患者さん向け 小児原発不明がんの治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小児原発不明がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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原発不明がんについての一般的な情報

原発不明がんとは、体内に悪性(がん)細胞が認められるにもかかわらず、最初に発生した場所がわからないがんです。

がんは、全身のどんな組織からも発生する可能性があります。最初に発生したがんは原発がんと呼ばれます。がん細胞が他の部位へと拡がることを転移といいます。がんが体の他の部位に拡がることを転移といいます。

原発不明がん(CUP)では、転移したがんが診断されますが、原発がんは特定されていません。

このようながんは潜在性原発腫瘍とも呼ばれます。

原発不明がん:図は、不明な位置から体の他の部位(肺と脳)に拡がった原発腫瘍を示している。拡大図は、原発がんが血液とリンパ系を介して体の他の部位に拡がり、転移性腫瘍を形成する様子を示している。

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原発不明がんでは、がん細胞が体内で拡がっていますが、最初に原発がんが発生した位置は不明です。

転移したがんが引き起こす徴候や症状は、転移した部位によって異なります。

原発不明がんの場合、原発がんは徴候症状を引き起こしません。

以下のようながんの一般的な徴候がみられる場合は、担当の医師にご相談ください:

徴候や症状の原因について理解を深めるために、血液検査や画像検査が行われることがあります。

以下のような検査法や手技が用いられることがあります。

がんの転移を診断するために生検が行われます。

生検は細胞や組織を採取する手技のことで、採取されたサンプルは病理医により顕微鏡で観察されます。

以下の生検のいずれかが実施されることがあります:

病理医が組織を観察して、がん細胞の有無やがんの種類を調べます。がん細胞は通常、そのがんが最初に発生した組織中にみられる細胞と似た外観をしています。しかし原発不明がんでは、がん細胞の外観と、そのがん細胞が見つかった組織の細胞の外観が似ていません。そのため、病理医は原発がんの種類を特定することができません。

さらに組織サンプルの検討を進めるために、以下のいずれか、または数種類の臨床検査が実施される場合があります:

原発不明がんは最初に発生した場所が不明であるため、原発がんを探すために、他のがんの場合よりも多くの検査や手技が行われます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

検査により原発がんを特定することができれば、そのがんはもはや原発不明がんとは呼ばれず、原発がんの種類に応じた治療が開始されます。

がんが最初に発生した場所が診断時に明らかでない小児や青年には、後から腺がん黒色腫胚芽腫横紋筋肉腫または神経芽腫)といった腫瘍の診断が下されることがよくあります。

しかし、ときには、原発がんがどうしても明らかにできないことがあります。

原発がん(最初にできたがん)が発見されない理由として、以下のいずれかが考えられます:

原発がんが不明であることから、最適な治療法の選択が難しくなりがちです。

小児原発不明がんの病期

がんの拡がり程度は、一般に病期で表現されます。治療計画を立てる上では、通常はがんの病期が用いられます。しかし原発不明がん(CUP)は、発覚時には既に他の部位に転移しています。原発不明がんには、標準的な病期分類システムがありません。

小児原発不明がんはときに治療後に再発することがあります。

治療選択肢の概要

小児の原発不明がんに対する治療法には様々なものがあります。

その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象に、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。新しい治療法が標準治療よりも優れていることが複数の臨床試験で示された場合、その新しい治療法が標準治療になる可能性があります。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討するべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

小児の原発不明がんの治療では、小児がんの治療に精通した医師のチームが治療計画を策定するべきです。

治療は小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が監督します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通しつつ、同時に特定の医療分野を専門とする他の小児医療従事者と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門医や専門家です:

標準治療として以下の3種類が用いられています:

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いて、がんの転移がある領域に放射線を照射する方法です。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入り、全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。

分子標的療法

分子標的療法とは、がん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物やその他の物質を用いる治療法です。分子標的療法では一般に、化学療法や放射線療法に比べて、正常な細胞に及ぼす害が少なくなります。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

小児原発不明がんの治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療中に発生する副作用の詳細については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

がんに対する今日の標準治療の多くは、過去に行われた臨床試験の結果を根拠としています。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、まだ人に用いられたことがない新しい治療法を受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがん治療を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が新しい効果的な治療法の発見につながらなくても、しばしば重要な問題に対する答えが得られ、研究を前進させる助けになります。

患者さんはがん治療の開始前だけでなく、開始後でも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要になることもあります。

治療を進めるにつれて、フォローアップ検査または定期検査が行われます。がんの診断病期診断のために実施された検査の中には、治療の効果を確認するために繰り返し行われるものもあります。治療の継続、変更、中止などの決定がそれらの検査結果に基づいて判断されることもあります。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。それらの検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんが再発したかどうかを知ることができます。

小児原発不明がんの治療

新たに診断された小児原発不明がん(CUP)の治療法は、以下の要素を考慮して決定されます:

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

新たに診断された小児原発不明がんに対する治療法には以下のようなものがあります:

小児原発不明がんはときに治療後に再発することがあります。お子さんが再発原発不明がんと診断された場合、担当医はあなたとともに治療計画を立てます。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

小児原発不明がんについてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している原発不明がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小児がんに関するさらなる情報とがん全般に関するその他の資料については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児原発不明がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Carcinoma of Unknown Primary Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/unknown-primary/patient/child-unknown-primary-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

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