ご利用について
医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠を査定するためにPDQ編集委員会によって採用されている公式順位分類について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Adult Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
CONTENTS
- 序
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さまざまなエンドポイントが、腫瘍学における臨床研究で測定され、報告されている。これらには、全死亡(または治療の開始以降の生存)、原因特異的な死亡、生活の質、またはこれら4つの転帰の間接的な代替、例えば、無再発生存、無病生存、無増悪生存、または腫瘍奏効率などが含まれる。エンドポイントはまた、ゴールドスタンダード-ランダム化二重盲検対照臨床試験-から非連続患者からのケースシリーズ経験まで、さまざまな強さの研究デザイン内でも決定される。治療戦略の報告結果に関する証拠の強さを読者が判断しやすくするために、PDQ編集委員会は、証拠レベルの公式順位分類を採用している。すべての所定の治療に対して、結果は以下の2つの尺度のそれぞれに基づいて順位付けされる:(1)研究デザインの強さおよび(2)エンドポイントの強さである。2つの順位分類はともに全証拠レベルの概念を提供する。治療のガイドラインを公式化するか、または行動を起こす際に、見通しによって、さまざまな専門家委員会、専門組織、または個々の医師が総体的な証拠の強さに異なる「カットポイント」を使用することがある;しかしながら、証拠レベルの公式的な記述は、データに一定の枠組みを提供し、特定の推奨につながる。
PDQ Adult Treatment Editorial BoardおよびPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardは、以下に示すように、PDQ Adult Cancer Treatment SummariesおよびPDQ Pediatric Cancer Treatment Summariesに証拠レベルに関する情報を適宜追加する。
- 研究デザインの強さ
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さまざまな種類の研究デザインを、以下のように強さの降順に記載する:
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ランダム化対照臨床試験(RCT)。
- 二重盲検。
- 非盲検(治療デリバリー)。
ランダム化二重盲検対照臨床試験(1i)は研究デザインのゴールドスタンダードである。この順位を得るには、ランダム化および治療割り付けが行われる前と後の両方で、研究割り付けが医師に分からないようにしなければならない。このデザインは、研究者による割り付けバイアス、および研究者と患者の両者による転帰の評価におけるバイアスからの保護を提供する。残念ながら、腫瘍学における大部分の臨床試験において、治療割り付け後二重盲検はできないが、それは手技または毒性作用が研究割り付け間で、しばしば医療専門家および患者の両方に明らかなほど異なるためである。しかしながら、ほとんどのケースにおいて、ランダム化が行われるまでは研究者と患者に対する盲検化が可能である。実施される治療の盲検化が達成できない場合は、1iiの順位が割り当てられる。
ランダム化試験のメタアナリシスは、以前に実施された研究の量的統合を提供する。メタアナリシスからの証拠の強さは、個々の研究の運営の質に基づく。さらに、メタアナリシスは、個々の研究における小さな系統的誤差を拡大しうる。単一の大規模ランダム化試験の結果と以前に同じ主題で公表された複数のより小規模の試験のメタアナリシスの結果を比較したある研究は、わずかな一致しか示さなかった(κ統計量、0.35)。大規模ランダム化比較試験の結果は、メタアナリシスによってその時点の35%が正確に予測されなかった。[ 1 ][ 2 ]同じ臨床問題に取り組む異なる研究者によって実施されたメタアナリシスが、相反する結論に達することがある。[ 2 ]そのため、ランダム化試験のメタアナリシスは、より高いレベルではなく、ランダム化試験と同じ証拠レベルのカテゴリーに配置される。
ランダム化試験のサブセット分析は、多重性(すなわち、複数のサブセットにおいて測定された効果のランダムな変動の結果として期待される統計的に有意な結果)における固有の誤差の影響を受けやすい。そのため、サブセット分析は、デザインされる時点で分析されるサブセットに関し明確でプロスペクティブな仮説が立てられない限り、ランダム化試験の全分析と同じ証拠の強さを示さない。そうでなければ、サブセット分析は次に低い研究デザインのカテゴリー(非ランダム化対照臨床試験)に置かれるべきである。
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非ランダム化対照臨床試験
このカテゴリーには、生年月日、カルテ番号、受診予約の日付、ベッドの利用可能性、または患者からインフォームドコンセントを得る前に研究者に割り付けが知られるであろう他のすべての戦略によって治療割り付けが行われた試験が含まれる。そうした状況では治療割り付けにおいて不均衡が生じうる。上記の理由から、ランダム化試験におけるサブセット分析は、しばしばこの証拠カテゴリーに入る。
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ケースシリーズまたは他の観察研究のデザイン。
- 集団ベースの、連続シリーズ。
- 連続したケース(集団ベースでない)。
- 非連続のケースまたは他の観察研究のデザイン(例、コホート研究またはケースコントロール研究)。
これらの臨床経験は最も弱い形態の研究デザインであるが、それらは、特に、まれな疾患の症例において、または治療の発達が実践医療においてランダム化試験デザインの一般的な使用に先行する場合には、治療戦略を支持する唯一の利用可能または実用的な情報となりうる。それらはまた、研究群間で治療が根本的に異なる場合(例えば、切断術 vs 四肢温存手術)にも唯一の実用的デザインとなりうる。それでも、こうした臨床経験は常に、患者の選択および他の集団との比較可能性の問題を引き起こす。他の集団への一般化可能性の順は、集団を特定できる集団ベースの研究、集団ベースではないが連続的なシリーズ、非連続的ケースとなる。一部の研究デザイン(例、コホート研究およびケースコントロール研究)では、内部比較被験者が設けられている一方、そうではない研究デザインもある(例、内部比較群を設けていない症例のみのシリーズまたは歴史的対照と比較される症例のみのシリーズ)。
腫瘍学における治療戦略を比較する内部比較群を設けた大規模な集団ベースの観察研究であっても、解釈には最大限の注意を払うべきである。観察研究とRCTの結果を直接比較した1件の研究において、研究者らは、がんの診断に対して治療レジメンを比較したSurveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) Program、SEER-Medicare、またはNational Cancer Databaseからのデータを用いて2000年から2016年に発表された観察研究の系統的なMEDLINE検索を実施した。[ 3 ]研究者らは、350件の治療比較を同じ比較を実施した121件のRCTにマッチングした。観察研究とマッチングしたRCTのハザード比(HR)間で有意な相関は認められなかった(一致相関係数、0.08;95%信頼区間[CI]、-0.07~+0.23)。治療効果に関して、マッチングした研究で一致したのはわずか40%(κ統計量、0.037)で、観察研究のHRがマッチングしたランダム化試験の95%CIの範囲内に収まる確率はわずか62%であった。こうした相関のうち、偶然予想されるものを超えた相関はなく、傾向スコア重み付け法、操作変数法、または感度分析といった最も洗練された統計的解析手法を用いた研究において、相関は改善されなかった。注目すべきことに、厳密であると評価され、全生存について報告した70件の観察研究のうち、肯定的な結果を報告した研究は35件であった一方、RCTでは差が報告されず、反対方向の影響も示されなかった。
参考文献- LeLorier J, Grégoire G, Benhaddad A, et al.: Discrepancies between meta-analyses and subsequent large randomized, controlled trials. N Engl J Med 337 (8): 536-42, 1997.[PUBMED Abstract]
- Bailar JC: The promise and problems of meta-analysis. N Engl J Med 337 (8): 559-61, 1997.[PUBMED Abstract]
- Soni PD, Hartman HE, Dess RT, et al.: Comparison of Population-Based Observational Studies With Randomized Trials in Oncology. J Clin Oncol 37 (14): 1209-1216, 2019.[PUBMED Abstract]
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ランダム化対照臨床試験(RCT)。
- エンドポイントの強さ
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成人および小児がん治療に対して一般に測定されるエンドポイントを、以下のように強さの降順に挙げる:
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全死亡(または定義された時点からの全生存)。
この転帰は議論の余地はあるが患者にとって最も重要であり、また最も容易に定義され、研究者バイアスに対して最も影響を受けにくい。
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原因特異的死亡(または定義された時点からの原因特異的な死亡)。
これは疾患特異的介入において生物学的に最も重要となりうるが、全死亡に比べより主観的なエンドポイントであり、その決定において研究者バイアスの影響をより受けやすい。このエンドポイントはまた、全生存を実際に短くしうる治療の重要な作用を見逃すことがある。
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注意深く評価された生活の質。
これは患者にとってきわめて重要なエンドポイントである。そのため、強い研究デザイン内のこのエンドポイントの注意深い記述は、大部分の医師が治療を実践に組み込むのに十分役立つ。
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間接的な代替。
- 無再発生存。
- 無病生存。
- 無増悪生存。
- 腫瘍奏効率。
これらのエンドポイントは、研究者の解釈による影響を受けやすい。さらに重要なことに、それらは生存または生活の質などの直接的な患者の利益に自動的に変換されるものではない。にもかかわらず、その使用を支持するためのより決定的なエンドポイントを待つ一方で、これらの代替エンドポイントを改善する治療を使用することは、多くの状況において合理的といえる。
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全死亡(または定義された時点からの全生存)。
- 要約
研究または臨床経験はデザインの強さとエンドポイントの重要性の両方によって順位付けされるため、ある特定の研究が2層の順位を持つことになる(例えば、全生存において良好な治療成績を示す非盲検化ランダム化研究に対しては1iiA、結果として奏効率が示されている選択された患者の第II相試験には3iiiDiv)。さらに、すべての推奨事項は、毒性、観察の信頼区間の幅、試験サイズ、試験における品質保証、および費用のような、容易には定量化できないその他の問題を考慮しなければならない。にもかかわらず、PDQ順位分類システムは、研究結果の考察のための出発点として証拠の強さに関する順位分類を提供する。
- 本要約の変更点(08/27/2019)
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PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。
研究デザインの強さ
本文で以下の記述が改訂された;一部の研究デザインでは、内部比較被験者が設けられている一方、そうではない研究デザインもある。
本文に以下の記述が追加された;腫瘍学における治療戦略を比較する内部比較群を設けた大規模な集団ベースの観察研究であっても、解釈には最大限の注意を払うべきである;観察研究とランダム化臨床試験(RCT)の結果を直接比較した1件の研究において、研究者らは、がんの診断に対して治療レジメンを比較したSurveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) Program、SEER-Medicare、またはNational Cancer Databaseからのデータを用いて2000年から2016年に発表された観察研究の系統的なMEDLINE検索を実施した(引用、参考文献3としてSoni et al.)。また以下が追加された;研究者らは、350件の治療比較を同じ比較を実施した121件のRCTにマッチングし、観察研究とマッチングしたRCTのハザード比間で有意な相関は認められないことを明らかにした。注目すべきことに、厳密であると評価され、全生存を報告した70件の観察研究のうち、肯定的な結果を報告した研究は35件であった一方、RCTでは差が報告されず、反対方向の影響も示されなかった。
本要約はPDQ Adult Treatment Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。
- 本PDQ要約について
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本要約の目的
医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠を査定するためにPDQ編集委員会によって採用されている公式順位分類について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
査読者および更新情報
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Adult Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:
要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。
本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。
証拠レベル
本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Adult Treatment Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。
本要約の使用許可
PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。
本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Levels of Evidence for Adult and Pediatric Cancer Treatment Studies.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/publications/pdq/levels-evidence/treatment.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389191]
本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。
免責条項
入手可能な証拠の強さに基づき、治療選択肢は「標準」または「臨床評価段階にある」のいずれかで記載される場合がある。これらの分類は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。
お問い合わせ
Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。