医療専門家向け がん治療に関連した吐き気と嘔吐(PDQ®)

ご利用について

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、吐き気と嘔吐(N&V)の病態生理および治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

本要約は、編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

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概要

吐き気と嘔吐(N&V)の予防と制御は、がん患者の治療における最優先事項である。化学療法誘発性のN&Vは、がん治療の中で最も苦痛をもたらす急性副作用の1つである;化学療法誘発性のN&Vは最大80%の患者に起こり、患者のQOLに大きな影響を及ぼしうる。またN&Vにより、以下の状態になることもある:

特に明記していない場合、本要約には成人に関する証拠と治療について記載している。小児に関する証拠と治療適応は、成人に関する情報とはかなり異なる場合がある。小児の治療に関する情報が入手できる場合は、小児に関する情報であることを明記した上でその内容を要約する。

病態生理学

吐き気とは、咽頭背部および/または上腹部に感じる波のように押し寄せる不快な感覚という主観的現象であり、結果として嘔吐を生じうる。嘔吐とは、胃、十二指腸、または空腸の内容物が口腔を経由して強制的に排出されることをいう。むかつきとは、吐物の排出を伴わない胃および食道の嘔吐運動をいう;空吐きとも呼ばれる。

吐き気と嘔吐(N&V)を制御する神経生理学的機序の理解に進歩がみられる。N&Vはいずれも、中枢神経系により制御または媒介されるが、その機序は異なる。吐き気は、自律神経系を介して伝達される。嘔吐は、以下の部位からの求心性刺激の輻輳を含む複雑反射における刺激の結果起こる:[ 1 ][ 2 ]

CTZでみられる神経伝達物質(セロトニン、サブスタンスP、ドパミンなど)、嘔吐中枢(孤束核に位置すると考えられる)、消化管の腸クロム親和細胞は続いて遠心性インパルスを放出し、腹部の筋肉組織、唾液中枢、呼吸中枢へと伝達される。このようなN&Vの症状を引き起こす多数の経路の相対寄与は複雑で、薬物のさまざまな催吐性(内因性催吐および緩和要因[すなわち、投与量、投与経路、曝露期間])および催吐性プロファイル(すなわち、発現までの時間、症状の重症度、および持続期間)を説明する仮説となる。[ 3 ][ 4 ]

参考文献
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  2. Navari RM: Antiemetic control: toward a new standard of care for emetogenic chemotherapy. Expert Opin Pharmacother 10 (4): 629-44, 2009.[PUBMED Abstract]
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一般的な危険因子と病因

化学療法を受けている患者のほとんどに吐き気と嘔吐(N&V)のリスクがあるが、その発症、重症度、誘因、および期間はさまざまである。腫瘍の位置、使用される化学療法薬、放射線曝露など腫瘍関連、治療関連、および患者関連の因子すべてがN&Vに寄与する。[ 1 ][ 2 ][ 3 ]

患者関連の因子には、以下がある:

付加的な原因には以下がある:

N&Vを治療する臨床医は、特に複数の治療法および薬物を併用している可能性があるがん患者においては、あらゆる潜在的原因および因子に対し注意を怠ってはならない。(オピオイド誘発性のN&Vに関する詳しい情報については、がん性疼痛に関するPDQ要約のオピオイドのセクションにある有害作用のセクションを参照のこと。)

分類

N&Vは、下に概略を示すように、急性、遅発性、予測性、突発性、難治性、および慢性として分類されている:[ 7 ][ 8 ][ 9 ]

米国国立がん研究所は有害事象の報告に使用できる記述用語を発表している(表1を参照のこと)。グレード(重症度)の評価尺度が各用語に示されている。

表1.米国国立がん研究所によるCommon Terminology Criteria for Adverse Events:N&Va
有害事象 グレード 説明
IV = 静注;N&V = 吐き気および嘔吐;TPN = 完全非経口栄養法。
a出典:米国国立がん研究所。[ 12 ]
b 定義:吐き気を催す感覚および/または嘔吐しそうになることを特徴とする障害。
c 定義:胃の内容物を口から吐き出す反射的な行為を特徴とする障害。
吐き気b 1 食習慣の変化を伴わない食欲不振
2 著しい体重減少、脱水、または栄養不良を伴わない経口摂取の減少
3 カロリーまたは水分の不十分な経口摂取;経管栄養、TPN、または入院の適応
4 グレード割り付けなし
5 グレード割り付けなし
嘔吐c 1 介入は適応とされない
2 外来患者へのIVによる水分補給;医学的介入の適応
3 経管栄養、TPN、または入院の適応
4 生命を脅かす結果となる;緊急介入の適応
5 死亡
参考文献
  1. Farrell C, Brearley SG, Pilling M, et al.: The impact of chemotherapy-related nausea on patients' nutritional status, psychological distress and quality of life. Support Care Cancer 21 (1): 59-66, 2013.[PUBMED Abstract]
  2. Dranitsaris G, Bouganim N, Milano C, et al.: Prospective validation of a prediction tool for identifying patients at high risk for chemotherapy-induced nausea and vomiting. J Support Oncol 11 (1): 14-21, 2013.[PUBMED Abstract]
  3. Bouganim N, Dranitsaris G, Hopkins S, et al.: Prospective validation of risk prediction indexes for acute and delayed chemotherapy-induced nausea and vomiting. Curr Oncol 19 (6): e414-21, 2012.[PUBMED Abstract]
  4. Sullivan JR, Leyden MJ, Bell R: Decreased cisplatin-induced nausea and vomiting with chronic alcohol ingestion. N Engl J Med 309 (13): 796, 1983.[PUBMED Abstract]
  5. Tonato M, Roila F, Del Favero A: Methodology of antiemetic trials: a review. Ann Oncol 2 (2): 107-14, 1991.[PUBMED Abstract]
  6. Roila F, Tonato M, Basurto C, et al.: Antiemetic activity of high doses of metoclopramide combined with methylprednisolone versus metoclopramide alone in cisplatin-treated cancer patients: a randomized double-blind trial of the Italian Oncology Group for Clinical Research. J Clin Oncol 5 (1): 141-9, 1987.[PUBMED Abstract]
  7. Kris MG, Urba SG, Schwartzberg LS: Clinical roundtable monograph. Treatment of chemotherapy-induced nausea and vomiting: a post-MASCC 2010 discussion. Clin Adv Hematol Oncol 9 (1): suppl 1-15, 2011.[PUBMED Abstract]
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  9. Grunberg SM, Osoba D, Hesketh PJ, et al.: Evaluation of new antiemetic agents and definition of antineoplastic agent emetogenicity--an update. Support Care Cancer 13 (2): 80-4, 2005.[PUBMED Abstract]
  10. Wickham R: Nausea and vomiting. In: Yarbo CH, Frogge MH, Goodman M, eds.: Cancer Symptom Management. 2nd ed. Sudbury, Mass: Jones and Bartlett Publishers, 1999, pp 228-263.[PUBMED Abstract]
  11. Schwartzberg L: Chemotherapy-induced nausea and vomiting: state of the art in 2006. J Support Oncol 4 (2 Suppl 1): 3-8, 2006.[PUBMED Abstract]
  12. National Cancer Institute: Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE), Version 5.0. Bethesda, Md: U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health, 2017. Available online. Last accessed May 20, 2020.[PUBMED Abstract]
予測性の吐き気および嘔吐

有病率

予測性の吐き気および嘔吐(ANV)の有病率は、定義や評価方法が変化しているために値に幅がみられる。[ 1 ]しかしながら、予測性の吐き気は化学療法を受ける患者の約29%(約3人に1人)に起こり、予測性の嘔吐は患者の11%(約10人に1人)に起こるようである。[ 2 ]5-ヒドロキシトリプタミン-3(5-HT3)受容体拮抗薬などの薬理学的に新しい薬物の導入により、ANVの有病率は低下するのではないかと期待された;しかしながら、研究では混在した結果が示されている。1件の試験では、ANVの発生率は低下し[ 3 ]、3件の試験では、発生率が同等であった。[ 2 ][ 4 ][ 5 ]5-HT3受容体拮抗薬は化学療法後の嘔吐を減少させるが、化学療法後の吐き気については減少させないと考えられており[ 2 ][ 5 ]、その結果ANVに及ぼす影響は明らかではない。

古典的条件付け

ANVは、別の理論的機序が提唱されてはいるが[ 6 ]、古典的条件付け(パブロフ型条件付けまたはレスポンデント条件付けとしても知られる)により最もよく説明できるようである。[ 7 ]古典的条件付けでは、それまでは中性刺激であったもの(例、化学療法実施環境のにおい)が、度重なる対提示(学習試行)の末に条件反応(例、ANV)を誘発するようになる。がんの化学療法では、最初の2~3回の化学療法薬の投与が学習試行にあたる。化学療法薬が、化学療法後の吐き気と嘔吐(N&V)を(一部の患者において)誘発する無条件刺激にあたる。化学療法薬がさまざまな他の中性の環境刺激(例、周囲の環境のにおい、腫瘍専門看護師の存在、化学療法室)と対をなす。以前は中性刺激であったこれらの刺激がその後条件刺激となり、以降の化学療法サイクルでANVを誘発する。ANVは精神病理の徴候ではなく、むしろ他の生活環境(例えば、食中毒)において、適応回避に帰着する学習反応である。

さまざまな相互関係の研究により、古典的条件付けの経験的支持が得られている。例えば、どのような化学療法でも経験前のANVの有病率はきわめて低く、以前に化学療法後の吐き気を経験することなくANVを経験する患者はほとんどいない。[ 8 ]また、ほとんどの研究で、(1)化学療法薬の注入回数が増すにつれて、ANV発症の可能性が高くなること、(2)患者が実際に化学療法薬の注入を受ける時間に近づくほど、ANVが激しくなることが明らかにされている。[ 9 ]ある実験的研究では、新しい種類の飲み物が複数の化学療法の治療と対をなした際に、吐き気の条件刺激になりえた。[ 10 ]

ANVに相関する変数

多くの変数がANVの発生に相関する潜在的危険因子として研究されている。いずれの因子がANVを予測するかについては、意見の一致をみていない。しかしながら、次に挙げる最初の8項目の特徴のうち該当する項目が2つ以下の患者はANV発症の可能性が低く、初回化学療法薬投与後にスクリーニングを実施すると高リスクの患者を同定しうる。[ 11 ]

    ANVと相関することが分かっている変数
  1. 50歳未満。
  2. 最近の化学療法後のN&V。
  3. 報告された治療後の吐き気の程度が中等度、重度、耐えられない。
  4. 報告された治療後の嘔吐の程度が中等度、重度、耐えられない。
  5. 最近の化学療法後の全身のほてり、ないし熱っぽさ。
  6. 乗り物酔いへの感受性。
  7. 女性。
  8. 高度の状態不安(特殊な状況に触発される不安)。[ 12 ][ 13 ]
  9. 自律神経系の反応性が高くなり、反応時間が遅くなる。[ 14 ]
  10. 化学療法関連性の吐き気に対する治療開始前の患者の予想。[ 15 ][ 16 ]
  11. 化学療法薬投与後に吐き気を発症した回数が化学療法実施回数に占める割合。[ 17 ]
  12. 化学療法後のめまい。
  13. 治療後N&Vの発現までの長い潜伏時間。[ 18 ]
  14. さまざまな化学療法薬のもつ催吐潜在能。治療後のN&Vに対する潜在能が中等度ないし重度の薬物を投与中の患者は、ANVを発症する可能性がより高い。[ 12 ]
  15. 妊娠中のつわりの既往。

ANVの治療

いったんANVが発症すると、制吐薬では制御できないようである[ 2 ];しかしながら、さまざまな行動介入が検討されている。[ 19 ]これには以下がある:

誘導イメージ法による段階的な筋弛緩、催眠、および系統的脱感作は、最も研究が進んでおり、治療法として検討すべきである。ANVが認められた場合は、心理士または特殊な訓練を受け、かつがん患者を担当した経験のある精神衛生の専門家への紹介を検討すべきである。ANVの同定が早ければ早いほど、治療が奏効する可能性が高くなる;そのため、早期スクリーニングと紹介が不可欠である。しかしながら、医師および看護師は化学療法誘発性のN&Vの発生率を過小評価している。[ 26 ][証拠レベル:II]

化学療法に関連した急性および遅発性のN&Vの予防は明らかに、ANVの最も重要な側面である。ほとんどの制吐薬はANVの治療に有益であることは示されていないが、化学療法中の制吐薬の使用により、ANVの発生率低下に劇的な効果が認められる場合がある。一部の研究で有益性が示されている唯一の医薬品クラスはベンゾジアゼピン、最も一般的にはロラゼパムである。[ 27 ][証拠レベル:IV]

参考文献
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  4. Fernández-Marcos A, Martín M, Sanchez JJ, et al.: Acute and anticipatory emesis in breast cancer patients. Support Care Cancer 4 (5): 370-7, 1996.[PUBMED Abstract]
  5. Roscoe JA, Morrow GR, Hickok JT, et al.: Nausea and vomiting remain a significant clinical problem: trends over time in controlling chemotherapy-induced nausea and vomiting in 1413 patients treated in community clinical practices. J Pain Symptom Manage 20 (2): 113-21, 2000.[PUBMED Abstract]
  6. Reesal RT, Bajramovic H, Mai F: Anticipatory nausea and vomiting: a form of chemotherapy phobia? Can J Psychiatry 35 (1): 80-2, 1990.[PUBMED Abstract]
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  8. Morrow GR, Rosenthal SN: Models, mechanisms and management of anticipatory nausea and emesis. Oncology 53 (Suppl 1): 4-7, 1996.[PUBMED Abstract]
  9. Montgomery GH, Bovbjerg DH: The development of anticipatory nausea in patients receiving adjuvant chemotherapy for breast cancer. Physiol Behav 61 (5): 737-41, 1997.[PUBMED Abstract]
  10. Bovbjerg DH, Redd WH, Jacobsen PB, et al.: An experimental analysis of classically conditioned nausea during cancer chemotherapy. Psychosom Med 54 (6): 623-37, 1992 Nov-Dec.[PUBMED Abstract]
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  12. Andrykowski MA, Redd WH, Hatfield AK: Development of anticipatory nausea: a prospective analysis. J Consult Clin Psychol 53 (4): 447-54, 1985.[PUBMED Abstract]
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急性または遅発性の化学療法誘発性の吐き気と嘔吐の病因

急性の吐き気と嘔吐(N&V)

中リスクまたは高リスク化学療法に伴う急性のN&Vの発生率は30~90%に及ぶ。[ 1 ][ 2 ][ 3 ]それにより重大な罹病を引き起こし、QOLにマイナスに影響することがある。しかしながら、近年は多くの新たな制吐薬および併用方法が利用できるようになっており、この非常に恐ろしい合併症の発生率と重症度が劇的に低下している。危険因子には以下のものがある:

例えば、催吐性潜在能が軽度の薬物でも高用量を投与すれば、N&Vを誘発する可能性が劇的に増大しうる。[ 4 ]標準投与量のシタラビンによりN&Vを来すことはまれであるが、高用量を投与すればN&Vがしばしば認められる。このほかに影響する因子として、薬物の併用投与がある。ほとんどの患者は多剤併用化学療法を受けるため、あらゆる薬物の組み合わせによる催吐性潜在能と、それぞれの薬物の投与量を検討する必要がある。[ 5 ][ 6 ][ 7 ][ 8 ][ 9 ]

他の危険因子には以下がある:[ 10 ]

静脈内化学療法薬ならびにその急性および遅発性嘔吐のリスクについての要約が米国臨床腫瘍学会(ASCO)によって提供されている。[ 10 ]

経口化学療法薬ならびにその急性および遅発性嘔吐のリスクについての要約がASCOによって提供されている。[ 10 ]

遅発性N&V

遅発性(または晩発性)N&Vは、化学療法薬投与後24時間以上経過してから起こる。遅発性のN&Vは、シスプラチン、シクロホスファミド、およびその他の薬物(例、ドキソルビシンおよびイホスファミド)を高用量で投与するかまたは2日以上継続して投与することにより起こる。[ 1 ][ 11 ][ 12 ]

参考文献
  1. Hesketh PJ, Sanz-Altamira P, Bushey J, et al.: Prospective evaluation of the incidence of delayed nausea and vomiting in patients with colorectal cancer receiving oxaliplatin-based chemotherapy. Support Care Cancer 20 (5): 1043-7, 2012.[PUBMED Abstract]
  2. Schwartzberg L: Addressing the value of novel therapies in chemotherapy-induced nausea and vomiting. Expert Rev Pharmacoecon Outcomes Res 14 (6): 825-34, 2014.[PUBMED Abstract]
  3. Sekine I, Segawa Y, Kubota K, et al.: Risk factors of chemotherapy-induced nausea and vomiting: index for personalized antiemetic prophylaxis. Cancer Sci 104 (6): 711-7, 2013.[PUBMED Abstract]
  4. Roscoe JA, Morrow GR, Hickok JT, et al.: Nausea and vomiting remain a significant clinical problem: trends over time in controlling chemotherapy-induced nausea and vomiting in 1413 patients treated in community clinical practices. J Pain Symptom Manage 20 (2): 113-21, 2000.[PUBMED Abstract]
  5. Viale PH, Grande C, Moore S: Efficacy and cost: avoiding undertreatment of chemotherapy-induced nausea and vomiting. Clin J Oncol Nurs 16 (4): E133-41, 2012.[PUBMED Abstract]
  6. Dranitsaris G, Bouganim N, Milano C, et al.: Prospective validation of a prediction tool for identifying patients at high risk for chemotherapy-induced nausea and vomiting. J Support Oncol 11 (1): 14-21, 2013.[PUBMED Abstract]
  7. Kris MG, Urba SG, Schwartzberg LS: Clinical roundtable monograph. Treatment of chemotherapy-induced nausea and vomiting: a post-MASCC 2010 discussion. Clin Adv Hematol Oncol 9 (1): suppl 1-15, 2011.[PUBMED Abstract]
  8. Phillips RS, Gopaul S, Gibson F, et al.: Antiemetic medication for prevention and treatment of chemotherapy induced nausea and vomiting in childhood. Cochrane Database Syst Rev (9): CD007786, 2010.[PUBMED Abstract]
  9. Olver I, Clark-Snow RA, Ballatori E, et al.: Guidelines for the control of nausea and vomiting with chemotherapy of low or minimal emetic potential. Support Care Cancer 19 (Suppl 1): S33-6, 2011.[PUBMED Abstract]
  10. Hesketh PJ, Kris MG, Basch E, et al.: Antiemetics: American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline Update. J Clin Oncol 35 (28): 3240-3261, 2017.[PUBMED Abstract]
  11. Geling O, Eichler HG: Should 5-hydroxytryptamine-3 receptor antagonists be administered beyond 24 hours after chemotherapy to prevent delayed emesis? Systematic re-evaluation of clinical evidence and drug cost implications. J Clin Oncol 23 (6): 1289-94, 2005.[PUBMED Abstract]
  12. Fleishman SB, Mahajan D, Rosenwald V, et al.: Prevalence of Delayed Nausea and/or Vomiting in Patients Treated With Oxaliplatin-Based Regimens for Colorectal Cancer. J Oncol Pract 8 (3): 136-40, 2012.[PUBMED Abstract]
急性または遅発性の吐き気と嘔吐の予防および管理

いくつかの組織-米国臨床腫瘍学会、National Comprehensive Cancer Network、Pediatric Oncology Group of Ontarioなど-により、その組織の会員のための制吐薬に関するガイドラインが発表されている。特定のガイドラインを支持することはPDQの方針に反するが、文献においていくつかの例が掲載されている。[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ]

治療に関連した吐き気と嘔吐(N&V)の管理において最も一般的な介入は制吐薬である。制吐治療の基礎は、嘔吐の神経化学的制御にある。正確な機序は十分把握されていないが、末梢の神経性受容体および化学受容体トリガー層(CTZ)は、セロトニン、ヒスタミン(H1およびH2)、ドパミン、アセチルコリン、オピオイド、およびその他多数の内因性神経伝達物質の受容体を含むことが知られている。[ 5 ][ 6 ]多くの制吐薬は、これらの物質の受容体を競合的にブロックし、それによりCTZ、およびおそらく嘔吐中枢で末梢神経の刺激を阻害することによって作用する。

現在のガイドライン[ 2 ][ 7 ]では、化学療法誘発性のN&V(CINV)の化学療法前の管理は選択された化学療法薬の催吐性潜在能に基づくべきであると推奨されている。催吐性潜在能が高度のレジメンを受けている患者には、化学療法前のオランザピンを併用するまたは併用しない5-ヒドロキシトリプタミン-3(5-HT3)受容体拮抗薬、ニューロキニン-1(NK-1)受容体拮抗薬、およびデキサメタゾンの併用が推奨される。遅発性嘔吐の予防には、アプレピタント(化学療法前のNK-1受容体拮抗薬として選択された場合)、オランザピン、およびデキサメタゾンが推奨される。催吐性が高度の化学療法の予防のための3剤または4剤レジメンの使用に関しては、ガイドラインが異なる。あるガイドラインでは、デキサメタゾン、パロノセトロン、およびオランザピンが使用されている場合は、NK-1受容体拮抗薬を省略するという選択肢が含まれている。[ 7 ]

催吐性が中等度の化学療法を受ける患者には、化学療法前に5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの併用が用いられる。カルボプラチン(曲線下面積[AUC]が4mg/mL以上)の投与を受けている患者はまた、NK-1受容体拮抗薬を受けることもある。遅発性嘔吐の予防には、化学療法後、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾン、またはその両方が推奨される。

催吐性潜在能が軽度のレジメンには、デキサメタゾンまたは5-HT3受容体拮抗薬が推奨される。催吐性リスクが最小度のレジメンには、予防は推奨されない。[ 2 ][ 7 ]

制吐薬に関するガイドライン[ 2 ][ 7 ]には、遅発性嘔吐の予防に任意の治療法として利用可能な経口5-HT3受容体拮抗薬が含められているが、この方法を支持する証拠レベルは低い。[ 8 ]

患者は開業医の認識より多くの急性および遅発性のCINVを経験することが研究により強く示唆されている。[ 8 ][ 9 ][ 10 ]1件の研究により、吐き気が起こるのではという予感を強くもつ患者の方が、化学療法後の吐き気を経験しやすいことが示唆されている。[ 11 ]加えて、これらの現行薬物や新薬は急性および遅発性のCINVに対する予防策として使用されているのであって、既に起こったCINVに対する使用については検証されていない。1件の研究で、何日かにわたる化学療法を受けている患者における、CINVの予防に対するパロノセトロンとデキサメタゾンの静注(IV)使用の有効性が報告された。[ 12 ]

化学療法前および化学療法後の催吐性潜在能ごとの推奨事項を、表2で要約する。

表2.催吐性リスクカテゴリー別の制吐のための推奨a、b
催吐性リスクカテゴリー ASCOのガイドライン MASCCのガイドライン NCCNのガイドライン
5-HT3 = 5-ヒドロキシトリプタミン-3;ASCO = 米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology);AUC = 曲線下面積;MASCC = Multinational Association of Supportive Care in Cancer;NCCN = 全米がん包括ネットワーク(National Comprehensive Cancer Network);NK-1 = ニューロキニン-1。
a出典:National Comprehensive Cancer Network[ 7 ]、Roila et al.[ 13 ]、およびHesketh et al.[ 2 ]
b列挙された制吐薬の順番は好みを反映しているわけではない。
高度リスク(>90%) NK-1拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾン、およびオランザピンの4剤による併用が化学療法前に推奨される NK-1拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、およびデキサメタゾンの3剤による併用が化学療法前に推奨される NK-1拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、およびデキサメタゾンの3剤による化学療法前の併用
注:NK-1拮抗薬によっては、投与が1日以上になりうる
オランザピンおよびデキサメタゾンは2~4日目に継続される または:化学療法前のオランザピン(5-10mg)、パロノセトロン(0.25mg)、およびデキサメタゾン(12mg)とその後2~4日目の1日1回のオランザピン(5-10mg)
アントラサイクリンおよびシクロホスファミドの併用に対してのみ、オランザピンを2~4日目に継続する または:NK-1拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾン、およびオランザピンの4剤による併用が化学療法前に推奨される
注:NK-1拮抗薬によっては、投与が1日以上になりうる オランザピンおよびデキサメタゾンは2~4日目に継続される
注:NK-1拮抗薬によっては、投与が1日以上になりうる
中等度リスク(30~90%) カルボプラチン AUC ≥ 4mg/mL/分;NK-1拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、およびデキサメタゾンの3剤による併用が化学療法前に推奨される カルボプラチンを含むレジメンについて、NK-1拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、およびデキサメタゾンの3剤による併用が化学療法前に推奨される 5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの2剤による併用とその後2日目~3日目のデキサメタゾン(8mg)または:2日目~3日目の5-HT3受容体拮抗薬単剤療法
カルボプラチン AUC ≥ 4mg/mL/分を除いて催吐性リスクが中等度の化学療法を受けている患者には、5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの2剤による併用が化学療法前に推奨される カルボプラチンを除いて催吐性リスクが中等度の化学療法を受けている患者には、5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの2剤による併用が化学療法前に推奨される または:化学療法前のオランザピン(5-10mg)、パロノセトロン(0.25mg)、およびデキサメタゾン(12mg)とその後2~3日目のオランザピン(1日1回、5-10mg)
シクロホスファミド、ドキソルビシン、オキサリプラチン、および他の遅発性の吐き気の原因となることが知られている催吐性リスクが中等度の抗腫瘍薬の投与を受けている患者には、遅発性嘔吐の予防にデキサメタゾンが2~3日目に提供される場合がある シクロホスファミド、ドキソルビシン、またはオキサリプラチンの投与を受けている患者には、遅発性嘔吐の予防にデキサメタゾンが2~3日目に提供される場合がある または:NK-1拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、およびデキサメタゾンの3剤による化学療法前の併用と、その後2~3日目にデキサメタゾン(8mg)が推奨される
注:NK-1拮抗薬によっては、投与が1日以上になりうる
軽度リスク(10~30%) 5-HT3受容体拮抗薬またはデキサメタゾン(8mg)の単回投与が推奨される 5-HT3受容体拮抗薬またはデキサメタゾンまたはドパミン拮抗薬の単回投与が推奨される 5-HT3受容体拮抗薬またはデキサメタゾン(8-12mg)またはメトクロプラミド(10-20mg)またはプロクロルペラジン(10mg)の単回投与が推奨される
最小度リスク(10%未満) 化学療法の前後で制吐薬はルーチンに投与されていない ルーチンの予防は推奨されない ルーチンの予防は推奨されない

制吐作用が証明されている薬物は、そのほとんどが以下のグループのいずれかに分類される:

表3の薬物のそれぞれについてすべての投与経路を記載しておくが、筋肉内(IM)投与は、他の投与経路を利用できない場合にのみ用いる。筋肉内投与は痛みを伴い、薬物の吸収が不安定であることに関連し、無菌性膿瘍形成または組織の線維化を導くことがある。これは、2~3回以上薬物を投与する場合に特に重要である。

表3.急性/遅発性CINVの予防
薬物カテゴリー 医薬品 用量 利用可能な投与経路 解説 参考文献
5-HT3 = 5-ヒドロキシトリプタミン-3;bid = 1日2回;CINV = 化学療法誘発性の吐き気と嘔吐;EPS = 錐体外路症状;IM = 筋肉内;IV = 静脈内;NK-1 = ニューロキニン-1;PO = 経口;PR = 経直腸;qd = 毎日;SL = 舌下;SQ = 皮下。
aドラセトロンは製造者からの入手が困難なことがある。
ドパミン拮抗薬:フェノチアジン系 クロルプロマジン 10-25mg、PO、4-6時間ごと PO、IM QT間隔を延長する [ 14 ] [ 15 ][証拠レベル:II]
25-50mg、IM、3-4時間ごと
プロクロルペラジン 25mg、PR、12時間ごと PO、IM、IV、PR 鎮静を来すことは少ないが、EPSのリスク増加   [ 14 ]
5-10mg、PO/IM/IV、6-8時間ごと
プロメタジン 12.5-25mg、4-6時間ごと PO、IM、IV、PR 発疱薬 [ 14 ][証拠レベル:IV]
弱い制吐薬
ドパミン拮抗薬:ブチロフェノン系 ハロペリドール 1-4mg、6時間ごと PO、IV、IM 治療目的で用いられる [ 16 ][証拠レベル:III]
予防目的で用いられることはまれである
QT間隔を延長する
ドロペリドール 0.625-2.5mg/投与 IV QT間隔を延長する [ 14 ] [ 16 ][証拠レベル:III]
主に治療目的で用いられる
ドパミン拮抗薬:置換ベンズアミド系 メトクロプラミド CINVの予防:化学療法前に1-2mg/kg、IV x1投与;続いてx2投与、2時間ごと;その後はx3投与、3時間ごと PO、IM、IV より高い用量に関連するEPS;30歳未満の患者   [ 14 ]
EPSを予防するためジフェンヒドラミンを用いて前治療する
CINVの治療:10-40mg、PO、4-6時間ごと;最大0.5mg/kg、PO、6時間ごと 胃内容排出を高める
trimethobenzamide 300mg、PO、6-8時間ごと PO、IM 米国では利用できない [ 14 ] [ 17 ][証拠レベル:II]
200mg、IM、6-8時間ごと
セロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬 ドラセトロンa 化学療法前1時間以内に100mg PO IV製剤はQTc延長により市場から回収された   [ 14 ]
グラニセトロン 化学療法前1時間以内に1-2mg、POまたは10µg/kg、最大1mg、IV IV、PO、外用、SQ 化学療法の24時間前の経皮パッチ;1週間以内なら装着されたままでもよい   [ 14 ]
3.1mg/24時間、経皮的投与
化学療法の30分以上前に10mg、SQ 持続放出性薬のSQ投与は7日間で2回以上実施すべきではない
オンダンセトロン 化学療法の30分前に0.15mg/kg、IV;その後は4時間および8時間後に繰り返す;最大耐容量:16mg/24時間 PO、IV 16mgを超える用量は、QTc延長により推奨されない [ 14 ] [ 16 ][証拠レベル:I]
高度催吐性の単剤の化学療法の30分前に24mg、PO
催吐性リスクが中等度の化学療法の30分前に8mg、POに続いて、8時間で8mg、その後12時間ごとに8mg、POを1~2日間 承認後の研究で、8mg、IVがこれより多い用量と同等であることが示されている
パロノセトロン 化学療法1日目の30分前に0.25mg、IVまたは0.5mg、PO IV、PO     [ 14 ]
サブスタンスP(substance P)拮抗薬(NK-1受容体拮抗薬) アプレピタント 1日目の化学療法前に125mg、その後は80mg、毎日 x2日間 PO CYP3A4酵素阻害薬   [ 14 ]
CYP2C9酵素誘導薬
アプレピタント、乳剤 1日目の化学療法前に130mg IV 150mgのホスアプレピタントと同等の用量   [ 14 ]
CYP3A4酵素阻害薬
CYP2C9酵素誘導薬
ホスアプレピタント 1日目の化学療法前に150mg IV CYP3A4酵素阻害薬   [ 14 ]
CYP2C9酵素誘導薬
netupitant(パロノセトロンと併用される) 1日目の化学療法前にnetupitant 300mg/パロノセトロン 0.5mg PO CYP3A4酵素阻害薬   [ 14 ]
ホスアプレピタント(パロノセトロンと併用される) 1日目の化学療法前にホスアプレピタント 235mg/パロノセトロン 0.25mg IV CYP3A4酵素阻害薬   [ 14 ][ 18 ]
rolapitant 1日目の化学療法前に180mg PO/IV IV点滴ではアナフィラキシー反応が発生している   [ 14 ]
投与間隔は14日間以上空ける必要がある
CYP2D6酵素阻害薬
コルチコステロイド デキサメタゾン 催吐性リスクが高度の化学療法前に12-20mgに続いて、8mg、1-2回/日を3日間 PO、IV 5-HT3受容体拮抗薬と併用される   [ 14 ]
催吐性リスクが中等度の化学療法前に8mgに続いて、8mg/日を2日間 (ホス)アプレピタント、または(fos)netupitantと併用する場合、薬物相互作用により、1日目は12mg = 20mg、およびその後は8mgが同等である
メチルプレドニゾロン 化学療法の30分前および4時間後と8時間後に0.5-1mg/kg PO、IV 最大4mg/kg/日;化学療法前に単剤として投与される場合もある [ 16 ][証拠レベル:III]
ベンゾジアゼピン系 アルプラゾラム 0.25-1mg、6-8時間ごと PO 薬物クラスの中で半減期が最も短い [ 14 ] [ 19 ][証拠レベル:I]
ロラゼパム 0.5-2mg、6時間ごと PO、SL、IM、IV 薬物クラスの中で最も一般的に用いられる   [ 14 ]
非定型抗精神病薬 オランザピン 5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾン、およびNK-1受容体拮抗薬と併用して急性および遅発性CINVの予防:10mg、PO、1-4日目に毎日 PO 鎮静のため就寝時の投与を検討する [ 20 ][証拠レベル:I]
突発性CINVの治療:10mg、PO、毎日 x 3日間 [ 21 ][証拠レベル:I]
薬理活性を有するその他のもの ドロナビノール 化学療法の1-3時間前に5mg/m2、PO、その後2-4時間ごとに同じ用量を最大4-6回/日 PO     [ 14 ]
用量は、2.5mg/m2ずつ、最大15mg/m2まで増量できる
ナビロン 1-2mg、1日2回、最大3回で6mg/日 PO 化学療法後48時間まで継続できる   [ 14 ]
カンナビス 現在、用量に関するデータはない 吸入、PO 現在のところ、CINVを予防/治療するためにカンナビス製剤を推奨する十分なデータはない [ 22 ][証拠レベル:IV]
ショウガ 化学療法前に0.5-2g/日 PO 現在の文献は、効力の結果が矛盾していることを示している [ 23 ][ 24 ][証拠レベル:II]

競合的ドパミン(D2)拮抗薬

フェノチアジン系

フェノチアジン系薬物はCTZ、およびおそらく他の中枢神経系(CNS)中枢および末梢にあるドパミン作動性受容体に作用する。

フェノチアジン系薬物を選択する際に第一に考慮すべき点は、有害作用プロファイルの差の評価であり、これは薬物の構造的クラスと相関している。一般に、脂肪族フェノチアジン(例、クロルプロマジン)は鎮静および抗コリン作動性効果をもたらし、ピペラジン(例、プロクロルペラジン)は、鎮静を来すことは少ないが錐体外路症状(EPS)(急性ジストニー、静坐不能、神経弛緩薬性悪性症候群[まれ]、まためったにないが、運動不能症および運動異常症)の高い発生率と関連している。高用量で急速に静脈内投与すると、著明な低血圧症が生じることもある。ジフェンヒドラミンなどのH1遮断薬の同時使用は、EPSのリスクと重症度をしばしば低下させることができる。フェノチアジン系薬物は、シスプラチンのレジメンを受けて遅発性のN&Vを経験する患者の治療で、特に価値が高い。[ 25 ][ 26 ][ 27 ][ 28 ][ 29 ][証拠レベル:I]抗コリン作用を考慮して、フェノチアジン系薬物はAmerican Geriatrics Society Beers Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults(高齢者において潜在的に不適切な医薬品に対するAmerican Geriatrics Societyのビアーズ基準)の一覧に記載されている。[ 30 ]

ブチロフェノン

ドロペリドールおよびハロペリドールは、ドパミン作動性(D2サブタイプ)受容体拮抗薬のもう1つのクラスのブチロフェノンであり、構造的にも薬理学的にもフェノチアジン系薬物に類似している。本来、ドロペリドールは麻酔導入の補助薬として用いられ、ハロペリドールは神経遮断性抗精神病薬として使用されるが、両者ともいくらかの制吐活性を有している。ドロペリドールは一般的に1~2.5mg、2~6時間ごとに筋肉内または静脈内投与するが、高用量(最高10mg)を投与しても安全である。[ 31 ][ 32 ]ハロペリドールは一般的に1~4mg、2~6時間ごとに筋肉内、静脈内、または経口投与する。[ 33 ]1件の小規模なオープンラベル非対照研究では、緩和ケア患者においてハロペリドールの一定の有効性が示された。[ 34 ]両者とも、EPS、静坐不能、低血圧症、および鎮静を来すことがある。

置換ベンズアミド系

メトクロプラミドは置換ベンズアミドの1つであり、セロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬が導入されるまでは、催吐性が高度の化学療法に対し最も有効な制吐薬であると考えられていた。メトクロプラミドはドパミン(D2)作動性受容体の競合的拮抗薬であるものの高用量を静脈内投与する場合に急性嘔吐に最も有効となるが、これは、おそらくこの薬物が5-HT3受容体に対して(他のセロトニン拮抗薬と比較して)弱い競合的拮抗作用を有するためである。CTZおよび末梢で作用することもある。メトクロプラミドはまた、下部食道括約部圧を増大させて、胃の内容物の排出速度を上げるが、これは、制吐効果全体の1因子として数えることがある。メトクロプラミドはまた、比較的高用量を単回ボーラス静注(最大6mg/kg)しても、また負荷量ボーラス投与を伴うまたは伴わない持続点滴静注しても安全であり、多剤間欠投与スケジュールに匹敵する効力を示す。[ 35 ][ 36 ][ 37 ]

メトクロプラミドは静坐不能およびジストニーのEPSに関連する;静坐不能は30歳以上の患者でより頻繁にみられ、ジストニーのEPSは30歳未満の患者により一般的にみられる。EPSに薬理学的に拮抗するように、ジフェンヒドラミン、メシル酸ベンズトロピン、およびトリヘキシフェニジルが予防または治療に多用される。[ 38 ]歯車様硬直、急性ジストニー、および振戦が抗コリン作動薬の投薬に反応するのに対して、静坐不能は、メトクロプラミドの投与量を減量する、異なる薬物に変更する、またはベンゾジアゼピンを追加することで、最も上手く治療できる。

trimethobenzamideは、催吐性インパルスを遮断することでCTZに中枢で作用すると考えられている。さまざまな化学療法レジメンによる吐き気を経験しているがん患者におけるtrimethobenzamideの研究は患者数が限られている。プラセボと比較して、trimethobenzamide、200mg、IM 6時間ごとの2日間の投与はN&Vのエピソードを有意に減少させた。[ 17 ]

5-HT3受容体拮抗薬

米国では、4種類のセロトニン受容体拮抗薬-オンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、およびパロノセトロン-が入手できる。この分類の薬物は、消化管(GI)の粘膜にある腸クロム親和細胞から放出されるセロトニンが迷走神経および脊髄の交感神経を経てCNSに達する求心性伝達を開始させるのを阻害することで、N&Vを予防すると考えられている。[ 39 ][ 40 ][ 41 ]5-HT3受容体拮抗薬はまた、CTZおよび他のCNS構造でのセロトニン刺激をブロックすることがある。このクラスの医薬品の主要な副作用には、軽い頭痛および便秘が挙げられる。複数の研究により、5-HT3受容体拮抗薬はステロイドと併用投与した場合に最も有効であることが示されている。

薬の比較

急性のCINVの治療において、第一世代の3つの5-HT3受容体拮抗薬(ドラセトロン、グラニセトロン、オンダンセトロン)では、効力または毒性に大きな差は認められないことを示唆する研究がいくつかある。これら3剤は、適切な投与量で用いる場合には効力と毒性が等しい。[ 42 ][ 43 ][ 44 ][証拠レベル:I]これらの薬物は化学療法後最初の24時間(急性期)は有効であると示されているが、化学療法後2~5日目(遅発期)に有効であるとは証明されていない。

第二世代の5-HT3受容体拮抗薬であるパロノセトロンは、催吐性が高度および中等度の化学療法での急性嘔吐の制御および催吐性が中等度の化学療法を受けている患者における遅発性嘔吐について承認されている。[ 45 ][ 46 ][証拠レベル:I]

第一世代および第二世代の5-HT3受容体拮抗薬の両方の使用にもかかわらず、急性のCINV、および特に遅発性のN&Vの制御は最適以下であり、現在のレジメンに新たな薬物を追加するか、置換することにより、かなりの改善の機会がある。[ 8 ][ 47 ][ 48 ][ 49 ]

オンダンセトロン

数件の研究により、オンダンセトロンはメトクロプラミドの高用量投与と同じかそれよりも優れた制吐反応をもたらすが、ドパミン作動性拮抗薬よりも毒性プロファイルが良好であることが実証されている。[ 50 ][ 51 ][ 52 ][ 53 ][証拠レベル:I];[ 54 ][ 55 ]シスプラチンの投与を受けている患者に予防的にオンダンセトロン(8mgと32mg)を投与した1件のランダム化試験では、用量間で差は示されなかった。[ 56 ]単一施設のレトロスペクティブなカルテレビューにより、オンダンセトロンの負荷用量である16mg/m2、静注(最大24mg)は乳児、小児、および青年において安全であることが報告されている。[ 57 ]しかしながら、米国食品医薬品局(FDA)に提出されたデータから、32mgの単回静脈内投与ではQT延長や潜在的に致死性の不整脈が生じうるという懸念が提起されている。現在の医薬品表示では最大16mgの単回静脈内投与と明記されている。[ 58 ]

現在、経口および注射用オンダンセトロン製剤は、高齢患者および腎不全のある患者を含め、4歳超の患者に対して、投与量を調節せずに使用することが承認されている。経口オンダンセトロンは、化学療法実施30分前に投与開始し、1日3回、化学療法が完了してから最大2日間投与を継続する。重度肝不全のある患者では、オンダンセトロンクリアランスが減少する;そのため、このような患者には、注射であれ経口であれ単回投与で8mgを超えてはならない。現在、肝不全患者に対してオンダンセトロンを反復投与する1日量について、安全性評価の情報は得られていない。このほか、持続点滴静注(例えば、1mg/時、24時間)または経口投与などの有効な投与スケジュールも評価されている。[ 59 ]

オンダンセトロンの重大な有害作用には、以下がある:[ 60 ]

オンダンセトロンは、数例の症例研究で、血小板減少症、腎不全、および血栓性イベントと病因学的に関係していた。[ 61 ]QTc延長という形でみられるまれな心電図の変化が起こりうる。さらに、数件の症例報告では、オンダンセトロンがEPSの発現に関係しているとしている。しかしながら、報告されたイベントが実際にEPSであったかどうかは、一部の症例では不明である;他の報告では、EPSを発生するとして知られる他の薬物の同時投与により、証拠に交絡が生じている。それでもなお、セロトニン受容体拮抗薬がドパミン作動性受容体拮抗薬に勝る最大の利点は、有害作用が少ないことである。オンダンセトロンによる予防にもかかわらず、ドキソルビシン、シスプラチン、またはカルボプラチンを受けている多くの患者は急性および遅発期のN&Vを経験するであろう。[ 62 ]複数のランダム化二重盲検プラセボ対照試験で、N&Vのさらなる緩和のためにNK-1受容体拮抗薬であるアプレピタントの追加が支持された。[ 63 ][ 64 ][証拠レベル:I]

グラニセトロン

グラニセトロンは、広い用量範囲で、N&Vの予防と制御に効力が証明されている。米国では、高用量のシスプラチン投与など催吐性の化学療法を受けている患者に対する初期予防薬または反復予防薬としてグラニセトロン注射薬、持続放出注射薬、経皮パッチ、および経口錠剤が承認されている。グラニセトロンは、薬理学的および薬物動態学的にオンダンセトロンとは異なっている;しかしながら、臨床的には、効力および安全性は等しい。[ 62 ][ 63 ][ 64 ][ 65 ][証拠レベル:I]

1件のランダム化二重盲検非劣性第III相試験で、催吐性が中等度または高度の化学療法を受けている患者に対するCINVの予防について、グラニセトロンの皮下持続放出性製剤がパロノセトロンと比較された。[ 66 ]患者はIVパロノセトロン、0.25mg;または皮下グラニセトロン、5mgまたは10mgを受けるようにランダムに割り付けられた。1サイクル目にパロノセトロンを投与された患者は続いて、2~4サイクル目にグラニセトロンにランダムに割り付けられた。グラニセトロンのいずれの皮下投与も、催吐性が中等度の化学療法(グラニセトロン5mgおよび10mgそれぞれについて74.8%および76.9% vs パロノセトロンについて75.0%)および催吐性が高度の化学療法(グラニセトロン5mgおよび10mgそれぞれについて77.7%および81.3% vs パロノセトロンについて80.7%)の1サイクル目に投与するパロノセトロンに劣っていなかった。催吐性が高度の化学療法後、遅発性CINVの予防についてパロノセトロンと比較した皮下グラニセトロンの優位性は確立されなかった。

現在のところ、グラニセトロンは高齢患者、肝不全および腎不全のある患者を含めて2歳超の患者では投与量を調節せずに使用することが承認されている。

ドラセトロン

ドラセトロン経口剤は、初回コースおよび反復コースを含む催吐性が中等度のがん化学療法に伴うN&Vの予防に適応とされる;ただし、この薬物は製造者からの入手が困難なことがある。化学療法前の1時間以内に100mgの経口ドラセトロンを投与することもある。化学療法の約30分前には、IVでも経口でも1.8mg/kgのドラセトロンが単回投与されていた;しかしながら、QTc間隔延長のリスクがあるため、注射薬はもはやCINVには承認されていない。[ 67 ]

CINVの予防における経口ドラセトロンの有効性は、399人の患者を対象とする大規模ランダム化二重盲検比較試験で証明されている。[ 68 ][証拠レベル:I]化学療法の1時間前に25~200mgの範囲で経口ドラセトロンが投与された。もう一方の試験群には、オンダンセトロン経口剤(8mg)を化学療法の1時間半前に投与し、化学療法後8時間ごとに計3回投与した。完全奏効(CR:嘔吐のエピソードがなく、かつ救済目的で制吐薬を使用しない状態と定義された)率は、ドラセトロン投与量を増量するにつれて改善をみた。ドラセトロン200mg投与群およびオンダンセトロン投与群はいずれも、ドラセトロン25mgまたは50mg投与群よりもCR率が有意に高かった。

パロノセトロン

パロノセトロンは、中枢と胃腸の両方の部位で制吐活性を有する5-HT3受容体拮抗薬(第二世代)である。パロノセトロンは、催吐性が中等度および高度のがん化学療法の初回コースおよび反復コースに伴う急性のN&Vの予防として、および催吐性が中等度のがん化学療法の初回コースおよび反復コースに伴う遅発性のN&Vの予防としてFDAにより承認されている。従来の5-HT3受容体拮抗薬と比べて、パロノセトロンは5-HT3受容体へのより高い結合親和性、より高い効力、有意に長い半減期(約40時間、ドラセトロン、グラニセトロン、またはオンダンセトロンの半減期より4~5倍長い)、および優れた安全性プロファイルをもつ。[ 69 ][証拠レベル:I]ある用量決定研究で、有効な投与量は0.25mg以上であることが証明された。[ 70 ][ 71 ][ 72 ][ 73 ][ 74 ]

催吐性が中等度の化学療法を受けている患者を対象にした2件の大規模研究において、急性期および遅発期のCR(嘔吐なし、レスキュー不要)は、オンダンセトロンまたはドラセトロン単独と比較して0.25mgのパロノセトロン単独を受けた患者で有意に改善した。[ 45 ][ 46 ][証拠レベル:I]これらの研究では5-HT3受容体拮抗薬とともにデキサメタゾンが投与されていないため、デキサメタゾンが用いられた場合にもCRの差が維持されるかどうかは不明である。また別の研究[ 75 ][証拠レベル:I]では、催吐性が高度の化学療法(シスプラチン60mg/m2以上)を受けている患者650人が、デキサメタゾンと0.25mgまたは0.75mgのパロノセトロンいずれかとの併用、またはデキサメタゾンとオンダンセトロン(32mg)との併用を受けた。パロノセトロンの単回投与については、デキサメタゾンの前処置による急性のCINVの予防においてオンダンセトロンと同等の有効性が示され;化学療法後の5日間においてはオンダンセトロンよりも有意に優れた有効性を示した。上述の研究において化学療法のサイクルを反復して受けた患者の分析で、1人の著者は[ 76 ]、急性と遅発性の両方のCINVに対するCR率が同時コルチコステロイドを併用しないパロノセトロンの単回静脈内投与で維持されたことを報告した。

NK-1受容体拮抗薬(サブスタンスP[substance P]拮抗薬)

孤束核の迷走神経求心性ニューロン、腹部迷走神経、および最後野でみられるサブスタンスP(substance P)が嘔吐を誘発する。アプレピタント、ホスアプレピタント、netupitant、ホスネツピタントなどのNK-1受容体拮抗薬は、サブスタンスPがNK-1受容体に結合するのを遮断する。5-HT3受容体拮抗薬およびコルチコステロイドと併用するNK-1受容体拮抗薬は、催吐性が高度および中等度の化学療法の初回コースおよび反復コースに伴う急性および遅発性のN&Vの予防に対して適応とされる。個々のNK-1受容体拮抗薬を比較するランダム化試験はなかった。すべてがFDAで承認された用量で有効とみなされる。

アプレピタント/ホスアプレピタント

臨床試験[ 77 ][ 78 ][ 79 ][ 80 ]では、アプレピタントをシスプラチン化学療法前の5-HT3受容体拮抗薬 + デキサメタゾンに追加することにより、5-HT3受容体拮抗薬 + デキサメタゾンと比較して急性嘔吐の制御が改善された;このレジメンではまたプラセボと比較して遅発性嘔吐の制御も改善されたことが証明された。2件のランダム化二重盲検並行比較研究において、シスプラチン投与(70mg/m2以上)を受けた患者が、標準療法である化学療法前のオンダンセトロンおよびデキサメタゾンならびに化学療法後、2~4日目のデキサメタゾンの投与群、または標準療法 + 化学療法前および化学療法後2日目と3日目のアプレピタント投与群にランダムに割り付けられた。[ 81 ][ 82 ][証拠レベル:I]両研究においてアプレピタント投与群のCR(嘔吐なし、レスキュー不要)は、急性期と遅発期の両方で有意に高かった。追加研究では、オンダンセトロンと比較した場合の遅発期におけるアプレピタントの効力が確認された。[ 83 ][証拠レベル:I]最後に、アプレピタントは、催吐性が高度のシクロホスファミドおよびドキソルビシンを用いた化学療法を受けている乳がん患者におけるN&Vの予防効果があることが示されている。[ 84 ]

催吐性が高度の化学療法以外の状況では、アプレピタントの有益性が実証されている。催吐性が中等度の化学療法を実施する前のオンダンセトロンおよびデキサメタゾンへのアプレピタントの追加は、オンダンセトロンおよびデキサメタゾンのみと比較して、CINVの結果を改善した。[ 85 ][ 86 ][ 87 ]胚細胞腫瘍に対して5日間のシスプラチン併用化学療法を受けた患者を対象とした第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー研究では、代替用量戦略が評価された。[ 88 ]標準の制吐治療に加えて、患者は3日目にアプレピタント、125mgとその後4~7日目にアプレピタント、80mgを投与された。3剤レジメンでは、CINVのCRにおける有意な改善がみられた。

ホスアプレピタントジメグルミンは水溶性で、アプレピタントのリン酸化アナログであり、静脈内投与後急速にアプレピタントに変換される。[ 89 ]ホスアプレピタントは、3日間のアプレピタント経口投与レジメンの代替として、1日目の化学療法前に150mgの単回投与が承認されている。シスプラチンによる化学療法を受けている患者を対象とした1件のランダム化二重盲検試験では、CINVの予防において、オンダンセトロンおよびデキサメタゾンとホスアプレピタントの静脈内単回投与(150mg)の併用が、標準的なアプレピタント3日間経口投与と比較して効果が劣っていないことが示された。[ 89 ]ホスアプレピタントは可溶化剤のポリソルベート80と調合されるが、これにより、まれではあるが重篤な過敏性反応を起こすことがある。[ 90 ][ 91 ]アプレピタントはまた、血栓静脈炎および過敏性反応のリスクが低い非経口乳化剤形としても利用できる。[ 92 ]

netupitant/ホスネツピタント

netupitantはNK-1受容体に対する競合的拮抗薬であり、300mgのnetupitantと0.5mgのパロノセトロンを含む経口または静注の固定併用薬(NEPA)または、235mgのホスネツピタントと0.25mgのパロノセトロンを含むIV固定剤として市販されている。netupitantは、急性および遅発性の両方のCINVを予防するため化学療法前にデキサメタゾンとともに投与される。この薬物の併用は、催吐性が高度および中等度の両方の単一サイクルの化学療法レジメンにおけるCINV予防のために使用され成功を収めている。[ 93 ][ 94 ]1件のランダム化二重盲検比較試験において、NEPAによる制吐の有益性が複数サイクルの化学療法全期間にわたって実証された。[ 95 ][証拠レベル:I]アントラサイクリン/シクロホスファミドの併用レジメンを開始した患者が、固定用量の経口NEPAと12mgのデキサメタゾンの併用または0.5mgの経口パロノセトロンと20mgのデキサメタゾンの併用を受けるようにランダムに割り付けられた。CR(嘔吐を認めない、レスキュー投与を行わないと定義された)が得られた患者の割合は、1~4サイクルの間、経口パロノセトロンよりもNEPAの方が有意に高かった。最も一般的な治療関連副作用は頭痛と便秘で、2群間で同等であった。

同様に、NEPAは、催吐性が高度の化学療法を受けている患者において、グラニセトロンおよびアプレピタントと比較されている。1件の第III相ランダム化二重盲検研究では、単回投与のNEPAはグラニセトロンおよびアプレピタントの3日間のレジメンに劣っていないことが示された。さらに、NEPAを投与された場合(96.6%)、グラニセトロン + アプレピタントを投与された患者(93.5%)と比較して有意に多くの患者がレスキュー投与を必要としなかった。治療群間での毒性はほぼ同じであった。[ 96 ][証拠レベル:I]

rolapitant

rolapitantはNK-1受容体の競合的経口阻害薬である。rolapitantは、催吐性が高度および中等度の化学療法に伴う遅発性のN&Vの予防として承認されている。催吐性が高度および中等度のいずれの化学療法を受けている患者においても、グラニセトロンおよびデキサメタゾンに追加するrolapitantは、標準療法 + プラセボと比較してCINVのCR(嘔吐なし、レスキュー不要)を有意に高める。rolapitantは、このクラスの他の薬物と異なり、チトクロムp450 3A4酵素に影響しない;そのため、デキサメタゾンの用量を調節する必要はない。[ 97 ][ 98 ][ 99 ]IV製剤は、使用を制限するアナフィラキシーなど、過敏性反応と関連している。[ 100 ]

コルチコステロイド

ステロイドは一般的に他の制吐薬と併用される。ステロイドのもつ制吐作用の機序は十分に把握されていないが、脳のプロスタグランジン活性を損なうことがある。臨床的に、ステロイドはN&Vの発症頻度を低下、またはN&Vのエピソードをなくし、そして患者の気分を好転させることで、安寧または多幸感という主観的感覚を患者にもたらす(ただし、ステロイドはまた抑うつおよび不安を引き起こすこともある)。ステロイドはときに、軽度の催吐性の化学療法に対して単剤で用いられることがあるが、制吐薬と併用することの方が多い。[ 101 ][ 102 ][証拠レベル:I][ 103 ]

ステロイドは化学療法実施前に経口または静脈内投与され、反復投与されることがある。投与量および投与スケジュールは経験的に選択される。デキサメタゾンは脳浮腫も減少させるため、脳への放射線療法を受けている患者のN&Vに対してしばしば選択される治療となる。8mg~40mgの用量(小児への投与量、0.25~0.5mg/kg)で経口または静脈内投与される。[ 104 ][ 105 ]また、メチルプレドニゾロンは40mg~500mg、6~12時間ごとに最大20回の投与量および投与スケジュールで経口、または静脈内投与される。[ 102 ][ 106 ]

デキサメタゾンはまた、遅発性のN&Vに対しても経口で用いられる。しかしながら、長期にわたるコルチコステロイドの使用は不適当であり、以下を含む実質的な病的状態を引き起こすことがある:[ 107 ][ 108 ][ 109 ]

卵巣がん患者のグループにおける化学療法を調査したある研究では、制吐薬としてのグルココルチコイドの短期使用は治療成績(例、全生存または化学療法の効力)に対して否定的な作用が認められないことが明らかにされた。[ 110 ]以前にメトクロプラミドに関して明らかにされたように、膨大な研究によりデキサメタゾンは5-HT3遮断薬の制吐作用を増強することが証明されている。[ 107 ][ 111 ]デキサメタゾンを静脈内投与する場合、急速投与すると全身性の温感覚、咽頭の刺痛や灼熱感、または急性一過性の会陰痛および/または直腸痛を起こす可能性があるため、10~15分かけて投与するとよい。[ 112 ][ 113 ][ 114 ][ 115 ]

ベンゾジアゼピン系

ロラゼパムやアルプラゾラムなどのベンゾジアゼピンは、化学療法に伴う、特に小児を対象にする催吐性が高度のレジメンに伴う、不安および予測性のN&Vの症状の予防と治療に有用な補助薬であると認識されるようになっている。[ 107 ][ 108 ][ 109 ]ベンゾジアゼピン単剤では、内因性の制吐活性は証明されていない;このため、制吐予防および治療におけるベンゾジアゼピンの役割は、他の制吐薬の補助ということになる。[ 116 ]ベンゾジアゼピンはおそらく高位中枢神経系構造、脳幹、および脊髄に作用し、抗不安作用、鎮静作用、および前向性健忘作用をもたらす。さらに、ベンゾジアゼピンはドパミン作動性受容体拮抗性制吐薬に起因するEPS、特に静坐不能の重症度を顕著に緩和する。

ロラゼパムの有害作用には、鎮静、知覚および視覚障害、前向性健忘、錯乱、運動失調、および知力低下がある。[ 117 ][ 118 ][証拠レベル:I][ 119 ][ 120 ]アルプラゾラムはメトクロプラミドおよびメチルプレドニゾロンと併用投与する場合、有効であることが明らかにされている。[ 19 ]

オランザピン

オランザピンは、D1、D2、D3、およびD4脳受容体におけるドパミン;5-HT2a、5-HT2c、5-HT3、および5-HT6受容体におけるセロトニン;α-1アドレナリン受容体におけるカテコールアミン;ムスカリン受容体におけるアセチルコリン;H1受容体におけるヒスタミンなど、複数の神経伝達物質を遮断するチエノベンゾジアゼピン薬物群の抗精神病薬である。[ 121 ]一般的な副作用には以下がある:[ 122 ][ 123 ]

複数の受容体、特にN&Vに関与していると考えられるD2および5-HT3受容体におけるオランザピンの活性から、オランザピンがかなりの制吐作用を有する可能性があることが示唆されている。[ 124 ][証拠レベル:II]その後の研究により、CINVの制吐薬としてのオランザピンの有効性が示されている。[ 125 ][ 126 ][証拠レベル:II]1件の大規模研究[ 127 ][証拠レベル:I]により、催吐性が高度または中等度の化学療法を受けている患者において、アザセトロンおよびデキサメタゾンへのオランザピンの追加により、遅発性のCINVのCRが改善したことが実証された。

1件のランダム化二重盲検第III相試験により、催吐性が高度の化学療法に関連するCINVの予防について標準的な制吐薬に加えるオランザピン vs プラセボが評価された。[ 20 ][証拠レベル:I]別の薬剤を併用するまたは併用しないシスプラチンを少なくとも体表面積(BSA)1m2当たり70mg、またはシクロホスファミド BSA1m2当たり600mgと併用するドキソルビシン BSA1m2当たり60mgのいずれかを投与された化学療法未治療患者が、ガイドラインに基づく制吐薬と1~4日目にオランザピン、10mg、経口投与またはマッチさせたプラセボを受けるようにランダムに割り付けられた。制吐薬レジメンには、NK-1受容体拮抗薬(ホスアプレピタントまたはアプレピタント)、5-HT3拮抗薬(パロノセトロン、グラニセトロン、またはオンダンセトロン)、およびデキサメタゾン、1日目に12mgに続いて2~4日目に8mg毎日経口投与が含まれた。患者は、性別、化学療法レジメン、および選択された特異的5-HT3受容体拮抗薬で層別化された。主要エンドポイントである、吐き気なしは0~10の視覚的アナログスケールでスコア0として定義され、化学療法後に次の3つの期間で評価された:

吐き気なしを経験する患者の割合は、オランザピン群の方がプラセボ群よりも初期(74% vs 45%;P = 0.002)、晩期(42% vs 25%;P = 0.002)、および全体(37% vs 22%;P = 0.002)の期間を通して有意に高かった。CR(嘔吐なし、レスキュー不要)率および臨床的に著明な吐き気が認められないこと(0~10の視覚的アナログスケールで3未満のスコア)もまた、すべての期間でオランザピンの追加により有意に改善された。オランザピンを投与された患者は、ベースライン時から2日目に鎮静の増加を報告したが、これは3~5日目に軽減された。これらのデータおよび追加の臨床試験に基づいて、オランザピンは、催吐性が高度および中等度の化学療法を受けている患者における急性および遅発性のCINVの制御に安全で有効なようである。[ 128 ][ 129 ]

薬理活性を有するその他のもの

カンナビス

植物のカンナビスには、60種類を超えるカンナビノイド、つまり生理活性を有する物質が含まれている。そのうち最も有名で、おそらく最も精神賦活性の高いものは、δ-9-テトラヒドロカンナビノール(δ-9-THC)である。[ 130 ]CINVに対してFDAで承認されたカンナビス製剤は、次の2種類である:

CINVに関して、カンナビス製剤は、CNSに存在するカンナビノイド-1(CB-1)およびCB-2の受容体を標的としていると推定される。[ 131 ]

このクラスの薬剤に関する研究の多くが1970年代後半および1980年代に行われたもので、プロクロルペラジン(Compazine)およびメトクロプラミド(Reglan)など、ドパミン受容体を標的とした従来の制吐薬に対してナビロン、ドロナビノール、またはlevonantradolが比較された。[ 132 ][ 133 ][ 134 ][ 135 ][ 136 ]この一連の研究で、カンナビノイドは中等度催吐性の化学療法に対する効果がドパミン作動性制吐薬と同程度であるか、プラセボより有効なことが実証された。[ 130 ]副作用には、多幸感、めまい、不快気分、幻覚、低血圧などがあった。[ 130 ]少なくとも1件の研究で効力が古くから報告されていたにもかかわらず、副作用のためにナビロンを積極的に好む患者はいなかった。[ 132 ]

1990年代以降のN&Vを対象とした研究により、5-HT3およびNK-1の受容体といった、より新しい生理学的により重要な標的が明らかにされた。その後、5-HT3およびNK-1の受容体拮抗薬は、CINVに対する標準予防療法となっている。これらの新しい薬剤と併用した場合のカンナビス抽出物およびカンナビノイドの役割を検討した研究はほとんど行われていない;そのため、結論を出すには限界がある。公表された試験によると、カンナビス抽出物は、5-HT3受容体拮抗薬ほどの効力はないことが実証されているが、相乗効果または相加効果に関する研究は不十分である。[ 137 ][ 138 ]

要約すると、CINVの予防および治療に対する制吐薬として、現在の製品群におけるカンナビスおよびカンナビノイドの位置付けは不明である。この薬剤の患者に対する使用説明には、利用可能な薬剤の効果、カンナビスの既知の副作用、およびこの治療のリスク対ベネフィット評価を含めるとよい。[ 139 ]

詳しい情報については、大麻(カンナビス)とカンナビノイドに関するPDQ要約を参照のこと。

ショウガ

ショウガのCINVの予防に対する効力に関しては、データが分かれている。576人のがん患者を対象にした第III相ランダム化用量決定試験では、5-HT3受容体拮抗薬による標準的な予防を行っているにもかかわらず、現在の化学療法レジメンによってある程度の吐き気(11段階の尺度で測定)を経験している患者において、急性の吐き気(化学療法後1日目の吐き気と定義)を予防するために1日2回投与するショウガ0.5g、1.0g、および1.5g vs プラセボが評価された。患者には各化学療法治療の3日前にショウガまたはプラセボのカプセルの投与が開始され、6日間継続された。平均的な吐き気については、0.5gのショウガがプラセボよりも有意に優れていた;「最悪の吐き気」に対しては0.5gおよび1.0gの両方が、プラセボよりも有意に優れていた。遅発性のN&Vに対する効果は有意ではなかった。この試験では、化学療法レジメンの催吐性に対して対照を設けていなかった。有害事象の頻度は低く、重度ではなかった。[ 23 ]これとは逆に、N&Vの予防に用いられるショウガについて有望なデータは得られていない。1件のランダム化二重盲検プラセボ対照研究により、高用量のシスプラチン(50mg/m2を超える)を受けている患者において、ショウガ、160mg/日の使用が評価された。患者(N = 251)はショウガまたはプラセボのいずれかを受けるように割り付けられた。遅発性の吐き気、サイクル間の吐き気、および予測性の吐き気の発生率は、2つの治療群間で変わらなかった。[ 140 ]

複数日間の化学療法

化学療法の最初の投与後は急性の吐き気と遅発性の吐き気の両方が起こりうるため、連続した複数日間の化学療法を含むレジメン(複数日間の化学療法)は、CINVを予防する上で独特な難題となっている。複数日間の化学療法に対する標準的な制吐薬レジメンは存在しないが、催吐性が高度および中等度の化学療法を実施する日には毎回、コルチコステロイドおよび5-HT3受容体拮抗薬を投与すべきである。[ 7 ][ 141 ]証拠から、催吐性が高度および中等度の複数日間の化学療法に対しては、NK-1受容体拮抗薬の追加による有益性が実証されている。[ 2 ][ 7 ][ 13 ][ 141 ]制吐薬の選択とスケジュールは、各化学療法薬の催吐性とそれらの薬物が投与される順序に合わせるべきである。また、遅発性の吐き気の持続期間は多様であり、最終日の化学療法の催吐性によって異なる。

デキサメタゾンは複数日間の化学療法レジメンの各日、および遅発性の吐き気のリスクがある場合は、投与後2~3日間の投与スケジュールが組まれる。化学療法レジメンにコルチコステロイドが含まれている場合は、追加のデキサメタゾンは不要である。5日間のシスプラチンレジメンの各日に投与する20mgのデキサメタゾンによって追加の制吐の有益性が得られるかどうか、および毒性が追加される可能性があるかどうかは不明である。[ 13 ][ 142 ]そのため、5日間のシスプラチンレジメンを受けている患者において、CINVの時期に基づいて、ステロイドの総投与量を減らすために代替のデキサメタゾンスケジュール(1日目と2日目に20mg投与した後、6日目および7日目に8mg、1日2回、8日目に4mg、1日2回)が研究されている。[ 12 ][ 13 ]

標準的な制吐薬による予防としては、複数日間の化学療法レジメンの各日の最初の化学療法実施前に投与する5-HT3受容体拮抗薬がある。[ 2 ][ 7 ][ 13 ][ 141 ]複数日間の化学療法に対してクラス内で他の薬物よりも支持される5-HT3受容体拮抗薬はない。パロノセトロンは、クラス内の他の薬物よりも半減期が長く、受容体結合親和性が高い5-HT3受容体拮抗薬であるため、投与される頻度は比較的低い。[ 73 ]1件のプロスペクティブ非対照試験では、2つの3日間の化学療法レジメン実施前に20mgのデキサメタゾンと併用する単回の静脈内投与としてのパロノセトロンにより、80%のCR(嘔吐なし、レスキュー不要)が得られたことが実証された。[ 143 ]パロノセトロンはまた、デキサメタゾンと併用して胚細胞腫瘍に対する5日間のシスプラチンベースのレジメンに対する予防としても研究された。[ 12 ]パロノセトロン + デキサメタゾンを1日目、3日目、および5日目に投与した場合、51%の患者は1~5日目に嘔吐を経験せず、83%は6~9日目に嘔吐を経験しなかった。5-HT3受容体拮抗薬を送達する他の方法が研究されている。

1件の二重盲検第III相非劣性研究では、複数日間の化学療法を受けている患者において7日間連続投与する経皮パッチのグラニセトロンが、毎日の経口グラニセトロンと比較された。[ 65 ]経皮パッチは60%の患者において完全制御を示した一方、経口剤形は65%の患者で完全制御を示したことから、非劣性が達成された。

NK-1受容体拮抗薬のアプレピタントとそのIV製剤であるホスアプレピタントは、FDA承認スケジュールとは異なる投与スケジュールで複数日間の化学療法に関して研究されている。1件の非ランダム化試験で、催吐性が高度および中等度の3日間および5日間の化学療法に伴うCINVの予防に対するアプレピタント、グラニセトロン、およびデキサメタゾンの使用が評価された。[ 144 ]アプレピタントは最初の化学療法投与前に125mgを経口で投与され、その後は化学療法の各日およびその後の2日間80mgを経口投与された(計、5~7日)。CRは、催吐性が高度および中等度の化学療法を受けた患者のそれぞれ、57.9%および72.5%で示された。5日間のシスプラチンベースの化学療法に対する7日間の経口アプレピタントレジメンとデキサメタゾンおよび5-HT3受容体拮抗薬の併用について調査したその後の単一群試験において、同様の有望な結果が明らかにされた。[ 145 ]

胚細胞腫瘍に対して5日間のシスプラチンベースの化学療法を受けた患者において、アプレピタント、5-HT3受容体拮抗薬、およびデキサメタゾンに関するランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験が実施された。[ 88 ]経口アプレピタントは3日目に125mg投与された後、4~7日目は80mgで毎日経口投与された。アプレピタントではプラセボと比較してはCRを達成した患者が多かった(42% vs 13%、P < 0.001)。5日間のシスプラチンベースの化学療法において、5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾンと3日目と5日目に投与するIVホスアプレピタント 150mgとの併用を評価した1件の小規模試験で、このIVホスアプレピタントの使用が研究された。[ 146 ]予備的結果で28.1%のCR率が示されたが、これは同じ施設で実施された経口アプレピタントの試験結果よりも低かった。

幹細胞移植を併用する大量化学療法

全身照射を併用するまたは併用しない大量化学療法期間中の嘔吐の予防は引き続き、患者ケアにおける挑戦的な分野となっている。[ 147 ]現在のガイドラインは主として、1日の治療を扱っている;また、この状況において用いられる複数日間の化学療法または放射線療法に対する嘔吐の予防は1日の治療経験に基づいており、これらの患者に対する症状管理を改善するためには、追加の研究が必要である。[ 147 ]こうしたことから、セロトニン拮抗薬 + デキサメタゾンの毎日の投与にNK-1受容体拮抗薬が追加されるようになっている。[ 147 ][ 148 ][ 149 ]CR率は30%と低く、最適な併用方法を明らかにすべく追加の証拠が必要である。[ 149 ]また、証拠は主にアプレピタントに関するものである;新たなNK-1受容体拮抗薬により追加の有益性が得られうる。

全般的に、これらの制吐薬の併用は耐容性が高く、ほとんどの副作用はデキサメタゾンが関与している;さらに、薬物相互作用は当初は懸念されていたが、それらは臨床的には重要ではないようである。[ 150 ]また、嘔吐は吐き気(引き続き、多くの患者にとって困難な問題となっている)よりもはるかに十分な程度に制御される。[ 147 ][ 151 ]最後に、1件の第III相ランダム化試験では、メルファランの大量投与および自家幹細胞移植を受けた多発性骨髄腫患者における、CINV予防を目的としたアプレピタント、グラニセトロン、およびデキサメタゾンの使用が検討された。3剤レジメンを受けた患者では統計的にプラスの便益が得られ、副作用の増加も認められなかった。[ 148 ]

最新の臨床試験

NCIが支援しているがん臨床試験で現在患者登録中の試験を検索するには、臨床試験アドバンスト・サーチを使用のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。)。このサーチでは、試験の場所、治療の種類、薬物名やその他の基準による絞り込みが可能である。臨床試験に関する一般情報も入手することができる。

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吐き気および嘔吐の非薬理学的管理

薬物療法以外の戦略も、吐き気と嘔吐(N&V)を管理するために用いられている。これには以下がある:

段階的な筋弛緩法として誘導イメージ法、催眠、および系統的脱感作は、予測性のN&V(ANV)に対して最も頻繁に研究されており、この古典的条件付けによる反応に対して推奨される治療法である。(詳しい情報については、本要約のANVの治療のセクションを参照のこと。)

放射線誘発性の吐き気と嘔吐

放射線療法(RT)は、がん患者における吐き気と嘔吐(N&V)の重要な原因の1つである。複数の観察研究により、RTを受けている患者においてある程度のN&Vが起こる全累積発生率は80%に及ぶと示唆されている。[ 1 ]N&V発生に対する危険因子が明らかになっている。放射線誘発性のN&V(RINV)はQOLを悪化させることで、治療の遅延や予約のキャンセルに至り、がんの制御に支障を来す。[ 2 ][ 3 ]

疫学

2件の大規模プロスペクティブ観察研究により、RINVの頻度と制吐のための手段に関する情報が提供されている。Italian Group for Antiemetic Research in Radiotherapyでは、さまざまな種類の放射線療法を受けている患者1,020人におけるRINVの発生率が解析された。[ 4 ]全体では、吐き気および/または嘔吐は28%の患者で報告された。嘔吐の最初のエピソードまでの期間中央値は3日であった。制吐薬は、予防的に投与された12%およびレスキュー治療で投与された5%を併せて17%の患者で投与された。RTを受けた患者368人を対象にした2番目のコホートでは、全体の発生率は吐き気で39%および嘔吐で7%であった。[ 5 ]下腹部および骨盤にRTを受けた患者(66%)の方が頭頸部にRTを受けた患者(48%)よりも吐き気の頻度が高かった。RT中の制吐薬は十分に処方されていない。[ 6 ]

病態生理学

RINVの病態生理学の理解は不完全である。セロトニン、サブスタンスP(substance P)、およびドパミンは、放射線誘発性の嘔吐に関与する神経伝達物質である。[ 7 ]RINVは、化学療法誘発性のN&V(CINV)とかなり類似している。RINVにおけるセロトニン拮抗薬の有効性から、放射線誘発性の嘔吐におけるセロトニンの役割が支持されている。[ 7 ]サブスタンスP拮抗薬はCINVと同様にRINVにおいて広く使用されている。前臨床研究から、RINVにおけるサブスタンスPの役割が示唆されている。[ 8 ]サブスタンスP拮抗薬は、RINVに対する研究が始まったばかりである。サブスタンスPはRT実施後の長期のN&Vにおいて役割を演じている可能性がある。

リスク層別化

RINVの発生率と重症度は以下により決定される:

最も重要な因子は、放射線照射野であると考えられる。表4では、Multinational Association of Supportive Care in Cancer(MASCC)、European Society for Medical Oncology(ESMO)、および米国臨床腫瘍学会(ASCO)によって提唱されたリスクカテゴリーを示す。[ 9 ]この分類では吐き気のリスクは検討されていない。[ 10 ]RTで治療されている患者のN&Vのリスクは、特定のRTレジメンの催吐性に加えて、他の複数の因子によって異なる。患者特異的な因子としては、以下が挙げられる:[ 3 ]

表4.RINVに対するリスク分類a
催吐性潜在能 予防しない場合の嘔吐のリスク(%) 部位
RINV = 放射線誘発性の吐き気と嘔吐;TBI = 全身照射。
a出典:Roila et al.[ 3 ]
高度 >90 TBI
中等度 60–90 上腹部照射、頭蓋脊髄
低度 30–60 頭蓋(すべて)、頭頸部、胸郭部、骨盤
最小度 <30 乳房、四肢

治療

RINVに対する治療について記述している主要な文献はCINVに対する治療の文献よりもはるかに小規模である。[ 11 ]実施された研究のほとんどが、RINVのリスクが中等度~高度の特徴を有する患者を対象にしていた。

制吐治療:N&Vの予防と治療

数件の研究により、RINVの予防としてセロトニン拮抗薬の優位性が示されている。[ 12 ][ 13 ][ 14 ][ 15 ][ 16 ][ 17 ] オンダンセトロンおよびドラセトロンは、プラセボまたはメトクロプラミドと比較して優位性を示した。セロトニン拮抗薬の投与は、単回の前治療か、連続した数日間(最大、計5~7日)となっている。ほとんどの研究が、RINVのリスクが中等度~高度の患者において実施されている。

推奨される投与は、照射スケジュールに関係なく、オンダンセトロン、8mgである。[ 3 ]グラニセトロンの用量は、2mg/日の経口投与である。[ 3 ]9件の臨床試験を扱った最近のメタアナリシスにより、嘔吐 vs 吐き気について検討した場合の多様な制御率が示された。プラセボと比較して、嘔吐が持続した患者は少なく(40% vs 57%;相対リスク[RR]、0.7)、レスキュー投与が必要な患者も少なかった(6.5% vs 36%;RR、0.18)。[ 18 ]吐き気の制御はより困難なようである。ほとんどの患者が治療を行ってもRT誘発性の吐き気を発症した(70% vs プラセボで83%;RR、0.84)。[ 19 ]要約すると、これらの試験から、上腹部照射を受けている患者はRINVを制御するために5-ヒドロキシトリプタミン-3(5-HT3)受容体拮抗薬を使用することで、メトクロプラミド、フェノチアジン、またはプラセボよりも大きな有益性が得られることが示されている。[ 12 ][ 13 ][ 14 ][ 15 ][ 16 ][ 17 ]

5-HT3受容体拮抗薬の有害作用は一般的に軽度であり、主に頭痛、便秘、および無力症からなる。[ 20 ]RINVにおける複数のランダム化試験で、異なる5-HT3受容体拮抗薬の使用が調査されている。これらの異なる5-HT3受容体拮抗薬を比較したデータは存在せず、RINVに対する至適投与量に関するコンセンサスも得られていない。[ 21 ]25件のランダム化および非ランダム化試験を含む1件の系統的レビューで、5-HT3受容体拮抗薬は最も一般的にRTコースの全期間にわたって投与されたことが明らかにされた。RT実施前、実施期間中、および実施後の5-HT3使用の最適期間および時期を決定する必要がある。[ 22 ]パロノセトロンに関して、RINVの設定で適切な用量および頻度は依然として不明であり、パロノセトロンを他の薬物と併用する場合、週1回の投与が可能である。[ 23 ]

コルチコステロイド

コルチコステロイドは、広く利用可能なことと低コストであるため、魅力的な治療のための制吐薬オプションの1つである。短期間の使用では、副作用はほとんどなく、これらの薬物の有益性を上回ることはない。1件のランダム化試験で、上腹部へのRTを受けている患者において、デキサメタゾンはプラセボよりも有意に有効であることが示された。[ 24 ]コルチコステロイドと5-HT3受容体拮抗薬の併用がデザインの優れたランダム化試験で評価され、この試験では上腹部へのRTを受けた患者211人において5日間のデキサメタゾン + オンダンセトロンがオンダンセトロン + プラセボと比較された。[ 25 ]最初の5日間で、統計的に有意ではないものの、この試験の主目的であった吐き気(50% vs プラセボで38%)と嘔吐(78% vs 71%)の完全制御傾向が得られた。デキサメタゾンの効果は最初の5日間を過ぎても延長し、有意に多くの患者で、この試験の副次的目的であったRTの全期間にわたる嘔吐の完全制御(23% vs プラセボで12%)が得られた。この試験から、デキサメタゾンの追加はRINVにわずかな効果があり、この設定における5-HT3受容体拮抗薬への追加が潜在的に有用であることが示されている。[ 25 ]

ニューロキニン-1(NK-1)受容体拮抗薬

NK-1受容体拮抗薬はCINVの管理における役割が確立されている;しかしながら、RINVのリスクに対してこの薬物クラス単独での影響について評価している研究はない。前臨床データから、RINVは一部にはサブスタンスPが媒介していることが示されており[ 8 ]、これらの薬物の推奨は時期尚早である。したがって、NK-1受容体拮抗薬はRINVに対する制吐薬のガイドラインには反映されていない。[ 3 ]1件の第III相ランダム化プラセボ対照試験で、放射線療法とシスプラチンを同時に受けた患者におけるN&Vの予防についてパロノセトロンおよびデキサメタゾンと併用するNK-1受容体拮抗薬のホスアプレピタントが、パロノセトロンおよびデキサメタゾン単独と比較された。[ 23 ][証拠レベル:I]患者は分割放射線療法と週1回のシスプラチン、40mg/m2を受けた。すべての患者が同じスケジュールでデキサメタゾンを投与された:1日目に16mg、2日目に8mgを1日2回、3日目に4mgを1日2回、4日目に4mgを1日1回。3剤レジメンを受けた患者では完全奏効を達成した患者が多かった:プラセボ群で48.7%およびホスアプレピタント群で65.7%。

ホスアプレピタントはまた、催吐性が高度の化学療法と同時に放射線療法も受けていた頭頸部がんまたは食道がん患者におけるN&Vの予防としてオランザピンとも比較されている。[ 26 ]オランザピン、パロノセトロン、およびデキサメタゾン(OPD)を投与された患者について、用量は次の通りであった:化学療法の1日目にデキサメタゾン20mgおよびパロノセトロン0.25mgの静注;および化学療法の1~4日目にオランザピン10mg。ホスアプレピタント、パロノセトロン、およびデキサメタゾン(FPD)を投与された患者について、用量は次の通りであった:化学療法の1日目にデキサメタゾン12mg、パロノセトロン0.25mg静注、およびホスアプレピタント150mg静注とその後、化学療法の2~3日目にデキサメタゾン4mgを1日2回。2群間で完全奏効はほぼ同じであり、OPD群における奏効率は全体で76%およびFPD群では全体で74%であった。このことは、NK-1受容体拮抗薬は催吐性が高度の化学療法を受けている患者において役割を果たしている可能性を示唆している。[ 26 ]

他の薬物

プロクロルペラジン、メトクロプラミド、カンナビノイドといった従来の非特異的な制吐薬はRINVの予防または治療における効力は限定的であるものの、これらは比較的症状が軽度の患者における治療か、レスキュー薬として役割を有する可能性がある。[ 27 ]

予防の期間

分割RTを受けている患者に対する制吐薬予防の適切な期間は不明である。5日間の治療コースとそれより長期の治療コースを比較した5-HT3受容体拮抗薬を用いたランダム化試験は存在しない。[ 7 ]25件のランダム化および非ランダム化試験を含む1件の系統的レビューで、5-HT3受容体拮抗薬は最も一般的にRTコースの全期間にわたって投与されたことが明らかにされた。[ 22 ]

レスキュー治療

吐き気または嘔吐がいったん発生した場合の5-HT3受容体拮抗薬の有益性はすべての研究で示唆されているが、特にこの設定における試験は実施されていない。[ 28 ]CINVを有する患者の突出性嘔吐におけるオランザピンの明らかになりつつある役割は、RINVでは研究されていない。[ 29 ]

ガイドラインおよび患者の管理

RINVを発症するリスクが高い患者について、5-HT3受容体拮抗薬による予防は、MASCCとASCOの両方の臨床診療ガイドラインで推奨されている。催吐性が高度の化学療法を受けている患者からの結果に基づいて、5-HT3受容体拮抗薬へのデキサメタゾンの追加が提唱されている。MASCCとASCOの両方の制吐薬に関する臨床診療ガイドラインでは、催吐性が中等度のRTを受ける患者には、短期間のデキサメタゾンを併用する、または併用しない5-HT3受容体拮抗薬による予防を実施すべきであると推奨されている。[ 7 ]RINVを予防する上でNK-1受容体拮抗薬の使用に関して十分に発表された比較臨床試験は存在しない;したがって、その使用は推奨できない。

RINVを予防するための制吐薬の用量に関する提案を表5に要約する。

表5.放射線療法に対する制吐薬の用量a
薬物カテゴリー 制吐薬 用量 解説 参考文献
5-HT3 = 5-ヒドロキシトリプタミン-3;bid = 1日2回;IV = 静脈内;PO = 経口;prn = 必要に応じて;RT = 放射線療法;TBI = 全身照射;tid = 1日3回。
a出典:Roila et al.[ 3 ]およびHesketh et al.[ 30 ]
セロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬 グラニセトロン 2mg、PO、毎日   [ 16 ][証拠レベル:I]
オンダンセトロン 8mg、POまたは0.15mg/kg、IV、毎日 TBIでbid-tid [ 21 ][証拠レベル:I]
パロノセトロン 0.25mg、IVまたは0.5mg、PO RTでは研究されていない;投与の頻度に関するデータは利用できない   [ 30 ]
ドラセトロン 100mg、POのみ   [ 13 ][証拠レベル:I]
コルチコステロイド デキサメタゾン 4mg、POまたはIV 1-5回目の分割照射中 [ 25 ][証拠レベル:I]
ドパミン受容体拮抗薬 メトクロプラミド 20mg、PO 催吐性リスクが最小度のRT中はprn;5-HT3受容体拮抗薬より劣る [ 21 ][証拠レベル:I]
プロクロルペラジン 10mg、POまたはIV 催吐性リスクが最小度のRT中はprn   [ 30 ]
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小児における化学療法誘発性の急性の吐き気と嘔吐

急性の吐き気と嘔吐(N&V)に対して発表されている小児向けの制吐薬ガイドライン

小児集団において化学療法誘発性のN&V(CINV)は重要な問題である。成人の場合と同様に、小児における吐き気は嘔吐よりも大きな問題となっている。吐き気はオンタリオ州で積極的な抗腫瘍薬療法を受けていた小児の両親によって、小児において4番目に有病率が高く厄介な治療関連症状として認識された。[ 1 ]CINVを予防するために適切で有効な手段を選択する現在のアプローチは、抗腫瘍薬療法がN&Vを引き起こす可能性に関する正確な記述に基づいている。現在の推奨は発表されているガイドランに基づいている。[ 2 ]これらの推奨には、生後1ヵ月~18歳の患者が含まれている。発表されている推奨は、これから抗腫瘍薬療法の最初のコースを受ける予定の抗腫瘍薬療法未実施の患者に基づいている。推奨では急性のCINV(すなわち、抗腫瘍薬の投与から24時間以内)の予防に焦点を当てている。

ガイドラインでは、急性のCINVの最適な制御の定義は嘔吐なし、むかつきなし、吐き気なし、CINVの予防に用いられる以外の制吐薬の使用なし、および小児の通常の食欲や食事において吐き気に関係した変化が認められないことと推奨されている。このレベルのCINV制御は、抗腫瘍薬療法が実施される各日および抗腫瘍薬療法サイクルの最後の薬物投与後24時間にわたって達成されるべきである。

催吐性リスク

抗腫瘍薬療法を受けているが、制吐薬予防を受けていないか、または有効ではないことが明らかになっている予防が行われている小児において予想されるCINVの完全制御率は以下の通りであった:[ 2 ]

現代の制吐薬予防(デキサメタゾンを併用するまたは併用しない5-ヒドロキシトリプタミン-3[5-HT3]受容体拮抗薬)を受けている小児に予想されるCINVの完全制御率は、70%以上~80%である。[ 2 ]化学療法薬はそれぞれ、嘔吐を引き起こす固有のリスクを有しており、化学療法を用いた治療を計画する場合は、個人のリスクを評価する際に検討すべき最初の問題となる。急性または遅発性のCINVの予防に関する詳しい情報については、表3を参照のこと。

制吐薬による予防

催吐性が高度の化学療法

ガイドライン[ 2 ][ 3 ]では、催吐性リスクが高度でアプレピタントとの相互作用が不明であるか疑われていない抗腫瘍薬を投与されている12歳以上の小児は、アプレピタント + 5-HT3受容体拮抗薬 + デキサメタゾンの併用を受けるべきであると推奨している。デキサメタゾンを受けられない小児は5-HT3受容体拮抗薬 + アプレピタントを受けるべきである。アプレピタントを受けられない小児は5-HT3受容体拮抗薬 + デキサメタゾンを受けるべきである。

催吐性が中等度の化学療法

催吐性が中等度の抗腫瘍薬を投与されている小児はオンダンセトロン、グラニセトロン、またはパロノセトロン + デキサメタゾンを受けるべきである。デキサメタゾンを受けられない小児は5-HT3受容体拮抗薬 + アプレピタントを受けるべきである。[ 3 ]

催吐性が軽度の化学療法

催吐性が軽度の抗腫瘍薬を投与されている小児は5-HT3受容体拮抗薬を受けるべきである。[ 3 ]

最小度催吐性潜在能

催吐性が最小度の抗腫瘍薬を投与されている小児はルーチンの予防を受けるべきではない。[ 3 ]

他の制吐方法

現在のコンセンサスによると、抗腫瘍薬を投与されている小児において以下が有効な可能性がある:[ 2 ]

バーチャルリアリティにより有益性が伝えられる可能性がある。他の推奨(低い証拠レベル)には、以下が挙げられる:

強力な証拠は不足しているが、ほとんどの専門家が、こうした推奨は望ましくない影響を引き起こすまたはQOLに悪影響を及ぼす可能性が低く、有益性が得られうると考えている。[ 2 ]

制吐薬

5-HT3受容体拮抗薬単独による予防では、催吐性リスクが中等度および高度の抗腫瘍薬を投与されている患者におけるCINVの制御が不良となる。催吐性が高度の化学療法を受けている小児における代替の制吐薬(クロルプロマジンおよびメトクロプラミド)を評価した3件の研究を統合したところ、9%のCINV完全制御率(95%信頼区間:0-20)が観察された。[ 2 ]コルチコステロイドが禁忌である場合、催吐性が高度の化学療法を受けている小児にはナビロンまたはクロルプロマジンをオンダンセトロンまたはグラニセトロンと併用することが推奨される。メトクロプラミドは催吐性が中等度の化学療法を受けている小児に対する3つ目の選択肢である。また、催吐性が高度および中等度の化学療法を受けている患者には、コルチコステロイドをセロトニン拮抗薬と併用することが推奨される。[ 4 ]

小児患者に対する制吐薬の用量に関する提案を表6に要約する。

表6.小児における制吐薬の用量
薬物カテゴリー 医薬品 用量 利用可能な投与経路 解説 参考文献
5-HT3 = 5-ヒドロキシトリプタミン-3;bid = 1日2回;BSA = 体表面積;EPS = 錐体外路症状;IM = 筋肉内;IV = 静脈内;NK-1 = ニューロキニン-1;PO = 経口;PR = 経直腸;prn = 必要に応じて;qd = 毎日;SL = 舌下;tid = 1日3回。
aパロノセトロンの処方情報では小児の極量は1.5mgと記載されている。
フェノチアジン系 クロルプロマジン 6時間ごとに0.5mg/kg/投与;6時間ごとに1mg/kg/投与に増量できる;極量:50mg IV QTc間隔を延長する;コルチコステロイドが禁忌である場合、5-HT3受容体拮抗薬と併用する; 効力と鎮静に基づいた用量調節 [ 5 ][ 2 ][証拠レベル:IV];[ 6 ][証拠レベル:I]
プロクロルペラジン 9-13kg:2.5mg、PO、qd-bid;極量:7.5mg/日 PO、IM、IV 鎮静を来すことは少ないが、EPSのリスク増加 [ 5 ][ 7 ][証拠レベル:I]
13-18kg:2.5mg、PO、bid-tid;極量:10mg/日
18-39kg:2.5mg、tidまたは5mg、bid;極量:15mg/日
プロメタジン 2歳超:0.25-1mg/kg/投与、4-6時間ごと;極量:25mg PO、IM、IV、PR 発疱薬   [ 5 ]
置換ベンズアミド系 メトクロプラミド 催吐性が中等度の化学療法:1mg/kg/投与、IV、化学療法前に1回、続いて6時間ごとに0.0375mg/kg/投与、PO PO、IM、IV より高い用量に関連するEPS;EPSを予防するためベンズトロピンまたはジフェンヒドラミンを用いて前治療する;胃内容排出を高める [ 5 ][ 8 ][証拠レベル:I]
セロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬 グラニセトロン 40μg/kg、IV、毎日;40μg/kg、PO、12時間ごと; 最大:1mg/投与 IV、PO   [ 9 ][証拠レベル:I]
オンダンセトロン 0-12歳未満:0.15mg/kg/投与(5mg/m2/投与)化学療法前、その後は催吐性が高度の化学療法で8時間ごとまたは催吐性が中等度の化学療法で12時間ごと PO、IV QTc延長のため16mgを超えるIV投与は避ける;12歳超:成人の用量に従う [ 5 ][ 2 ][証拠レベル:IV]
催吐性が軽度の化学療法:0.3mg/kg/投与(10mg/m2/投与)、化学療法前に1回
POの極量:24mg;IVの極量:16mg
パロノセトロン 生後1ヵ月-17歳:20μg/kg;極量:0.75mga IV、PO 小児における半減期は30時間であるため、複数日間の化学療法中は2-3日ごとに投与される [ 2 ][証拠レベル:I];極量:[ 10 ]
サブスタンスP(substance P)拮抗薬(NK-1受容体拮抗薬) アプレピタント カプセル剤:12歳超の年齢:1日目の化学療法前に125mg、その後は80mg、qd x2日間 PO CYP3A4酵素阻害薬;CYP2C9酵素誘導薬 [ 11 ][証拠レベル:I]
懸濁液:生後6ヵ月-12歳の年齢(および6kg超):1日目の化学療法前に3mg/kg、その後は2mg/kg、qd x2日間 懸濁液:1日目の極量:125mg;2-3日目の極量:80mg
ホスアプレピタント 13-17歳の年齢:150mg IV CYP3A4酵素阻害薬;CYP2C9酵素誘導薬 [ 12 ][証拠レベル:III]
コルチコステロイド デキサメタゾン 催吐性が高度の化学療法:6時間ごとに6mg/m2/投与 PO、IV 化学療法の細胞毒性効果を低下させる恐れがあるため、一部の脳腫瘍、骨肉腫、およびがん腫のプロトコルでは省略される場合がある [ 5 ][ 2 ][証拠レベル:IV]
催吐性が中等度の化学療法:BSAが0.6m2以下:12時間ごとに2mg 5-HT3受容体拮抗薬と併用される
BSAが0.6m2超:12時間ごとに4mg アプレピタントまたはホスアプレピタントと併用する場合、用量を50%低下させる
最大:20mg/投与 遅発性の吐き気に対して最も有効
メチルプレドニゾロン 4-10mg/kg/投与 PO、IV 5-HT3受容体拮抗薬と併用される [ 13 ][ 14 ][証拠レベル:I]
ベンゾジアゼピン系 ロラゼパム 予測性:0.02-0.05mg/kg/投与(最大:2mg/投与)、化学療法前夜の就寝時に1回、および化学療法前に1回 PO、SL、IM、IV 薬物クラスの中で最も一般的に用いられる   [ 5 ]
突発性:6時間ごとに0.02-0.05mg/kg/投与、IV(最大:2mg) prn [ 15 ][証拠レベル:IV]
非定型抗精神病薬 オランザピン 0.1-0.14mg/kg/投与、qd;最大:10mg PO   [ 16 ][証拠レベル:III]
薬理活性を有するその他のもの ドロナビノール 6-18歳の年齢:2.1mg/m2、化学療法の1-3時間前 PO 単一施設の経験のみ;食欲刺激特性の有益性 [ 17 ][証拠レベル:III]
ナビロン 4歳超の年齢: PO 化学療法後、最大48時間継続される;コルチコステロイドを併用するまたは併用しない5-HT3受容体拮抗薬とは比較されていない;コルチコステロイドが禁忌である場合、5-HT3受容体拮抗薬と併用する [ 18 ][証拠レベル:I];[ 7 ]
18kg未満:12時間ごとに0.5mg
18-30kg:12時間ごとに1mg
30kg超:8-12時間ごとに1mg
極量:0.06mg/kg/日

1日の多剤併用化学療法レジメン

小児科での経験およびガイドラインでは、抗腫瘍薬の併用レジメンの催吐性は多くの併用薬の中で催吐性リスクが最も高度の薬物の催吐性に基づくべきであると推奨されている。[ 19 ]以下に示す一覧の抗腫瘍薬併用の催吐性は、個別の薬物の催吐性リスクの評価によって認識されているよりも高いようである。[ 20 ]

参考文献
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小児における遅発性の吐き気と嘔吐

成人における遅発性の吐き気と嘔吐(N&V)は詳細に報告されており、制御のための複数の戦略がある。急性のN&Vや化学療法実施直後の吐き気の制御は大幅に改善されているにもかかわらず、遅発性のN&Vは依然として重大な問題のままである。抗腫瘍薬投与後の小児における遅発性のN&Vの性質および有病率はあまり十分に記述されていない。[ 1 ]また、小児における化学療法レジメンのほとんどが複数日間の化学療法となっており、遅発性 vs 急性のN&Vのリスクの始まりと期間がはっきりしていない。

小児における化学療法誘発性のN&V(CINV)分野の取り組みは、一部には評価ツールが不足していることおよび吐き気という主観的な性質によって限られている。小児集団における嘔吐は、吐き気よりも認識と測定が容易である。[ 1 ]幼児における吐き気の評価の困難さは、幼児ではより年長の小児よりもCINVの経験の頻度が低いという共通した認識に寄与している可能性がある。さらに、介護者は幼児の嘔吐への耐性が高い場合があり、吐き気の発見を見逃している可能性がある。[ 1 ]これらの制限を考慮して、研究では、吐き気の程度を評価するために食事の摂取をしばしば用いている。

いくつかの研究者集団が、小児集団における遅発性のN&Vの有病率を明らかにしようとしている。初期の取り組みで、遅発性のN&Vの発生率は低いと示唆された。[ 2 ]1件の大規模研究では、小児における遅発性のCINVの性質と有病率が評価された。[ 1 ]吐き気は、吐き気が活動に及ぼす影響を反映した数値スケール(3~6歳の小児には顔のイラストによるスケール)を用いて毎日自己評価された。食事もまた毎日評価された。結果から、抗腫瘍薬(シクロホスファミド、シスプラチン、またはカルボプラチン)を投与された患者における遅発性の嘔吐の発生率が33%であったこと、および他の抗腫瘍薬を投与された患者では発生率が11%であったことが示された。522日の研究日のうち412日(79%)では制吐薬が投与されなかった;にもかかわらず、患者が遅発期に制吐薬によるサポートを受けなかった412日の研究日のうち381日(93%)では、嘔吐が全く認められなかった。制吐薬は最もしばしば単独で投与された(オンダンセトロン、54研究日;ジメンヒドリナート、17研究日;デキサメタゾン、6研究日)。食事に影響はみられなかった。著者らは、小児における抗腫瘍薬誘発性の遅発性のN&Vは成人よりも有病率が低い可能性があると結論付けた。[ 1 ]遅発性の嘔吐を経験していない小児の多くが、研究における多数のレジメンで重要な催吐性潜在能の欠如を反映している可能性がある;174化学療法サイクル中100サイクルでは、制吐薬が投与されなかった。また、中等度および重度の化学療法レジメンで制吐反応を特徴付けることはできなかった。

別の研究では、催吐性が中等度および高度の化学療法を受けており、またオンダンセトロンを治療の催吐性潜在能に応じて単独またはデキサメタゾンと併用する形で前投薬を受けた小児患者において、遅発性のN&Vの発生率が評価された。[ 3 ]この研究では、研究者らにより吐き気の重症度と持続期間、嘔吐の重症度、嘔吐の回数、吐き気または嘔吐による日常の活動への支障、および食欲の評価が測定された。著者らは、催吐性が中等度と高度のレジメンの両方で遅発性のN&Vが発生したことを明らかにした。N&Vの重症度は、催吐性が中等度と高度の化学療法レジメン間でさまざまであった。研究者らはまた、歩き始めの幼児ではより年長の小児よりも制吐薬による制御が良好であったことを明らかにしたが、これはこの年齢層間において不安に差がある結果の可能性がある。歩き始めの幼児の患者集団の方が完全制御が大きくなる理由は不明であるが、小児における吐き気と嘔吐の制御率に関する著者らの以前の研究と一致している。[ 4 ]不安と患者の認識は、より年長の小児におけるN&Vの重要な寄与因子である可能性がある;著者らは急性のN&Vの制御と遅発性のN&Vの発生間の関係を明らかにした。

別の研究では、遅発性のN&Vの発生率は高いと示唆されている。[ 5 ]化学療法を受けている小児がん患者(N = 40)のサンプルにおいて、小児の観点からはAdapted Rhodes Index of Nausea and Vomiting for Pediatricsを用いて;主要な介護者の観点からはAdapted Rhodes Index of Nausea and Vomiting for Parentsを用いて;そして看護師の観点からはNational Cancer Institute Nausea and Vomiting Grading Criteriaを用いて、N&Vが評価された。吐き気の発生頻度が最も高かったのは遅発期であり、60%の患者(n = 24)が遅発性の吐き気を報告した。著者らは、化学療法コース全体を通じて化学療法誘発性のN&Vが発生し、遅発性のN&Vの発生頻度が最も高く、重症度と苦痛は比較的大きかったと結論付けた。小児集団における遅発性のN&Vについては、さらなる研究が必要である。

小児における遅発性のN&Vの予防に関するデザインの優れた研究は利用できないため、公式に推奨することはできない。そうしたデータが存在しないため、現在のコンセンサスは、成人と同様の方法で適切に用量を調節して小児を治療することである。[ 6 ]

参考文献
  1. Dupuis LL, Lau R, Greenberg ML: Delayed nausea and vomiting in children receiving antineoplastics. Med Pediatr Oncol 37 (2): 115-21, 2001.[PUBMED Abstract]
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  3. Holdsworth MT, Raisch DW, Frost J: Acute and delayed nausea and emesis control in pediatric oncology patients. Cancer 106 (4): 931-40, 2006.[PUBMED Abstract]
  4. Small BE, Holdsworth MT, Raisch DW, et al.: Survey ranking of emetogenic control in children receiving chemotherapy. J Pediatr Hematol Oncol 22 (2): 125-32, 2000 Mar-Apr.[PUBMED Abstract]
  5. Rodgers C, Kollar D, Taylor O, et al.: Nausea and vomiting perspectives among children receiving moderate to highly emetogenic chemotherapy treatment. Cancer Nurs 35 (3): 203-10, 2012 May-Jun.[PUBMED Abstract]
  6. Dupuis LL, Sung L, Molassiotis A, et al.: 2016 updated MASCC/ESMO consensus recommendations: Prevention of acute chemotherapy-induced nausea and vomiting in children. Support Care Cancer 25 (1): 323-331, 2017.[PUBMED Abstract]
小児における予測性の吐き気と嘔吐

化学療法を受けているがん患者は、化学療法を予期した場合に吐き気と嘔吐(N&V)を経験しうる。方法論、時期、および評価ツールにおける差および吐き気または嘔吐(ただし、両方ではない)への注目によって、小児における予測性のN&V(ANV)の実際の有病率の把握が困難になっている。小規模研究のサンプルサイズでは、小児集団におけるANVの実際の頻度を把握できない。正確な有病率はまた、親または介護者の代理による吐き気の報告の使用および妥当性が確認されていない吐き気の評価ツールの使用によって妨げられる。

制吐薬として5-ヒドロキシトリプタミン-3(5-HT3)受容体拮抗薬とコルチコステロイドを投与されている患者において、ANVを長期にわたって評価した場合、約1/3の成人がANVを経験した一方、予測性の嘔吐は6~11%で報告された。[ 1 ]単一グループの研究者らにより、5-HT3受容体拮抗薬以前の時代の小児におけるANVが評価された。この研究により、評価前に平均で11サイクルの抗腫瘍薬療法を受けていた小児80人中23人(29%)で予測性の吐き気、小児80人中16人(20%)で予測性の嘔吐が報告された。[ 2 ]5-HT3以降の時代では、小児における予測性の吐き気の有病率は0~59%に及んでいることが報告された。[ 3 ]成人患者における観察と同様に、予測性の吐き気の有病率は常に予測性の嘔吐の有病率よりも高いことが報告されており、例外は1件のみであった:1件の研究で、予測性の吐き気と予測性の嘔吐で同等の有病率(患者19人中5人[26%])が報告された。[ 4 ]

本セクションでは、抗腫瘍薬投与を受けている生後1ヵ月~18歳の小児におけるANVの管理に焦点が当てられている。ANVの最適な制御は嘔吐なし、むかつきなし、吐き気なし、化学療法誘発性のN&V(CINV)の予防または治療に用いられる以外の制吐薬の使用なし、および小児の通常の食欲や食事において吐き気に関係した変化が認められないことと定義されている。このレベルのANV制御は、間もなく計画されている抗腫瘍薬サイクルの最初の抗腫瘍薬が投与される前の24時間にわたって達成されるべきである。

小児におけるANVを予防するためのアプローチ

ANVは、急性期(化学療法実施後の24時間)および遅発期(化学療法実施後の24時間以上および7日以内)に経験されるCINVへの条件反応のようである。[ 3 ]CINVに付随する不安と苦痛により、この条件反応が増強される。[ 3 ]したがって、急性および遅発性のCINVの完全制御率が高くなるほど、ANVの割合は低下することになる。CINVの予防に関する証拠に基づいたガイドラインの推奨を遵守することにより、急性CINVの完全制御を実質的に改善することが示されている。[ 5 ]

ANVは条件反応のようであることを考慮して、急性および遅発性のCINVの制御を最適化することは、条件付けの発動に必要とされる負の刺激への曝露を最低限に抑えるのに役立ちうる。コンセンサスに基づく推奨では、制吐薬による介入は抗腫瘍薬を投与されている小児[ 6 ](抗腫瘍薬未使用の患者を含む)における急性CINVを予防するために用いられる発表されているガイドラインに基づくべきである。抗腫瘍薬療法がいったん開始されれば、制吐薬による介入の選択は証拠に基づいたガイドラインを情報源とし、患者が経験するCINV制御の程度と制吐薬に関連する有害作用に基づいて調整すべきである。

ANVを制御するための介入

催眠

催眠は「感覚、認識、認知、感情、気分、または行動を変えるために示唆を与える」介入と定義されている。[ 7 ]2件の試験で、小児におけるANVを制御するための催眠の役割が評価された。1件の研究では、以前の研究で予測性の吐き気および/または予測性の嘔吐の経験を報告し、同じ抗腫瘍薬治療を少なくとも2コース受けようとしている5~17歳の小児54人が募集された。[ 8 ]小児は、研究時にがん診断から平均して15.8ヵ月(範囲、0.5~118ヵ月)経過していた。対照群は他の2群よりも抗腫瘍薬療法をはるかに長く受けていた(29.5ヵ月 vs 8または11.5ヵ月)。

小児が受けた抗腫瘍薬療法の催吐性を正確に確認することはできないが、化学療法の催吐性に関する現在の分類で評価すると、ほとんどの小児が、催吐性が高度の治療を受けたようである。予防のために投与された制吐薬は報告されなかったが、試験中に小児の制吐レジメンは変更されなかった。N&Vの重症度は半構造化面接で評価された。小児は次の3つの予想される面接を受けるようにランダムに割り付けられた:催眠トレーニング(想像に焦点を当てた治療)、積極的な注意力低下(弛緩法)、またはセラピストとのコンタクト(制御)。著者らは、催眠トレーニングを受けた集団における予測性の嘔吐の完全制御が有意に改善した(ベースライン時の患者21人中12人[57%] vs 催眠トレーニング後の患者21人中18人[86%];P  < 0 .05)ことを報告した。予測性の吐き気の完全制御は、ベースライン時の患者21人中5人(24%)から催眠トレーニング後の患者21人中8人(38%)に増加した。[ 8 ]

別の研究で、化学療法未使用の6~18歳の小児20人においてANVの予防手段としての催眠が評価された。[ 9 ]対照は年齢(±3歳)および抗腫瘍薬治療の催吐性についてマッチさせた。抗腫瘍薬レジメンの催吐性を明らかにするために利用可能な情報は不十分である。催眠を受けるようにランダムに割り付けられた小児は制吐薬による予防を受けなかったが、必要に応じて制吐薬を投与された。対照群の小児は、抗腫瘍薬療法後に4~6時間標準的な制吐薬による予防を受けた。対照群の小児(患者10人中7人)の方が催眠群の小児(患者10人中3人)よりもオンダンセトロンの投与が多かった。

催眠を受けるようにランダムに割り付けられた小児は最初の抗腫瘍薬治療中に自己催眠を教えられた;対照群の小児は同じ時間をセラピストと会話して過ごした。ANVは、小児との毎日の構造化面接を用いて評価された。ANVの存在は、診断後1~2ヵ月経過時と4~6ヵ月経過時に評価された。ANVの最初の評価時に、自己催眠を教えられていた小児では、対照群よりも予測性の吐き気の報告が有意に少なかった(ただし、発生率は報告されなかった)。予測性の嘔吐の割合は各群で同じであった(患者10人中1人)。2回目の評価時までに、両群で予測性の吐き気の割合に差は認められなかった。治療群間の予測性の嘔吐の割合も同様であった(催眠群、患者10人中0人 vs 対照群、患者10人中2人)。[ 9 ]

薬理学的介入

ANVに対する薬理学的介入に関する研究は、成人においてのみ実施されており、ベンゾジアゼピンに限られている。ANVを経験する患者はANVを経験しない患者よりも心配症であると観察されているため[ 10 ]、抗不安薬が研究されている。成人における研究(2件のランダム化試験)では、ANVに対する治療法としてのベンゾジアゼピンの寄与が評価されている。[ 11 ][ 12 ]成人がん患者が、シスプラチンを含む180の抗腫瘍薬治療コースにわたって抗腫瘍薬治療の前夜、治療日の朝、および次の5日間就寝時に経口でプラセボまたはロラゼパム、2mgを投与された。[ 11 ]患者はまた、制吐薬による予防としてメトクロプラミド、2 mg/kg/投与、クレマスチン、およびデキサメタゾンを投与された。ランダム化時に、約2/3の患者が抗腫瘍薬未使用であった。ANVは抗腫瘍薬療法前の12時間以内または抗腫瘍薬療法開始後1時間以内に発生する吐き気および/または嘔吐と定義された。ロラゼパムが投与された治療群では、対照群と比較して、有意に高い割合でANVが完全制御された(52% vs 32%;P  <  0.05)。ロラゼパムに起因する有害作用はほとんど認められなかった;軽度の鎮静がロラゼパムを投与された患者の76%および対照群患者の32%に発生した。

抗腫瘍薬治療未実施の乳がん女性が弛緩トレーニングとアルプラゾラム(29人の患者)またはプラセボ(28人の患者)投与後のANVの発生率を比較した二重盲検プラセボ対照試験に登録された。アルプラゾラム、0.25 mgまたはプラセボが、6~12ヵ月間経口で1日2回投与された。また不眠を管理するため、トリアゾラムも必要に応じて両研究群の患者に投与された。4回目の抗腫瘍薬治療前に予測性の吐き気と予測性の嘔吐を完全制御できた患者の割合は両研究群でほぼ同じであった(それぞれ、26% vs 25%および4% vs 0%)。ANVが認められる成人がん患者29人に対してジアゼパム、5 mg、1日2回が4コースの連続した抗腫瘍薬治療それぞれの前に3日間投与された。[ 12 ]13人の患者(45%)が4コースの抗腫瘍薬治療で一時的にANVの完全制御を経験した。

結論

催眠や系統的脱感作などの心理学的介入によって得られるANVの完全制御における改善は劇的なものではない可能性があるが、こうした介入は最低限のリスクで個別の患者に便益をもたらしうる。こうした理由から、あるガイドライン開発パネルでは、介入を提供するための専門知識と資源が存在する場合に、ANVを経験している患者に年齢に応じた介入を提供すべきであると推奨している。[ 6 ]

小児におけるANVを治療するためにベンゾジアゼピンの使用を支持する証拠は不足しているものの、複数のガイドラインで、臨床経験に基づいて小児におけるANVに対してロラゼパムの使用が推奨されている[ 13 ]ロラゼパムの推奨初回用量は小児における現在の用量の推奨に基づいており、成人における通常の用量が極量となっている。[ 14 ]この用量は各小児の必要量まで漸増すべきであり、過剰な鎮静には減量が推奨される。

参考文献
  1. Morrow GR, Roscoe JA, Hynes HE, et al.: Progress in reducing anticipatory nausea and vomiting: a study of community practice. Support Care Cancer 6 (1): 46-50, 1998.[PUBMED Abstract]
  2. Dolgin MJ, Katz ER, McGinty K, et al.: Anticipatory nausea and vomiting in pediatric cancer patients. Pediatrics 75 (3): 547-52, 1985.[PUBMED Abstract]
  3. Tyc VL, Mulhern RK, Bieberich AA: Anticipatory nausea and vomiting in pediatric cancer patients: an analysis of conditioning and coping variables. J Dev Behav Pediatr 18 (1): 27-33, 1997.[PUBMED Abstract]
  4. Stockhorst U, Spennes-Saleh S, Körholz D, et al.: Anticipatory symptoms and anticipatory immune responses in pediatric cancer patients receiving chemotherapy: features of a classically conditioned response? Brain Behav Immun 14 (3): 198-218, 2000.[PUBMED Abstract]
  5. Aapro M, Molassiotis A, Dicato M, et al.: The effect of guideline-consistent antiemetic therapy on chemotherapy-induced nausea and vomiting (CINV): the Pan European Emesis Registry (PEER). Ann Oncol 23 (8): 1986-92, 2012.[PUBMED Abstract]
  6. Dupuis LL, Boodhan S, Holdsworth M, et al.: Guideline for the prevention of acute nausea and vomiting due to antineoplastic medication in pediatric cancer patients. Pediatr Blood Cancer 60 (7): 1073-82, 2013.[PUBMED Abstract]
  7. Montgomery GH, Schnur JB, Kravits K: Hypnosis for cancer care: over 200 years young. CA Cancer J Clin 63 (1): 31-44, 2013.[PUBMED Abstract]
  8. Zeltzer LK, Dolgin MJ, LeBaron S, et al.: A randomized, controlled study of behavioral intervention for chemotherapy distress in children with cancer. Pediatrics 88 (1): 34-42, 1991.[PUBMED Abstract]
  9. Jacknow DS, Tschann JM, Link MP, et al.: Hypnosis in the prevention of chemotherapy-related nausea and vomiting in children: a prospective study. J Dev Behav Pediatr 15 (4): 258-64, 1994.[PUBMED Abstract]
  10. Andrykowski MA: The role of anxiety in the development of anticipatory nausea in cancer chemotherapy: a review and synthesis. Psychosom Med 52 (4): 458-75, 1990 Jul-Aug.[PUBMED Abstract]
  11. Malik IA, Khan WA, Qazilbash M, et al.: Clinical efficacy of lorazepam in prophylaxis of anticipatory, acute, and delayed nausea and vomiting induced by high doses of cisplatin. A prospective randomized trial. Am J Clin Oncol 18 (2): 170-5, 1995.[PUBMED Abstract]
  12. Razavi D, Delvaux N, Farvacques C, et al.: Prevention of adjustment disorders and anticipatory nausea secondary to adjuvant chemotherapy: a double-blind, placebo-controlled study assessing the usefulness of alprazolam. J Clin Oncol 11 (7): 1384-90, 1993.[PUBMED Abstract]
  13. van Hoff J, Olszewski D: Lorazepam for the control of chemotherapy-related nausea and vomiting in children. J Pediatr 113 (1 Pt 1): 146-9, 1988.[PUBMED Abstract]
  14. National Comprehensive Cancer Network: NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Antiemesis. Version 2.2020. Plymouth Meeting, Pa: National Comprehensive Cancer Network, 2020. Available online with free registration. Last accessed May 21, 2020.[PUBMED Abstract]
本要約の変更点(07/23/2020)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

本要約は治療に関連した吐き気と嘔吐から改名された。

急性または遅発性の吐き気と嘔吐の予防および管理

表2は、全米がん包括ネットワーク(National Comprehensive Cancer Network)の最新の制吐のための推奨を反映するように改訂された。

本要約はPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、がん患者における治療に関連した吐き気と嘔吐の予防と制御について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEm—ail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

証拠レベル

本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

本要約の使用許可

PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board.PDQ Nausea and Vomiting Related to Cancer Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/side-effects/nausea/nausea-hp-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389491]

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