患者さん向け カポジ肉腫の治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、カポジ肉腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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カポジ肉腫についての一般的な情報

カポジ肉腫は、悪性の病変(がん)が皮膚、粘膜、リンパ節、その他の臓器に発生する可能性のある疾患です。

カポジ肉腫は、皮膚のほか、口腔、鼻、および咽頭粘膜リンパ節、または他の臓器に生じた病変異常な組織)が増殖するがんの一種です。この病変は、通常は紫色をしており、がん細胞のほか、新しい血管赤血球白血球から構成されています。カポジ肉腫は、同時に複数の部位に病変が発生しうる他の種類のがんとは異なるものです。

カポジ肉腫の患者さんでは、例外なくヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)が検出されます。このウイルスはカポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)とも呼ばれます。HHV-8に感染しても、ほとんどの人はカポジ肉腫を発症しません。HHV-8感染者がカポジ肉腫を発症しやすいのは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)への感染や疾患、または臓器移植の後に投与されるが原因で免疫系の機能が弱まっている場合です。

カポジ肉腫にはいくつかの種類があります。本要約では次の2種類を扱います:

カポジ肉腫の診断には、皮膚、肺、消化管を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

カポジ肉腫の診断がついた後には、がん細胞が体の他の部位に拡がっていないかを明らかにするために、さらに検査が行われます。

体の他の部位にがんが拡がっているかどうかを調べるために、以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:

古典型カポジ肉腫

古典型カポジ肉腫は、そのほとんどがイタリア系または西欧ユダヤ系の高齢の男性にみられます。

古典型カポジ肉腫は何年もかけて徐々に悪化していく、まれな疾患です。

古典型カポジ肉腫の徴候には、脚および足にみられる増殖の遅い病変があります。

脚と足に1つまたは複数の赤色、紫色または褐色の皮膚病変が生じ、なかでも足首と足の裏が好発部位です。時間が経ってくると、リンパ節などの他の部位にも病変が形成されるようになります。これらの病変は何の症状も引き起こさないのが通常ですが、10年以上にもわたって大きさと数を増していく場合もあります。病変からの圧迫によって脚の中のリンパ液や血液の流れが妨げられれば、痛みを伴う腫れが生じてきます。消化管に病変ができた場合は、消化管出血が起きてくることがあります。

別のがんが発生することもあります。

古典型カポジ肉腫の患者さんの一部では、カポジ肉腫病変が出現する前や、あるいはかなり後になってから別の種類のがんが発生することがあります。こうした二次がんのなかで最も多いのは非ホジキンリンパ腫です。こうした二次がんの発生を監視していくため、頻繁にフォローアップを行っていくべきです。

流行性カポジ肉腫(HIV関連カポジ肉腫)

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した患者さんは、流行性カポジ肉腫(HIV関連カポジ肉腫)を発症するリスクが高くなります。

後天性免疫不全症候群(AIDS)の発生原因は、免疫系を攻撃してその働きを弱める性質をもつHIVです。免疫系が衰えると、感染や疾患に抵抗できなくなります。HIVの感染者は感染症やがんの発生リスクが高くなります。

HIVの感染者に特定の感染症やカポジ肉腫などのがんが認められると、AIDSを発症したと診断されます。AIDSと流行性カポジ肉腫の両方が同時に診断される場合もあります。

高活性抗レトロウイルス療法(HAART)と呼ばれる薬物療法を行うことで、HIVに感染した患者さんの流行性カポジ肉腫のリスクが低下します。

HAARTは数種類の薬剤を併用する療法で、HIV感染による免疫系の損傷を抑えるために行われます。HAARTによる治療は流行性カポジ肉腫のリスクを低下させますが、HAARTを受けている間も患者さんが流行性カポジ肉腫を発症する可能性は残ります。

AIDSとその治療法に関する情報についてはAIDSinfoのウェブサイト(英語)を参照してください。

流行性カポジ肉腫の徴候には、身体の多くの部分にできた病変などがあります。

流行性カポジ肉腫の徴候には、以下の部位など、身体の様々な部分にできた病変があります:

定期的な歯科検診の際に口腔粘膜にカポジ肉腫が発見されることもあります。

流行性カポジ肉腫の患者さんの大部分では、時間が経過するとともに病変が他の部位へと拡がっていきます。

治療選択肢の概要

カポジ肉腫の患者さんには様々な治療法が存在します。

カポジ肉腫の患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

カポジ肉腫に対する標準治療としては以下の6種類が用いられています:

流行性カポジ肉腫の治療は、カポジ肉腫に対する治療に後天性免疫不全症候群(AIDS)に対する治療を組み合わせたものです。カポジ肉腫に対する標準治療としては以下の6種類が用いられています:

HAART

高活性抗レトロウイルス療法(HAART)は数種類の薬剤を併用する療法で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染による免疫系の損傷を抑えるために行われます。多くの患者さんにとって、HAARTはそれだけで流行性カポジ肉腫に対する十分な治療となります。そうでない患者さんでは、HAARTと他の標準治療を組み合わせて流行性カポジ肉腫の治療を行います。

AIDSとその治療法に関する情報についてはAIDSinfoのウェブサイト(英語)を参照してください。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には2種類のものがあります:

放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類に応じて異なります。カポジ肉腫病変の治療には特殊な外照射療法が用いられています。光子線療法は高エネルギーの光で病変を治療する方法です。電子線療法は、電子と呼ばれる負の電荷をもつ微小な粒子を利用する治療法です。

手術

皮膚表面にできた小さなカポジ肉腫病変に対しては以下のような外科的手技が用いられます:

凍結手術

凍結手術は専用の装置を用いて異常な組織を凍結および破壊する治療法です。この種の治療は凍結療法とも呼ばれます。

化学療法

化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、組織内、もしくは腔などの体内に薬剤を直接注入する化学療法では、薬はその領域にあるがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。

電気化学療法では、静脈内化学療法を行い、プローブを使用して腫瘍に電気パルスを送ります。このパルスで腫瘍細胞の周囲のに開口部を作り、そこから内部に向けて化学療法を施行します。

化学療法の方法はカポジ肉腫の病変の位置に応じて異なります。カポジ肉腫に対する化学療法は、以下のような方法で行われます:

リポソーム製剤による化学療法では、抗がん剤を封入したリポソーム(極小の脂肪粒子)が使用されます。カポジ肉腫の治療にはドキソルビシンリポソーマルが用いられます。このリポソームは、正常組織よりもカポジ肉腫の組織の中に多く蓄積され、中に封入されたドキソルビシンが徐々に放出されます。こうした性質によって、ドキソルビシンの効果が高まるとともに、正常組織への損傷が少なくなります。

詳しい情報については、カポジ肉腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。

免疫療法

免疫療法は、患者さんの免疫系を利用してがんと戦う治療法です。体内で生産された物質や製造ラボで合成された物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。このようながんの治療法は生物学的療法の一種です。インターフェロンαとインターロイキン-12は、カポジ肉腫の治療に用いられる生物学的薬剤です。

詳しい情報については、カポジ肉腫に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

標的療法

標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物やその他の物質を用いる治療法です。標的療法では一般に、化学療法や放射線療法に比べて、正常な細胞に及ぼす害が少なくなります。モノクローナル抗体療法チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)療法は標的療法の一種で、カポジ肉腫の治療法として研究されています。

カポジ肉腫の治療には副作用が現れるものがあります。

がんの治療によって引き起こされる副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんの再発(再び現れること)の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

古典型カポジ肉腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

単一の皮膚病変の治療法には以下のようなものがあります:

全身に発生した皮膚病変の治療法には以下のようなものがあります:

リンパ節または消化管を侵しているカポジ肉腫に対する治療には、場合によっては放射線療法を伴う化学療法が行われるのが通常です。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

流行性カポジ肉腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

流行性カポジ肉腫の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

カポジ肉腫についてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供しているカポジ肉腫に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、カポジ肉腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Kaposi Sarcoma Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/soft-tissue-sarcoma/patient/kaposi-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389178]

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