患者さん向け 小児脊索腫の治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小児脊索腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小児脊索腫についての一般的な情報

小児脊索腫は脊椎内部の組織に悪性(がん)細胞が発生する疾患です。

脊索腫は緩やかに増殖する骨の腫瘍であり、脊椎周辺のあらゆる高さの部位(頭蓋骨の底部にある斜台と呼ばれる骨から尾骨まで)で発生します。小児と青年では、脊椎の頭蓋骨底部や尾骨付近の組織で脊索腫が発生することがよくあり、その場合は手術で完全に摘出することが困難です。

脊椎の解剖図:図は脊椎の側面図を示し、頸椎(C1-C7)、胸椎(T1-T12)、腰椎(L1-L5)、仙椎(S1-S5)、尾骨が描かれている。さらに、脊髄、椎骨(背骨)、脊髄円錐(脊髄の終端部)、馬尾(脊髄円錐を越えて伸びている脊髄神経の束)、腰部椎間板が示されている。斜台(頭蓋底の脊髄付近に位置する骨)も示されている。

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脊椎の解剖図。脊椎は、脊髄付近に位置する頭蓋底の一部(斜台)から尾骨に至るまでの骨、筋肉、腱、神経、その他の組織で構成されます。脊椎の椎骨(背骨)には、頸椎(C1-C7)、胸椎(T1-T12)、腰椎(L1-L5)、仙椎(S1-S5)、尾骨が含まれます。それぞれの椎骨の間は円板で仕切られています。椎骨は脊髄を取り囲み保護します。脊髄はいくつかの部分に分かれており、その各部には、脳と体の間で信号を伝達する脊髄神経の対が含まれています。多くの脊髄神経が脊髄円錐(脊髄の終端部)を越えて伸びており、馬尾と呼ばれる神経の束を形成しています。

脊索腫の徴候や症状は、脊椎のどこの組織で腫瘍が発生したかにより異なります。

これらの徴候症状などは、脊索腫が原因で起こることもあれば、別の病態が原因で起こることもあります。

お子さんに以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:

脊索腫の診断には脊椎を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)に影響を及ぼします。

予後を左右する因子には以下のものがあります:

小児脊索腫の病期

脊索腫の診断後は、がん細胞が脊椎内で拡がっているかどうかや他の部位に転移しているかどうかを調べる検査が行われます。

脊椎内でのがんの拡がりや他の部位への転移の有無を調べるプロセスは、病期分類と呼ばれます。病期分類で集められた情報に基づいて治療計画が立てられます。脊索腫診断に使用された検査法や手技の結果が、脊索腫の病期分類にも用いられます。

また、がんの拡がりを確認するために、以下の検査や手技が行われることもあります:

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、脊索腫がに転移した場合、肺にできたがん細胞は、実際には脊索腫の細胞です。この疾患は転移性脊索腫であり、肺がんではありません。

小児脊索腫は治療後に再発することがあります。

このがんは最初と同じ部位に再発する場合もあれば、別の骨や肺など、他の部位に再発する場合もあります。

治療選択肢の概要

脊索腫の小児には様々な治療法が存在します。

その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

脊索腫の小児に対する治療では、小児がんの治療に精通した医師のチームが治療計画を作成するべきです。

この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が統括します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とする他の小児医療専門家と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門家が挙げられます:

標準治療として以下の2種類が用いられています:

手術

脊索腫を完全に切除できるかどうかは、脊索腫が発生した場所により異なります。内または脳の周辺、もしくは主要な神経血管の近くに脊索腫がある場合は、患者さんに害を及ぼさずに手術で完全に切除することはできません。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。陽子線治療は、高エネルギー外照射療法の一種で、陽子(正の電荷を帯びた目に見えない微小粒子)の流れをがん細胞に当てて殺傷します。小児脊索腫の治療に用いられることがあります。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

標的療法

標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物などの物質を用いる治療法です。標的療法では一般に、化学療法や放射線療法に比べて、正常な細胞に及ぼす害が少なくなります。

タゼメトスタットは治療後に再発した(再び現れた)小児脊索腫の治療薬として研究されています。

小児脊索腫の治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療中に発生する副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、お子さんの状態の変化やがんの再発の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

小児脊索腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

新たに診断された小児脊索腫の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発小児脊索腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

小児の再発脊索腫の治療法には以下のようなものがあります:

小児脊索腫についてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している小児脊索腫に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小児がんに関する情報と一般的ながんに関するその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児脊索腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Chordoma Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/bone/patient/child-chordoma-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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