ご利用について
このPDQがん情報要約では、成人唾液腺がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 唾液腺がんについての一般的な情報
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唾液腺がんは、唾液腺の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。
唾液腺とは、唾液を作って口腔内に放出している器官です。唾液には、食べ物の消化を助ける酵素と口腔および咽頭(のど)の感染防御を担う抗体が含まれています。大唾液腺としては以下の3対が存在します:
さらに口腔、鼻腔、および喉頭の粘膜中には、顕微鏡でしか見ることのできない小さな唾液腺(小唾液腺)が多数存在しています。小唾液腺の腫瘍のほとんどは口蓋(口腔の天井部分)に発生します。
唾液腺がんの発生リスクを高める要因に、特定の種類の放射線への曝露があります。
疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。ほとんどの唾液腺がんの原因は不明ですが、リスク因子としては以下のものがあります:
唾液腺がんの徴候には、しこりと嚥下困難があります。
唾液腺がんでは症状が全く現れない場合もあります。通常の歯科検診や身体診察の際に発見される場合もあります。徴候や症状は、唾液腺がんが原因で生じることもあれば、他の病態によって引き起こされることもあります。以下の問題がみられる場合は担当の医師にご相談ください:
唾液腺がんの発見と診断には、頭部と頸部および口腔内を調べる検査法が用いられます。
以下のような検査法が用いられます:
唾液腺がんの診断は難しくなることもあるため、患者さんは唾液腺がんの診断に熟練した病理医に組織サンプルを診てもらうべきです。
- 唾液腺がんの病期
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唾液腺がんの診断がついた後には、唾液腺内でのがん細胞の拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。
がんの唾液腺内での拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。病期分類の過程では以下のような検査法が用いられます:
体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。
がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。
がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。
転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、唾液腺がんが肺に転移した場合、肺にできたがん細胞は、実際は唾液腺がんの細胞です。この疾患は転移性唾液腺がんであり、肺がんではありません。
耳下腺、顎下腺、舌下腺に生じる唾液腺がんでは以下のような病期が用いられます:
0期(上皮内がん)
0期では、唾液腺を構成する小さな袋や唾液管の内壁を覆う組織に異常な細胞が認められます。こうした異常細胞は、がん化して周囲の正常組織へと拡がっていく可能性があります。0期は上皮内がんとも呼ばれます。
IV期
IV期は以下のようにIVA期、IVB期、IVC期に分けられます:
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IVA期:
- がんは皮膚、顎骨、外耳道、顔面神経のいずれかまたは複数に拡がっている。腫瘍と同じ側にある頭頸部リンパ節の1つにがんが転移していることもある。そのリンパ節の大きさは3cm以下であり、がんはリンパ節の外に拡がっていない。または
- 腫瘍の大きさを問わず、腫瘍が存在する唾液腺の周囲の軟部組織や、皮膚、顎骨、外耳道、顔面神経のいずれかまたは複数にがんが拡がっていることがある。がんは以下のように転移している:
- 腫瘍と同じ側の頭頸部リンパ節の1つに転移し、そのリンパ節の大きさが3cm以下であり、リンパ節の外にもがんが拡がっている。または
- 腫瘍と同じ側の頭頸部リンパ節の1つに転移し、そのリンパ節の大きさが3cmを超えるが6cm以下であり、リンパ節の外にがんは拡がっていない。または
- 腫瘍と同じ側に位置する複数の頭頸部リンパ節に転移しており、そのリンパ節の大きさは6cm以下であり、リンパ節の外にがんは拡がっていない。または
- 頭部または頸部の両側もしくは原発腫瘍と反対側に位置する複数の頭頸部リンパ節に転移しており、そのリンパ節の大きさは6cm以下であり、がんはリンパ節の外に拡がっていない。
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IVB期:
- 腫瘍の大きさを問わず、腫瘍が存在する唾液腺の周囲の軟部組織や、皮膚、顎骨、外耳道、顔面神経のいずれかまたは複数にがんが拡がっていることがある。がんは以下のように転移している:
- 6cmを超える1つのリンパ節に転移し、そのリンパ節の外には拡がっていない。または
- 腫瘍と同じ側の頭頸部リンパ節の1つに転移し、そのリンパ節の大きさが3cmを超え、がんがそのリンパ節の外に拡がっている。または
- 原発腫瘍と同じ側か反対側、もしくは頭部または頸部の両側に位置する複数の頭頸部リンパ節に転移し、うちいくつかのリンパ節の外にがんが拡がっている。または
- 原発腫瘍と反対側の頭頸部リンパ節1つに転移しており(そのリンパ節の大きさは問わない)、そのリンパ節の外にがんが拡がっている。
または
- がんは頭蓋底や頸動脈周囲に拡がっている。頭部または頸部の片側または両側に位置する1つ以上のリンパ節にがんが転移していることがあり(その/それらのリンパ節の大きさは問わない)、その/それらのリンパ節の外に拡がっていることもある。
- 腫瘍の大きさを問わず、腫瘍が存在する唾液腺の周囲の軟部組織や、皮膚、顎骨、外耳道、顔面神経のいずれかまたは複数にがんが拡がっていることがある。がんは以下のように転移している:
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IVC期:
- 肺など、体内の他の部位にがんが転移している。
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IVA期:
- 再発唾液腺がん
再発唾液腺がんとは、治療後に再発した(再び現れた)がんのことをいいます。唾液腺がんの再発は、唾液腺に起こることもあれば、それ以外の部位に起こることもあります。
- 治療選択肢の概要
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唾液腺がんの患者さんには様々な治療法が存在します。
唾液腺がんの患者さんは、様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
唾液腺がんの治療では、頭頸部がんの治療に精通した医師で構成されるチームによって治療計画が作成されるべきです。
この疾患の治療は腫瘍内科医(がんの治療を専門とする医師)が指揮します。唾液腺は節食や消化に関与する器官であることから、患者さんががんの副作用やがん治療の副作用に適応していくために、特別な支援が必要となってくる場合があります。腫瘍内科医は、頭頸部がんの治療に精通した他の医師や特定の医療分野を専門とする医師に、患者さんを紹介することがあります。具体的には以下のものがあります:
標準治療として以下の3種類が用いられています:
手術
唾液腺がんでは手術(外科的な方法でがんを取り除く治療法)が一般的な治療法です。手術法としては、がん組織とその周辺の正常組織の一部を切除する方法があります。場合によってはリンパ節郭清術(リンパ節を切除する手術)も併せて実施されます。
手術の際に確認できる全てのがんを切除した後に、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に放射線療法が実施される場合があります。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には2種類のものがあります:
放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。外照射療法は唾液腺がんの治療に用いられるほか、症状を軽減し生活の質を高めるための緩和療法として用いられることもあります。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、もしくは腹腔などの体腔内に薬剤を直接注入する化学療法では、薬はその領域にあるがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。
詳しい情報については、頭頸部がんに対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。(唾液腺がんは、頭頸部がんの一種です。)
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。
本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。
放射線増感剤
放射線増感剤とは、放射線療法に対する腫瘍細胞の反応性を高める薬のことです。放射線療法に放射線増感剤を併用すれば、より多くの腫瘍細胞を死滅させることが可能です。
患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。
患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。
今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。
患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。
患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。
ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。
臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
- 病期ごとの治療選択肢
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
I期の唾液腺がん
I期の唾液腺がんに対する治療法は、そのがんが低悪性度のもの(増殖が遅い)か高悪性度のもの(増殖が速い)かに応じて異なります。
低悪性度のがんの場合には以下のような治療法があります:
高悪性度のがんの場合には以下のような治療法があります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
II期の唾液腺がん
II期の唾液腺がんに対する治療法は、そのがんが低悪性度のもの(増殖が遅い)か高悪性度のもの(増殖が速い)かに応じて異なります。
低悪性度のがんの場合には以下のような治療法があります:
高悪性度のがんの場合には以下のような治療法があります:
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 再発唾液腺がんの治療選択肢
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。
- 唾液腺がんについてさらに学ぶために
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米国国立がん研究所が提供している唾液腺がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、成人唾液腺がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Salivary Gland Cancer Treatment (Adult).Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/head-and-neck/patient/adult/salivary-gland-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389192]
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