ご利用について
このPDQがん情報要約では、慢性リンパ性白血病の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 慢性リンパ性白血病についての一般的な情報
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慢性リンパ性白血病は、がんの一種で、骨髄においてリンパ球(白血球の一種)が過剰に作られるようになる疾患です。
慢性リンパ性白血病(CLLとも呼ばれる)は、通常は緩やかに悪化する血液と骨髄のがんです。CLLは、成人で最も多くみられる種類の白血病です。中年期以降に発生する場合が多いですが、まれに小児でもみられます。
白血病は、赤血球、白血球、血小板に影響を及ぼす可能性があります。
正常な状態の骨髄では、いずれは成熟した血液細胞に成長する血液幹細胞(未熟な細胞)が作られています。この血液幹細胞はまず骨髄系幹細胞かリンパ系幹細胞に成長します。
骨髄系幹細胞は以下の3種類の成熟血液細胞のいずれかになります:
リンパ系幹細胞はまずリンパ芽球という細胞に成長してから、さらに以下の3種類のリンパ球(白血球の一種)のいずれかになります:
CLLでは、非常に多くの血液幹細胞が異常なリンパ球に成長します。このような異常なリンパ球は白血病細胞とも呼ばれます。こうした白血病細胞では感染を十分に防御することはできません。また、血液や骨髄の中の白血病細胞が増加することによって、正常な白血球や赤血球、血小板のためのスペースが少なくなってしまいます。このことにより、感染症や貧血が生じたり、出血が起きやすくなったりします。
本要約は、慢性リンパ性白血病について書かれたものです。他の種類の白血病に関する詳しい情報については、以下のPDQの要約をご覧ください:
慢性リンパ性白血病の徴候や症状には、リンパ節の腫れや疲労感などがあります。
CLLは初期に徴候や症状を起こさないので、一般検診で行われる血液検査で発見されることがあります。徴候や症状は後になって現れてきます。以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:
慢性リンパ性白血病を診断するために、血液を調べる検査が行われます:
以下のような検査法や手技が用いられます:
- 慢性リンパ性白血病の病期情報
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慢性リンパ性白血病の診断がついた後には、がんが拡がっているかどうかを明らかにするために、さらに検査が行われます。
がんの拡がりの程度を調べるためのプロセスは病期分類と呼ばれます。慢性リンパ性白血病(CLL)では、白血病細胞が血液や骨髄から、リンパ節、肝臓、脾臓といった体の他の部位に転移することがあります。最善の治療計画を立てるために、白血病細胞の転移の有無を把握することが重要です。
がんの拡がりの程度を調べるために、以下のような検査が用いられることがあります:
- 胸部X線検査:胸部の臓器と骨のX線検査。X線は放射線の一種で、これをリンパ節などの人体の一部を通してフィルム上に照射すると、そのフィルム上にその領域の画像が映し出されます。
- CTスキャン(CATスキャン):頸部、胸部、腹部、骨盤、リンパ節などの体内の領域を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法。この画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに造影剤を飲んでもらったりする場合もあります。この検査は全身にリンパ節の腫れが多数みられる患者さんに対して行われます。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。PET-CTスキャンが利用できない場合は、CTスキャンだけが行われることもあります。
- PET-CTスキャン:陽電子放射断層撮影(PETスキャン)とコンピュータ断層撮影(CTスキャン)から得られた画像を組み合わせた検査法。PETスキャンとCTスキャンを同時に同じ機器で実行します。この2つのスキャン画像を組み合わせて、それぞれ単独の検査を実施した場合より鮮明な画像を作り出します。PETスキャンは体内の悪性腫瘍細胞を検出するための検査法です。まず、放射性ブドウ糖の溶液を少量だけ静脈内に注射します。その後、周囲を回転しながら体の内部を調べていくPETスキャナという装置を用いて、ブドウ糖が消費されている体内の領域を示す画像を作成していきます。悪性腫瘍細胞は、正常な細胞よりも活発でブドウ糖をより多く取り込む性質があるため、画像ではより明るく映し出されます。この検査は発熱、著しい寝汗、体重減少、急速なリンパ節肥大がみられる患者さんに対して実施し、CLLにより侵攻性のリンパ腫が発生しているかどうかを確認します。
慢性リンパ性白血病では以下のような病期が用いられます:
I期
I期の慢性リンパ性白血病では、血液中に過剰な数のリンパ球が認められ、さらに、リンパ節が正常時より大きくなっています。
- 治療選択肢の概要
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慢性リンパ性白血病の患者さんには様々な治療法が存在します。
慢性リンパ性白血病(CLL)の患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
以下の6種類の治療法が用いられています:
注意深い経過観察
注意深い経過観察とは、徴候や症状の出現や変化がみられるまで、治療を一切行わずに患者さんの状態を注意深く監視していくことです。これは単に経過観察とも呼ばれます。注意深い経過観察は、無症候性CLLや症候性または進行性CLLの治療で行われます。
標的療法
標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物や物質を用いる治療法です。標的療法は一般に、化学療法や放射線療法に比べ、正常な細胞に及ぼす有害性が小さい療法です。数種類の標的療法がCLLの治療に用いられます:
- チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)療法:この治療法は、幹細胞から必要以上に白血球が作られる原因になるチロシンキナーゼという酵素を阻害します。イブルチニブ、アカラブルチニブ、イデラリシブ、デュベリシブは症候性または進行性のCLLや再発または難治性CLLの治療に用いられるTKIです。
- BCL2阻害薬療法:この治療法は一部の白血病細胞に存在するBCL2という蛋白を阻害します。白血病細胞を殺傷できる可能性があるほか、他の抗がん剤に対する白血病細胞の感受性を高める作用もあります。ベネトクラクスは症候性または進行性のCLLや再発または難治性CLLの治療に用いられるBCL2阻害薬の一種です。
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モノクローナル抗体療法:モノクローナル抗体は製造ラボで作られ、がんなどの様々な疾患に対する治療に用いられる免疫系蛋白です。がん治療薬として、これらの抗体は、がん細胞や他の細胞上に存在してがん細胞の増殖に関与する特定の標的に結合する性質をもちます。これにより、抗体はがん細胞の死滅、増殖の阻止、転移の抑止などの効果を発揮できるようになります。モノクローナル抗体は点滴によって投与されます。単独で使用されることもありますが、薬や毒素、放射性物質などをがん細胞に直接送り届けるという用途でも用いられます。症候性または進行性のCLLや再発または難治性CLLの治療では、リツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブが単独で用いられるか化学療法と併用されます。
アレムツズマブはCLLの治療薬として研究されています。複数の研究で、アレムツズマブが患者さんの生存期間を延長しなかったという結果が出ています。
詳しい情報については、慢性リンパ性白血病に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。併用化学療法は複数の抗がん剤を使用する治療法です。
詳しい情報については、慢性リンパ性白血病に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてリンパ節群や脾臓といったがんのある領域に放射線を照射する方法です。この治療法は、脾臓やリンパ節の腫れに関連して起きる痛みを軽減するために用いられます。
免疫療法
免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんと戦う治療法です。体内で生産された物質や製造ラボで合成された物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。このようながんの治療法は生物学的療法の一種です。
- 免疫調節剤:レナリドミドはT細胞を刺激して白血病細胞の殺傷を促す作用があります。症候性または進行性CLL、もしくは再発または難治性CLLの患者さんに対して、単独またはリツキシマブとの併用で投与されることがあります。
- CAR T細胞療法:この治療法は、患者さんのT細胞(免疫系細胞の一種)を改変することで、がん細胞の表面に存在する特定の蛋白に対する攻撃性を持たせます。患者さんからT細胞を採取し、製造ラボでその表面に特殊な受容体を付加します。こうして改変した細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞と呼ばれます。製造ラボでCAR T細胞を増やし、点滴で患者さんに投与します。投与されたCAR T細胞は患者さんの血液内で増加し、がん細胞を攻撃します。CAR T細胞療法は再発または難治性CLLの治療法として研究されています。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。
臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。
患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。
患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。
今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。
患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。
患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。
ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。
臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
- 無症候性慢性リンパ性白血病の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
無症候性慢性リンパ性白血病(CLL)の治療法には以下のようなものがあります:
- 症候性または進行性慢性リンパ性白血病の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
症候性または進行性慢性リンパ性白血病(CLL)の治療法には以下のようなものがあります:
これらの治療法はいずれも、初回治療中の患者さんと過去に治療を受けたことのある患者さんのどちらに対しても適用されることがあります。これらの治療法を比較する研究は行われていないため、どの治療法が優れているかは現時点では不明です。治療法は、検査結果や患者さんの年齢と健康状態のほか、短期的な副作用と長期的な副作用の最小化に関する要望を考慮して選択されます。
- 難治性または再発慢性リンパ性白血病の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
再発または難治性慢性リンパ性白血病(CLL)の治療法と臨床試験には以下のようなものがあります:
- 慢性リンパ性白血病についてさらに学ぶために
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米国国立がん研究所が提供している慢性リンパ性白血病に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、慢性リンパ性白血病の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Chronic Lymphocytic Leukemia Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/types/leukemia/patient/cll-treatment-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389485]
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