患者さん向け 小児褐色細胞腫および傍神経節腫の治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小児褐色細胞腫および傍神経節腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小児褐色細胞腫および傍神経節腫についての一般的な情報

褐色細胞腫は副腎で発生します。

褐色細胞腫副腎で発生します。副腎は体内に2つあり、上腹部の背中側に位置する左右の腎臓の上に1つずつ存在しています。副腎はそれぞれ2つの部分から構成されています。そのうち副腎の外層は副腎皮質と呼ばれます。一方、副腎の中心部は副腎髄質と呼ばれます。褐色細胞腫は副腎髄質にできる腫瘍です。

副腎の解剖図:図は、腹部内の左右の副腎、左右の腎臓、主要な血管を示している。副腎の断面図では、副腎皮質と副腎髄質も示している。

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副腎の解剖図。副腎は2つあり、左右の腎臓の上方に1個ずつ位置しています。各腺の外側は副腎皮質で、内側は副腎髄質です。

副腎は重要なホルモンであるカテコールアミンを産生します。アドレナリンエピネフリン)とノルアドレナリンノルエピネフリン)の2種類のホルモンはいずれもカテコールアミンであり、心拍血圧血糖の調節や、体がストレスに対処する方法の調整に関与します。一部の褐色細胞腫は必要以上のアドレナリンとノルアドレナリンを血液中に分泌し、症状を引き起こします。

傍神経節腫は、頸動脈付近や頭頸部の神経経路に沿った領域などの神経組織に発生します。

一部の傍神経節腫は、アドレナリンとノルアドレナリンというカテコールアミンを過剰に作ります。アドレナリンとノルアドレナリンが必要以上に血液中に分泌されると、症状が現れることがあります。

頭頸部の傍神経節腫:図は、頭頸部の頸動脈付近に生じたがん性の腫瘍を示している。

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傍神経節腫は頸動脈付近の神経組織に形成されることの多い、まれな腫瘍。その他の発生部位には、頭頸部の神経経路や体内の他の神経経路が挙げられます。

褐色細胞腫と傍神経節腫は良性の(がんではない)場合も悪性(がん)の場合もあります。

褐色細胞腫または傍神経節腫の小児の約半数は、悪性の褐色細胞腫または傍神経節腫を患っています。そうした小児では、腫瘍細胞が体の他の部位に転移しています。良性と悪性の褐色細胞腫と傍神経節腫はいずれも、重度のまたは生命を脅かす心臓の問題を引き起こす恐れがあるため、治療する必要があります。

特定の遺伝子変異(変化)が遺伝すると、褐色細胞腫や傍神経節腫のリスクが高くなります。

病気になる可能性を増大させるものは、全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。お子さんのリスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。

以下の遺伝性症候群遺伝子変異があると、褐色細胞腫や傍神経節腫のリスクが上昇します:

褐色細胞腫または傍神経節腫と診断された小児や青年の半数以上は、がんのリスクを上昇させる遺伝性症候群または遺伝子変異をもっています。治療計画では、遺伝カウンセリング(訓練を受けた専門家と遺伝性疾患について相談する)と検査が重要な位置を占めています。

褐色細胞腫と傍神経節腫の徴候と症状は、過剰なアドレナリンとノルアドレナリンが血液中に放出される場合に生じます。

一部の腫瘍は余分なアドレナリンやノルアドレナリンを産生せず、症状を引き起こしません。こうした腫瘍は、頸部にしこりができたときや別の理由で検査が行われたときに発見されることがあります。褐色細胞腫と傍神経節腫の徴候や症状は、過剰なアドレナリンとノルアドレナリンが血液中に放出される場合に生じます。これらの徴候や症状などは、褐色細胞腫や傍神経節腫が原因で起こることもあれば、別の病態が原因で起こることもあります。

お子さんに以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:

以上の徴候や症状は現れたり消失したりしますが、若い患者さんでは長期にわたって高血圧が生じやすい傾向がみられます。これらの徴候や症状は、身体運動、けが、麻酔、腫瘍を切除する手術、チョコレートやチーズなどの食事、または排尿(腫瘍が膀胱にある場合)に伴って発生することもあります。

褐色細胞腫と傍神経節腫の診断と病期分類に使用される検査法や手技は、患者さんの徴候や症状と家族歴により異なります。

がんの診断と病期分類を進めるために検査を行います。がんの診断後に、がん細胞が周辺領域で拡がっているかどうか、または他の部位に転移しているかどうかを調べる検査が行われます。このプロセスは病期分類と呼ばれます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:

小児の褐色細胞腫と傍神経節腫の病期

褐色細胞腫または傍神経節腫の診断後に、がん細胞が周辺領域で拡がっているかどうか、または他の部位に転移しているかどうかを調べる検査が行われます。

がんが周辺領域や他の部位に拡がっているかどうかを調べるプロセスは、病期分類と呼ばれます。小児褐色細胞腫傍神経節腫には、標準的な病期分類システムはありません。がんを診断するために行われた検査や手技の結果は、治療に関する決定を下すためにも利用されます。

小児褐色細胞腫や傍神経節腫は、治療後に再発する(再び現れる)ことがあります。再発は、最初に発生した部位や、他の部位に起こることもあります。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、褐色細胞腫が骨に転移した場合、骨にできたがん細胞は、実際は褐色細胞腫の細胞です。この疾患は転移性褐色細胞腫であり、骨がんではありません。

治療選択肢の概要

小児褐色細胞腫または小児傍神経節腫の患者さんには様々な治療法が存在します。

その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

褐色細胞腫または傍神経節腫の小児に対する治療では、小児がんの治療に精通した医師のチームが治療計画を作成するべきです。

この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が統括します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とする他の小児医療専門家と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門家が挙げられます:

標準治療として以下の4種類が用いられています:

手術

腫瘍を切除する手術は、褐色細胞腫傍神経節腫の主要な治療法です。手術の数日前に、患者であるお子さんに対して、手術前後の合併症のリスクを低下させるために血圧を管理する薬剤が投与されることがあります。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。

高用量131I-MIBG療法

131I-MIBG療法は、高用量放射性ヨウ素を使用する治療法です。放射性ヨウ素は、静脈内(IV)ラインを通して投与され、血流に入って、腫瘍細胞に放射線を直接届けます。放射性ヨウ素は、褐色細胞腫や傍神経節腫の細胞に集まる性質があり、そこから照射される放射線により腫瘍細胞を殺傷します。

標的療法

標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物などの物質を用いる治療法です。標的療法では一般に、化学療法や放射線療法に比べて、正常な細胞に及ぼす害が少なくなります。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

褐色細胞腫と傍神経節腫の治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療中に発生する副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、お子さんの状態の変化やがんの再発の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

症状がみられる褐色細胞腫または傍神経節腫の患者さんには、定期的に血液中または尿中のカテコールアミン濃度の検査が行われます。カテコールアミンの値が正常よりも高い場合は、がんの再発の徴候である可能性があります。検査を受けるべきかどうかや受ける場合の頻度について、お子さんの担当の医師と話し合ってください。

褐色細胞腫または傍神経節腫の患者さんには、生涯にわたる経過観察が必要です。

小児褐色細胞腫および傍神経節腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

新たに診断された小児の褐色細胞腫傍神経節腫の治療法には以下のようなものがあります:

手術の前に、血圧をコントロールするα-遮断薬心拍数をコントロールするβ遮断薬による薬物療法が行われます。両方の副腎を摘出した患者さんは、手術後から生涯にわたるホルモン療法を受け、副腎が作るホルモンを補充する必要があります。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発小児褐色細胞腫および傍神経節腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

再発褐色細胞腫および傍神経節腫の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

小児褐色細胞腫および傍神経節腫についてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している小児褐色細胞腫および傍神経節腫に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小児がんに関する情報と一般的ながんに関するその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児褐色細胞腫および傍神経節腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Pheochromocytoma and Paraganglioma Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/pheochromocytoma/patient/child-pheochromocytoma-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

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