ご利用について
このPDQがん情報要約では、小児髄芽腫およびその他の小児中枢神経系胚芽腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 小児髄芽腫およびその他の小児中枢神経系胚芽腫についての一般的な情報
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髄芽腫などの中枢神経系(CNS)胚芽腫は、出生後の脳に残存している胚(胎児)細胞から発生することがあります。
髄芽腫は小脳(脳の下部後方)に形成される増殖の速い腫瘍です。髄芽腫は、CNS胚芽腫のなかでもよくみられる腫瘍です。CNS胚芽腫は、脳細胞が制御を失って増殖することで発生します。この種の腫瘍は、胎児の発生過程で残留した胚細胞から生じます。松果体芽腫は、脳の中心付近にある松果体という小さな器官の内部または周辺で発生する、増殖の速い脳腫瘍です。
この種の腫瘍は、良性の(がんでない)場合もあれば、悪性(がん)の場合もあります。良性の脳腫瘍は、脳内で増殖し近辺を圧迫することがありますが、脳の他の部分に転移することはほとんどありません。悪性の脳腫瘍は、増殖が速く、脳の他の部分へ拡がる傾向がみられます。体の他の部分に転移することもありますが、まれです。腫瘍が脳内で増殖し、周辺を圧迫したり、他の脳部位に転移したりすると、その脳部位の正常な働きが妨げられる場合があります。脳腫瘍が良性でも悪性でも、深刻な徴候や症状が現れ、治療が必要になることがあります。
小児の場合、髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫は、ほとんどが悪性です。これらの腫瘍は、髄液を介して脳や脊髄の他の部位に拡がる傾向があります。
小児がんはまれにしかみられませんが、脳腫瘍は白血病に次いで2番目に多くみられる小児がんです。本要約は、原発性脳腫瘍(最初に脳で発生した腫瘍)の治療法について書かれたものです。
これは脳内部の解剖図で、松果体、下垂体、視神経、脳室(青色の部分が髄液)など、脳の各部分を示しています。 CNS胚芽腫には複数の種類があります。
以下のような様々な種類のCNS胚芽腫があります:
小児CNS非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍も胚芽腫の一種ですが、他の小児CNS胚芽腫とは治療方法が異なります。詳細については、小児中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍の治療を参照してください。
松果体芽腫は、松果体の細胞に発生します。
松果体は、脳の中央にある小さな器官です。松果体は、私たちの睡眠周期の制御を助ける物質であるメラトニンを作っています。松果体芽腫は、通常は悪性の増殖が速い腫瘍で、腫瘍細胞は正常な松果体細胞と大きく異なって見えます。松果体芽腫はCNS胚芽腫の一種ではありませんが、その治療法はCNS胚芽腫に対する治療法とよく似ています。
松果体芽腫は、網膜芽細胞腫(RB1)遺伝子に生じている遺伝性の変化に関連します。遺伝性の網膜芽細胞腫(網膜の組織に生じるがん)のある小児は、松果体芽腫のリスクが高くなります。松果体内またはその付近の腫瘍と同時に発生している網膜芽細胞腫は、三側性網膜芽細胞腫と呼ばれます。網膜芽細胞腫の小児では、MRI(磁気共鳴画像)検査により、治療が成功しやすい早期の松果体芽腫を発見できる場合があります。松果体芽腫が骨、骨髄、肺など、他の部位に転移することはまれです。
特定の遺伝疾患があると、小児髄芽腫の発生リスクが高くなります。
小児髄芽腫は、脳細胞の挙動、特に成長して新しい細胞に分裂する過程での挙動が変化することによって発生します。多くの場合、細胞の変化を引き起こした正確な原因は不明です。がんの発生の詳細については、がんとは何か(英語)をご覧ください。
リスク因子とは、疾患が発生する可能性を増大させるあらゆる要因のことです。このようなリスク因子がある小児全員が髄芽腫を発症するわけではなく、また、リスク因子が認められない小児に髄芽腫が発生することもあります。お子さんにリスクがあるかもしれないと思われる場合は、担当の医師に相談してください。
以下の遺伝性疾患がある人では、髄芽腫のリスクが高くなります:
髄芽腫または松果体芽腫のある小児には、遺伝カウンセリングが行われることがあります。
脳腫瘍のある小児がその発生リスクを高める遺伝性疾患を抱えているかどうかは、家族歴から明らかになるとは限りません。遺伝カウンセラーやその他の特別な訓練を受けた医療専門家は、小児の診断や家族の病歴について保護者と話し合い、以下の点を説明することができます:
- 髄芽腫の場合は、ELP1、APC、SUFU、PTCH1、TP53、PALB2、BRCA2遺伝子検査の選択肢
- 松果体芽腫の場合は、RB1またはDICER1遺伝子検査の選択肢
- お子さんに別のがんが発生するリスク
- お子さんの兄弟姉妹にがんが発生するリスク
- 遺伝情報を詳しく知ることのリスクとメリット
遺伝カウンセラーはまた、結果についてご家族と話し合う方法を含めて、あなたがお子さんの遺伝子検査の結果に対処する手助けをすることもできます。
髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫の症状は、年齢や腫瘍の発生部位によって異なります。
髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫では、腫瘍が大きくなるまで症状が現れない場合があります。以下の症状が1つでもみられる場合は、お子さんの担当医に相談するべきです:
これらの腫瘍の乳児および幼児では、過敏になったり、成長が遅くなったりすることがあります。また、あまり物を食べなくなったり、座る、歩く、言葉を話すなどの発達上のマイルストーンを達成できなくなったりすることもあります。これらの腫瘍により、乳児の頭部が大きくなることもあります。
これらの症状は、髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、または松果体芽腫以外の病態によって引き起こされることがあります。状況を把握する唯一の方法は、担当医の話を聞くことです。医師は診断に向けた第一歩として、症状がいつから始まり、どのくらいの頻度で起きているかを質問します。
小児の髄芽腫やその他のCNS胚芽腫、松果体芽腫の診断には、脳と脊髄を調べる検査法が用いられます。
小児に髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、または松果体芽腫を示唆する症状がみられる場合、それらの原因ががんなのか、それとも別の病態なのかを医師が確認する必要があります。医師は保護者に小児の病歴と家族歴をたずね、身体診察を行います。その結果に応じて、脳腫瘍の有無を調べるための検査を勧めることもあります。それらの検査の結果は、保護者と担当医が治療の計画を立てる際にも役立ちます。
髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫の診断には、以下の検査と手技が使用されます:
- ガドリニウムを用いた脳と脊髄のMRI(磁気共鳴画像)検査は、磁気、電波、コンピュータを用いて脳と脊髄の精細な連続画像を作成する検査法です。まずガドリニウムと呼ばれる物質を静脈内に注射します。ガドリニウムにはがん細胞の周辺に集まる性質があるため、撮影された画像ではがん細胞が明るく映し出されます。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。脳組織内の化学物質を調べるために、MRIスキャン中に磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を行うこともあります。
- CTスキャンは、X線装置に接続したコンピュータを用いて、様々な角度から見た体内の精細な連続画像を作成する検査法です。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影とも呼ばれます。詳細については、CTスキャンとがん(英語)をご覧ください。
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腰椎穿刺は、脊柱から髄液を採取する際に用いられる手技です。脊椎の2本の骨の間に針を刺し、髄液が流れている脊髄周囲の空間まで針先を進めて、髄液のサンプルを採取します。髄液のサンプルを顕微鏡で観察して、腫瘍細胞の徴候がないか調べます。サンプルに含まれる蛋白や糖の量を調べることもあります。正常範囲を超える量の蛋白や正常範囲を下回る量の糖は腫瘍の徴候である可能性があります。この手技は脊椎穿刺とも呼ばれることがあります。
腰椎穿刺。患者さんに背中を曲げた姿勢で台の上に横たわってもらいます。腰の小さな領域に麻酔を施してから、腰椎穿刺針(細長い針)を脊柱の下部に挿入して、髄液(青色で示されている)を採取します。採取した液体を検査のために検査室に送ることもあります。
診断を確定するために、生検が行われることがあります。
小児に髄芽腫、CNS胚芽腫、松果体芽腫の疑いがある場合は、生検が行われることがあります。頭蓋骨に開けた穴から針を挿入し、組織のサンプルを採取するという手技によって生検が行われます。ときには、組織サンプルの採取にコンピュータ誘導式の針が用いられます。切除された組織を病理医が顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。ここでがん細胞が発見された場合は、そのまま手術を継続して、安全を確保できる範囲で可能な限り腫瘍を切除します。通常は手術で取り外した頭蓋骨の小片が元に戻されます。
開頭術。頭蓋骨に開口部を設け、頭蓋骨の一部を切除することで、脳の一部を露出させます。 切除された組織のサンプルに対して以下の検査が行われることがあります:
特定の要因が予後(回復の見込み)や治療選択肢に影響を及ぼします。
子どもが髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、または松果体芽腫と診断されると、多くの保護者は、そのがんの深刻度や生存の可能性を知りたくなるでしょう。がんがどのような経過をたどるかの見通しを予後といいます。
予後や治療選択肢を左右する要因としては以下のものがあります:
小児のがん治療チームは、小児の予後について、最も的確に保護者と話すことができる立場にあります。
セカンドオピニオンを求めてもいいでしょう。
小児の診断を確定して治療計画を立てるにあたって、保護者はセカンドオピニオンを求めることができます。セカンドオピニオンを求めるときは、最初の担当医に重要な医学的検査の結果と報告書を提供してもらい、それらを別の医師に見せる必要があります。2人目の医師は、病理報告書、スライド、検査画像を確認してから、推奨を提示します。セカンドオピニオンを行う医師は、最初の医師の見解に同意するか、アプローチの変更や別のアプローチを提案したり、患者さんの腫瘍について新たな情報を提供したりします。
医師を選んでセカンドオピニオンを受けるプロセスの詳細については、がん治療の医療機関を探す(英語)をご覧ください。セカンドオピニオンを提供できる医師や病院の情報については、NCIのCancer Information Serviceまで、チャット、電子メール、電話(英語とスペイン語に対応)でお問い合わせください。受診時に聞いておくとよい質問については、がんについて主治医に尋ねるべき質問(英語)をご覧ください。
- 小児髄芽腫、その他の中枢神経系胚芽腫、松果体芽腫の病期
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小児の髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫の治療は、腫瘍の種類と小児の年齢に基づいて行われます。
がんの病期とは、腫瘍の大きさ、転移の有無、最初の発生部位からどれくらい離れて転移しているかなど、体内でのがんの拡がりの程度を表す指標です。小児の髄芽腫、その他の中枢神経系(CNS)胚芽腫、松果体芽腫に適用される病期分類システムはありませんが、がんを診断するために行われる検査や手技が治療計画の策定にも利用されます。
その他の小児CNS胚芽腫と松果体芽腫の治療は、小児の年齢に基づいて行われます。3歳未満の小児は、3歳以上の小児とは異なる治療を受けることがあります。
3歳以上の小児の髄芽腫に対する治療法は、腫瘍が平均リスクか高リスクかによっても変わってきます。
小児の髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫の診断のために行われた検査と手技の結果は、がん治療の計画を立てるための検討材料になります。
髄芽腫、その他の種類のCNS胚芽腫、松果体芽腫の診断を受けた小児は、小児腫瘍医/神経腫瘍医に紹介されます。これらの医師は小児がんの病期診断と治療を専門としています。医師はがんの拡がりの程度(病期)を判定するための検査を勧めるでしょう。がんの診断に用いられる検査の一部は手術後にも再び行われます。これは、手術後に残存している腫瘍の量を明らかにすることと、がんが脳から脊椎やその他の部位に転移しているかどうかを判断することが目的です。最善の治療計画を立てるには、がんが拡がっているかどうかを把握しておくことが重要です。診断検査の種類については、一般的な情報のセクションをご覧ください。
以下の検査は、がんが脳と脊髄の外に転移しているかどうかを調べる目的で行われることがあります:
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骨髄穿刺と骨髄生検は、特殊な針を使用して、寛骨(腰骨)または胸骨から骨髄と骨のサンプルを採取する手技です。このサンプルは病理医が顕微鏡で観察して、がんの徴候がないか調べます。骨髄穿刺と骨髄生検は、がんが骨髄に拡がっている徴候が認められる場合にだけ行われます。
骨髄穿刺と骨髄生検。皮膚の小さな領域に麻酔を施してから、骨髄穿刺針を患者さんの寛骨(腰骨)に挿入します。そして顕微鏡での検査用に血液、骨、骨髄のサンプルを採取します。 - 骨シンチグラフィは、骨の中に活発に分裂している細胞(がん細胞など)が存在していないかを調べる検査法です。まずごく少量の放射性物質を静脈内に注射して、血流に乗せて全身に行きわたらせます。その放射性物質にはがんがある骨に集まっていく性質があるため、これをスキャナで検出します。骨シンチグラフィは、がんが骨に転移 している徴候や症状が認められた場合にのみ行われます。
小児の髄芽腫やその他の中枢神経系胚芽腫はときに治療後に再発することがあります。
小児の髄芽腫やその他のCNS胚芽腫は、治療から3年以内に再発することがよくありますが、さらに後になって再発することもあります。小児髄芽腫やその他の小児CNS胚芽腫は、元の腫瘍と同じ場所で再発することもあれば、脳または脊髄内の別の場所で再発することもあります。
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骨髄穿刺と骨髄生検は、特殊な針を使用して、寛骨(腰骨)または胸骨から骨髄と骨のサンプルを採取する手技です。このサンプルは病理医が顕微鏡で観察して、がんの徴候がないか調べます。骨髄穿刺と骨髄生検は、がんが骨髄に拡がっている徴候が認められる場合にだけ行われます。
- 治療選択肢の概要
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小児の髄芽腫やその他の中枢神経系(CNS)胚芽腫に対する治療法には様々なものがあります。
小児と青年の髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫に対する治療法には様々なものがあります。保護者と担当のがん治療チームが協力して、治療法を決定します。小児の全体的な健康状態や、腫瘍が新たに診断されたものかそれとも再発したものかなど、数多くの要因が検討されます。
小児の髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫の患者さんには、小児脳腫瘍の治療に精通した医療従事者で構成されるチームが治療計画を策定するべきです。
髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫の治療は、小児がんの治療を専門とする小児腫瘍医が治療を監督します。小児腫瘍医は、小児脳腫瘍の治療に精通しつつ、同時に特定の医療分野を専門とする他の小児医療従事者と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門医や専門家です:
小児の治療計画では、がんについての情報、治療の目標、治療選択肢、起こりうる副作用などが検討対象に含まれます。これは、治療に先立って担当のがん治療チームと今後の見通しを話し合う上で役に立ちます。実際の進め方については、NCIのがんの小児:ご両親のための手引き(英語)というダウンロード可能な小冊子をご覧ください。
以下の治療法が用いられることがあります:
手術
本要約の一般的な情報のセクションにあるように、小児の髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫の診断と治療では、手術が行われます。
手術時に視認できるがんを全て切除した場合も、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に化学療法、放射線療法、またはその両方が行われることがあります。このようにがんの再発リスクを減らすために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。小児の髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫には、外照射療法による治療が行われることがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。
外照射療法を特殊な方法で行うことで、周辺の正常組織に対する放射線による傷害を避けられる可能性があります。そのような種類の放射線療法としては以下のものがあります:
放射線療法の実施は、小児(特に3歳未満の幼児)の体の成長や脳の発達に悪影響を及ぼす危険性があることから、放射線療法の開始時期を遅らせたり放射線照射の必要性を減らしたりするために化学療法が行われる場合があります。
脳に対する放射線療法は、3歳以上の小児の成長や発達にも影響を及ぼす可能性があります。このため臨床試験において、標準的な方法と比べて副作用の少ない、放射線の新たな照射方法が現在研究されています。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法は単独で行われることもあれば、放射線療法など他の治療法と併用されることもあります。
髄芽腫、その他のCNS胚芽腫、松果体芽腫の治療では、化学療法薬を口から服用するか、静脈に注入します。この方法で投与すると、薬剤を血流に入れて、全身のがん細胞に到達させることができます。血液脳関門を通過して脳内の腫瘍細胞に到達できる化学療法薬が使用されます。具体的には以下のものがあります:
これらの薬剤を組み合わせて使用することもあります。ここに挙げていない化学療法薬も使用されることがあります。
詳細については、化学療法によるがん治療(英語)をご覧ください。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。
治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象に、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
詳細については、患者さんと介護者のための臨床試験情報(英語)をご覧ください。小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討するべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
- 小児髄芽腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
年少の小児における髄芽腫
3歳未満の小児の新たに診断された髄芽腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
手術後に行われる他に対する治療法には以下のようなものがあります:
3歳以上の小児における平均リスク髄芽腫
3歳以上の小児の新たに診断された平均リスク髄芽腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
3歳以上の小児における高リスク髄芽腫
3歳以上の小児の新たに診断された高リスク髄芽腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 腫瘍を可能な限り切除する手術。この後に、平均リスク髄芽腫の場合より高線量の放射線療法が脳と脊髄に対して行われます。放射線療法中およびその後に化学療法も実施されます。
- 腫瘍を切除する手術、放射線療法、および造血幹細胞移植を伴う大量化学療法。
- 小児におけるその他のCNS胚芽腫(髄芽腫以外の胚芽腫)の治療法
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
3歳未満の小児における髄芽腫以外および髄上皮種以外の胚芽腫
3歳未満の小児の新たに診断された髄芽腫以外および髄上皮腫以外の胚芽腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 腫瘍を可能な限り切除する手術と、その後の化学療法。
3歳以上の小児における髄芽腫以外および髄上皮腫以外の胚芽腫
3歳以上の小児の新たに診断された髄芽腫以外および髄上皮腫以外の胚芽腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
小児における多層性ロゼットを示す胚芽腫または髄上皮種
新たに診断された多層性ロゼットを示す胚芽腫(ETMR)または髄上皮種に対する治療法には以下のようなものがあります:
小児におけるCNS神経芽腫
新たに診断されたCNS神経芽腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 腫瘍を可能な限り切除する手術。この後に脳と脊髄への放射線療法が行われます。化学療法が行われることもあります。
- 小児松果体芽腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
3歳未満の小児
3歳未満の小児の新たに診断された松果体芽腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
3歳以上の小児
3歳以上の小児の新たに診断された松果体芽腫に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 再発小児髄芽腫およびその他の中枢神経系胚芽腫の治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
再発した小児の髄芽腫またはその他のCNS胚芽腫の治療法には次のようなものがあります:
- 髄芽腫またはその他のCNS胚芽腫を診断するための生検。腫瘍を可能な限り切除する手術を行うこともあります。
- 以前に放射線療法と化学療法を受けた患者さんに対する治療法には、がんの発生部位と転移部位に対する再度の放射線療法を行うこともあります。定位放射線治療や化学療法を行うこともあります。
- 以前に化学療を単独で受けて局所再発を起こした乳児または幼児に対する治療法としては、化学療法と腫瘍とその周囲に対する放射線療法の併用などがあります。腫瘍を切除する手術を行うこともあります。
- 以前に放射線療法を受けた患者さんには、造血幹細胞移植を伴う大量化学療法を行うこともあります。この治療によって生存期間が延長するかどうかは不明です。
- がんに特定の遺伝子変異がみられる患者さんには、シグナル伝達阻害薬(ビスモデギブ)による分子標的療法。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施されている場所に基づいて、臨床試験を検索することができます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 副作用
腫瘍や治療によって生じた症状は、治療が終了した後も続くことがあります。
腫瘍により引き起こされる徴候や症状は、がんの診断前から始まって月単位や年単位で続くことがあります。治療が終わっても腫瘍による徴候や症状がなくならない場合は、担当の医師とよく話をする必要があります。
がんの治療中に発生する副作用の詳細については、副作用(英語)のページをご覧ください。
がん治療による副作用のうち、治療後に始まって月単位または年単位で続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:
髄芽腫と診断された小児は、手術または放射線療法の後に、思考力、学習力、注意力の変化など、特定の問題を抱えることがあります。また、手術後に小脳性無言症候群がみられることもあります。この症候群の徴候には以下のものがあります:
- 話す能力の遅れ
- 嚥下および摂食の障害
- 平衡感覚を失う、歩行困難になる、字が汚くなる
- 筋緊張の喪失
- 気分の変動や性格の変化
晩期合併症(晩期障害)には治療やコントロールが可能なものもあります。がんの治療によってお子さんに生じうる影響やがん治療の終了後に予想される症状について、担当医とよく相談することが重要です。詳細については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。
- フォローアップ検査
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がんの診断や病期判定のために実施された検査の中には、治療の効果を調べるために繰り返し行われるものもあります。治療の継続、変更、中止などの決定がそれらの検査結果に基づいて判断されることもあります。これはときに再病期診断と呼ばれます。検査の一覧は、一般的な情報のセクションをご覧ください。
治療が終わってからも度々受けることになる画像検査もあります。こうした検査の結果から、お子さんの状態が変化していないか、あるいは脳腫瘍が再発して(再び現れて)いないかを知ることができます。画像検査で脳内に異常組織が認められた場合は、生検を行って、それが死んだ腫瘍細胞で構成されているのか、新しいがん細胞が増殖しているのかを調べることがあります。それらの検査はフォローアップ検査や定期検査と呼ばれることがあります。
- がんへの対処
小児ががんを発症すると、そのご家族全員に対してサポートが必要になります。がんになった子にも兄弟姉妹にも、保護者が正直に落ち着いて話をすることで、信頼が生まれます。この困難な時期には、保護者が自分自身のことに気を配ることも重要になります。担当の治療チームやご家族や地域の人々に助けを求めましょう。詳細については、小児がん患者さんのご家族のためにという記事と、がんの小児:ご両親のための手引き(英語)という冊子をご覧ください。
- 小児髄芽腫およびその他の中枢神経系胚芽腫についてさらに学ぶために
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小児髄芽腫とその他の小児中枢神経系胚芽腫に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
小児がんに関するさらなる情報とがん全般に関するその他の資料については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、小児髄芽腫およびその他の小児中枢神経系胚芽腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Medulloblastoma and Other Central Nervous System Embryonal Tumors Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/brain/patient/child-cns-embryonal-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389401]
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免責事項
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お問い合わせ
Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。