患者さん向け 心肺症候群(PDQ®)

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このPDQがん情報要約では、心肺症候群(呼吸困難、悪性胸水、悪性心のう液貯留、上大静脈症候群など)の病理生理と治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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心肺症候群の概要

心肺症候群は、がんまたはその他の健康上の問題により引き起こされうる心臓や病態です。この要約では、がんが原因で生じる可能性のある心肺症候群として、以下の5つについて解説しています:

本要約は、がんを患っている成人と小児の心肺症候群について書かれたものです。小児に関する情報が記載されているセクションでは、タイトルにその旨が記載されています。

進行期のがんにみられる呼吸困難

呼吸困難は様々な原因で引き起こされます。

呼吸困難は、呼吸ができないとか十分に息を吸い込めないと感じる状態です。息切れまたは空気飢餓感などとも呼ばれます。がんの患者さんの呼吸困難では、以下のような原因が考えられます:

身体診察と病歴聴取は呼吸困難の原因を明らかにするうえで重要です。

診断検査には以下のものがあります:

がんの患者さんに生じる呼吸困難には様々な治療法があります。

治療法には以下のようなものがあります:

呼吸困難の治療法はその原因により異なります。

呼吸困難の治療法には、原因に応じて以下のものがあります:

表1
呼吸困難の原因: 考えられる治療法:
胸部または肺内の大気道または小気道を腫瘍が塞いでいる • 放射線療法。
• 化学療法(この治療法にすばやく反応する腫瘍の場合)。
レーザー手術による腫瘍の切除。
• 腫瘍の焼灼術。
• 気道の開通を維持するためのステント留置。
胸水 • 針または胸腔ドレーンによる肺周囲の余分な液体の除去。
心のう液 • 針を使用した心臓周囲の余分な液体の除去。
• 心膜内化学療法。
• 手術。
腹水 • 針を使用した腹腔内の余分な液体の除去。
がん性リンパ管症 ステロイド療法
• 化学療法(この治療法にすばやく反応する腫瘍の場合)。
上大静脈症候群 • 化学療法(この治療法にすばやく反応する腫瘍の場合)。
• 放射線療法。
上大静脈へのステント留置術による開口状態の維持。
オピオイドまたはステロイド、もしくはそれらの併用による治療。
胸部感染 • 抗生物質。
• 呼吸治療。
肺塞栓症 • 抗凝固薬。
気管支痙攣または慢性閉塞性肺疾患 • 気管支拡張薬。
• ステロイド吸入。
放射線療法後の閉塞性細気管支炎 • ステロイド療法。
心不全 • 利尿薬やその他の心臓に作用する薬剤。
貧血 • 輸血。
チェックポイント阻害薬による免疫療法関連の肺臓炎 • 薬物療法の中止。
副腎皮質ステロイド
• 綿密な経過観察

呼吸困難の徴候と症状を制御するための治療もあります。

呼吸困難の徴候と症状を制御するには以下のような治療法があります:

慢性の咳

慢性の咳は大きな身体的苦痛の原因になることがあります。

慢性の咳は、痛み、睡眠障害、呼吸困難疲労を引き起こす場合があります。慢性の咳の原因は、呼吸困難の原因とほとんど同じです。呼吸困難のセクションに原因の一覧が記載されています。

慢性の咳の原因を治療できる場合もあります。

治療法には以下のようなものがあります:

慢性の咳を抑えるために薬剤が用いられることがあります。

以下のような医薬品が用いられます:

悪性胸水

胸水は、肺の周囲に溜まった余分な液体です。

胸膜腔は、各の外側と胸の内壁をともに覆っている胸膜組織の薄い層)内の空間です。胸膜の組織は通常、胸腔内での呼吸による肺の動きを円滑にするために、少量の液体を分泌しています。胸水は、胸膜腔内の余分な液体です。この液体が肺を圧迫すると、呼吸がしにくくなります。

胸水は、がんやがんの治療によって引き起こされることもあれば、別の病態が原因で発生することもあります。

胸水には、悪性の場合(がんが原因の場合)と非悪性の場合(がん以外の病態が原因の場合)があります。悪性胸水は、特定のがんの患者さんに共通した問題です。悪性胸水の原因としては、肺がん乳がんリンパ腫白血病がその大部分を占めています。

また胸水は、放射線療法化学療法、肺の虚脱、リンパ節に転移したがんによって引き起こされることもあります。がんの患者さんでは、うっ血性心不全肺炎、肺の血栓栄養失調など、胸水につながる別の病態が並存している場合があります。

胸水の徴候または症状には、呼吸困難(息切れ)や咳などがあります。

胸水が原因となり、以下のような徴候症状がみられることがあります。これらの問題がみられる場合は担当の医師にご相談ください:

胸水の原因を特定することは、治療計画の作成に役立ちます。

悪性胸水と非悪性胸水ではその治療法が異なるため、正確な診断が重要です。胸水の原因を特定するために以下のような診断検査が行われます:

治療計画を立てるうえで、がんの種類、過去に受けたがん治療、患者さんの意向も重要です。

治療によって胸水の徴候と症状を管理し、生活の質を改善することができます。

手術で切除できない、または治療中に増殖または転移し続ける進行がんでは、しばしば悪性胸水が発生します。死期を間近に控えた患者さんにも多くみられます。そうした場合の治療は、徴候や症状を軽減して生活の質を改善することを目標とした、緩和療法になるのが通常です。

悪性胸水の徴候と症状には、以下の治療法があります:

悪性心のう液貯留

心のう液は、心臓の周囲に溜まった余分な液体です。

心のう液(心のう液貯留)は、心臓を包む袋の内部に貯留した余分な液体です。この過剰な液体によって心臓が圧迫され、血液を正常に送り出す心臓の動きが妨げられます。 液体が貯留すると、タンポナーデと呼ばれる病態が生じることがあります。心タンポナーデになると、心臓は体の各部に十分な血液を送り出すことができません。この状態は生命に関わるので、直ちに治療を開始しなければなりません。

心のう液貯留は、がんや別の病態が原因で発生することがあります。

心のう液貯留には、悪性の場合(がんが原因の場合)と非悪性の場合(がん以外が原因の場合)があります。悪性心のう液貯留は、肺がん乳がん黒色腫リンパ腫白血病の患者さんによくみられます。非悪性の心のう液貯留の原因には、心膜炎(心臓を取り囲む組織の肥厚)、心臓発作、甲状腺機能低下症全身性エリテマトーデスなどがあります。また、放射線療法化学療法が原因となって心膜炎を発症し、心のう液の発生につながることもあります。

心のう液貯留の徴候または症状には、呼吸困難(息切れ)や咳などがあります。

初期には、心のう液は何の徴候症状も起こさない場合があります。心のう液や心タンポナーデが原因となって以下の徴候や症状などが生じることがあります。これらの問題がみられる場合は担当の医師にご相談ください:

進行がんの患者さんには心のう液貯留が発生することがよくあります。

心のう液貯留が進行がんの患者さんや死期を間近に控えた患者さんに生じることは珍しくありません。こうした時期には、病態の診断よりも、症状を軽減する方が重要な場合があります。しかし、場合によっては、以下の検査法や手技によって心のう液の診断が行われます:

治療によって、心のう液の症状を管理し、生活の質を改善することができます。

そうした場合の治療は、症状を軽減して生活の質を改善することを目標とした、緩和療法になるのが通常です。悪性心のう液貯留が重度である場合は、通常は排液によって管理されます。

治療法の選択肢は以下の通りです:

上大静脈症候群

上大静脈症候群(SVCS)とは、上大静脈が部分的に閉塞する(塞がる)ことが原因で生じる一群の徴候と症状です。

上大静脈は心臓に通じる大静脈です。心臓は4つの部分に分けることができます。右心房と左心房は心臓上部を構成し、右心室と左心室は心臓下部を構成します。心臓の右心房には、次の2つの大静脈から血液が流れこみます。

様々な病態によって、上大静脈の血液の流れは遅くなります。こうした病態には、胸部の腫瘍、付近のリンパ節の腫れ(がんによるもの)、上大静脈内の血栓などがあります。この静脈が完全に塞がれてしまう場合もあります。同じ領域内の別の小さい静脈が太くなり、閉塞した上大静脈の代役を果たすこともありますが、これには一定の時間がかかります。上大静脈症候群(SVCS)とは、この静脈が部分的に閉塞した場合に発生する、一群の徴候症状のことです。

通常SVCSはがんによって発生します。

通常SVCSはがんによって発生します。成人では、以下の種類のがんでSVCSが多くみられます:

比較的少ないSVCSの原因には以下のものがあります:

上大静脈症候群(SVCS)でよくみられる徴候や症状には、呼吸障害と咳があります。

上大静脈の閉塞が急速に起こる場合には、SVCSの徴候や症状はより重くなります。これはその領域の他の静脈が拡がる時間が足りず、上大静脈を通過できない血流の行き場がなくなるためです。

最もよくみられる徴候には、以下のものがあります:

比較的に頻度の低い徴候や症状には、以下のものがあります:

閉塞を検出し診断するために検査が実施されます。

上大静脈症候群の診断と閉塞位置の特定には以下のような検査法が用いられます:

治療を開始する前に上大静脈症候群の原因を特定することが重要です。がんの種類が、必要な治療の種類に影響する場合があります。成人の場合、気道の閉塞や脳の腫れが認められないかぎりは、診断がつくまで治療の開始を待ったとしても問題は生じないのが通常です。医師が問題の原因として肺がんを疑っている場合は、の採取と生検が行われます。

がんが原因となって生じた上大静脈症候群の治療は、その原因、徴候や症状、予後により異なります。

がんが原因となって生じた上大静脈症候群の治療は、以下の要因により異なります:

上大静脈症候群の治療法には、注意深い経過観察、化学療法、放射線療法、血栓溶解、ステント留置、手術などがあります。

上大静脈症候群の徴候や症状を軽減するために、緩和ケアが行われることがあります。

上大静脈症候群の徴候や症状は深刻なものになることがあります。 患者さんやご家族が、この疾患の原因と治療法について質問をすることは重要です。そうすることによって、腫れや嚥下障害、咳、嗄声などといった徴候と症状に関する不安を軽減できる場合もあります。

進行がんの患者さんでは、以降の治療を受けないという選択がなされる場合があります。緩和ケアは、徴候と症状を軽減して生活の質を改善することにより、患者さんの状態を快適に保つための手段です。

小児の上大静脈症候群

小児では気管の閉塞が起きやすいことから、小児における上大静脈症候群(SVCS)の発生は緊急の対処を必要とする深刻な事態といえます。

小児の上大静脈症候群(SVCS)はまれですが、発症した場合は生命を脅かすこともあります。成人の硬い気管とは異なり、小児の気管は軟らかく、圧迫されると簡単に閉じて塞がります。また、小児の気管は狭いので、わずかな腫れでも呼吸障害が生じます。こうした気管の圧迫は上縦隔症候群(SMS)と呼ばれます。小児では上大静脈症候群と上縦隔症候群の併発がよくみられるため、これら2つの症候群は同一のものとして扱われています。

小児の上大静脈症候群で最も多くみられる症状は、成人の場合とほぼ同様です。

よくみられる徴候症状には、以下のものがあります:

頻度は低くなるものの、より重篤な徴候と症状には、以下のものがあります:

小児の上大静脈症候群の原因で最も多いのは非ホジキンリンパ腫です。

小児では、上大静脈症候群はまれにしかみられません。最も多くみられる原因は非ホジキンリンパ腫です。成人の場合と同様に、上大静脈症候群は、上大静脈静脈内カテーテル液体静脈内に注入したり、静脈から血液を採取したりするために使用する柔軟性に富んだ管)を使用している際に形成された血栓によっても発生することがあります。

小児の上大静脈症候群では、がんの確定診断がつく前に診断され治療が行われることがあります。

通常、小児の上大静脈症候群の診断には、身体診察胸部X線検査、および病歴聴取のみで十分です。がんが上大静脈症候群の原因であると医師が考えている場合でも、生検は実施されないことがあります。これは、上大静脈症候群の小児のや心臓が麻酔に耐えることができないと判断されたためです。麻酔を使用しても安全かどうかの判定の参考にするために、他の画像検査を実施する場合もあります。こうしたことから患者さんの大半は、がんの診断がつく前から上大静脈症候群の治療を受け始めることになります。

小児の上大静脈症候群の治療法には、放射線療法、薬物療法、手術などがあります。

小児の上大静脈症候群には数種類の治療法があります。

最新の臨床試験

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

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PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

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本要約の目的

このPDQがん情報要約では、心肺症候群(呼吸困難、悪性胸水、悪性心のう液貯留、上大静脈症候群など)の病理生理と治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

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臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

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PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board.PDQ Cardiopulmonary Syndromes.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/side-effects/cardiopulmonary-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389457]

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