患者さん向け リンパ浮腫

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このPDQがん情報要約では、リンパ浮腫の原因と治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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リンパ浮腫とは

リンパ浮腫は、リンパ液が体内の皮膚と筋肉の間に貯留することによって、腫れが生じた状態です。リンパ液はリンパ系の一部であり、リンパ系は体が感染や病気に抵抗する能力に関与しています。がんにかかっている場合は、がん自体またはがん治療によってリンパ液の流れが妨げられ、リンパ浮腫(続発性リンパ浮腫とも呼ばれます)が生じる可能性があります。リンパ浮腫はがん治療の直後に起こることもあれば、治療終了後何年もしてから起こる場合もあります。ほとんどの場合、数カ月または数年かけてゆっくりと発生します。 

リンパ浮腫:女性の腕が赤く腫れた状態を示す図。リンパ節とリンパ管も図に示されている。腫れた腕から引き出された図は、赤く硬くなった皮膚の最上層を示している。また、皮膚の下にあるリンパ管から引き出された図では、リンパ管を通るリンパ液の流れを遮断するがん性の腫瘍と、周囲の組織内の体液および白血球の貯留が示されている。

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リンパ系は体が感染に抵抗するのを助けており、リンパ節とリンパ管のほか、リンパ液を集めて体内に運ぶ臓器から構成されています。がん自体またはがん治療によってリンパ液の流れが妨げられたり、リンパ節やリンパ管が損傷したりすると、リンパ液が貯留してリンパ浮腫を引き起こすことがあります。

リンパ浮腫を予防することはできませんが、リスクを軽減したり、リンパ浮腫の悪化を防いだりする方法はあります。

リンパ浮腫は、一度発生すると慢性化して治癒することはできませんが、治療により腫れを緩和させて日常の活動能力を改善することはできます。リンパ浮腫は早期に治療を開始するとコントロールしやすいため、重だるさ、腫れ、またはその他のリンパ浮腫の徴候に気づいたらできるだけ早く医師に連絡してください

リンパ浮腫の原因

体内のリンパ液の流れを遮断または変化させるものは全て、リンパ浮腫を引き起こす可能性があります。がん自体やがん治療が原因で以下の状態になると、リンパ浮腫が起こる可能性があります:

リンパ浮腫が発生するリスクは、がんの種類と位置、受けている治療によって異なります。リンパ浮腫のその他のリスク因子としては、感染症にかかっている、手術後の治癒が遅い、リンパ節を切除している、以前に手術または放射線治療を受けたことがある、進行がんにかかっている、過体重または肥満であるなどがあります。リンパ浮腫のリスクについて担当医とご相談ください。

リンパ浮腫と乳がん

乳がんの治療では、わきの下のリンパ節を切除する手術が行われることが多く、それによりリンパ浮腫のリスクが高まります。放射線療法または手術による乳がんの治療を受けたことがある場合、リンパ節を切除または損傷した側の手、腕、または胸部にリンパ浮腫が起こることがあります。

リンパ浮腫とその他のがん

リンパ浮腫は全身のあらゆる部位に発生する可能性がありますが、腕や脚に最も多くみられます。一部のがん(特に腹部または生殖器部に発生したもの)とその治療は、がんがリンパ節およびリンパ管の近くに位置するため、他のがんよりもリンパ浮腫を引き起こす可能性が高いです。白血球(リンパ系の一部)から発生するがんであるリンパ腫も、白血球が蓄積してリンパ液の流れを遮断するため、リンパ浮腫を引き起こすことがあります。 

がんの種類は、リンパ浮腫が発生する可能性のある部位を予測するのに役立ちます。

リンパ浮腫は、黒色腫肉腫の手術後にも発生する可能性があります。 

リンパ浮腫の症状

腕、脚、または手術や放射線療法を受けた部位の近くで、リンパ浮腫の症状に気づくことがあるかもしれません。徴候や症状は時間をかけてゆっくりと出現することがあるため、わずかな変化にも細心の注意を払いましょう。リンパ浮腫のそのような徴候がみられる場合は医師に連絡してください。

発生部位を問わずみられるリンパ浮腫の徴候と症状

腕または脚に生じたリンパ浮腫の徴候と症状

腕や脚のリンパ浮腫では、さらに以下の徴候や症状がみられることがあります:

頭部または頸部に生じたリンパ浮腫の徴候と症状

頭部や頸部のリンパ浮腫では、さらに以下の徴候や症状がみられることがあります:

生殖器または腹部に生じたリンパ浮腫の徴候と症状

生殖器や腹部のリンパ浮腫では、さらに以下の徴候や症状がみられることがあります:

リンパ浮腫と蜂窩織炎

蜂窩織炎とは、生命を脅かす可能性のある皮膚の細菌感染症であり、リンパ浮腫でよくみられる合併症の一つです。リンパ浮腫の患者さんでは、腫れた部位の皮膚が薄く伸ばされ、体液の豊富な部位で増殖する細菌が侵入しやすくなるため、蜂窩織炎のリスクが高くなります。 

蜂窩織炎の徴候と症状の中にはリンパ浮腫のものと類似したものがあります。皮膚の変化やその他の症状がみられる場合は、必ず医師の診察を受けてください。蜂窩織炎の症状には以下のようなものがあります:

発熱や蜂窩織炎のその他の徴候がみられる場合は、直ちに医師の診察を受けてください。蜂窩織炎は、治療せずに放置していると、生命を脅かす可能性があります。医師は蜂窩織炎の治療に抗菌薬を処方することができます。 

リンパ浮腫の診断

がんの治療中や治療後には、腕や脚に感じる締め付けや腫れなど、リンパ浮腫の徴候と症状に注意するべきです。気づいた腫れやその他の変化について医師に伝えれば、身体の腫れた部位を診察してくれます。腫れが腕や脚に及んでいる場合、医師は腫れた方の腕や脚の大きさをもう一方と比較します。 

医師が腫れの原因とリンパ液の流れを妨げているものを詳細に理解するのに役立てるために、以下の検査を行うこともあります:

リンパ浮腫の病期

リンパ浮腫と診断されると、医師は病期分類システムを用いてリンパ浮腫の重症度を判定します。

リンパ浮腫の治療

治療法として、リンパ浮腫の症状を管理するためのものがあります。自宅か、看護師、認定を受けたリンパ浮腫療法士(CLT)、リンパ浮腫を治療するための訓練を積んだ理学療法士や作業療法士など、訓練を積んだ専門家の監督の下で実施できる管理法について、医療チームと話し合いましょう。以下のような治療法があります:

軽度伸縮性包帯、圧迫包帯、レギンス、またはストッキング

これらは、腕や脚で体液を循環させて、体液が蓄積しないようにするのに役立ちます。これらは圧迫帯と呼ばれることもあります。看護師またはCLTに、自分に合った圧迫帯を見つけるのを助けてもらい、その使い方を教えてもらいます。 

用手的リンパドレナージ 

用手的リンパドレナージ(リンパドレナージマッサージとも呼ばれます)は、優しくマッサージすることで、リンパ液を体内に循環させるのに役立ちます。リンパドレナージは複合的理学療法と呼ばれる治療の一部で、CLTによって管理されます。複合的理学療法には、症状を管理するための包帯法、運動、スキンケアなども含まれます。

圧迫ポンプ

これは弾性スリーブや弾性靴下に接続された装置で、腕または脚に断続的に圧力を加えます。ポンプ動作が、リンパ液の循環を維持するのに役立ち、リンパ液が四肢に貯留するのを防ぎます。

手術およびその他の治療

リンパ浮腫が進行している場合、医師は手術または他の治療法を勧めることがあります。

リンパ浮腫の予防

リンパ浮腫を予防する方法はありませんが、リスクを軽減したり、リンパ浮腫の悪化を防いだりするためにできることがあります。医療チームは、自宅でできる以下のことを勧めることがあります:

リンパ浮腫について医師に相談する

医師、看護師、またはソーシャルワーカーを訪ねる準備をする際には、尋ねるべき質問のリストを作成し、リンパ浮腫に関する以下の質問を加えるとよいでしょう: 

リンパ浮腫への対処法

リンパ浮腫による身体的変化は、患者さんの健康感に影響を及ぼす可能性があります。以前は楽しめた活動ができなかったり、自分に合った服を見つけられなかったりすることがあります。自分の外見に不快感を覚えたり、周囲の人から孤立しているように感じたりすることがあります。リンパ浮腫の管理と対処には、しばしばCLTと密接に連携することが最善の方法です。

リンパ浮腫のような副作用は、身体的にも精神的にも対処が難しい場合があります。医療チームに支援を求めることが重要です。困難な時期に備え、それを乗り切る手助けをしてもらうことができます。詳細については、がん患者さんがしばしば抱く感情(英語)がん治療中の日常生活に適応する方法(英語)など、がんへの対処法(英語)をご覧ください。

がんの患者さんを介護している家族や友人については、がん患者さんの介護者に対するサポート(英語)が役立つ場合があります。

リンパ浮腫の研究

リンパ浮腫を予防、診断、治療する新しい方法を発見するために、研究が進められています。臨床試験と呼ばれる調査研究は、リンパ浮腫と、がんやがん治療によるその他の副作用に関する知識を深めるのに役立ちます。詳細については、患者さんと介護者のための臨床試験情報(英語)をご覧ください。 

NCIが支援しているリンパ浮腫の臨床試験については、リンパ浮腫の臨床試験(英語)をご覧ください。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govで探すことができます。

がんの手術および治療の進歩は、リンパ浮腫ががんの患者さんに発生する可能性を低下させるのに役立っています。例えば、センチネルリンパ節生検(英語)により、がんの転移の有無を確認する際に切除するリンパ節の数を減らすことができるため、リンパ浮腫のリスクが低下します。