医療専門家向け がん医療における栄養(PDQ®)

ご利用について

本PDQがん情報要約では、がん治療の前・中・後の栄養について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

本要約は、編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

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がん患者における栄養の基本的原則

初診時およびがん治療過程を通して、がん患者の栄養状態はさまざまである。がんの診断までに、多くの患者が意図しない体重減少を経験する。[ 1 ][ 2 ]がん患者の30~85%に栄養不良がみられることが研究により報告されている。[ 3 ][ 4 ]栄養不良については、これまで普遍的な定義がなされていないために、栄養不良発生の報告はさまざまであり、異なる集団で過少報告されたり、過大報告されたりする可能性がある。歴史的に、体重減少、肥満指数(BMI)および血清アルブミン濃度の低下が栄養不良の代替マーカーとして用いられてきた。[ 5 ][ 6 ]

がん患者の除脂肪体重減少(筋肉減少症)は、転帰不良の独立した危険因子であることを裏付けるエビデンスが現れている;つまり、肥満の設定では、体重減少が望ましい場合がある他の疾患と異なり、不適切な体重減少は筋肉量の減少につながり、転帰不良となる可能性がある。[ 1 ][ 2 ][ 7 ][ 8 ]しかしながら、筋肉減少症の普遍的な定義はなされておらず、この状態を特定する簡単な方法もなく、医療現場での応用は限られている。[ 9 ]

米国および欧州で主要な栄養関連団体が栄養不良の標準定義に関するコンセンサスガイドラインを策定しており、米国の団体が体重減少を含む栄養不良の評価に対する基準を作成している。[ 6 ][ 10 ][ 11 ]

栄養不良

2010年に、American Society for Parenteral and Enteral Nutrition(ASPEN)およびEuropean Society for Clinical Nutrition and Metabolismが提案する病因に基づく栄養不良の定義が公表された。これらの定義は、上記グループおよびAcademy of Nutrition and Dietetics(以降はAcademyと呼ぶ)により受け入れられている。[ 6 ][ 10 ][ 12 ]この定義および栄養不良の特徴は、AcademyのOncology Nutrition Evidence Analysis Library Work Groupによっても受け入れられている。[ 13 ]

病因に基づく栄養不良の定義には以下が含まれる:

2012年に、ASPENおよびAcademyは、栄養不良の評価に関する共同声明を公表した。[ 11 ]この声明は、栄養に重点を置いた身体的評価を含め、栄養状態を判定する栄養評価のガイドとして役立つ。この評価では、肥満が栄養不良を覆い隠している可能性があり、体重およびBMIのみでは栄養状態の良好な代替とならないことを考慮に入れている。[ 12 ]このコンセンサス声明は、以下の6つの潜在的な栄養不良の指標のそれぞれを評価する基準を提供しており、2つ以上の特徴が認められる場合に栄養不良の診断が正当化されると推奨している。

重大な体重減少

体重減少は、栄養不良の代替としてしばしば使用される。体重減少は、治療による副作用の発生率および重症度の増加や感染症のリスク増加などの有害な転帰と相関するとされており、そのために生存の可能性が低下する。[ 14 ]体重減少は、がん患者における不良な予後の指標として使用されている。[ 15 ]体重減少を栄養不良の代替として使用する限界の1つは、体重減少の時間経過または組織喪失の種類を考慮に入れていないことである。[ 6 ]その上、体重は水分の変化により影響を受ける可能性があり、脂肪および除脂肪体重の実際の変化ではなく、むしろ水分補給状態の変化、浮腫、または腹水を意味している場合がある。

米国では、主要な栄養関連団体が経時的な体重減少の評価および中等度または重度としての分類のための基準を公表している[ 11 ](表1を参照のこと)。過少または過大な水分補給による他の臨床的特徴と関連付けて、体重の変化を評価することが重要である。

表1.成人の体重減少の解釈a
時間 重度ではない(中等度)栄養不良に対する%体重減少 重度の栄養不良に対する%体重減少
a出典:White et al.[ 11 ]
1週間 1–2 >2
1ヵ月 5 >5
3ヵ月 7.5 >7.5
6ヵ月 10 >10
1年 20 >20

食欲不振と悪液質

食欲の喪失つまり食べる意欲をなくす食欲不振は、典型的にがんと診断された直後のすべての患者の15~25%にみられ、治療の副作用または腫瘍自体に関連する副作用としてみられることもある。外来で診察を受けた患者の観察研究では、化学療法を受けている患者の26%に食欲不振が報告された。[ 16 ]食欲不振は、味覚および嗅覚の変化、吐き気と嘔吐など、化学療法および放射線療法に起因する副作用により悪化する。食道切除、胃切除などの外科的処置によって、早期の満腹感、つまり早すぎる満足感を生じることがある。[ 17 ]抑うつ、個人的な興味または希望の喪失、および不安は、十分に食欲不振を引き起こして栄養不良をもたらす可能性がある。[ 18 ]食欲不振は、発がん段階での代謝の生理的変化のために、がんが広範囲に転移している患者のほぼすべてに認められる症状である。[ 19 ][ 20 ]

脱力や顕著かつ進行性の体重減少、体脂肪および筋肉の減少が示すように、食欲不振は、進行性の消耗症候群の1つである悪液質[ 18 ]の進行を速める。原発性悪液質を来している患者では、タンパク質およびカロリーを十分に摂取していても、食欲不振が発生することがあるため、腫瘍関連因子により脂肪および筋肉の維持が妨げられる。消化管疾患がある患者には、特に食欲不振を発症するリスクがある。(詳しい情報については、本要約の十分な栄養に対する障害における腫瘍代謝のセクションを参照のこと。)

筋肉減少症

筋肉減少症は、重度の筋肉量減少による疾患である。[ 1 ]除脂肪体重の重要性は、がんにおける筋肉減少症の研究で示されている。38件の研究を対象としたメタアナリシスにより、固形腫瘍患者で、がん診断時の骨格筋指数が低いことは不良な生存と関連していることが明らかにされた。[ 7 ]他の研究でも、筋肉減少症の患者における不良な全生存と高い化学療法毒性が報告されている。[ 1 ][ 2 ][ 8 ]サルコペニア肥満は慢性の低度の炎症状態を示す可能性があり、疾患関連栄養不良と同じように、しばしば栄養介入の有効性を制限し、基礎疾患または病態の有効な治療を必要とする。[ 10 ]筋肉減少症は、治療による毒性増加と関連しているため、治療中断および用量減量とも関連する。進行がん患者の50%に筋肉減少症がみられると報告されている。[ 21 ][ 22 ][ 23 ]

サルコペニア肥満は、BMIが高値(25kg/m2以上)の人に筋肉減少症が認められるもので、しばしば骨格筋減少および脂肪組織増加によりもたらされる。サルコペニア肥満は、予後不良の独立した危険因子である。[ 1 ][ 24 ][ 25 ]

早期に栄養不良およびその他の栄養に影響する症状を特定し、予測することが重要である。(栄養摂取に影響する症状は、味覚および嗅覚の変化、粘膜炎、嚥下困難、口内炎、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、吸収不良、疼痛、抑うつ、不安など、経口摂取を妨げるがんおよびがん治療の一連の副作用である。)栄養介入は、患者が以下を行うのに役立てることで転帰が改善される:[ 4 ][ 5 ][ 15 ][ 21 ][ 26 ][ 27 ][ 28 ]

治療を行う医師は、ベースラインの栄養状態(詳しい情報については、本要約の栄養スクリーニングおよび栄養評価のセクションを参照のこと)を評価し、さまざまな治療で起こりうる影響を認識しておくことが推奨される。通常、積極的ながん治療を受けている患者には積極的な栄養管理が必要である。

特に明記していない場合、本要約には成人に関する証拠と治療について記載している。小児に関する証拠と治療は、成人の場合とかなり異なる可能性がある。小児の治療に関する情報が入手できる場合は、小児に関する情報であることを明記した上でその内容を要約する。

参考文献
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十分な栄養に対する障害

栄養状態および栄養不良のリスクに対する影響には、以下がある:[ 1 ]

手術、化学療法、および放射線療法を含む治療アプローチは、栄養状態に対して直接的な(機械的な)悪影響および/または間接的な(代謝的な)悪影響を及ぼす。がんに対する治療の成功は、治療前および治療中の患者の栄養状態により影響を受け、栄養状態は、患者の治療に対する耐容能力に影響を及ぼす。

経口摂取は、以下のような栄養に影響する症状により妨げられる:[ 2 ]

例えば、アルコールの乱用(頭頸部がん)および肥満(乳がんおよび前立腺がん)など、既存の併存症も、がんの発生に関与している場合があり、そうでなくとも、初診時の栄養不良のリスクを増大させる可能性がある。[ 3 ][ 4 ]

腫瘍による栄養状態への影響

腫瘍には全身性または局所性の作用があり、代謝亢進、吸収不良、運動障害、および閉塞など、栄養状態に影響を及ぼすことがある。[ 5 ]

疾患部位

栄養に関する合併症は、通常、機械的な閉塞または機能障害のために、消化管または頭頸部に及ぶ腫瘍で最も顕著かつ重度である。腫瘍部位による一般的な副作用については、表2を参照のこと。

表2.腫瘍部位に関連する一般的な副作用a
一般的な副作用 腫瘍部位
a出典:McGuire,[ 6 ] Leser,[ 7 ] Gill,[ 8 ] Nguyen et al.,[ 9 ] and Petzel.[ 10 ]
  頭部/頸部 食道、胃 膵臓、肝臓、小腸 大腸
嚥下困難/嚥下痛 X X    
口腔乾燥 X      
味覚変化 X      
早期の満腹感   X X  
吐き気/嘔吐   X X  
腹痛   X X  
下痢/吸収不良   X X X
便秘/閉塞     X X
食欲不振/体重減少   X X X

腫瘍代謝

栄養状態は、腫瘍によって誘発される代謝の変化(すなわち悪液質)に直接反応して悪化することがある。腫瘍によって誘発される体重減少は、肺、膵臓、および上部消化管の固形腫瘍患者に頻繁に起こり、乳がんまたは下部消化管のがん患者では頻度が低い。疾患が進行するとともに、悪液質も多くみられる。

2011年に、国際的な専門家グループは、「従来の栄養補助により完全に回復できるとは限らず、進行性の機能障害につながる骨格筋量減少の持続により定義される多因子性症候群」として悪液質のコンセンサス定義を策定した。[ 11 ]彼らは悪液質を3段階に分類し、以下の診断基準を提供した:

食欲不振も認められるが、エネルギー欠乏だけでは悪液質の発生機序の説明にはならない。がん性悪液質の病因は、完全に解明されているわけではないが、いくつかの要因が提案されている。[ 12 ]サイトカイン、神経ペプチド、神経伝達物質、および腫瘍に由来する因子などのメディエータが、この症候群の一因になっていると想定されている。[ 13 ]この複合的な症候群のメディエータとして、宿主組織の生成物(例、腫瘍壊死因子α、インターロイキン-1、インターロイキン-6、インターフェロンγ、白血病抑制因子)が同定されている;また、腫瘍生成物(例、脂質動員因子およびタンパク質分解誘導因子[ヒトで明確に確立されているわけではない])も、宿主組織に対して直接異化作用を有する。[ 14 ]

がん性悪液質の患者では、脂肪、タンパク質、および炭水化物の代謝異常が明らかである。腫瘍は、ブドウ糖の取り込みおよびブドウ糖の酸化を阻害し、解糖増加の要因となることがある。[ 15 ]体重減少は、エネルギー摂取量の減少および/またはエネルギー消費量の増加から生じることがある。食欲不振はがん患者によくみられる症状であるが、経口的ルートまたは完全非経口栄養法による補給でカロリー摂取を増加させても、消耗の進行に対抗できないことが研究により示されている。この異常な代謝速度は、腫瘍および免疫系による直接的な反応であり、体重調整のホメオスタシスループを調整する経路を破綻させると考えられている。[ 13 ]

治療による栄養状態への影響

がん治療は、急性または慢性の影響をもたらすことがある。栄養介入は症状管理に基づいている。良好な栄養状態を維持している患者は、治療による副作用に耐容性を示す可能性が高い。十分なカロリーおよびタンパク質は、患者が体力を維持し、体組織がそれ以上異化するのを防ぐのに有用である。がん治療の副作用は患者によってさまざまであり、治療の種類、期間、用量のほか、治療対象のがんの種類によって異なる(表3を参照のこと)。がん治療には、以下のように消化管に対する毒性作用がある:

表3.治療による栄養状態への影響a
影響 治療
a出典:Grant [ 16 ] and American Cancer Society.[ 17 ]
  化学療法 放射線療法 生物学的治療法 ホルモン療法 手術
嚥下困難 X X      
口腔乾燥 X X      
粘膜炎 X X      
味覚変化 X X      
早期の満腹感 X       X
吐き気/嘔吐 X X X X X
下痢 X X X   X
便秘 X X X   X
食欲不振/体重減少 X   X   X
体重増加       X  

化学療法およびホルモン療法

化学療法およびホルモン療法は、疾患の種類および患者の健康状態に応じて、単剤または併用療法として使用できる。[ 16 ][ 18 ]これらの薬剤は、いくつかの機能カテゴリーに分類されている。例えば、化学療法は(局所治療ではなく)全身性治療であり、(特定の部位だけでなく)全身に作用するため[ 19 ]、手術や放射線療法などの局所治療と比較すると、より多くの副作用を引き起こす可能性がある。

一般的な栄養関連の副作用には以下がある:

がんおよび化学療法の副作用は、栄養状態に大きな影響を及ぼすため、医療提供者は、起こりうる問題を予測し、栄養不良および体重減少を予防する計画を患者とともに策定しなければならない(詳しい情報については、本要約の栄養スクリーニングおよび栄養評価のセクションを参照のこと)。栄養不良および体重減少は、化学療法のサイクル間で患者が健康および許容できる血球数を回復する能力に影響を及ぼす;このことは、良好な転帰を得るために重要な治療スケジュールを続ける患者の能力に直接影響を及ぼす可能性がある。(詳しい情報については、本要約の栄養療法における症状管理に対する行動戦略のセクションを参照のこと。)

ホルモン補充療法を受けている患者は、体重減少ではなく、むしろ体重増加のリスクがある。このような患者では、体重増加を最小に抑え、過度の体重に伴う併存症の発症リスク低減に役立てることを目指した教育を受けることから利益が得られる可能性がある。[ 20 ]

放射線療法

放射線療法は局所の症状を引き起こす。放射線照射によって引き起こされる一般的な栄養関連の副作用の主なものに以下がある:[ 16 ]

放射線療法の副作用は、照射部位、総線量、分割回数、期間、照射容積によって異なる(表4を参照のこと)。副作用のほとんどは急性で、治療の2~3週目頃から現れ、放射線療法の終了後2~3週間で軽減する。副作用には慢性化するものがあり、治療終了後に持続または発現することがある。[ 21 ](詳しい情報については、本要約の栄養療法における症状管理に対する行動戦略のセクションを参照のこと。)

放射線療法中の栄養支持は、生命維持にきわめて重要である。照射野内の健康な組織に対する放射線療法の影響によって、正常な生理的機能が変化を来し、栄養素の摂取、消化、または吸収が妨げられることで、最終的に患者の栄養状態が悪化することがある。

栄養関連の副作用の多くは、放射線療法が原因である。適切な医学的栄養療法および食事の改善を通してこれらの副作用を管理することにより、生活の質および栄養摂取を改善できる。例えば、ピロカルピン(Salagen)などの薬剤は、頭頸部に対する放射線療法に伴う口腔乾燥の治療に有用な場合がある。[ 22 ]この薬剤により、人工唾液またはハードキャンディーやシュガーレスガムなど、口内を快適に保つ物質を使用する必要性が減少する。

表4.治療部位別の放射線による栄養状態への影響a
治療部位 影響
a出典:Grant (tables 11-14-11-16),[ 16 ] Romano,[ 23 ] and Harris et al.[ 24 ]
  口腔乾燥、粘膜炎、味覚変化 嚥下困難、嚥下痛、食道炎 吐き気、嘔吐 下痢 その他の急性症状 遅発性副作用
  X X   食欲不振 嚥下困難
頭頸部 X X     粘液性唾液 開口障害、嚥下困難、口腔乾燥
胸部   X X   食欲不振 食道狭窄、線維症、壊死
腹部     X X   慢性腸炎/大腸炎、腸管狭窄または閉塞
骨盤部および直腸     X X    

手術

ほとんどの種類の固形腫瘍患者にとって、手術は唯一の治癒の機会である。[ 17 ]腫瘍は技術的に切除可能な場合があるが、意味のある回復は、術後の患者の栄養状態に依存する可能性がある。手術時点で栄養不良となっている患者は、術後の罹病および死亡のリスクが高く、入院期間が長い。[ 25 ][ 26 ]時間が許されるか、手術の実施を安全に遅らせることができる場合は、手術前に中等度から重度の栄養不良患者を識別し(詳しい情報については、本要約の栄養スクリーニングおよび栄養評価のセクションを参照のこと)、手術前に多量栄養素と微量栄養素の栄養欠乏を回復させる措置を講じることができる。[ 6 ][ 25 ]栄養欠乏を回復させる最善の方法の選定は、消化管機能に左右される;選択肢には、経口液体栄養補助食品および経腸栄養または非経口栄養支持がある。

手術治療は、栄養不良の発生または栄養不良の悪化を増加させる可能性がある。手術、特に消化管または頭頸部に対する手術で多くみられる副作用には、食欲不振、経口摂取能力の低下、および早期の満腹感などがあるが、そのいずれも既存の栄養不良の悪化につながることがあり、そうでなくとも、以前は十分な栄養が摂れていた患者が手術後に栄養不良になる場合がある。[ 26 ]

手術は、手技に依存するものの、腸切除後に吸収不良を引き起こす短腸症候群など、十分な栄養摂取に対する機械的または生理的な障壁をもたらすことがある。[ 6 ]こうした機械的な障壁に加えて、手術では、高い頻度で即座に代謝反応が生じ、創傷治癒および回復に必要な栄養要求量が変化するため、その時点で基準となる必要量および要求量がしばしば満たされなくなる。[ 4 ]

(栄養介入に対するアプローチおよび経腸・非経口栄養支持の適切な使用に関する詳しい情報については、本要約の栄養療法のセクションにおける栄養支持のセクションを参照のこと。)

生物学的治療法

生物学的治療法は、免疫系を惹起して、がんに対する身体自体の反応の強化を助けたり、治療による副作用として損傷した正常な細胞の修復を助けたりする治療法である。[ 18 ]生物学的治療法には、増殖因子、モノクローナル抗体、およびワクチンがある。生物学的治療法による症状で、栄養状態に影響を与える可能性が特に高いものは、疲労、発熱、吐き気、嘔吐、および下痢である。[ 27 ]

造血細胞移植(HCT)

HCTを受けた患者では、栄養必要量が通常と異なることがある。細胞移植前に、患者は高用量化学療法を受け、全身照射による治療を受けることもある。[ 28 ][ 29 ]移植で用いられる医薬品に加えて、これらの治療も、しばしば粘膜炎や重度の下痢などの栄養関連の副作用を引き起こし、十分な食事を摂取する患者の能力に影響を及ぼすことがある。患者は急性または慢性の移植片対宿主病(GVHD)を経験することもある。GVHDは、消化管、肝臓、または皮膚を標的とし、十分なカロリーおよびタンパク質を消化し処理する身体の能力を変化させる可能性がある。[ 28 ]

栄養支持の目標は、十分な栄養状態とタンパク質貯蔵を維持することである。American Society for Parenteral and Enteral Nutritionは、HCTを受ける患者が栄養不良で、長期間(7~14日を超える)にわたって十分な栄養の摂取または吸収ができないと予想される場合、栄養支持を受けるよう推奨している;患者の消化管が機能していれば、経腸栄養が推奨される。[ 28 ][ 29 ]

さらに、移植を受けた患者は、血液中の好中球数が異常に少なく、多重感染に対する感受性が高まる好中球減少症のリスクが非常に高い。HCTに関連する感染のリスクを低減させるために、安全な食品の取り扱いや感染リスクの恐れがある食品の回避について、患者は直接カウンセリングを受けることができる。[ 28 ][ 29 ](免疫機能が低下した患者に対する食事に関する詳しい情報については、本要約のがん患者における飲食に起因する病気のリスク低減のセクションを参照のこと。)

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栄養スクリーニングおよび栄養評価

がん患者に対する栄養の最適化では、疾患または治療の早期段階で介入を開始できるように、栄養不良またはそのリスクの早期発見を含める。栄養スクリーニングの目的は、栄養不良の発症リスクがある患者を迅速に特定して、医療専門家へ紹介することであり、理想的には完全な栄養評価の実施および栄養ケア計画の実行が可能な登録栄養士へ紹介する。[ 1 ][ 2 ]

栄養不良で標準の定義または指標はない。以前から、体重または肥満指数(BMI)の減少、BMI低値、および血清タンパク質(アルブミン)低値が栄養不良患者の特定に用いられてきた。さらなる背景情報がなければ、これらの特徴は、栄養不良を判定する手段として受け入れられない。[ 3 ][ 4 ][ 5 ]体重変化は、体液の変化(脱水、腹水、および浮腫)または除脂肪体重の不相応な減少を表していないため、体重変化のみでは、栄養状態の判定に使用できない。[ 4 ][ 6 ]同様に、BMIは身体組成(除脂肪体重 vs 脂肪量)を表していないために信用できないことを示すエビデンスがあり、多くのがん患者では、体重/BMIの値が正常または高くとも、重度の筋肉量の減少(筋肉減少症)を来すことがある。[ 7 ]アルブミンの使用も現在では炎症によって大幅に影響を受けると認識されており、栄養状態の測定値としては劣り、アルブミンは栄養状態ではなく、疾患の重症度を示す可能性がはるかに高い。[ 4 ][ 8 ]栄養不良または悪液質を規定する標準定義および閾値が開発段階である;しかしながら、がん患者集団における栄養不良の有病率は不明である。

肥満のがん患者における栄養不良の有病率を検討している文献の量は増加しつつある。転移性の原発がん患者1,469人から得られた臨床データを対象としたある研究で、41.9%が過体重または肥満であることが特定された。[ 9 ]評価すると、50%が栄養不良になるリスクがあり、初診時に12%は既に栄養不良であった。栄養不良は、肥満であっても、生存の独立した予測因子であることが明らかになっており[ 9 ]、サルコペニア肥満を呈する患者は最も予後不良である。[ 10 ]したがって、これらのデータから、体重の状態にかかわらず患者の栄養状態の評価が重要であることが示唆される。

肥満は、がんの再発リスクを高めることが示されており、全生存に悪影響を及ぼす。[ 1 ][ 11 ][ 12 ]肥満の有病率は、がんの既往のない患者においてよりも成人のがん生存者においての方が高い。肥満度が高まっている割合が最も高いがん生存者は、大腸がんおよび乳がん生存者と非ヒスパニック系黒人である。[ 13 ]過体重または肥満のがん患者および生存者、特に乳がん患者で、体重の意図的な減量により疾患再発のリスクを低減させ、予後を改善する効力を支持するエビデンスが現れてきている。[ 14 ][ 15 ][ 16 ]その他の肥満関連がんの患者で同様な調査が進められている。

スクリーニング

がん患者の適切な栄養管理には、栄養に関連する問題の早期認識が必要である。治療開始前および治療過程の定期的な間隔で、有効性が認められたツールを用いた栄養スクリーニングが実施できる。

栄養スクリーニングは、病院スタッフまたはコミュニティ/外来診療チームのメンバーが十分に実施できるような簡単なプロセスであり、栄養不良またはそのリスクがある人の早期の特定が目標である。[ 1 ][ 5 ][ 17 ][ 18 ]American Society for Parenteral and Enteral Nutrition、European Society for Clinical Nutrition and Metabolism、およびAcademy of Nutrition and Dietetics(Academy)などの主要な栄養関連団体は、急性期および外来のいずれの設定でも、栄養不良のリスクについて患者をスクリーニングすることを推奨している。[ 8 ][ 17 ][ 18 ]Academy's Oncology Nutrition Dietetic Practice Group、Oncology Nursing Society、およびAssociation of Community Cancer Centersは、外来の設定ですべてのがん患者をスクリーニングすることを推奨している。[ 1 ][ 5 ]The Joint Commissionにより、すべての入院患者に対して栄養スクリーニングを実施することが義務付けられているため[ 19 ]、ほとんどの急性期治療施設はスクリーニングシステムを設けているが[ 17 ]、そのようなシステムは、がん治療の設定で規定されていなかったり、有効性が確認されていなかったりする場合がある。

外来でのがん治療の設定では、治療開始前に患者のスクリーニングを最初に実施し、計画した間隔で再スクリーニングを実施することが推奨される。スクリーニングは、ほとんどの場合、放射線療法中は週1回実施し、化学療法中、手術前、および治療または手術からの回復完了後のフォローアップ来院時は2~3週間ごとに頻繁に行うなど、患者の治療計画と合わせて実施できる。[ 1 ][ 2 ][ 5 ]

がん治療での使用に以下の5つのスクリーニングツールの有効性が確認されている:[ 5 ][ 20 ][ 21 ][ 22 ][ 23 ][ 24 ]

しかしながら、入院および外来のいずれのがん治療設定での使用でも有効性が確認されているツールは、MSTおよびPG-SGAのみである。いくつかの研究によって、abridged PG-SGA(abPG-SGA)またはshort-form PG-SGA(PG-SGAsf)を使用する有効性が確認されており、これらはいずれも患者が記入するPG-SGAの一部を簡略化したものである。[ 25 ][ 26 ]

Nutrition Risk Screening-2002は、がん治療設定で有効性が確認されていないが、がん患者を対象としたいくつかの研究で使用されている。スコアは、入院期間の長さ、合併症、および死亡など、栄養不良に伴う一般的転帰に相関している。[ 2 ][ 3 ][ 18 ][ 27 ][ 28 ]

NUTRISCOREツールではベースとしてMSTを利用しているが、腫瘍の位置や治療法など、感度(97.3% vs 84%)と特異度(95.9% vs 85.6%)の向上に役立つ追加の項目を取り入れている。著者らが外来でのがん治療の設定で確認のための参照としてPG-SGAを用いたところ、PG-SGAの記入にかかるよりもNUTRISCOREの記入にかかる時間の方が短いことも明らかにされた。[ 24 ]

スクリーニング方法を選定する場合、スクリーニングを実施する担当者、その過程で必要と考えられる時間、および完全な栄養評価のために患者を紹介する過程を考慮することが推奨される。[ 1 ]有効性が確認されたツールを使用することも理想的である。がん治療設定で入院および外来の両方で有効性が確認された2つのツールについて、さらに詳しく以下に示す。

MST

MSTは、2つの質問からなる短い質問票である。これらの質問への回答に応じて、患者は次の2つのカテゴリーに層別化される:リスクあり、またはリスクなし。[ 23 ]MSTの利点は、すぐに実施でき、医療スタッフまたは管理スタッフにより十分に実施できることである。十分に有効性が確認されており、栄養不良のリスクがある患者の特定で一貫して高い感度および特異度を示す。[ 29 ]

スクリーニングでは、有効性が確認されたツールを使用するとともに、臨床現場のニーズを考慮することが重要である。登録栄養士がすぐに対応できる施設では、MSTがすぐに利用でき、診察室の多くのメンバーおよび医療スタッフが実施できるため、スクリーニングツールとして選択できる。リスクがあることが明らかになった患者は、さらに詳しい評価のために栄養士に紹介することができる。

PG-SGA

PG-SGAは、スクリーニングおよび評価で最も多く受け入れられているツールで、多くの研究により支持され、入院および外来のいずれのがん治療設定でも有効性が確認されている。[ 2 ][ 29 ]深くまで掘り下げた(in-depth)ツールであり、項目のほとんどが患者により記入される。17のデータポイントからなる4つのセクションがあり、以下が評価される:

PG-SGAの残りは、医療従事者が記入するもので、疾患および代謝要求に関する情報ならびに身体診察の完了について収集される。abPG-SGAおよびPG-SGAsfは、患者が記入するセクションのみを使用する。次に回答が採点され、そのスコアを基に、患者は以下の4つの栄養トリアージカテゴリーに層別化される:[ 1 ][ 5 ]

PG-SGAの欠点は、管理に時間が多く必要で、身体評価部分に記入するには訓練を受けた医療従事者が必要なことである。ショートフォームの有効性が確認されたことで、身体診察の必要性がなくなり、医療従事者の管理時間が短縮される。PG-SGA(PG-SGAsf)の利点は、栄養評価に有用な可能性のある臨床情報が収集されることである。

登録栄養士がすぐに対応できない医療現場では、看護師、高度医療提供者、または医師から十分な情報が得られる患者と、より深く掘り下げた評価および介入のために登録栄養士に紹介することが最善と考えられる患者をうまく判別するのに役立つため、PG-SGAsfがより適切な場合がある。

評価

栄養評価は、栄養の問題を評価して診断し、介入を策定する総合的アプローチである。[ 17 ]完全な栄養評価には、以下の6つの要素の評価が含まれる:

身体測定値の評価では、体重減少を評価し、体重減少の時間経過を考慮に入れて、脱水や体液貯留のような身体所見と関連付けて検討する。食事関連および栄養関連の既往歴の評価では、栄養士が関与することが理想的で、食事歴を聴取して、患者のエネルギー必要量を算出し、摂取量と比較する。[ 2 ][ 6 ]栄養に重点を置いた身体評価では、筋肉量と皮下脂肪の減少、体液貯留、および潜在的な微量栄養素の栄養欠乏について評価する。以下の部位の身体診察により、皮下脂肪または筋肉の減少を判定する:

栄養評価の中で、栄養不良と診断する際に以下の因子が考慮される:[ 8 ]

腫瘍学栄養評価では、上述の組織に加えて、以下のことも考慮に入れる:[ 5 ]

腫瘍学栄養評価の目的は、現状または予想される栄養問題を判定し、患者、介護者、その他の栄養介入に関与する医療チームメンバーが共同して計画を策定するために必要な情報を収集することである。さらに、この集学的チームのアプローチには、特定された栄養問題または予想される栄養問題に対処し、それを予防するために、代謝的、薬理的、および機能的介入を含めることができる。[ 1 ][ 5 ][ 30 ]

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栄養療法

栄養療法の目標

実施すべき医学的栄養療法の目標は以下の通りである:[ 1 ]

これらの目標は、以下に基づき、患者ごとに個別化しなければならない:

最善の治療アプローチについての決定では、症状の重症度および消化管機能から情報が得られる。治療には、これらの因子を基に複数の戦略を含めることができる。

がん治療の途中および終了後の栄養摂取の目標は、栄養状態および栄養不良の存在に関連する目標と一体化される。[ 2 ]表5では、栄養状態、現状のガイドラインにより定義される栄養不良[ 3 ]、およびがん治療の段階に基づいて、栄養摂取の目標を要約している。

広範なエビデンスのレビューを基に、がん治療後のすべての患者に対して、植物性食物を基本とした食事、定期的な身体運動、および健康的な体重の達成に重点を置いた健康的な食事が推奨されている。[ 4 ][ 5 ]American Institute for Cancer Research(AICR)および米国がん協会(ACS)から、がんリスク低減のための健康的な食事に関する証拠に基づくガイドラインがオンラインで利用できる。

表5.治療中の栄養摂取の目標a
体重/栄養の状態 治療中
a出典:Hamilton et al.,[ 2 ] Kushi et al.,[ 4 ] and Rock et al.[ 6 ]
健康的な体重と栄養状態 除脂肪体重の維持
健康的な体重の維持
栄養不良  
- 急性疾患関連 重要臓器の機能支持
急性発症でも宿主反応を保持
エネルギーおよびタンパク質の必要量が増加している場合がある
- 慢性疾患関連 除脂肪体重および脂肪量の維持および改善
肥満(栄養不良ではない) 除脂肪体重の維持
適度の体重減少(2ポンド[約0.9kg]/週以下)を考慮

栄養療法

前悪液質およびがん性悪液質の患者に対しては、迅速かつ積極的な栄養介入が必要である。早期に介入を開始した場合に有効になる可能性が高くなる。介入には、証拠に基づいた推奨、ガイドライン、およびプログラム、ならびに規制標準を用いた経口、経腸、および非経口栄養に対する個別化アプローチが含まれる。

栄養士は、患者、介護士、および医療チームメンバーとともに活動し、(1)がんおよびがん治療関連の症状を管理するために処方された薬物療法による介入のコンプライアンスおよび有効性を改善し、(2)栄養に影響する症状を軽減する行動戦略について患者のカウンセリングを行う。[ 1 ]

登録栄養士によるカウンセリング

登録栄養士/食事療法士は、病院内および外来環境での腫瘍学チームに不可欠なメンバーである。Association of Community Cancer Centers Cancer Program Guidelines[ 7 ]では、患者、特に栄養問題が生じるリスクのある患者とその家族とともに活動するために対応できる栄養に関する専門家として登録栄養士を配置することを規定している。登録栄養士は、適切なスクリーニング、評価、および介入による一連のケアを通して、患者、家族、および医療チームとともに活動し、栄養および水分補給状態を管理し、栄養状態を最適に維持する。[ 8 ]

登録栄養士は、以下のことを行う:[ 8 ][ 9 ]

登録栄養士は、患者およびコミュニティに対する人的資源としても役割を果たし、がんリスクおよび再発リスクの低減に関連する教育を提供する。[ 8 ][ 9 ]

ランダム化比較試験の系統的レビューにより、栄養不良の予防および低減に対する有益な効果を示す強い証拠が得られたため、患者を栄養カウンセリングに紹介するよう推奨された。[ 10 ]強力で個別化された栄養カウンセリングには、腫瘍学に特有な経験を有する栄養専門家が必要である。[ 9 ][ 11 ]

症状管理に対する行動戦略

がんおよびがん治療は、経口摂取を妨げる一定範囲の副作用を引き起こし、これらは栄養に影響する症状といわれる。これらの影響を経験することが少ない患者もいるが、以下のような複数の症状がみられる患者もいる:

これらの症状により、栄養状態および生活の質の低下に至ることがある。これらの症状の影響を軽減し、十分な栄養摂取を促進するには、行動戦略が不可欠である;症状の重症度を最小に抑えるために、これらの戦略と組み合わせて、薬理学的介入が使用できる。

以下のリストは、がん治療による栄養関連の症状を軽減するために役立つ行動戦略を示す。この情報は、米国国立がん研究所(NCI)のEating Hints: Before, During, and After Cancer TreatmentおよびAICRのDealing with Treatment Side Effectsを基にしている。治療中における栄養戦略に関するその他の情報は、ACSおよびAICRなどの腫瘍学に重点を置いた団体から得られる。[ 4 ][ 5 ][ 12 ]

経口栄養補助食品

市販で購入できる経口栄養補助食品(例、Boost、Ensure)は、栄養摂取の適切性を改善するためにしばしば使用される。[ 8 ]これらの医療用食品は、栄養の唯一の供給源として使用するだけでなく、エネルギー、タンパク質、脂質、炭水化物、および/または食物繊維の摂取を補助し、ビタミンおよびミネラルの摂取に寄与することも意図している。[ 1 ]経口栄養補助食品の推奨は、患者の栄養状態、必要栄養量、消化管機能、臨床状態、食事、食べ物の嗜好、併存疾患、および供給源を基にする。

がん患者は、除脂肪体重を維持し、立て直すために、十分なタンパク質を必要とする。多栄養素で高タンパク質の経口栄養補助食品の系統的レビューでは、総エネルギーおよびタンパク質摂取の著しい改善ならびに合併症発生率の減少が明らかになった。[ 13 ]食事制限が必要な臨床状態での使用に特化した製品も利用可能である。経口栄養補助食品とがん患者に関連する研究では、主に魚油/オメガ3脂肪酸を含む製品に重点が置かれている。[ 14 ][ 15 ][ 16 ]38の研究を対象とした系統的レビューで、進行がんにおける悪液質の治療に対する魚油(栄養補助食品または成分強化経口栄養ドリンク)の有益性を支持する証拠は得られなかった。[ 17 ]1件のランダム化試験で、エイコサペンタエン酸(EPA)(魚油)が豊富な経口栄養ドリンクの周術期の使用が評価された。切除可能な胃がんの患者では、補給は術後の体重減少または合併症発生率を変化させなかった。[ 18 ]

魚油のみを含むサプリメントでは悪液質または手術後の回復に有益性はみられないようであるが、魚油のほか、アルギニンおよびヌクレオチドを含む免疫賦活(IE)フォーミュラの研究では消化管の手術を受けた個人に対して有益性が示唆されている。2012年のコクランレビューにより、消化管の手術前にIE経口サプリメントまたは経腸栄養を投与した場合に、術後の合併症および感染症が有意に減少したことが明らかにされた。[ 19 ]ランダム化比較試験に関する2015年のベイズネットワークのメタアナリシスでもまた、IEフォーミュラを術前に用いた場合に術後の感染性合併症の減少が実証された。術前および術後の両方での使用の研究により、非感染性合併症と入院期間の長さも低下したことが明らかにされた。[ 20 ]

経口栄養補助食品の長期使用は、味覚疲労および推奨に対するコンプライアンス悪化をもたらす可能性があるとの懸念がある。経口栄養補助食品のコンプライアンスに関する系統的レビューによると、コンプライアンスは良好で、特に高エネルギー密度の補助食品で顕著であることが示唆された。[ 21 ]本レビューの弱点は、評価した研究のほとんどでコンプライアンスが主要転帰変数ではなく、解析には個々の被験者のコンプライアンスではなく、むしろ被験者の集団から平均した結果が含まれ、がん患者を対象とした研究はわずか11%であったことである。

経口補助食品で栄養摂取の目標に達しなかった場合、患者の栄養状態および全体の薬物治療計画の枠内で経腸および/または非経口栄養を考慮できる。[ 22 ][ 23 ]

栄養支持

栄養支持は、経口摂取を迂回して栄養を届けるものである。栄養支持を考慮する前に、経口摂取によって患者を維持し、その状態を改善するために、あらゆる手段が講じられる。

腫瘍学集団における経腸および非経口栄養の使用は、腫瘍の部位または重度の副作用のために経口栄養戦略が不可能または失敗した場合に適応となる可能性がある。標準治療として、栄養支持は推奨されないが、栄養不良で、長期間にわたって十分な栄養が経口で摂取できなくなると予想される患者に有益な可能性がある。[ 22 ][ 23 ]栄養支持を使用すると、腫瘍増殖および転移が刺激される懸念があるが、ヒトを対象とした研究は限られており、相反する結果が示されている。しかしながら、栄養支持が臨床的に適応となる場合は、腫瘍促進についての懸念のために保留すべきではない。[ 22 ][ 24 ]

ほとんどの例で経腸栄養が非経口栄養より望ましい。経腸栄養は、消化管の使用を継続し、非経口栄養よりも、感染合併症を伴うことが少なく、多くの場合で投与が容易で、費用効果的である。[ 22 ][ 24 ][ 25 ]経腸栄養は、消化管の機能不全、吸収不良状態、機械的閉塞、重度の出血、重度の下痢、難治性嘔吐、経腸チューブではバイパスが困難な部位の消化管瘻、長期の腸閉塞や重度の腸炎などの炎症性の腸の突起を認める患者が適応となる。[ 24 ][ 25 ]

栄養支持の適応には以下のものがある:[ 22 ][ 26 ]

化学療法または放射線療法を受ける患者に対してルーチンで栄養支持を行うことは推奨されない;むしろ、栄養支持は上にリストアップした基準のいずれかを満たす患者に対するものである。経口摂取が不十分な期間または吸収不良の期間が長く、栄養支持から利益が得られる患者を知ることはときに困難である。[ 26 ]頭頸部への放射線療法を受ける患者に対して、研究者は、栄養欠乏症のリスクがあり、そのために前もって胃瘻管を留置する患者を決定するための証拠に基づくプロトコルについて検証を行っている。[ 27 ][ 28 ]

積極的な栄養支持により進行がん患者の生活の質が改善することが示されているが[ 29 ]、余命が40~60日に満たない場合は一般的に推奨されない。[ 22 ]治癒が望めない疾患で、がんに対する治療を受けている患者で、腸閉塞を起こした場合などの一部の患者に対しては、栄養支持が適切な場合がある。[ 29 ]

研究者は、進行疾患患者における栄養支持の保留に対して以下の追加の基準を提案している:[ 29 ]

経腸栄養の経路および投与

経腸栄養の送達には、効果的な方法がいくつかある。経腸栄養の経路選択に影響を及ぼす因子には、以下がある:

必要性の評価は、早期に実施するのが最もよい。栄養不良の患者が関係のないイベントで手術を要する場合は、その時点で栄養チューブを留置して追加の処置を省くことができる。

短期の栄養法

短期(2週間未満)の栄養法に対しては、経鼻腸管が最善の場合がある。以下に示すチューブの適切な終端の決定では、吸引のリスクが考慮される:

チューブはシリコンまたはポリウレタンからできており、長さは30~43インチ(約76~109cm)までさまざまで、経鼻胃栄養法では短いチューブが使用される。カテーテルの直径は5~16F(1.7~5.3mm)である。チューブは、消化管内で通過しやすいように先端に重りを有することがある。がん患者の吸引リスクが非常に高いと、経腸栄養法が禁忌となる可能性があり、その場合は非経口栄養法を考慮できる。 免疫機能が低下した患者で、粘膜炎、食道炎、および/または口腔もしくは咽喉にヘルペス、真菌、またはカンジタ症の病変が認められる場合は、経鼻腸管の留置に耐えられないことがある。[ 24 ]

長期の栄養法

長期(4週間を超える)の栄養法に対しては、腸への直接アクセスが推奨される。内視鏡、手術、またはインターベンション放射線学による蛍光透視を用いて、経皮的にチューブを留置することができる。

経皮的チューブの留置には、以下に示す多くの利点がある:[ 24 ]

長期の支持が予想される場合は、薄いボタン型胃瘻造設術または空腸瘻造設術への変更も考慮できる。[ 24 ]

投与方法およびフォーミュラ

投与方法には、消化管におけるチューブ終端の位置に応じてさまざまなものがあり、治療の副作用によって影響を受けることもある。

胃にチューブ終端がある場合は、ボーラス法または間欠(重力)滴下が可能で、正常な栄養補給によく似ており、必要な時間と装置が少なく、患者に対する適応性が良好なため望ましい。十二指腸または空腸にチューブ終端がある場合は、投与速度を遅くする必要があるため、注入ポンプが必要である。ポンプを介した栄養補給では、周期的(1日当たり24時間未満)または連続的に投与できる。[ 24 ]

以下のリストでは、経腸栄養の投与方法に加え、開始時および投与時の考慮事項を要約している。[ 24 ]

経腸フォーミュラの栄養成分および栄養源には、さまざまなものがある。市販で最も入手しやすいフォーミュラは、乳糖を含まないユダヤ教およびイスラム教の戒律に従ったものである。標準/高分子のフォーミュラ製品は、ほとんどの患者に適している。吸収不良で、標準フォーミュラに耐えられない患者または耐えられそうもない患者には、半成分および成分フォーミュラが利用可能である。一部の例では、疾患(腎疾患、肺疾患、および糖尿病)専用フォーミュラが適切な場合があり、利用可能であるが、一般的に標準フォーミュラで「失敗」が明らかになった患者でない限り必要ない。

自然食品を混合したフォーミュラの使用が普及してきている。一部の製品は、市販で利用可能であり、自宅で作れるフォーミュラの処方も公表されている。これらの自宅で混合したフォーミュラの栄養分が適切であること確認するために、栄養士による徹底したレビューが重要である。[ 24 ]

周術期の患者では、免疫賦活フォーミュラの使用を支持する証拠がある。このカテゴリーで最も広く研究されているフォーミュラには、アルギニン、オメガ3脂肪酸、およびヌクレオチドの混合物が含まれている。[ 22 ][ 26 ]これらのフォーミュラを非常に狭い期間に使用すると、手術合併症(感染性および非感染性)の発生率を低減でき、入院期間を短縮できることが研究により示唆されている。[ 19 ][ 22 ][ 32 ]

非経口栄養の経路および投与

非経口栄養が有益かつ適切であると判断される場合は、中心静脈または末梢静脈アクセスを介して投与できる。がん患者の多くは、複数の静脈内投与療法に対応するために、既に中心静脈カテーテルを留置している。中心ラインアクセスをまだ留置していない患者または一定期間にわたりそれを使用しない患者では、末梢カテーテルを留置できる;ただし、末梢静脈ラインを使用しすぎると、血管硬化症を来すことがあるため、それを避けるように注意しなければならない。静脈合併症を最小に抑えるために、末梢からの非経口栄養の使用は制限される。[ 24 ]

非経口栄養は、ブドウ糖(炭水化物)、アミノ酸(タンパク質)、および脂肪乳剤(脂質)に、電解質、ビタミン、および微量の栄養成分を加えた混合物である。非経口栄養の管理には、栄養支持の専門知識がある医師を含めるとともに、登録栄養士および臨床薬剤師を含む集学的チームから構成されることが推奨される。[ 33 ]

非経口栄養は典型的に24時間点滴として開始される。忍容性が確立され、一般的には日々の多量栄養素の目標が達成された後に、非経口栄養をサイクル化できる(典型的には10~14時間の点滴時間に)。自宅で非経口栄養を受ける患者では、周期的な点滴が望ましい。[ 24 ]非経口栄養を自宅ではなく病院で開始することが一般的に推奨される。自宅で開始する有益性がリスクをはるかに上回る場合にのみ検討するとともに、血行力学的に安定しており、リフィーディング症候群のリスクが低く、糖尿病でない患者に対してのみ検討すべきである。[ 34 ]

がん関連の悪液質および体重減少の薬剤管理

多くの治療法が悪液質-食欲不振症候群(CAS)に対して提案されているが、おそらく多因子性の機序が関与しているため、これらの治療法によって一貫した改善が得られるものはほとんどない。[ 35 ][ 36 ][ 37 ]治療では、炭水化物、脂質、およびタンパク質の代謝における代謝障害を逆転させて、付随するカロリー摂取の低下を治療する必要がある。[ 38 ]ほとんどの研究ではCASに関連した多因子性の問題の一部を標的にした単一の薬物について研究しているが、多くの研究者によって多剤アプローチの方が有益である可能性が提唱されている。[ 38 ][ 39 ][ 40 ]選択された薬物の要約を表6に掲載している。

食欲刺激薬

治療のために広く研究されている最初の問題は、CASに伴う食欲不振となっている。食欲および結果としてのカロリー摂取を改善する薬物の使用は広く研究されており、これらの薬剤には、コルチコステロイド、プロゲステロンアナログ、アンドロゲン、カンナビノイド、シプロヘプタジンが含まれる。

コルチコステロイド

おそらく、がん性悪液質の管理のために研究された最初期の薬物はデキサメタゾンおよびプレドニゾロンである。抗炎症、抗悪性疾患、および制吐作用の特性のためにがん治療で用いられるステロイドは、おそらく視床下部に影響するために食欲増進や体重増加といった副作用を引き起こす。

数件の大規模プラセボ対照研究により、この設定におけるステロイド使用に関連して食欲増進および体重増加が示されている。[ 41 ]しかしながら、CASに対する緩和効果は一般的に短期間であり、長期の使用は筋肉への異化作用の促進、ミオパチー、関節疾患、高血糖、および高血圧といった重大な副作用に関連している。[ 42 ][ 43 ]

プロゲステロンアナログ

ステロイドと同様に、プロゲステロン拮抗薬は、AIDS関連悪液質およびCASを有する患者における食欲と体重を改善する上で有効である。[ 44 ][ 45 ]プロゲステロン拮抗薬はまた、筋肉異化作用も改善しうる。腫瘍に罹らせたラットの研究では、酢酸メゲストロールの使用により、筋消耗の逆転および身体機能の改善が得られた。[ 46 ][ 47 ]しかしながら、ステロイドと同様に、臨床試験では改善は、除脂肪体重および生活の質の付随する改善を伴わない脂肪と水分量の一過性の増加であることが示された。[ 48 ][ 49 ]

3,963人の患者に関する35試験のコクランレビューでは、CASを治療するために160~800mg/日の用量で使用するメゲストロールについて報告された。[ 50 ]一貫して示された唯一の有益性は体重増加および食欲の改善であった。除脂肪体重、生活の質、または疲労に関係した他の結果について決定的な結論は導き出せなかった。生存における改善は示されなかった。[ 50 ]

1件のプラセボ対照研究では、5%を超える体重減少が認められた小児26人において7.5mg/kg/日の用量の酢酸メゲストロールが調査された。メゲストロール投与群での体重増加の平均は19.7%であったのに対し、プラセボ群では1.2%(P = 0.003)体重が減少した。[ 51 ]メゲストロールはまた体重減少の予防についても研究されているが、ここでも生活の質、除脂肪体重、または生存における改善は実証されなかった。[ 46 ][ 52 ][ 53 ]血栓塞栓性イベントが増加する可能性、性ホルモン調節不全、および視床下部-下垂体軸の抑制(その結果、症候性副腎機能障害に至る)についての懸念も起こっている。[ 54 ]

カンナビノイド

HIV関連悪液質において食欲への効果および潜在的な利益のために、CASにおけるカンナビノイド使用への関心が集まっている。[ 55 ]しかしながら、469人の患者を対象にドロナビノール単独 vs 酢酸メゲストロール単独 vs ドロナビノール + 酢酸メゲストロールを比較した研究では、ドロナビノールは酢酸メゲストロールに劣っており、これらの薬物を併用した場合に追加効果は認められなかった。[ 56 ]243人の患者を対象にドロナビノールとプラセボを比較したヨーロッパの類似の試験でも有益性は示されなかった。[ 57 ]大麻およびカンナビノイドに関する詳しい情報については、大麻(カンナビス)とカンナビノイドに関するPDQ要約を参照のこと。

シプロヘプタジン

シプロヘプタジンは抗ヒスタミン薬として開発されたセロトニンおよびヒスタミン拮抗薬である。副作用には、食欲増進および体重増加が挙げられる。[ 58 ]シプロヘプタジンはほとんどの場合、食欲不振および体重減少に関連した広範な障害がみられる小児において研究されており、多くの研究で体重における有意な改善が得られることが示されている。[ 59 ][ 60 ][ 61 ]

CASの小児におけるシプロヘプタジン使用の研究では、ある研究者グループで5%を超える体重減少がみられた66人の患者が評価された。[ 60 ]小児は0.25mg/kg/日の用量でシプロヘプタジンを投与された。体重増加がみられるか、それ以上の体重減少がみられないことにより、76%の患者が奏効者に分類された。患者はまた血清レプチン値の有意な増加も示した。[ 60 ]レプチンは脂肪細胞により産生される蛋白ホルモンであり、体重、特に体脂肪に関連している。血清レプチンの増加は肥満指数の増加と相関している。[ 60 ]

抗炎症薬

CASは多因子性の障害であり、進行がん患者の50%以上に発生する。がんに関連したサイトカイン-腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-1など-の増加は、この障害の病因において重要であることが示されている。[ 62 ]がんとともにみられるサイトカインの増加を阻害する医薬品が、CASの患者で研究されている。[ 63 ][ 64 ][ 65 ]多数の試験で、魚油にみられるオメガ3脂肪酸の一種であるEPAが用いられている。[ 66 ]しかしながら、メタアナリシスではCASにおける一貫した改善を示すことができていない。[ 17 ]同様に、非ステロイド性抗炎症薬を用いた研究に関する数件の文献の系統的レビューでも、効力の確実な証拠を示せていない。[ 67 ][ 68 ]

特異的な標的薬物も研究されている。これには、エタネルセプト、インフリキシマブ、ペントキシフィリンなど、TNF-αを標的にした薬物が含まれるが、小規模試験では重大な影響が示されていない。[ 69 ]

TNFに対する非特異的拮抗薬の1つであるサリドマイドを用いた数件の研究が実施されている。[ 70 ][ 71 ][ 72 ][ 73 ][ 74 ]サリドマイドは、免疫調節特性のためにCASに対する治療法の1つとして関心が寄せられている。[ 71 ]1件の単一施設の二重盲検試験で、少なくとも体重が10%以上減少した膵がん患者50人が24週間にわたってサリドマイド200mgまたはプラセボを投与されるようにランダムに割り付けられた。サリドマイド群の患者では、プラセボ群の患者と比較して体重減少が統計的に有意に減少した。[ 73 ]サリドマイド100mgの用量に関する同様の規模の試験では、有意な治療効果を実証できなかった。[ 71 ]また、この話題に関するコクランレビューでは、進行がん患者におけるサリドマイドの使用を支持するには証拠が不十分であると報告された。[ 75 ]

関心が寄せられている他の薬物

CASを管理するためにいくつか他の薬物に関心が寄せられており、それにはミルタザピン[ 76 ]、メトクロプラミド、ホルモテロール、メラトニン、オランザピンなどが挙げられる。[ 44 ][ 77 ][ 78 ][ 79 ]しかしながら、これらの使用を支持する完了した臨床試験はない。

併用療法

CASの発症には多因子性の病因があり、複数の機序が関与していることから、作用機序の異なる複数の薬物を併用することでより大きな効力が得られる可能性がある。[ 80 ][ 81 ]1件の研究において、CASを診断された患者332人が次の5つの治療群の1つにランダムに割り付けられた:メドロキシプロゲステロン単独;EPAによる経口補給;L-カルニチン;サリドマイド;または4つすべての薬物の併用。[ 74 ]研究者らにより、除脂肪体重、安静時エネルギー消費、および疲労が調査された。この研究で、併用群が優れていることが明らかにされた。別の試験では、婦人科悪性腫瘍の女性104人を治療するためにメゲストロール単独 vs メゲストロール + L-カルニチン、セレコキシブ、および抗酸化物質が用いられた。[ 80 ]ここでも、併用群が優れていることが明らかにされた。

研究者らはまた、13人の患者において蛋白同化性β-2アドレナリン作動薬のホルモテロールと酢酸メゲストロールの併用についても調査した。評価可能な患者7人中6人は大奏効を達成し、筋肉量が増加した。[ 44 ]これとは逆に、メゲストロール + メロキシカム vs メロキシカム + EPA vs メゲストロール + メロキシカムおよびEPAについて調査した別の研究は、3剤レジメンの優位性を示さなかった。[ 82 ]しかしながら、このような併用もまた蓄積毒性の増加を引き起こしうる。このような理由から、現在のところ推奨される併用はない。また、薬物療法と栄養支持および身体活動の増加を併用することで、さらに大きな効力が得られる可能性がある。

薬物治療戦略の要約

CASはがんおよびその治療の複雑で多因子性の合併症であり、体重減少および除脂肪体重の低下を引き起こす。CASの機序の理解が向上し、こうした提唱されている経路を選択的に標的にする新薬が利用できるようになるにつれて、より効力の高い治療も利用できるようになると期待される。新薬の試験では、類似した患者集団を比較できなければならない。加えて、既にCASに悩まされている患者の治療とは対照的に、高リスク患者における予防的な治療によって、より良好な転帰が得られる可能性がある。最適な治療法を明らかにするには、さらなる臨床試験が必須である。

表6.悪液質-食欲不振症候群に対して一般的に処方される薬物療法a
薬物 用量 コメント 参考文献/証拠レベル
bid = 1日2回;EPA = エイコサペンタエン酸;qid = 1日4回;tid = 1日3回;VTE = 静脈血栓塞栓症。
a出典:Lexicomp Online [ ]および他の参考文献。
プロゲステロン製剤
酢酸メゲストロール 1日160~800mg(最も一般的な用量:400ないし800mg) 160mg/日を超える用量がより良好な体重増加に関連する;800mgが最適な可能性がある。比較研究においてドロナビロールよりも高い有益性が示されている。メゲストロールへのサリドマイドの追加により有益性が増加した。 [ ][証拠レベル:I];[ ][証拠レベル:I]
メドロキシプロゲステロン 500mgを1日2回 食欲改善および体重増加の刺激が得られた。VTE関連死に注意すべきである。 [ ][証拠レベル:I]
グルココルチコイド
デキサメタゾン 0.75mgを1日4回 メゲストロールでみられるものと同様の有益性。 [ ][証拠レベル:I]
メチルプレドニゾロン 16mgを1日2回 小規模試験(N = 40);食欲増進、ただし体重の変化は無視できる。 [ ][証拠レベル:I]
プレドニゾロン 5mgを1日3回 プラセボよりも短期間の食欲改善が得られるが、体重増加を伴わなかった。 [ ][証拠レベル:I]
カンナビノイド
ドロナビノール 2.5mgを1日2回、1日最大20mg 分割投与される;1日2回が最も一般的である。メゲストロールに追加しても有益性は示されていない。1件の研究でプラセボと同等であると示された。 [ ][証拠レベル:I];[ ][証拠レベル:I]
抗ヒスタミン薬
シプロヘプタジン 2mgを1日4回、1日最大16回 1日24mgまでの用量で使用されている。食欲を増進するが、成人においては体重減少を軽減できない可能性がある。小児では食欲および体重増加の両方が改善された。 [ ][証拠レベル:I];[ ][証拠レベル:II];[ ][証拠レベル:II]
抗うつ薬/抗精神病薬
ミルタザピン 1日15~30mg 24%の患者で、体重が1kg以上増加した。 [ ][証拠レベル:II]
オランザピン 1日20mg 用量漸増試験;体重減少の軽減についてわずかな効果。 [ ][証拠レベル:II]
抗炎症薬
メラトニン 1日20mg 試験は無益のため中止された。プラセボと比較してメラトニン群では10%を超える体重減少が認められる患者が有意に少なかった。 [ ][証拠レベル:I];[ ][証拠レベル:I]
オメガ-3脂肪酸 EPA、1.09gを1日2回 メゲストロール、両者と比較して体重または食欲の改善なし。 [ ][証拠レベル:I]
毎日10カプセル(EPA、1日1.8g) プラセボと比較して食欲の改善なし。 [ ][証拠レベル:I]
EPA、1日4.4g 治療に関する遵守率は低い。用量-反応の事後解析では、EPAサプリメントにより除脂肪体重の改善が示唆されている。 [ ][証拠レベル:I]
ペントキシフィリン 400mgを1日3回 体重増加または上肢周囲への効果はみられない。 [ ][証拠レベル:I]
食欲の改善はみられない。 [ ][証拠レベル:I]
サリドマイド 1日100mg プラセボと比較して有意差はみられない。 [ ][証拠レベル:I]
1日200mg 8週間経過時にサリドマイドを投与された患者は、プラセボを投与された患者よりも体重減少が有意に少なかった。 [ ][証拠レベル:I]
蛋白同化薬
オキサンドロロン 分割投与で2.5~20mg、1日2~4回 がん患者においては研究されていない。 [ ][証拠レベル:IV]
フルオキシメステロン 10mgを1日2回 デキサメタゾンおよび酢酸メゲストロールよりも劣っている。 [ ][証拠レベル:I]
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進行または末期がんにおける栄養

進行疾患の患者では、疾患進行、治療、またはその両方に関連する栄養関連の副作用が新たに発現したり、悪化したりすることが多い。治癒が見込めないがん患者における有症状率に関する大規模な系統的レビューによると、最も多くみられる栄養に影響する症状は、以下の通りであった:[ 1 ]

これらの症状は、さまざまな設定で医療を受けている患者の大きなサブセット、および2週間以内に死が迫った患者の小さなサブセットで認められた。緩和ケア入院病棟[ 2 ][ 3 ]、がん悪液質専門クリニック[ 4 ]、ホスピス、またはホスピス以外の環境[ 3 ]で医療を受けている進行がん患者にみられる他の症状には、以下があった:[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ]

さらに、疼痛およびオピオイド誘発性便秘(OIC)を有する進行がん患者は、OICに関連する肉体的苦痛と精神的苦痛の両方を報告した。[ 5 ]

抗腫瘍療法に反応を示さない非常に進行したがんまたは急速に進行した疾患の結果として、臨床的に難治性の悪液質が発生する。これには、栄養療法に反応を示さない活動性の異化亢進および体重減少を伴う。終末期の患者では、正常な臨終過程の一部として、しばしば飲食物の経口摂取が重度に制限される。[ 6 ][ 7 ]

進行がん患者における栄養介入の主要目的は、考えうる最善の生活の質を保持するか、回復させ、苦痛をもたらす栄養関連の症状があれば、それをコントロールすることである。[ 7 ]しかしながら、進行がん患者に対する栄養および水分補給に関連する問題は、患者とその家族および患者と医療チームとの間の対立の原因になる場合がある。[ 7 ]医療提供者は、末期がんにおける悪液質の自然経過に取り組み、がん性悪液質-食欲不振との感情的な関わり合いに患者が対処するのを助ける必要が生じる場合がある。[ 8 ]

進行がんにおける栄養療法の目標

進行がん患者に対する栄養の目標は、全体の医療計画によって変わる場合がある。このような患者は、がんに対する治療を受ける場合(緩和ケアを同時に行う場合も行わない場合もある)、緩和ケアのみを受ける場合、またはホスピスに登録される場合がある。ケアの設定にかかわらず、患者に対する栄養介入の必要性を判定するスクリーニングを行う。Patient-Generated Subjective Global Assessment(PG-SGA)は、がん患者で有効性が確認されており、体重変化の記録、食物摂取、症状、および機能状態に対処している。[ 9 ][ 10 ]緩和ケアを疾患経過の早期に開始する場合、栄養の目標は、有効な治療の支援に重点を置き、治療転帰、身体組成、身体機能、および症状緩和の改善を目指す。

がんの状態を変化させる治療からホスピスまたは終末期医療へケアの焦点が移行するのに伴い、栄養の目標は、より消極的になり、緩和へ重点が移行する。緩和ケアまたはホスピスケアのサービスを受ける患者のニーズ変化を満たすためには、一連の経過を通して栄養の目標および介入の持続的な評価および調節が必要である。[ 9 ]

進行がんにおける栄養介入

患者、家族、または介護者が人工栄養と水分補給を要請し、介入によって基礎疾患から回復したり、感知できるほどの利益が得られたりする見込みがない場合、倫理的問題が生じることがある。患者が人工栄養、水分補給、またはその両方から利益が得られるかどうか確実ではない場合、時間を限った試行が有用なことがある。時間限定試行の開始時に、明確で測定可能なエンドポイントの要点を明らかにしておく。介護チームは、他の薬物療法と同様に、期待される栄養の効果が得られない場合、人工栄養および水分補給を停止できることを説明する。[ 11 ]

正式な緩和ケアを受けるがん患者を対象とした経腸または非経口栄養のランダム化比較試験はない。[ 12 ]利用可能なエビデンスおよび専門家のコンセンサスに基づいて、臨床ガイドラインでは、進行がんにおける栄養支持療法の使用をきわめて慎重に選択された患者に限定するように推奨している。[ 13 ][ 14 ]非経口栄養に好ましい反応を示すことが確認されている患者には、以下の患者が含まれる:[ 15 ][ 13 ][ 16 ]

患者が非経口栄養から利益が得られるようになるには、自身のケアに参加する肉体的および精神的能力があり、以下を満たす必要がある:[ 13 ]

余命が40日に満たない患者は、自宅での静注輸液療法により緩和が得られる可能性があるが、この実施には異論がある。[ 13 ]

終末期の栄養での考慮事項

患者と介護者は、飲食物の補給を基本的ケアであるとみなすことが多い。しかしながら、終末期における人工栄養および水分補給の使用は、臨床的、文化的、宗教的、倫理的、および法的な因子により影響を受ける複雑で異論の多い介入である。患者および家族は、これらの介入の使用により生活の質および生存期間が改善すると考えていることが多いが、明確な有益性を示す証拠はない。[ 12 ][ 17 ]このケアに伴う潜在的な負担もあり、以下のものがある:

さらに、人工栄養および水分補給を受けていて激越または錯乱を示す患者では、胃瘻管、経鼻胃管、または中心静脈ラインを患者が取り外すことを防ぐために、物理的に拘束する必要が生じる場合がある。[ 18 ]

終末期で、嚥下困難が悪化している患者では、薄い飲料よりも濃い飲料を使用することで吸引のリスクが低下する。[ 7 ]口渇は、少量の水、氷片、および良好な口腔ケアにより軽減できることが多い。死の数日前では、嚥下の問題の発生率が79%と高くなることがあり、これらの問題には、頻繁な咳、食欲不振、および口腔分泌物による問題がある。[ 19 ]医療チーム内でのコミュニケーションおよび家族と介護者の支援は、飲食物の摂取減少に関連する苦痛を緩和し、非現実的な期待を取り除く上で重要である。[ 7 ]

終末期の患者に対する栄養療法の目標は、栄養不足を解消することよりも、症状を緩和することに向ける。食物を味わう楽しみおよび家族や友人と食事に参加する社会的有益性の方がカロリー摂取の増加よりも強調されることがある。[ 6 ]死の1週間前におけるがん患者に対する実践および効果に関する系統的レビューによると、人工栄養の使用を支持する研究はなく、人工水分補給に関する研究は、結果が相反していた。[ 20 ]水分補給に関して肯定的な効果を示した研究では、慢性的な吐き気および脱水の身体的徴候が少ないことが報告され、否定的な効果を示した研究では、腹水および腸ドレナージが多いことが明らかになった。その他の研究で、末期のせん妄、口渇、慢性的な吐き気、または水分過負荷に対する効果は認められなかった。[ 20 ]

うまくデザインされたランダム化試験によると、1週間当たり1L/日の水分補給によっても脱水症状(疲労、ミオクローヌス、鎮静、幻覚)は改善されず、生活の質および生存に有益性は得られなかったことが報告された。[ 21 ]日本の終末期における非経口水分補給に対する栄養ガイドラインのプロスペクティブ評価によると、有害性または有益性はわずかであることが示唆される;しかしながら、患者は高い満足度を表明し、有益であったと考えた。[ 22 ]その後の日本のガイドラインを利用した研究では、水分補給関連の症状(吐き気、浮腫、呼吸困難、腹痛/膨満)が著しく改善し、生活の質、全般的満足度、および有益感も同様であった。[ 23 ]

American Academy of Hospice and Palliative Medicineは、終末期に近い時点で人工栄養および水分補給の効果について、医師、その他の医療専門家、患者、および家族との間で、お互いを尊重した情報に基づく話し合いを医療提供者が促すように提案している。[ 11 ]人工栄養および水分補給の実施、継続、または中止を検討している場合に存在する選択肢を説明し、患者および/または代理の意思決定者とともにケアの目標を確立することは、医師およびその他の医療提供者に課せられた義務である。理想的には、特定の医学的介入を患者が受け入れたり、見送ったりできる法的および倫理的基準に沿って、可能性のある有益性と負担の慎重な評価に基づいて患者自身が意思決定を行う。[ 11 ]

進行がんで医学的に支援された栄養および水分補給における倫理的、文化的、宗教的問題

終末期の患者に対して人工栄養および水分補給を行うかどうかの決定は複雑で、倫理的、法的、文化的、および臨床的な考慮事項、ならびに患者と家族の優先により影響を受ける。死亡自体のイベント、その発生状況、および患者の生活の質は、関与する人それぞれにとって、霊的で心理的な結果を及ぼす重大な問題である。[ 24 ]

水分補給および栄養支持を見送るか、中止するかどうかについての倫理的考慮事項に関するガイドラインは、以下を含めて、多くの組織から公表されている:

これらのガイドラインは、生命を救う水分補給および栄養法を拒否する判断能力のある個人の権限および自由、医学専門知識の役割、ならびに患者と家族の尊厳および価値観への敬意を支持している裁判所の判決を反映している。(詳しい情報については、人生の最後の数日間に関するPDQ要約における人工水分補給および人工栄養のセクションを参照のこと。)

宗教および宗教的伝統は、生命イベントに関する核となる一連の信条および臨床上の意思決定に対する倫理的基盤を与える。[ 24 ]主要宗教の基本理念は、死と臨終に関する見通しを与えるが、人工栄養および水分補給に関連する意思決定は、依然として複雑で、同じ主要宗教内または信仰的伝統内でもさまざまである。

最適で包括的な回復環境を提供するためには、緩和チームのすべてのメンバーが自身の霊性に加えて、それが仲間のチームメンバーの霊性および担当する患者と家族の霊性とどの程度異なるかを把握している必要がある。[ 29 ][ 30 ]National Consensus Project for Quality Palliative Careにより確立された臨床診療ガイドラインでは、ケアの霊的、宗教的、および実存主義的側面に取り組んでいる。[ 30 ]ある研究グループ[ 24 ]は、ローマカトリック教、ユダヤ教、仏教、およびイスラム教の信仰的伝統により保持された理念および視点についての洞察結果を提供しており、別のグループ[ 31 ]は、治療の中止および死が訪れるときの判断に関する倫理的決定を世界的な宗教がどのように形成するかについて、広範な解析を提供している。

宗教的信念は、しばしば文化的視点に密接に関係している。特定の伝統の中で生活している人は、信仰やその実践をやめたとしても、その伝統により影響を受け続けていることがある。[ 31 ]一部の文化で、個人の自主性は、優勢または支配的な理念ではない;アジア、ネイティブアメリカン、ヒスパニックの一部の文化では、家族またはコミュニティの自主性が好まれる。[ 26 ]多数派文化と少数派文化との区別は重要である。人は病気を解釈し、それに対処する重要な手段として、宗教および霊性に頼ることがある。[ 32 ]

人工栄養および水分補給に関する宗教的および文化的選好は、患者の自主性の表現であり、多くの例で臨床的考慮を上回ることがある。このような価値観が臨床的判断と対立する場合、医師は、施設内倫理員会に加えて、信仰のリーダーおよび患者が属する民族コミュニティと相談する際に患者および/または代理人と協働して、解決を促すことができる。[ 26 ][ 27 ]

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がん患者における食事に起因する病気のリスク低減

好中球減少症での食事制限に関連する慣行が広範にわたっていることは、がん患者の感染性合併症の予防における食事制限の有効性に関する証拠が欠けていることを反映している。食事制限に対するさまざまなアプローチを評価した研究では、明確な有益性が示されていない。

がん患者における感染率および死亡率に対する好中球減少症での食事制限の有効性を評価した文献のメタアナリシスおよび系統的レビューでは、好中球減少症のがん患者で好中球減少症での食事制限を行っても、通常の食事を上回る優越性または利点がないことが明らかになった。[ 1 ][ 2 ]このメタアナリシスでは、4件の研究が特定され、内訳は観察研究が1件、ランダム化比較試験が3件で、がん患者または幹細胞移植を受けた患者918人が含まれていた。本解析から観察研究を除外した場合でも、結果は一貫していた。[ 1 ]系統的レビューでは、3件のランダム化比較試験[ 3 ][ 4 ][ 5 ]のみが特定され、小児および成人192人を対象に異なる食事が比較された。本レビューでは、これらの個々の研究によっても、低細菌食を使用すると感染が予防されることを示す証拠が得られなかったと結論付けられた。[ 2 ]

他の研究で、好中球減少症での食事制限による有害作用の可能性が明らかにされている。ある研究者グループ[ 6 ]は、造血細胞移植(HCT)を受けた患者726人を対象としたレトロスペクティブレビューを実施した。好中球減少症での食事制限を受けた患者363人では、黒コショウ、よく洗浄した果物および野菜を許可し、生のトマト、植物の種子、およびナッツを除去した一般の病院食を受けた患者363人よりも、感染確定例が著しく多く認められた。この感染率の差は、好中球減少症の回復後が特に著明であった(P < 0.008)。好中球減少症での食事制限群は、原因が消化管起源と考えられる感染の割合が著しく高く、同様にバンコマイシン耐性腸球菌感染の割合が高い傾向がみられた。[ 6 ]

免疫機能が低下したがん患者における食事に起因する感染の防止に必要な食事制限を定義する臨床的証拠がないため、食品の安全性に対する推奨は、一般的な食品安全性ガイドラインおよび病原性微生物を含む可能性が高い食品の回避に基づいている。これらのガイドラインの有効性は、患者および介護者の安全な食品の取り扱い方法、ならびに高リスクの食品の回避に関する知識およびその遵守に依存する。主要ながんセンターは、HCTを受けた患者に対するガイドラインや、食品の購入、保管、および準備に関連する食品安全性実習を提供している(例、University of Pittsburgh Medical CenterのStem Cell Transplant DietおよびMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのLow-Microbial Diet)。米国農務省の食品安全検査局(Food Safety and Inspection Service)および米国食品医薬品局ががん患者および移植患者向けに作成した包括的食品安全性情報もオンラインで利用可能である。[ 7 ][ 8 ]患者は、FoodSafety.govに定期的にアクセスして、不良食品回収および警告に関して日々更新される情報について知ることができる。

推奨では、表7に示すように、安全な食品取り扱い手順を用いて、感染リスクの高い食品を回避することを支持している。

表7.食事に起因する感染を予防するための食品の考慮事項a
食品群 食べてもよい 食べてはならない
a出典:Tomblyn et al.[ 9 ] and Lund.[ 10 ]
b調理済みのソフトチーズを食べても全くリスクがないわけではないが、食事に起因する病気のリスクは低い。
cバナナ、オレンジ、およびメロンなど、調理したり、皮をむいたりする農産物を含め、使用する前に清潔な水道水で洗う。
d常温保存可能なものは、未開封であれば室温で保存できる未開封の缶詰、瓶詰、またはパック食品である;開封した後は容器の冷蔵庫保存を要するものがある。
e水道水を煮立たせ、15~20分間沸騰させる。沸騰済みの水を冷蔵庫で保存する;48時間後に未使用の水は破棄する。造血細胞移植を受けた患者は、細菌汚染の検査がごくまれにしか行われないため、私設井戸または人口の少ない地域の公衆井戸からの水を使用しないことが勧められる。
f人口密度の高い都市の水道局から供給される水道水は、細菌汚染について1日に2回を超える検査が行われる。水道水は必ず飲む前に1分超沸騰させるべきだという「水道水の煮沸勧告」に関するメディアの注意喚起に耳を傾ける。さらに、直径が1μmを超える粒子を除去できる家庭用浄水器、または逆浸透による浄水器を使用して、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)への接触リスクを低減させる。
g米国食品医薬品局の標準に適合し、逆浸透、蒸留、または1μm粒子の絶対濾過によりCryptosporidiumを除去する処理がなされているのであれば、ボトル水が使用できる。ボトル製造業者に直接連絡して、どの処理が使用されているか確認する。水のボトル製造業者への連絡先情報は、International Bottled Water Associationのウェブサイトで利用できる。
乳製品 すべて殺菌されたグレード「A」のミルク、乳製品 未殺菌または生のミルク
乾燥、冷蔵、または凍結された殺菌ホイップ済みクリーム 未殺菌または生のミルクから製造された食品
チェダーチーズ、モッツァレッラチーズ、パルメザンチーズ、スイスチーズ、モントレージャックチーズなど、市販のパック済みハードチーズおよびセミソフトチーズ 調製食品からのチーズ
ブリチーズ、カマンベールチーズ、フェタチーズ、ファーマーズチーズなど、調理されたソフトチーズb 唐辛子または未調理野菜を含むチーズ
市販の無菌哺乳瓶入りおよび液体濃縮の調製乳 ブルーチーズ、スティルトンチーズなど、カビの生えたチーズ
ケソフレスコ、ケソブランコなど、メキシコ風ソフトチーズ
哺乳瓶入りおよび液体濃縮の代替品が利用可能であれば、粉末調製乳
肉および肉加工品 十分に過熱して調理したすべての肉、鶏肉、魚(鶏肉は180°F[82℃]超;その他の肉は160°F[71℃]超) 生または過熱不十分の肉、鶏肉、魚、狩猟肉、豆腐
缶詰の肉 生または過熱不十分の卵(半熟両面焼、半熟ゆで卵、落とし卵)および未殺菌の卵加工品
白身と黄身の両方が固くなるまで料理した卵 調製食品からの冷製スライス肉(コールドカット)
殺菌された卵と卵加工品および粉末にした卵の白身(過熱不十分で使用可能) 天然ケーシングの干しサラミ
市販のパックされたサラミソーセージ、ボローニャソーセージ、フランクフルトソーセージ、ハム、その他のランチミート(湯気を立てるまで加熱) 冷蔵のパテまたはミートスプレッド
缶詰および常温保存可能の燻製魚(開封後冷蔵庫保存) ノヴァスタイル、ロックス、キッパード、スモークド、またはジャーキーと表示されるサケまたはマスなどの未調理の冷蔵燻製海産物
殺菌または調理済み豆腐 魚の酢漬け
160°F(71℃)まで加熱調理した場合または煮物やオーブン鍋料理に含まれている場合は、サケまたはマスなどの冷蔵燻製海産物 テンペ食品
果物およびナッツ類 十分に洗浄したc生および凍結した果物(ベリー類を除く) 洗っていない生の果物
調理済み、缶詰、および凍結した果物 新鮮か、凍結したベリー類
殺菌済みジュースおよび凍結したジュース濃縮物 未殺菌の果物および野菜のジュース
ドライフルーツ 食料雑貨店の冷蔵ケースにみられる新鮮なフルーツサルサおよび未殺菌の生の果物を含む食品
缶詰または瓶詰の焙煎ナッツ類 生のナッツ類
殻付きの焙煎ナッツ類およびベーク製品中のナッツ類 殻に入った焙煎ナッツ類
市販のパックされたナッツバター(ピーナッツ、アーモンド、大豆)
アントレおよびスープ すべて加熱調理されたアントレおよびスープ すべての味噌製品
野菜 よく洗ったc生および凍結の野菜 洗っていない生野菜またはハーブ類
ジャガイモを含め、すべての加熱調理された新鮮、凍結、または缶詰の野菜 食料雑貨店の冷蔵ケースにみられる新鮮な未殺菌の野菜サルサおよび未殺菌の生野菜を含む食品
常温保存可能dの瓶詰サルサ(開封後冷蔵庫保存) すべての生野菜スプラウト(アルファルファ、クローバー、緑豆)
緑豆スプラウトなどの料理済み野菜スプラウト 調製食品からのサラダ
新鮮でよく洗ったcハーブ、ドライハーブ、および香辛料(生または調理済み食品に追加)
パン、穀物、およびシリアル製品 すべてのパン、ベーグル、ロールパン、イングリッシュマフィン、マフィン、パンケーキ、スイートロール、ワッフル、フレンチトースト 生のオート麦のような生の(焼いたり調理したりしていない)穀物製品
ポテトチップス、コーンチップス、トルティーヤチップス、プレッツェル、ポップコーン
パスタや米などの加熱調理した穀物および穀物製品
加熱調理済みでインスタントのすべてのシリアル
飲料 煮沸した井戸水e 煮沸していない井戸水
水道水および水道水から作った氷f 温水または冷水から作った水出し茶
市販の瓶詰の蒸留水、湧き水、および天然水g マテ茶
すべての缶詰、瓶詰、および粉末の飲料 ワイン、未殺菌ビール(注:すべてのアルコール飲料は、医師が承認した場合に使用できる)
インスタントおよび煎じるコーヒーおよびお茶;煮沸した水で作った水出し茶 未殺菌の果物および野菜のジュース
市販のパックされたティーバッグから煎じたハーブティー 哺乳瓶入りおよび液体濃縮の代替品が利用可能であれば、粉末調製乳
液体および粉末のいずれでも市販の栄養補助食品
市販の無菌哺乳瓶入りおよび液体濃縮の調製乳
デザート 冷蔵された市販および手作りのケーキ、パイ、パン菓子、およびプリン 冷蔵していないクリームが詰まったパスティー製品(常温保存可能dではない)
冷蔵されたクリームが詰まったペストリー
手作りおよび市販のクッキー
常温保存可能dのクリームが詰まったカップケーキおよびフルーツパイ
缶詰および冷蔵されたプリン
アイス、アイスポップ、および類似製品
キャンディー、ガム
脂肪 植物油およびショートニング 「乳製品」下で「食べてはならない」として掲載された生卵またはチーズを含むフレッシュサラダドレッシング(食料雑貨店の冷蔵ケースに保存)
冷蔵されたラード、マーガリン、およびバター
市販の常温保存可能dなマヨネーズおよびブルーチーズを含むサラダドレッシングのほか、チーズを基にしたサラダドレッシング(開封後冷蔵庫保存)
加熱調理したグレイビーおよびソース
その他 市販の殺菌済みグレード「A」の蜂蜜 未加工の蜂蜜、ハチの巣の中蜂蜜
塩、グラニュー糖、ブラウンシュガー ハーブ製品および栄養補助食品
ジャム、ゼリー、シロップ(開封後冷蔵庫保存) 未加熱調理の場合、醸造用イースト
ケチャップ、からし、バーベキューソース、醤油、その他の香辛料(開封後冷蔵庫保存)
ピクルス、ピクルスレリッシュ、オリーブ(開封後冷蔵庫保存)
参考文献
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  7. U.S. Department of Agriculture, Food Safety and Inspection Service, U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration: Food Safety for People with Cancer. Washington, DC: USDA and HHS, 2011. Also available online. Last accessed May 1, 2020.[PUBMED Abstract]
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がんにおける栄養の動向

特別食

がんに対する治療を受けながら、十分な栄養を維持することは、治療関連の副作用を軽減し、治療の遅れを防止するとともに、生活の質の維持に役立てるために重要である。[ 1 ]しかしながら、多くの患者は、自らの食事について、治療効果を高めたり、治療関連毒性を最小に抑えたり、がん自体を標的にしたりする手段とみなしており、これらは、がんとの闘いでの有益性を仮定した特別食に従ったり、栄養補助食品を摂ったりすることによって達成されることが多い。患者は、がんリスクを管理し、予後を改善する食事のアプローチについて、インターネットやその他の非専門的な情報源を探す可能性が高い。残念なことに、このような情報の多くが十分な証拠を根拠に支持されたものではない。

以下のセクションでは、最もよく知られた食事および栄養補助食品の主なものについて、その科学に関する現状を要約する。

ベジタリアンまたは完全菜食主義の食事

菜食主義の食事はよく知られており、実践が容易で、注意深く従えば、栄養欠乏症になることはない。菜食主義の食事により多くの種類のがん、特に消化管のがんの発生率が減少することを示す強い証拠がある。[ 2 ]しかしながら、ベジタリアンまたは完全菜食主義の食事に従うことで、治療誘発性症状、がん治療、またはがん治療を受けている患者の転帰にどの程度の影響を与えることができるかは不明である。がん治療および症状の管理に対する菜食主義の食事の有効性について公表された臨床試験、パイロット研究、または症例報告はない。診断時点からまたはがん治療を受けている間にベジタリアンまたは完全菜食主義の食事を採用する有益性を示す証拠はない。一方で、がん治療前にベジタリアンまたは完全菜食主義の食事に従っている患者は、治療開始時点でそれを中止すべきことを示す証拠もない。

あるパイロット研究によると、限局性前立腺がんの男性で植物中心の食事に従うことで、腫瘍進行が防止できることが示唆されている。[ 3 ]このパイロット研究に基づいたランダム化比較試験が有効性を判定するために進行中である。[ 4 ]現在、がん治療におけるベジタリアンまたは完全菜食主義の食事の役割を検討しているその他の臨床試験はない。

マクロビオティックダイエット(長寿食)

マクロビオティックダイエットには、各人の性別、活動レベル、およびその他の変数の中でも、生活している場所の気候(および季節)に応じてさまざまなものがある。健康な生活様式を奨励する哲学的理念から生まれた高炭水化物、低脂肪、植物中心の食事である。この食事は、全粒穀物が35~50%(重量比)、野菜が25~35%、スープが5~10%、調理野菜および海草が5~10%、魚が5~10%を占めている。

がんに対する代替療法としてのマクロビオティックダイエットの有効性に関する事例報告があるが、専門家の査読を経た学術誌で公表されたものはない。この食事をがんに対する補完療法または代替療法として検討した臨床試験、観察研究、またはパイロット研究はない。実際に、この食事とそのがん治療における有効性の証拠に関する2件のレビューでは、がん治療におけるマクロビオティックダイエットの使用で、科学的証拠はないと結論付けられた。[ 5 ][ 6 ]現状での研究は大幅に不足しているため、標準がん治療と併用して、この食事を肯定または否定する推奨は行えない。現在、がん治療におけるマクロビオティックダイエットの役割を検討している臨床試験はない。

ケトジェニックダイエット(ケトン食)

ケトジェニックダイエットは、てんかんの一部症例で有効な代替療法として十分に確立されており、膠芽腫に対する標準治療との併用で注目を集めている。この食事療法の背景にあるがん治療としての理論は、腫瘍が利用可能なブドウ糖を減少させることによって、腫瘍の活動が抑えられ、この活動抑制は、ケトジェニックダイエットの炭水化物制限および脂質摂取増加によりケトーシス状態に移行させることを通して達成できることである。

ケトジェニックダイエットは、遵守が困難で、他の補完・代替医療(CAM)の食事療法よりも強く多量栄養素の正確な割合(典型的に脂肪と炭水化物およびタンパク質の比率が4:1)に依存する。そのため、ほとんどの研究が食事の実現可能性、忍容性、および安全性に重点を置いており、そのいずれの項目も膠芽腫のさまざまな病期の患者で示されている。[ 7 ][ 8 ][ 9 ]

安全性および実現可能性が証明されているため、膠芽腫に対するケトジェニックダイエットの有効性を検討するために、いくつかの試験で患者が募集されている。したがって、膠芽腫と診断された患者がケトジェニックダイエットの開始を希望する場合、登録栄養士のガイダンス下で適切に実施すれば、安全と考えられるが[ 10 ]、症状および疾患管理に対する有効性は依然として不明である。

栄養補助食品

ビタミンC

がん患者に対する治療としての高用量ビタミンCの使用に関する詳しい情報については、高用量ビタミンCに関するPDQ要約を参照のこと。

プロバイオティクス

プロバイオティクスの使用は、がん治療の内外で広がってきている。放射線療法、化学療法、またはその両方による治療期間中におけるプロバイオティクスの補給は、忍容性良好であり、特に腹部に放射線照射を受けた患者で、放射線療法および化学療法誘発性の下痢の予防に有用な可能性が精力的な研究により示されている。[ 11 ][ 12 ][ 13 ]そのため、患者が腹部に放射線照射を受ける場合または多くみられる副作用として下痢を伴う化学療法薬の投与を受ける場合は、治療開始時点からプロバイオティクスの補給を開始することが有益な可能性がある。

メラトニン

メラトニンは、内生的に産生されるホルモンで、主に固形腫瘍に対して、腫瘍活性を標的とし、治療関連症状の低減を目的に、CAMの補給として(化学療法または放射線療法とともに)使用されている。

いくつかの研究で、化学療法単独を対照として経口メラトニンと併用した化学療法に対する腫瘍反応またはそれによる疾患制御が示されている;1件の研究では、放射線療法と併用したメラトニンによる腫瘍反応が示されている。[ 14 ][ 15 ][ 16 ][ 17 ][ 18 ][ 19 ]実際に、メラトニンと化学療法を併用すると、最大5年間で化学療法単独と比較して生存期間が延長する場合がある。しかしながら、別の研究では、メラトニンによる生存延長が示されなかったが、生活の質の改善は確かに実証された。[ 20 ]

化学療法と同時にメラトニンを服用すると、治療を遅らせ、用量の減量を必要とし、生活の質に悪影響を及ぼす可能性のある一部の治療関連副作用および毒性の低減および予防に役立つ場合がある。メラトニンの補給に伴い、神経障害および神経毒性、骨髄抑制、血小板減少症、心毒性、口内炎、無力症、倦怠感に著しい減少がみられている。[ 15 ][ 16 ][ 18 ][ 21 ]しかしながら、1件の研究で、毒性の低減または生活の質の改善に対してメラトニン服用による補給の有益性は認められなかった。[ 22 ]

全体として、いくつかの小規模な研究で、腫瘍反応の補助および毒性の低減のために固形腫瘍の治療に対する化学療法、放射線療法、またはその両方と併用したメラトニン補給を支持する証拠がいくつか示されている一方で、メラトニン補給で有害な副作用は認められていない。したがって、進行固形腫瘍患者に対して化学療法または放射線療法と併用して経口メラトニンを投与することは、適切な可能性がある。

経口グルタミン

グルタミンは、特に消化管粘膜細胞およびその複製に重要なアミノ酸である。これらの細胞は、化学療法および放射線療法により損傷を受けることが多く、粘膜炎および下痢を引き起こし、治療の遅れおよび用量減量につながるとともに、生活の質に重度の影響を及ぼす可能性がある。いくつかの証拠から、経口グルタミンは、粘膜細胞および消化管全体のより早い回復を助けることによって、これらの治療による毒性のいずれも低減できることが示唆される。

化学療法を受ける患者で、以前に粘膜炎を起こしたか、粘膜炎を引き起こすことが知られた化学療法を受けるために粘膜炎を起こすリスクが高い場合は、経口グルタミンにより、粘膜炎の重症度および発生率が減少する可能性がある。[ 23 ][ 24 ][ 25 ]

腹部に対して放射線療法を受ける患者では、経口グルタミンにより、下痢の重症度が低下するとともに、治療の遅れが少なくなる可能性がある。[ 26 ][ 27 ]しかしながら、1件の研究で、化学療法誘発性下痢の予防に対して、経口グルタミンに有益性がないことが明らかにされた。[ 28 ]

パクリタキセルによる化学療法を受けている患者では、経口グルタミンによって、消化管毒性の減少に加えて、末梢神経障害も減少する可能性がある。[ 29 ]末梢神経障害の治療における経口グルタミンの有効性を詳しく判定するには、さらに大規模なランダム化比較試験を実施する必要がある。

経口グルタミンは、重度の化学療法および放射線療法誘発性毒性を低減できる可能性のある安全かつ簡単で、比較的低コストの栄養補助食品である。

参考文献
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本要約の変更点(05/08/2020)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

本要約には編集上の変更がなされた。

本要約はPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

本PDQ要約について

本要約の目的

本PDQがん情報要約では、がん治療の前・中・後の栄養について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

証拠レベル

本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

本要約の使用許可

PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board.PDQ Nutrition in Cancer Care.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/side-effects/appetite-loss/nutrition-hp-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389293]

本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

免責条項

これらの要約内の情報は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。