患者さん向け 小児脈管腫瘍の治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小児脈管腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小児脈管腫瘍についての一般的な情報

小児脈管腫瘍は、体内のあらゆる部位で異常な血管またはリンパ管の細胞から発生する可能性があります。

これらの腫瘍良性がんではない)の場合もあれば、悪性(がん)の場合もあります。脈管腫瘍の種類は数多くあります。小児脈管腫瘍で最もよくみられるものは乳児血管腫であり、これは通常自然に消失する良性腫瘍です。

小児の悪性脈管腫瘍はまれであるため、最適な治療法に関する情報はあまり得られていません。

小児脈管腫瘍の診断には、検査が用いられます。

担当医は小児の個人歴家族歴をたずね、身体診察を行うことに加えて、以下の検査や手技を行うことがあります:

小児脈管腫瘍は4つのグループに分類することができます。

良性腫瘍

良性腫瘍はがんではありません。この要約では、以下の良性脈管腫瘍に関する情報を掲載しています:

局所で拡がりうる中間型腫瘍

一部の中間型腫瘍は、腫瘍の周囲に(局所的に)拡がる可能性は高いですが、他の部位には拡がりません。この要約では、局所で拡がる以下の腫瘍に関する情報を掲載しています:

他の部位に拡がりうる中間型腫瘍

まれに、中間型腫瘍が他の部位に拡がる(転移する)ことがあります。この要約では、転移しうる以下の脈管腫瘍に関する情報を掲載しています:

悪性腫瘍

悪性腫瘍はがんです。この要約では、以下の悪性脈管腫瘍に関する情報を掲載しています:

治療選択肢の概要

小児脈管腫瘍の患者さんには様々な治療法が存在します。

小児脈管腫瘍の患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。

小児脈管腫瘍はまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

小児脈管腫瘍の治療では、小児がんの治療に精通した医療提供者で構成されるチームによって治療計画が作成されるべきです。

この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が統括します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とする他の小児医療提供者と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門医や専門家が挙げられます:

標準治療として以下の12種類が用いられています:

β遮断薬療法。

β遮断薬は、血圧を下げ心拍数を減らす作用のある薬物です。脈管腫瘍の患者さんにβ遮断薬を使用すると、腫瘍を縮小できる場合があります。β遮断薬療法は、静脈IV)から、口から、皮膚上に貼付(外用)するなどの経路で投与することができます。β遮断薬療法の実施方法は、脈管腫瘍の種類と最初に発生した部位に応じて異なります。

通常、β遮断薬のプロプラノロールが血管腫の最初の治療法になります。生後4週未満の乳児、基礎疾患のある乳児、プロプラノロールのIVによる治療を受ける乳児は、病院で治療を開始する必要があるでしょう。プロプラノロールは、肝臓に発生した良性脈管腫瘍カポジ型血管内皮腫の治療にも用いられます。

脈管腫瘍の治療に使用される他のβ遮断薬には、アテノロール、ナドロール、チモロールなどがあります。

乳児血管腫に対しては、プロプラノロールとステロイド治療か、またはプロプラノロールと外用β遮断薬療法を行うこともあります。

詳細については、塩酸プロプラノロールに関する薬剤情報要約をご覧ください。

手術

多様な脈管腫瘍を切除するために、以下のような手術法が用いられます:

適用する手術の種類は、脈管腫瘍の種類と発生部位により異なります。

悪性腫瘍の場合は、手術の際に確認できる全てのがんを切除した後に、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、化学療法放射線療法が実施される場合があります。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。

光凝固療法

光凝固療法では、レーザーなどの強力な光線を使用して、血管の閉鎖や組織の破壊を行います。化膿性肉芽腫の治療に用いられます。

凍結療法

凍結療法は専用の装置を用いて、化膿性肉芽腫で認められる異常な血管などの異常組織を凍結させ破壊する治療法です。この治療法は凍結手術とも呼ばれます。

詳しい情報については、凍結手術というがん治療法(英語)をご覧ください。

塞栓術

塞栓術は、微小なゼラチンスポンジまたはビーズなどの粒子を使用して肝臓の血管を詰まらせる手技です。肝臓の良性の脈管腫瘍やカポジ型血管内皮腫の治療に用いられます。

化学療法

化学療法は、薬を用いて腫瘍細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、腫瘍細胞の増殖を阻止する治療法です。経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる化学療法では、投与された薬は血流に入って全身の腫瘍細胞に到達します。複数の抗がん剤が投与されることもあります。こうした化学療法は併用化学療法と呼ばれます。

硬化療法

硬化療法は腫瘍に通じる血管と腫瘍を破壊する治療法です。ある液体を血管内に注入すると、血管が瘢痕化して破壊されます。時間とともに、破壊された血管は正常な組織に吸収されていきます。血液は代わりに周辺の健康な静脈を流れます。硬化療法は類上皮血管腫の治療に用いられます。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、腫瘍細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いて腫瘍のある領域に放射線を照射する方法です。この療法は一部の脈管腫瘍の治療に使用されます。

標的療法

標的療法では、薬物などの物質を使用して、がん細胞の増殖と転移に関連する酵素、蛋白、またはその他の分子の働きを阻害します。数種類の標的療法が小児脈管腫瘍の治療に使用されており、治療法として研究中のものもあります:

免疫療法

免疫療法は免疫系ががんと戦うのを助けます。

以下の種類の免疫療法が小児脈管腫瘍の治療に使用されています:

その他の薬物療法

小児脈管腫瘍の治療やその影響に対する管理に使用される他の薬物には、以下のようなものがあります:

経過観察

経過観察とは、徴候症状の出現や変化がみられるまで、治療を一切行わずに患者さんの状態を注意深く監視していくことです。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

小児脈管腫瘍の治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療中に発生する副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

治療の中には、化学療法や放射線療法のように、治療後も副作用が継続するものや、数ヵ月あるいは数年も経過してから副作用が出現してくるものもあります。これらは晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:

晩期合併症(晩期障害)には治療や制御することが可能なものもあります。治療によって引き起こされる可能性のある晩期合併症(晩期障害)について担当の医師とよく相談することが重要です。詳しい情報については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験は研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しい治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日の標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来の疾患の治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんは腫瘍の治療中やその前後に臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では腫瘍の状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

脈管腫瘍の診断のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものもあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、お子さんの状態の変化や腫瘍の再発の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

良性腫瘍

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

乳児血管腫

乳児血管腫は小児において最も多く見られる種類の良性脈管腫瘍です。乳児血管腫は血管を形成するはずの未熟な細胞が、そうならず腫瘍になることで形成されます。乳児血管腫は「苺状血管腫」とも呼ばれます。

これらの腫瘍は通常、出生時には認められず、生後3~6週間で出現します。ほとんどの血管腫はおよそ5ヵ月かけて大きくなり、その後拡大が止まります。それから数年かけてゆっくりと完全に消失しますが、赤い跡やたるみ、しわが残る場合があります。乳児血管腫は消失した後、まれに再発することがあります。

乳児血管腫は皮膚表面、皮下組織臓器のいずれにも発生することがあります。多くの場合は頭頸部に発生しますが、体表面または体内のあらゆる部位に生じる可能性があります。血管腫は単一の病変として現れる場合もあれば、体の広範囲にわたる1つ以上の病変として生じる場合や、複数の身体部位で複数の病変としてみられる場合もあります。広範囲に拡がる病変や複数箇所に生じた病変は、何らかの問題を引き起こす可能性が高いと考えられます。

ほとんど増殖しないまたは増殖停止中の乳児血管腫(IH-MAG)は、出生時にみられ、拡大しない可能性が高い乳児血管腫の一種です。皮膚の一部が薄い赤または濃い赤に変化するという病変が認められます。通常、病変は下半身に現れますが、頭頸部に発生することもあります。この種の血管腫は治療しなくても時間がたてば消失します。

リスク因子

リスク因子とは、疾患が発生する可能性を増大させるあらゆる要因のことです。リスク因子がある小児が必ず乳児血管腫になるわけではありませんし、既知のリスク因子がない小児が乳児血管腫になることもあります。お子さんの乳児血管腫のリスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。

乳児血管腫は以下の乳児に多くみられます:

乳児血管腫の他のリスク因子には、以下のものがあります:

複数の血管腫、または気道や眼に血管腫があると、他の健康上の問題が生じるリスクが高くなります。

徴候と症状

乳児血管腫では、以下の徴候や症状がみられることがあります。お子さんに以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:

ほとんどの乳児血管腫は心配しなくても大丈夫ですが、お子さんの皮膚にしこりや赤色または青色のあざが生じた場合は担当医の診察を受けてください。医師は必要に応じて専門医を紹介します。

診断検査

通常は、身体診察病歴聴取だけで、乳児血管腫を診断することができます。外観が異常な腫瘍に対し、生検を実施することもあります。血管腫が体内深くにあり皮膚に変化がみられない場合や、病変が体の広範囲に拡がっている場合は、超音波検査を行うことがあります。皮膚に5個以上の血管腫がある乳児は、肝血管腫の有無を調べるために肝臓の超音波検査を受けるべきです。検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

血管腫が症候群の一部である場合は、心エコー図MRI、磁気共鳴血管造影、眼の検査など、さらに多くの検査を行います。

治療

ほとんどの血管腫は治療しなくても色が薄れ、縮小します。血管腫が大きい、または他の健康上の問題を引き起こしている場合は、以下の治療を行う場合があります:

先天性血管腫

先天性血管腫は、出生前に発生する良性脈管腫瘍であり、新生児が産まれる時点で完全に形成されています。通常は皮膚に生じますが、別の臓器にできる場合もあります。先天性血管腫では、紫色の斑点とより薄い色の周囲から成る発疹が生じることがあります。

次の3種類の先天性血管腫があります:

診断検査

超音波検査などの、先天性血管腫の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

早期退縮性先天性血管腫と部分的退縮性先天性血管腫の治療法には以下のようなものがあります:

非退縮性先天性血管腫の治療法には以下のようなものがあります:

肝臓の良性脈管腫瘍

肝臓良性脈管腫瘍限局性脈管病変(肝臓の1ヵ所における単一の病変)、多発性肝病変(肝臓の1ヵ所における複数の病変)、またはびまん性肝病変(肝臓の複数箇所における複数の病変)として発生します。

肝臓は血液のろ過や血液凝固に必要な蛋白の産生など、多くの機能を担っています。肝臓を正常に流れていた血流が、腫瘍によって遮断されたり滞ったりすることがあります。これにより、血液が肝臓を通らず直接心臓に送られる、肝臓シャントと呼ばれる状態になります。この状態は、心不全や血液凝固障害を引き起こすことがあります。

限局性脈管病変

限局性脈管病変は通常、早期退縮性先天性血管腫または非退縮性先天性血管腫です。

診断検査

肝臓の限局性脈管病変の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

肝臓の限局性脈管病変の治療法には、症状の有無に応じて以下のようなものがあります:

多発性またはびまん性肝病変

多発性またはびまん性肝病変は通常、乳児血管腫です。肝臓のびまん性腫瘍は、甲状腺や心臓の障害など、深刻な影響を及ぼす場合があります。肝臓が肥大すると、他の臓器を圧迫し、より多くの症状が引き起こされます。

診断検査

多発性またはびまん性の良性脈管病変の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

多発性肝病変の治療法には以下のようなものがあります:

びまん性肝病変の治療法には以下のようなものがあります:

肝臓の脈管病変が標準治療に反応しない場合は、生検を行い、腫瘍ががんになっているかどうかを確認することがあります。

紡錘細胞血管腫

紡錘細胞血管腫には、紡錘細胞と呼ばれる細胞が含まれています。顕微鏡で観察すると、紡錘細胞は細長い形をしています。

リスク因子

リスク因子とは、疾患が発生する可能性を増大させるあらゆる要因のことです。リスク因子がある小児が必ず紡錘細胞血管腫になるわけではありませんし、既知のリスク因子がない小児が紡錘細胞血管腫になることもあります。お子さんのリスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。紡錘細胞血管腫は、以下の症候群の小児に多く発生します:

徴候

紡錘細胞血管腫は皮膚上または皮下にみられます。痛みを伴う赤茶色または青みがかった病変で、通常は腕や脚に現れます。当初は1つだった病変が、数年のうちにより複数に増加する場合があります。

診断検査

紡錘細胞血管腫の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

紡錘細胞血管腫には、標準治療はありません。治療法には以下のようなものがあります:

紡錘細胞血管腫は手術後に再発することがあります。

類上皮血管腫

類上皮血管腫は通常、皮膚上または皮膚内、特に頭部に多く発生しますが、骨などの他の部位にも生じることがあります。

徴候と症状

類上皮血管腫は外傷が原因で生じることがあります。皮膚上では、ピンクから赤色の硬いできものとして現れ、かゆみを伴うことがあります。骨の類上皮血管腫では、影響を受けた部位の腫れや痛み、骨の弱体化が生じることがあります。

診断検査

類上皮血管腫の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

類上皮血管腫には、標準治療はありません。治療法には以下のようなものがあります:

類上皮血管腫は多くの場合、治療後に再発します。

化膿性肉芽腫

化膿性肉芽腫は小葉状毛細血管腫とも呼ばれます。年長の小児と若年の成人に多くみられますが、どの年齢の人にも生じることがあります。

この病変は、外傷が原因で発生する場合や、避妊用ピルやレチノイドなどの特定の医薬品を使用することで生じる場合があります。原因が不明なまま毛細血管(最も細い血管)や動脈静脈、その他の身体部位に形成されることもあります。一部の病変は毛細血管の形成異常を伴うことがあります。通常は1つの病変だけがみられますが、同じ領域に複数の病変が発生したり、体の他の部位に病変が拡がったりすることもあります。

徴候

化膿性肉芽腫の病変は隆起した鮮やかな赤色で、小型のものも大型のものもあり、滑らかだったりでこぼこだったりします。数週間~数ヵ月で急速に増殖し、多量の出血がみられる場合もあります。これらの病変は通常、皮膚表面に発生しますが、皮膚下の組織に生じ、他の脈管病変に似た見た目になることもあります。

診断検査

化膿性肉芽腫の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

一部の化膿性肉芽腫は治療しなくても消失します。そうでない化膿性肉芽腫には、以下のような治療が必要です:

化膿性肉芽腫は治療後に再発することがよくあります。

血管線維腫

血管線維腫はまれな疾患です。これらは良性の皮膚病変で、多くの場合に結節性硬化症(皮膚病変、痙攣発作、精神障害を引き起こす遺伝性疾患)と呼ばれる病態を伴います。

徴候

血管線維腫は顔面に赤いできものとして現れます。

診断検査

血管線維腫の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

血管線維腫の治療法には以下のようなものがあります:

若年性鼻咽腔血管線維腫

若年性鼻咽腔血管線維腫良性腫瘍ですが、周辺の組織に拡がることがあります。この腫瘍はで発生し、上咽頭副鼻腔、眼の周囲の骨に拡がることがあり、脳に拡がることもあります。

診断検査

若年性鼻咽腔血管線維腫の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

若年性鼻咽腔血管線維腫の治療法には以下のようなものがあります:

局所で拡がりうる中間型腫瘍

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

カポジ型血管内皮腫および房状血管腫

カポジ型血管内皮腫房状血管腫は乳児または幼児期に発生する血管腫瘍です。これらの腫瘍はカサバッハ-メリット現象、つまり血液が凝固せず深刻な出血につながる病態の原因になります。カサバッハ-メリット現象では、腫瘍が血小板血液凝固に関係する細胞)を捕らえて破壊します。そのため、止血しなければならない場合に血液中の血小板が不足します。この種の脈管腫瘍カポジ肉腫とは無関係です。

徴候と症状

カポジ型血管内皮腫と房状血管腫は通常、腕や脚の皮膚上に発生しますが、筋肉や骨などのより深部にある組織や胸部、腹部、頭部、頸部に生じることもあります。

以下のような徴候症状がみられます:

カポジ型血管内皮腫および房状血管腫の患者さんは、貧血(脱力感、疲労感、顔面蒼白)を起こすことがあります。

診断検査

カポジ型血管内皮腫と房状血管腫の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

身体診察MRIで腫瘍がカポジ型血管内皮腫または房状血管腫であると明確に判明すれば、生検は不要とされることもあります。生検は重度の出血を起こす可能性があるため、常に実施されるとは限りません。

治療

カポジ型血管内皮腫と房状血管腫の治療法は小児の症状に応じて異なります。感染、治療の遅れ、手術は生命を脅かす出血を引き起こすことがあります。カポジ型血管内皮腫と房状血管腫に対しては、血管形成異常専門医による治療が最適です。

単純性のカポジ型血管内皮腫と房状血管腫の治療法には以下のようなものがあります:

複雑性のカポジ型血管内皮腫と房状血管腫の治療法には以下のようなものがあります:

治療を行っても、これらの腫瘍は完全には消失せず再発することがあります。年齢が上がると痛みと炎症が悪化することがあり、多くは思春期前後にはこうした悪化がみられます。長期的な影響には、慢性疼痛、心不全、骨の問題、リンパ浮腫(組織内でのリンパ液の貯留)。

他の部位に拡がりうる中間型腫瘍

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

偽筋原性(類上皮肉腫様)血管内皮腫

偽筋原性血管内皮腫は小児にもみられますが、20~50歳の男性に最も多く発生します。この腫瘍はまれな病変ですが、通常は皮膚上や皮下、または骨に発生します。周辺の組織に拡がることもありますが、体の他の部位に転移することは通常ありません。ほとんどの症例で複数の腫瘍が認められます。

徴候と症状

偽筋原性血管内皮腫は軟部組織のしこりとして現れることがあり、ときに患部に痛みを引き起こします。

診断検査

偽筋原性血管内皮腫の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

偽筋原性血管内皮腫の治療法には以下のようなものがあります:

偽筋原性血管内皮腫は小児にはまれな疾患ですので、治療選択肢は成人の臨床試験に基づきます。

網様血管内皮腫

網様血管内皮腫は増殖の遅い平坦な腫瘍であり、若年成人に発生するほか、小児にみられることもあります。この腫瘍は通常、腕、脚、胴体の皮膚上または皮下に発生します。これらの腫瘍は通常、体の他の部位には拡がりません。

診断検査

網様血管内皮腫の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

網様血管内皮腫の治療法には以下のようなものがあります:

網様血管内皮腫は治療後に再発することがあります。

乳頭状リンパ管内血管内皮腫

乳頭状リンパ管内血管内皮腫はダブスカ腫瘍とも呼ばれます。この腫瘍はあらゆる部位の皮膚内または皮下に生じることもあります。リンパ節に影響が及ぶ場合があります。

徴候

乳頭状リンパ管内血管内皮腫は硬く隆起して紫がかったできものであり、小型の場合も大型の場合もあります。

診断検査

乳頭状リンパ管内血管内皮腫の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

乳頭状リンパ管内血管内皮腫の治療法には以下のようなものがあります:

複合型血管内皮腫

複合型血管内皮腫は、良性悪性脈管腫瘍の特徴を両方備えています。この腫瘍は通常、腕や脚の皮膚上または皮下に発生します。頭部、頸部、胸部に生じることもあります。複合型血管内皮腫は転移する(拡がる)可能性は低いものの、同じ場所に再発することがあります。腫瘍が転移する場合、通常は付近のリンパ節に拡がります。

診断検査

複合型血管内皮腫の診断と転移の有無の確認に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

複合型血管内皮腫の治療法には以下のようなものがあります:

カポジ肉腫

カポジ肉腫は皮膚内や口、鼻、粘膜リンパ節、その他の臓器で増殖する病変を引き起こすがんです。カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)によって発生します。米国では、まれな免疫系障害HIV感染、または臓器移植に用いられる薬剤によって免疫系が弱っている小児に多くみられます。

徴候

小児の徴候には以下のようなものがあります:

診断検査

カポジ肉腫の診断に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

カポジ肉腫の治療法には以下のようなものがあります:

カポジ肉腫は小児には非常にまれな疾患ですので、いくつかの治療選択肢は成人の臨床試験に基づきます。成人のカポジ肉腫に関する詳しい情報については、カポジ肉腫の治療をご覧ください。

悪性腫瘍

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

類上皮血管内皮腫

類上皮血管内皮腫は小児にもみられますが、30~50歳の男性に最も多く発生します。通常は肝臓、骨に生じます。増殖が速い場合と遅い場合の両方があります。成人の症例の3分の1で、腫瘍は他の部位に極めて急速に拡がります。

徴候と症状

徴候症状は、腫瘍の位置によって異なります。お子さんに以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:

肝臓または軟部組織に生じた腫瘍も徴候や症状を引き起こすことがあります。

診断検査

肝臓の類上皮血管内皮腫はCTスキャンMRIスキャンで発見されます。類上皮血管内皮腫の診断と転移の有無の確認に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。X線検査を実施することもあります。

治療

増殖の遅い類上皮血管内皮腫の治療法には以下のようなものがあります:

増殖の速い類上皮血管内皮腫の治療法には以下のようなものがあります:

血管肉腫

血管肉腫は体の各部の血管またはリンパ管に発生する増殖の速い腫瘍で、通常は軟部組織に生じます。ほとんどの血管肉腫は皮膚内または皮膚付近にみられます。より深部に位置する肝臓脾臓の軟部組織に形成されることもあります。

これらの腫瘍は小児では非常にまれです。ときに、小児の皮膚や肝臓に複数の腫瘍が発生する場合があります。

リスク因子

リスク因子とは、疾患が発生する可能性を増大させるあらゆる要因のことです。リスク因子がある小児が必ず血管肉腫になるわけではありませんし、既知のリスク因子がない小児が血管肉腫になることもあります。お子さんのリスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。血管肉腫のリスク因子には、以下のものがあります:

徴候

血管肉腫の徴候は腫瘍の位置により異なり、以下のようなものがあります:

診断検査

血管肉腫の診断と転移の有無の確認に用いる検査と検査法については、一般的な情報のセクションを参照してください。

治療

血管肉腫の治療法には以下のようなものがあります:

小児脈管腫瘍についてさらに学ぶために

小児脈管腫瘍に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小児がんに関する情報と一般的ながんに関するその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児脈管腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Vascular Tumors Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/soft-tissue-sarcoma/patient/child-vascular-tumors-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 27253005]

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