどの異常がないかを調べます。大腸がんのスクリーニング法としてDREは効果がないという研究結果が出ています。

現在、大腸がんのスクリーニング検査法が臨床試験で検証されています。

NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

大腸がんのスクリーニングのリスク

スクリーニング検査にはリスクが伴います。

スクリーニング検査に関する判断は難しくなる場合があります。全てのスクリーニング検査が役に立つわけではなく、ほとんどはリスクを伴います。スクリーニング検査ごとに様々なリスクや害があります。スクリーニング検査は、患者さんが検査を受けるかどうか考えたり準備をしたりするとき、または陽性の検査結果が出たときに、不安を引き起こすことがあります。スクリーニング検査を受けようとする場合は、その前に検査について担当の医師とよく話し合っておくのがよいでしょう。検査に伴うリスクを把握し、さらにがん死亡のリスク低減という効果が実際に証明されているのかを知っておくことが重要です。

大腸がんのリスクとスクリーニング検査の必要性について、担当の医師と話し合ってください。

偽陰性の検査結果が出る可能性もあります。

実際には大腸がんが存在しているのにもかかわらず、スクリーニング検査の結果が正常と出る場合もあります。偽陰性の検査結果(実際にはがんが存在しているのに存在しないと判定された検査結果)を受けた人では、たとえ症状が現れていても、医師の診察を受けるのが遅くなる場合があります。

偽陽性の検査結果が出る可能性もあります。

実際にはがんが存在していないにもかかわらず、スクリーニング検査の結果が異常となる場合もあります。偽陽性の検査結果(実際にはがんは存在しないのに存在すると判定された検査結果)は不安の原因となることもあり、さらに、その後も検査(生検など)が引き続き実施されるのが通常で、そうした検査によるリスクも生じます。

以下の大腸がんのスクリーニング検査にはリスクが伴います:

結腸鏡検査

結腸鏡検査によって重篤な問題が引き起こされることはまれですが、結腸の粘膜の裂傷や出血などが生じることがあります。これらの問題は深刻であり、病院で治療する必要があります。生検やポリープ切除術が行われたときは、結腸の粘膜の裂傷や出血がより頻繁に発生します。

この検査法による不快感を低減させるために、鎮静が用いられます。鎮静は、不整脈や心臓発作、呼吸困難など、心臓やの問題を引き起こすことがあります。

S状結腸鏡検査

S状結腸鏡検査では、結腸鏡検査の場合よりも、合併症は少ししかみられません。結腸の粘膜の裂傷や出血が生じることがありますが、結腸鏡検査に比べると少数です。通常、S状結腸鏡検査では鎮静が行われず、これによって合併症のリスクが低下します。

バーチャル結腸鏡検査

バーチャル結腸鏡検査は、結腸鏡検査やS状結腸鏡検査より、身体に害が及ぶ可能性が低い検査です。バーチャル結腸鏡検査で用いられるX線による放射線曝露の害は明らかになっていません。バーチャル結腸鏡検査では、腎臓、胸部、肝臓卵巣脾臓膵臓など、結腸以外の臓器に問題が見つかることがよくあります。これらの結果次第では、結腸鏡検査など、患者さんの健康を改善するとは限らない検査も行われます。

便潜血検査(FOBT)またはDNA検便

実際にはがんが存在していないにもかかわらず、FOBTまたはDNA検便の結果が異常となる場合もあります。検査結果が陽性だと、結腸鏡検査など、さらなる検査が行われることがあります。

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、大腸がんのスクリーニングに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Screening and Prevention Editorial Board.PDQ Colorectal Cancer Screening.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/colorectal/patient/colorectal-screening-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389230]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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